20年以上の歴史を持つカワサキのロングセラー
誕生は1992年というから、すでに20年以上の歴史を誇るロングセラー、カワサキのエストレヤ。250ccという排気量から、ビギナーを中心に幅広いユーザーに親しまれているモデルである。特に”ネオ・クラシック”なスタイルは美的センスに敏感な女性からの評価が高く、扱い易いサイズや出力特性と相まってユーザーを増やしてきた。
その歴史の中で改良が重ねられ、熟成されていったエストレヤは昨年、モデルチェンジを行なった。セミダブルクレードルのフレーム、前18・後17インチタイヤ、空冷単気筒エンジンなど基本となる部分は不変。クラシカルな雰囲気による独特の佇まいもそのままに、各部のさらなるクオリティアップを果たしている。
そんな新型エストレヤに跨ってみると、まずは車体のコンパクト感、そして細身のシートも手伝って足つきの良さに驚く。なるほど、その安心感はビギナーや女性に大きな支持を得ているワケだ。
車両のキャラクター問わず、ハザード・スイッチを装備しているのがカワサキらしい。イグニッションキーのシリンダーには1970年代のバイクによく見られた、テールランプのみ点灯するパーキング・ポジションを装備。懐かしさを感じさせる、逆に今となっては新鮮なアイテムである。
現代のバイクだけに何も気を遣うこともなくセルスターターを押せば簡単にエンジンは始動する。キャブトンタイプのマフラーから発せられる、力強いエキゾーストサウンドが印象的だ。F.I.を採用するなど、2007年モデルで大きな変化がもたらされたエンジンは今回、セッティングに変更が施されているという。
Estrella。ライダーの身長は173cm。 |
新型エストレヤは早め早めのシフトアップで、3000~5000rpmの間でトロトロトロっと流すのがいい。軽二輪の上限とは言え250というキャパシティなので力に余裕があるワケではないが、より増強された低中速トルクによって、5速3000rpmからでも加速する粘り強さを備えている。
スロットル他、操作系は比較的重めなところもネオ・クラシックを狙ったものだろうか。と言っても女性には手に負えないというものではなく、良い意味での”手応えある操作感”と言える。
空冷フィンやバフ研磨されたクランクケースカバー、各所のクロームメッキ・パーツもオーナーの所有感を満たしてくれるだろう。シートは縦リブパッド入りとなり、豊かな表情に。質感、ツヤ感ともにイイ感じだ。ウインカーは球形状の大型になっているのも新型の特徴。前後に履くブリヂストンのACCOLADEも外観にマッチしたパターンと現代のテクノロジーを両立させたもので、安心感をもたらしてくれる。
注文をつけるとすれば、オプション扱いとなっているセンタースタンドを標準装備にしてほしいといったところ。エストレヤの佇まいは車体が直立しているほうが個人的には似合っているように思う。
旧き良き時代の”オートバイ然”としたスタイルとは対照的に、通勤・通学、街乗りからツーリングまで肩肘張らず乗ることができるのがエストレヤの魅力。ちょっと近所のコンビニまでの足とかにも積極的に使いたくなるカジュアルな感覚が備わっている。そんなところに、エストレヤのロングセラーの秘密が隠されているような気がする。
尚、今回試乗したのは2014年モデルだが、カワサキのイヤーモデル制により中味はそのままに、カラー&グラフィック変更が行なわれた2015年モデルが、スペシャルエディションを含め1月20日より発売される。
(高橋二朗)
■KAWASAKI ESTRELLA(BJ250A) 主要諸元 ●全長×全高×全幅:2,070×755×1,055mm、ホイールベース:1,410mm、最低地上高:170mm、シート高:735mm、車両重量:161kg、燃料タンク容量:13リットル●エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:66.0×73.0mm、圧縮比:9.0、最高出力:13kW(18PS)/7,500rpm、最大トルク:18N・m(1.8kgf-m)/5,500rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:フルトランジスタ式、始動方式:セルフ式、潤滑方式:ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式5段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:27°、トレール:96mm●サスペンション:前・φ39mmテレスコピック、後・スイングアーム●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・機械式リーディングトレーリング、タイヤ:前・90/90-18M/C 51P、後・110/90-17M/C 60P。 |
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