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レーサーレプリカブームが1つの山を越えた1989年4月1日、500台の限定で発売された公道版TT F1レーサー。当時、究極のレーサーレプリカと呼ばれた。それもそのはず、既存のFZR750ベースのレース仕様ではなく、1987、1988年と8耐を連覇したワークスレーサーYZF750からフィードバックされたテクノロジーが注ぎ込まれ、ほぼ全てが新設計というまったくの別物であった。エンジンはレイアウトこそFZR750と同様の水冷4気筒DOHC5バルブだが、ボアもストロークも異なるショートストローク化された新設計。国内仕様は自主規制の77馬力だが、輸出仕様のフルパワーは121馬力を発生した。専用パーツのチタンコンロッド、水冷式のオイルクーラー、6速クロスミッションなどを組み込み、フレームも新型のアルミデルタボックス、リアにはオーリンズサスが組み込まれ200万円という大台を越えた価格設定であったが、内容と生産数を考慮すればむしろ安い内容であったと言える。
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●エンジン︰水冷4ストローク4気筒DOHC5バルブ
●総排気量(内径×行程)︰749cc(72×46mm)
●最高出力︰77ps/9500rpm
●最大トルク︰6.7kg-m/7500rpm
●圧縮比︰11.2︰1●変速機:6速リターン
●全長×全幅×全高︰2100×705×1160mm
●軸距離︰1455mm●乾燥重量︰187kg
●燃料タンク容量︰19ℓ
●タイヤ前・後︰120/70R17 58H・170/60R17 72H
●発売当時価格:2,000,000円
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海外のみ500台限定で発売されたため、国内ではあまりなじみのないスーパーバイクのベースマシン。四輪のF1エンジンテクノロジーからフィードバックされた高剛性、軽量なチタニウム合金製のコネクティングロッドやチタンパーツなどの専用パーツをふんだんに組み込んだエンジン、剛性の高められたフレームなど、即レースに出場できるパフォーマンスの高いマシンだが、さらにキットパーツを組めば最高出力は165psに達した。価格は日本円に換算すると約400万円にも達したが、1999年の全日本スーパーバイクでは吉川和多留選手が7連続表彰台を獲得し優勝するなど、パフォーマンスの高さを実証した。
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●エンジン︰水冷4ストローク4気筒DOHC4バルブ
●総排気量(内径×行程)︰749cc(56.4×50mm)
●最高出力︰106ps/11000rpm
●最大トルク︰7.4kg-m/9000rpm
●圧縮比︰11.4︰1●変速機:6速リターン
●全長×全幅×全高︰2060×720×1125mm
●軸距離︰1400mm●乾燥重量︰176kg
●燃料タンク容量︰23ℓ
●タイヤ前・後︰120/70ZR17・180/55ZR17
●発売当時価格:輸出車
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新たなる時代へ。
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何事にも始めがあれば終わりが来る。空前のバイクブームも、1990年代に入るとレーサーレプリカの衰退と共に市場規模は縮小し始めたが、入れ替わるようにネイキッド旋風が巻き起こり、まだまだバイク熱は冷え切ってはいなかった。
ネイキッドブームは空冷4気筒ブームともリンクし、空冷4気筒のビッグモデルXJ1200が誕生した。さらに1990年代末には、サーキットから公道に軸足を移したスポーツとハイスピードツーリングを両立させたYZF1000Rサンダーエース(輸出車)のような、新たなスーパースポーツも誕生した。レーサーレプリカとは似て異なるスーパースポーツは、後継モデルのYZF-R1(当初は輸出専用)によってハイパフォーマンスモデルのフラッグシップとして定着、軽量コンパクトなボディにハイパワーエンジンという、2スト時代から脈々と流れるヤマハの源流に回帰するような出来事であった。
2000年代になると、オーバーナナハン解禁、免許制度の改正、馬力自主規制の撤廃、仕様などのグローバル化などバイクを取り巻く環境は大きく変わった。国内仕様オーバーナナハンのVMAXやFJ1200Aの国内仕様も登場し、また新たなジャンルのオートマチックスポーツのTMAXも誕生するなど、新たなる時代を迎えている。
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1996年に登場したポストレーサーレプリカのYZF1000Rサンダーエース。軽量な車体にハイパワーエンジンで高い運動性を実現。
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YZF1000Rサンダーエースの後継車。現代版スーパースポーツのフラッグシップといえば1998年に登場したYZF-R1。
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1990年代のネイキッドブーム、空冷4気筒ブームで誕生したXJ1200は1300にバージョンアップし現在も発売中。
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スクーターに高いスポーツ性能を持たせ、2000年に登場したオートマチックスポーツという新ジャンルを提唱したTMAX。
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締め括るように特設会場の出口に展示されていたのは、2008年にカリフォルニアで発表され、大きな話題となったニューVMAX。初代の持つマッチョスタイルのイメージを上手にトレースしつつ、1679ccのニューエンジンを完全新設計のアルミフレームに搭載し、ヤマハ独自の電子制御システムG.E.N.I.C.H.によって制御されるなどで、VMAXは生まれ変わった。2009年からは国内仕様も再び登場し、現在も好評発売中。
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●エンジン︰水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ
●総排気量(内径×行程)︰1679cc(90×66mm)
●最高出力︰111kw(151ps)/7500rpm
●最大トルク︰148N・m(15.1kg-m/)7500rpm
●圧縮比︰11.3︰1●変速機:5速リターン
●全長×全幅×全高︰2395×820×1169mm
●軸距離︰1700mm●乾燥重量︰311kg
●燃料タンク容量︰15ℓ
●タイヤ前・後︰120/70VR18 59V・200/50R18 76V
●発売当時価格:2,220,000円 (本体価格)
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