タクト/タクト・ベーシック 172,800円/159,840円(1月23日発売)

★タクト/タクト・ベーシック 車両解説

ホンダ原付スクーターの伝統ブランド「タクト」が帰ってきた

’70年代後半、一躍ブームとなったファミリーバイク(いわゆるソフトバイク)の普及に、その次に来たるべくモデルとして白羽の矢が立ったのは本格的なスクータースタイルの原付だった。ホンダからは、1980年9月にステップスルータイプのタクトがリリースされた。ロードパル(’76年2月発売)で若者や女性ユーザーの掘り起こしに成功したホンダが、より本格的な乗り物として「50ccの軽量でコンパクトな車体の中に、ゆとりある乗車スペース、ソフトな乗車感覚の乗り心地、セルスターターに代表される取り扱いやすい各種機構、そしてなによりも幅広いファッションにフィットするスタイル」を持つ原付スクーターとして市場へ投入したのだった。

このタクトが、’80年代を通してのホンダの原付モデルの顔として人気を持ち続けていくことになる。ちなみに販売計画台数は国内で“月間”15,000台。まさに空前のバイクブームならではの数字だった。翌’81年7月には、サイドトランクを装備したタクト・フルマークが登場。こちらの販売計画はさらに上を行く“月間”40,000台。

1982年9月には4.0馬力の新型2ストロークエンジン(初代は3.2馬力)を搭載する2代目に発展。デザインも若干直線的なイメージを強調するスタイルに変身。また、タクトフルマーク、そして1981年9月にタクト・フルマークに設定された特別カスタム仕様車(キー付きインナーボックス等を装備したモデルだった)を引き継ぐカタチでフルマーク・カスタムと、3タイプのラインナップに。販売計画はシリーズ合わせて“月間”30,000台だった。この2代目タクトをベースに、パリの高名なファッションデザイナー、アンドレ・クレージュ氏のデザインによる“クレージュ仕様のタクト”が発売されたのは1983年3月のことだった。

1984年5月、タクト、タクトフルマークのスタイルを一新。5馬力の新型2ストロークエンジンをVマチックと組み合わせ、ノイズインシュレーターの採用などにより’85年騒音規制(72dB)もクリア。販売計画台数は年間180,000台。9月になって、3代目タクトにもクレージュ仕様が登場。販売台数は限定10,000台。専用のクレージュデザインヘルメットなども発売されて人気を呼んだ。

1985年4月(フルマークは5月)、2ストロークエンジンの吸排気系を改良して出力を5.4馬力へとさらにアップ。3代目タクトの後期型に。セル、キック併用式の始動方式を新たに採用。5月、クレージュ・タクトも同様の改良を受ける。クレージュ・タクトは12月にさらにカラーリングの変更も受けている。

1986年2月、タクトフルマークの装備をより充実させたモデルをタクトフルマークSとして発売。大型スピードメーター、大型シート、折りたたみ式フロントキャリアなどを装備。1986年4月にはタクトのボディに4.1馬力の4ストロークエンジンを搭載するタクトアイビーが追加発売される。ボディと一体になったフロントフェンダーを採用するなど、その後のスクーターデザインを先取りするモデルだった。タクト本体は1986年9月にゴールドカラーホイールやタータンチェック柄のコンビシートを採用するなどの“特別仕様車”を追加発売。

1987年1月、タクトフルマークがフルモデルチェンジ。このモデルが実質的にタクトの4代目となる。フルフェイスヘルメットが収納可能な大型センタートランク“メットイン”をシート下に装備したのは、’86年に施行された原付一種のヘルメット規制に対するものだった。新設計6ポート2ストロークエンジンは、5.8馬力を発生。タクトアイビーで先鞭をつけたボディ一体のフロントフェンダースタイルを採用し、その後のタクトデザインの方向性を決定づけるモデルでもあった。9月には質感の高いメタリック塗装を施したタクトフルマークの特別仕様車を発売。

1989年3月、市販車として世界初の電動式オートスタンド(スタンドアップ機構)を採用するなど機能を充実させ、スタイルも一新したタクトフルマークを新型タクトとして発売。このモデルをもってタクトとタクトフルマークは、5代目タクトとして一本化されることになった(フルマークとしては7代目だった)。4.8リットル入り燃料タンクを採用、センタートランクの容量も22リットルにアップ。2ストロークエンジンの出力もついに6.0馬力となった。

1989年9月、スタンドアップ機構を省略した廉価版のベーシック仕様を追加。メーカー希望小売価格は、タクトの154,000円に対してベーシックは142,000円。1988年1月、6.4馬力エンジンを搭載し、よりスポーティで廉価(126,000円)な若者向けスポーティスクーターのディオが発売されたが、タクトの販売計画はこの時点でも年間シリーズ合計で140,000台が計画されていた。ちなみにDioの販売計画は年間200,000台だった。

1993年4月、タクトのデザインを一新、使い勝手の向上などにより6代目に。タクト、タクト・S、タクト・スタンドアップというラインナップという構成となった。若者向けのスポーティスクーターの役割は急速に人気を集めたディオにまかせて、タクトは“生活バイク”としての役割を強調する方向に向かうことになる。

1998年4月、フルモデルチェンジを受けて7代目に。従来のスポーティなイメージから一転、使い勝手に優れた装備やスムーズで力強い走りといった実用面での特長を前面に打ち出す戦略となった。デザインも従来のディオとよく似たスポーティなデザインから180度転換。実用性を意識したまったく新しい丸みを帯びたボディスタイルとなった。この7代目タクトは、リードシリーズに続き二輪車排出ガス規制および騒音規制にもいち早く適合している。販売計画台数は年間30,000台。

1999年1月、ベージュにパールをあしらったのボディの女性向け特別カラーモデル、タクトスプリングコレクションを発売。実質的にこのモデルの発売をもってタクトの歴史は一旦終了となる。

今回発売された新世代のタクトは、ホンダが原付スクーター市場の再活性化を目指すにあたって、原点に立ち返ると言うことで、あえて“名車”タクトの名称を復活させたものと説明されている。

新世代タクトのメカニズムの特長としては、Dunkに先行採用された「eSP(enhanced Smart Power)」水冷4ストローク単気筒OHC、50ccエンジンを、コンパクトなボディーサイズながらフラットで広いフロアスペースを持つ車体に搭載。Dunkよりも車両重量で約2kgの軽量化が図られたことにより、30km/h定地走行テスト値で80.0km/L、WMTCモード値で56.4km/Lの燃費性能を実現している。また、タクト・ベーシックを除くタクトではアイドリングストップシステムも採用している。このアイドリングストップシステムは、エンジン始動時にバッテリー電圧を検知しており、バッテリー電圧が低下している場合は、アイドリングストップ機能を停止し、バッテリー上がりを防止している。また、万が一バッテリーが上がってしまった場合でも、キックによりエンジンの始動が可能なシステムを採用している。
 

20150123_TACT_1b.jpg
タクト。カラーは3色。キャンディーノーブルレッド。
20150123_TACT_4b.jpg
タクト。パールジャスミンホワイト。
20150123_TACT_3b.jpg
タクト。ポセイドンブラックメタリック
20150123_TACT_Basic_1b.jpg
タクト・ベーシック。カラーは4色。デリケートブルーメタリック。
20150123_TACT_Basic_5b.jpg
タクト・ベーシック。フォースシルバーメタリック。
20150123_TACT_Basic_3b.jpg
タクト・ベーシック。マホガニーブラウンメタリック。
20150123_TACT_Basic_4b.jpg
タクト・ベーシック。ポセイドンブラックメタリック。

★HONDA プレスリリースより (2015年1月16日)

50ccの新型スクーター「タクト」を発売

Hondaは、取り回しやすい車体サイズに、力強い出力特性と優れた燃費性能を両立させた水冷・4ストロークエンジンを搭載した50cc新型スクーター「タクト」と、低シート高タイプの「タクト・ベーシック」を、それぞれ1月23日(金)に発売します。

タクトの開発にあたっては、幅広い層のお客様が手軽に扱え、力強く燃費性能に優れたエンジン搭載による高い機動性と経済性を備えた「ニュースタンダードスクーター」を目指しました。

スタイリングは、「安心感」をテーマに、シンプルかつ落ち着いたフォルムとしています。張りのある大きな曲面を基調に、厚みのある立体的なデザインによって、親しみやすいイメージとしています。

エンジンは、50ccスクーター「Dunk(ダンク)」用に新開発した水冷・4ストローク・OHC・単気筒50ccの「eSP(イーエスピー)※1」を搭載しています。燃費性能は、50ccスクータークラスで最も優れた※2 80km/L ※3(30km/h定地走行テスト値)を実現しています。

バリエーションは、タクトと、タクトをベースに15mm低いシート高による良好な足着き性確保と、よりお求めやすい価格を実現したタクト・ベーシックの2タイプを設定することで、幅広いお客様の好みに応えられるものとしています。

※1 enhanced(強化された、価値を高める)Smart(洗練された、精密で高感度な)Power(動力、エンジン)の略で、低燃費技術やACGスターターなどの先進技術を採用し、環境性能と動力性能を高めたスクーター用エンジンの総称です。
 ※2 Honda調べ。2015年1月16日現在。
 ※3 国土交通省届出値

●販売計画台数(国内・年間)
45,000台
 
●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
タクト 172,800円(消費税抜き本体価格 160,000円)
タクト・ベーシック 159,840円(消費税抜き本体価格 148,000円)
※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません。
=タクトシリーズの主な特長=
 
●スタイリング
幅広い層のお客様が安心感を抱くことが出来るように、張りのある美しい曲面で構成し、取り回しやすいコンパクトなイメージと安心感のあるフォルムを実現しています。
フロントビューは、丸みを帯びたヘッドライトにウインカーをビルトインすることで、スッキリとした印象を与えています。また、可動式の深い形状フロントフェンダーによって、落ち着きのあるスタイリングとしています。カラーバリエーションは、タクトに3種類、タクト・ベーシックに4種類を設定しています。
◎タクト
・キャンディーノーブルレッド・パールジャスミンホワイト・ポセイドンブラックメタリック
◎タクト・ベーシック
・デリケートブルーメタリック・マホガニーブラウンメタリック・フォースシルバーメタリック・ポセイドンブラックメタリック
●エンジン
Dunk用に新開発した水冷・4ストローク・OHC・単気筒50ccエンジンは、電子制御燃料噴射装置(PGM-FI※4)などの採用により、力強い出力特性を発揮しています。なお、Dunkに比べ車両重量を2kgの軽量化を図ったことで、30km/h定地走行テスト値で80.0km/L、WMTCモード値では56.4km/Lという優れた燃費性能を実現しています。アイドリングストップシステム※5には、エンジン始動時のバッテリー電圧を検知するシステムを採用し、バッテリー電圧が低下している場合は、アイドリングストップ機能を停止し、バッテリー上がりの抑止に貢献します。なお、バッテリーが上がった状態でも、キックにより始動可能なシステムを採用するなど、使い勝手に配慮した設計としています。
●車体・足回り
リラックスできるライディングポジションを実現するために、コンパクトなボディーサイズでありながら、フラットで広いスペースのフロアを採用しています。フロアのフラットな部分の前・後長は、最短部でも220mmを確保したことで、ゆとりのある足元スペースとしています。また、タクトのシート高は足着き性に配慮した720mmとしながら、シート下のラゲッジボックスは20Lの容量を確保しています。タクト・ベーシックは、さらに足着き性に重点を置き、705mmの低いシート高を採用し、ラゲッジボックスは19L※6 容量としています。ブレーキは、前・後連動のコンビブレーキを採用することで、コントローラブルで使い勝手の良いシステムとしています。
※6 Honda調べ
●主な装備
・シャッター付キーシリンダーと、シートオープナーボタンを装備した集中コンビスイッチ
・左側のフロントインナーラックには、500mlのペットボトルが入る容量を確保
・時計表示機能がある視認性に優れた大型のメーター
・買い物袋やバッグなどがかけられるリング状の大型フックを装備
・リアキャリアは、スタンド掛けの際に握りやすく使い勝手を考慮した設計
=タクトのネーミングについて=
 
タクトは、1980年に初代モデルを発売以来、原付スクータークラスにおいて、幅広い層のお客様に向けたスタンダードスクーターとして、さまざまな新技術を投入し、新たな需要創造に取り組んでまいりました。今回、原付スクーター市場の再活性化を目指すにあたり、原点に立ちかえりタクトのネーミングを復活させました。
 

★主要諸元

車名型式 JBH-AF75
タクト〈タクト・ベーシック〉
発売日 2015年1月23日
全長×全幅×全高(m) 1.675×0.670×1.035
軸距(m) 1.180
最低地上高(m) 0.105
シート高(m) 0.720〈0.705〉
車両重量(kg) 79〈78〉
乾燥重量(kg) -
乗車定員(人) 1
燃費消費率(km/L)※5 80.0(国交省届出値 定地燃費値 30km/h 1名乗車時)
56.4(WMTCモード値※6 クラス1 1名乗車時)
登坂能力(tanθ) -
最小回転小半径(m) 1.8
エンジン型式 AF74E
水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ
総排気量(cm3) 49
内径×行程(mm) 39.5×40.2
圧縮比 12.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 3.3[4.5]/8,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 4.1[0.42]/7,500
燃料供給装置形式 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI]
始動方式 セルフ式(キック併用)
点火方式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑油方式 圧送飛沫併用式
潤滑油容量(L) -
燃料タンク容量(L) 4.5
クラッチ形式 乾式多板シュー式自動遠心式
変速機形式 無段変速(Vマチック)
変速比 1速 2.850~0.860
キャスター(度) 26°30′
トレール(mm) 75
タイヤサイズ 80/100-10 46J
80/100-10 46J
ブレーキ形式 機械式リーディング・トレーリング
機械式リーディング・トレーリング
懸架方式 テレスコピック式
ユニットスイング式
フレーム形式 アンダーボーン

※5 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
 ※6 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます
 製造事業者/新大洲本田摩托有限公司 製造国/中国 輸入事業者/本田技研工業株式会社