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Harley-Davidson
Harley-Davidson STREET 750。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 たぶん、Harley-Davidsonというブランドのオートバイを知っている人の多くは、第一印象でSTREET 750は「小さい」と思うだろう。国内メーカーの400ccクラスと言われても納得してしまいそうなコンパクトさ。もうこの時点で、今までのハーレーとは違うもの。

 この印象の大きな要因は、新型水冷60°Vツインエンジンを積んだボディもさることながら、フロント100/80-17、リア140/75-15という小径タイヤを履いていることも大きい。当然ながらそれに伴い、シート高は低く、身長170cmで足が短めな私でも両足裏が地面にベッタリと接地する。スタンドから引き起こす時も軽い。

 製品説明の時、デザインを担当したDais Nagaoさんとのやりとりの中に、通常のハーレーモデルは水平を基調としたデザインなのに対し、これはテールに向かってラインが上がっているという話が出てきた。言われてみれば確かに燃料タンクの下側のライン、ラジエターシュラウド下方やシートのキャラクターライン、サイドカバーのライン、テールカウル、マフラーの伸び方、どれも揃って、後ろに向かい緩やかな角度で上がっている。

 前後シリンダーヘッドから伸びた、エキゾーストパイプがエンジン右側での出会い方、ビキニカウル、カラーなど、どことなく昔あったカフェレーサーのXLCRを思い出させる部分がある。実際に、試乗会当日、その場にXLCRも置いてあった。しかし、厳密には“香り”くらいのもので、実際のディテールはまったく違うし、このオートバイのメインターゲットとなるユーザー層はXLCRを知らない人が多いだろう。個人的にはレトロなイメージがありながらやりすぎていないさじ加減が好みだ。

 エンジンを始動させると、排気音、メカニカルノイズ共に意外と静かで、Vツインの鼓動的なものも含めて1000ccに届かない、同排気量クラスの国産メーカーモデルと似ている。ハンドルグリップは乗車するとライダーの胃袋くらいの高さで、手前の絞りもあるので、容易に手が届く。低いのはシートだけでなく全体だから、燃料タンクも股下からちょっと上に向かって伸びている感じ。

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 クラッチミートして前に走りだし、スロットルを開けると、予想したより遥かに低中速のトルクがあった。ビュンっと前に車体が出る。確実に同排気量クラスの国産メーカーVツインよりトルクがあって、スポーティー。そこからさらに右手を絞り、開けていっても高回転まで(タコメーターは装着されていなので詳しい回転数は判らない)スムーズ。振動も少ない。回転上昇の重々しさはなく、軽い車体がリニアにキビキビと前に押し出された。エンジンの特性には癖がなく、スポーティーだ。

 試乗車は新車状態で、走行距離もほとんど伸びていなかったこともあり、フロントブレーキの効きはまずまず(それでもクルーザーと比べると効きは良い)で、当たりが出るともっと強い制動が出来そうなポテンシャルがありそう。リアブレーキはしっかりと効き充分。

 柔らかすぎず、固すぎない前後のサスペンションとコンパクトな車体、小径キャストホイールで、ハンドリングはヒラヒラと動きが軽い。ミッドコントロールのステップは、積極的に踏み込んで車体をコントロールするのに適した位置。こちらもキビキビ感が気持ちいい。ハンドルも大きめに切れるので、狭い場所でのUターンも気兼ねなくやれた。減速しながらコーナーに入る時の所作は、クルーザーよりネイキッドスポーツに近い身軽さと安定感。同メーカーのモデルの中では深いバンク角を持っていながら、もうちょっと欲しいと思ったくらい。扱いやすさ、エンジンのピックアップ、車体の大きさとまとまりのバランスがいい。

 乗りながら、自分がもし手に入れたら、とってつけた感のある車体左側のホーンを移設して、見え過ぎている配線をまとめて、今のままでもまったく問題はないけれど、ハンドルバーを別のものに交換して、と、心の中でカスタムプランが勝手に進行していた。確かに安っぽいと言わざるをえないところもあって、価格を考えると(これを書いている時点で価格は公開不可なので後ほど更新され明記されると思う)、いたしかたがない部分もあるけれど、走りに関してはよく出来ている。

 正直に話すと、乗る前はいろいろと懐疑的だった。女性向け? ビギナー向け? クルーザーの分野では強いブランド力を持つハーレーにこのモデルが必要なのか? 日本製のライバルも多い。など、注文した料理の味が予想したものとまったく違う時のような気持ち。こうやって現物を目の前にしてもその思いはあった。その低く垂れこめた雨曇のようなものは乗った後には見事に消え去って、冬の日本晴れだったこの日の空のような気分に。純粋に乗って操って走るのが楽しかった。

 国産メーカーのVツインがテイストにこだわって味付けをイジっているのに対し、STREET 750が、従来のVツインテイストより、使いやすさと軽快な走りになっているのが面白い。Harley-Davidsonがクルーザー分野で持っているイメージと存在感にファンが多いのも事実だけど、反面それが重い鎧のようになっていたのではないか。このSTREET750は、潔くそれを脱ぎ捨てた。私は積極的にそれを評価したい。そう思わせる走りだった。簡単に言えば、気に入ったのだ。

(試乗:濱矢文夫)

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プロダクトコンセプト、その1『URBAN MOBILITY』=「渋滞やストップ&ゴーを多用するストリートユースに向けた新型水冷エンジンは中低速のトルクを豊かにし、6速ミッションと相まって街中での扱いやすさを追求。シャーシの幅を狭く細身にすることで俊敏性が増し、狭い場所や市街地エリアでも最高の取り回しを実現。ライディングポジションもアーバンモビリティを考慮し、低いシート高、専用サスペンション、ミッドコントロールを採用。切れ角の大きなハンドルバーにより、細かいターンや素早い動きでも高い安全性と操作性を実現」。その2『AUTHENTIC Harley-Davidson』=「Harley-Davidsonの象徴的なエンジンサウンド。H-Dならではのメタルフィニッシュタンクとフェンダーデザイン。ブラックアウト仕上げはカスタマイズに最高のキャンバスを提供」。その3『DARK CUSTOM SOUL』=「ミニマリスティックで革新的なデザイン。カフェスタイルのスピードスクリーン。ダークカスタムスタイル」。
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STREET 750の製品説明に駆けつけてくれた、開発チームの一員で、Willie G Design Studio Senior DesignerのDais Nagaoさん。従来のH-Dが「ホリゾンタルライン」という水平基調のスタイルでデザインされているのに対して、STREET 750では、車体前方から後方へ掛けて跳ね上がる「スピードライン」でデザインした、とのこと。 「開発も大詰め、完成間近になって採用が決まった」というメーターバイザーを兼ねたヘッドライトカバーを採用。フロント周りにボリュームと迫力をプラスしている。 ハーレー伝統のシンプルなメーター周り。ユニークなメインキー位置と“グローバル”ユースを意識して一般的なレイアウトとなったスイッチ周り。
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新世代のハーレーには新世代のエンジン。水冷60度V型2気筒、4バルブヘッド、排気量749ccの「Revolution X」エンジンを搭載。58N・m/3,750rpmの最大トルクを発生。 シート高は709mm。新たにバイクに乗る層や女性にも優しいポジション。タンデムシートはレギュレーション対応程度。カスタマイズが前提か。 リア駆動はメンテナンスの楽なベルトドライブを採用。しっかりしたベルトカバーも標準装備で騒音対策上もメリット。リアタイヤは140/75R 15M/C 65H。
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新型水冷Vツイン搭載、と言うことで、V-RODが登場した当時のことを思い出した方は多いのではないだろうか。それもネガティブな意見が多く見られたことを。「ハーレーこそアメリカの魂」を標榜するハーレー・フリークスからすれば、メインストリームの大排気量空冷Vツインに存続の危機、と取られてしまったからだった。しかし今回、この新世代の水冷Vツインを搭載するSTREET 750は、当時とは違った受け入れられ方をしているのを感じる。そこには、従来のユーザー層とは異なる、新たなハーレー・ファンを作るという明確な意志が伝わってくるからなのだろう。
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■Harley-Davidson STREET 750 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,225×820×1,060mm、ホイールベース:1,535mm、最低地上高:145mm、シート高:709mm、車両重量:230kg、燃料タンク容量:13.1リットル、燃焼消費率:定地燃費値21.3km/L●エンジン種類:水冷4ストローク60度V型2気筒SOHC4バルブ、排気量:749cm3、内径×行程:85×66mm、圧縮比:11、最高出力:最大トルク:58N・m/3,750rpm、始動方式:セルフ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、キャスター:32°、トレール:115.0mm●サスペンション:前・テレスコピック、後・スイングアーム●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・100/80-17M/C 52H、後・140/75-15M/C 65H●カラー:ビビッドブラック、ファイヤーレッド、ブラックデニム


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