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第33回「最後のレース」

 第33回「最後のレース」

 2014年が終わるというのにまとめる気にもなれず・・・
 アジア最終戦が終わってからというもの、写真を見直したりリザルトをみる気になれずレポートがなかなか手に着かない日々。私が戦ったワケじゃないけど(言い訳)。

 ランキングトップで迎えた藤原克昭選手、選手生活においてシリーズ戦と決別する最後のレースで、その電撃発表はカタールに行く当日でした。大事な発表だったので、ホントにごく一部の関係者にしか知らせておらず、アジアの選手たちもホントに驚いていました。
 カタールでは沢山の日本人選手たちが「克ちゃんにチャンピオン獲ってほしいよね」とみんな応援してくれていました。アジアのパドックではみんな仲が良いのです。特に旧友の玉田選手は予選から克のことを凄く気にかけてくれ、休憩時間はよく2人で話をしていましたね。
「克にもう一度、頂点に立ってもらいたい」
 チーム関係者ならずとも沢山の人たちがそう思っていたのでした。


#37

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ミーティングは長く、最後のレースにかけるスタッフの気持ちが伝わってきました。 最後のグリッド、1分前。

 カタールのコースは、それはそれで難しく、藤原選手はプラクティスも予選もセットアップのためにピットインしての作業に時間をとられることになりました。直線も長く、ハードなブレーキングが要求されるコース、それに夜開催ということもあり、路面温度も低い。グリップしない中でバイクをコントロールするためには、結果的に人間が頑張らないといけない。スタッフもなんとか速く走らせようと頑張ったのですが・・。
 レースは厳しいものでした。思うように走らないところをプッシュしなければならず、藤原選手はレース1で身体を酷使してしまったのでした。
 3時間後には本当に最後のレース、それまでにこのパンパンに張った腕をなんとかしなきゃいけない。深刻な状況で一番大変だったのは本人に違いなく、疲れた身体を回復させるためにアイシングしてからのマッサージ。自分たちでできることを集中して行い身体の回復を願いました。


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 最後のグリッドでは同じレースを戦う選手、関係者たちが大勢挨拶にやってきました。レース2、結果は14位。藤原克昭選手の最後のレースが終わりました。
 12位と14位という成績に対して「へっぼい成績だけど、内容としてはベストを尽くしたし、体力的にも精神的にも、自分の限界を超えた感じがした」と、最後のレースについて話していました。そして、最終ラップは「泣きそうだった」とも。
 それと同時に、長年ファクトリーライダーとして、常に勝ちつづけていかなきゃいけない重圧から解放された安堵感も感じていたそうです。

 そもそも、今季は第2戦で転倒したときにチャンピオンは終わったと思っていたところにザムリの怪我があり、日本ラウンドではカワサキのホームコースのオートポリス、そして鈴鹿で優勝してランキングトップに立ったわけで、シーズン通しては表彰台に乗れないレースもあったし、一生懸命やってもどうにもならないこともありました。そのなかでいかにベストを尽くすかを常に考えトライし続けてきました。
 克は「ランキングトップって言ったって、レースなんて最後までわからん!」と常に言っていて、こういう結果になったけれど、結果以上の感動や、レースの楽しさを伝えてくれたのも事実です。


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無事に帰ってきました。克、お疲れさまでした。 ランキング表彰。チャンピオンはザクワン。克は3位だったけど、撮影は「でたもん勝ち」安堵の笑顔ですね、2位は伊藤勇樹。

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4年間戦ったZX-6R。沢山の思い出がつまったバイクです。 レース後、コースでみんなで記念写真。

 レースが終わって、片付けも終わりに差し掛かったころ。
 克昭の元に、4年間一緒に回った国旗が戻ってきました。アジア選手権のほぼ全員の選手のサインとメッセージとともに。
 最後のレースで使うかもしれず、レース後にこれだけのサインを集めてくれたのは大会オーガナイザーのロン。これをみた克、しばらく言葉にならず、涙がとまりませんでした。

 4年間のアジア選手権で通算18勝、そして、メーカーの枠を超えて沢山のライダーにいい刺激を与え、成長させてきました。

 藤原克昭選手は今後、全日本、アジアのコーチとしての活動が決まっています。

「アジア選手権の選手も、他のメーカーのバイクも速くなってきた。カワサキも、バイクも新しくしなきゃいけないし、ライダーも育てたい。これからアジアでも国内でも、やることがいっぱいで新しい挑戦にワクワクしている。」

「1秒前は過去」と3年前のカタールでも言っていました。レースが終わった瞬間から次の目標に向かって進む克の潔さ。今後の活動が楽しみです。



藤原選手

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