幻立喰・ソ

第53回「ソ・再構築」

 リストラ。上司から聞きたくない言葉ベスト3、上司が言いたくない言葉ベスト5、効率第一の経営者が好きな言葉ベスト10にノミネートされます(未確認)。
 一般的には「新製品が軒並み大ハズレで、わたしもついにリストラされました」というように、経営難による人員整理を意味する言葉として定着していますが、本来は再構築という意味のRestructuringを、日本人お得意の短縮化したものです。ゆえに「新製品が軒並み大ハズレしたことによる社内組織のリストラクチャリングによって解雇されました」というのが正しい使い方なのです。が、こんなことを言うと「やっぱりこいつバカだからリストラされたのね」と思われます。世の中正しいことがすべて正解ではありません。そこで、「こんな日本はダメだ」と世界に飛び出しても、リストラはバリバリの和製短縮語ですから、パソコンやチョベリバ、OL、MK5と同様に海外で使うと「What, that?」と露骨に呆れ顔をされます。曖昧なことをよしとする日本と異なり、外人は容赦がないのです。
 ただしMK5は、広末ファンの外人に通じるかも知れません。が、こちらが「マジキレる5秒前」の意味で使っていると、アンジャッシュのコントになってしまいますのでご注意を。

 

 と、年末のクソ忙しい時期でもちゃんと一通りよたったので本題に入ります。

 

 主に駅前などのリストラ(本来の意味の方)は、各地の自治体によって計画立案実行中です。ウィキ先生に尋ねるとこんなページがありました。どこのどなたがどのようにして調べたのか、まったくもって頭が下がります。
 駅前リストラ(一般的に使われている意味で)の対象となるのは、古くから商いを続けている個人商店。もちろん我々が愛して止まない地元密着型の2ちゃん(掲示版ではなく、とうちゃん+かあちゃんで営業)立喰・ソも対象です。
 再開発後はりっぱなビルが建ち、地べたで営業していたお店がテナントとなるのですが、衰退して疲れ切った地方都市の場合、味のある商店街をぶちこわしビルに集約しても、残念ながら元々がシャッター通りでは、人が集まるわけがありません。せっかく入ったテナントも櫛の歯が抜けるように(櫛の歯は折れるのではなく抜けるのですか?)撤退し、がら〜んとしたビルに残ったのは100円ショップとカラオケ屋さんと無駄に広い休憩スペースだけ。郊外にはどでかいAオンが出来て、ますます駅前は衰退していくのです。アベさん、たまには新幹線じゃない電車で地方に行ってください。

 


花霧

G
駅前の再開発と言えば、真っ先に思い出すのは、第34回でお伝えした花霧があった、北海道はT駅前のスマイルビル。スマイルどころか泣きたくなるがら〜ん状態です。(2013年4月撮影) 未訪問のGを探索すべくK王線Fちゅ〜駅前に降りてみたら、再開発事業で飲食店街がユンボの魔の手に……あああ、と思ったら、Gはすこし離れた高架下の仮店舗で元気に営業中でした。よかった、よかった。(2014年4月撮影)

 北海道は道央、かつては数多くの炭坑で栄えた空知地方の鉄道の要といえば、田中まーくんでおなじみの岩見沢。1975年12月14日、日本で最後に蒸気機関車の牽引する定期列車の終着駅となった岩見沢は、かつて北海道最大の機関車配置を誇る大きな2つの機関区や広大な貨車操車場があり、鉄道の町として栄えていました。しかし石炭産業の斜陽、貨物輸送のコンテナ化と輸送量の減少などにより、その機能は失われました。2000年に漏電で全焼しちゃった北海道らしい味のある駅舎は、洗練されたオシャレ駅舎に再建されましたが、地方都市のご多分に漏れずドーナツ化現象で駅前がらんとしています。
 そんな岩見沢駅の真正面、その名も駅前ビルという昭和テイストあふれる、おせじにも現代ではビルと呼べない建物の一角に第51回のNEWSでご紹介させていただいた、小もろそばがありました。


C57135

岩見沢駅
1975年に最後の定期旅客列車を牽引したC57の135号機、現在は大宮の鉄道博物館でぐるぐる回され余生を送っています。(2008年9月撮影)その前は交通博物館で9850形と並んでいました。9856は戦前からここにて、東京大空襲で投下された焼夷弾が当たって、「痛たいなぁ」とへこんだのではなく、ボイラーがへこんだそうです。(2004年4月撮影) 焼失した岩見沢駅は、2009年にどえらく立派に再建されいろいろな賞を受賞しました。パチパチ。が、残念ながら立喰・ソはありません。プレハブの仮駅時代はあったのに、オシャレな新駅に立喰・ソは似合わないということでしょうか、幻立喰・ソになりました。(2012年4月撮影)

 ちょっと怖そうなおやっさんと、ソ&ウはオール320円(私が初訪問した2012年)というたまらない価格設定(北海道ではたまにあります)と、実はゲソ丼発祥の地ではないかと言われた名店です。長野新幹線にフラれ、すっかり寂れてしまった信州地方のかつての大観光地と同名の立喰・ソ大チェーンと同じ読み方ですが(説明が回りくどい)、まったく関係ないそうです。
 駅前ではありますが、観光地ではないのでお客さんはほぼ地元のみなさんのみ。常連さんに愛される地元密着型店でしたが、駅前再開発で駅前ビルが取り壊しとなり、2014年2月16日をもって幻立喰・ソ入りしてしまいました。

 


小もろ

小もろ
そば、うどんはどれも320円均一。今ごろ気が付いたのは焼そばもあったということ。名物のげそ丼とやさい丼(かき揚げ丼)は食べましたが、焼そばは完全にノーマークでした。立喰・ソの焼そば大好きです。(2012年4月撮影) 意識することなく注文したわかめそば。特に珍しくないメニューでしたが、実はおやっさんこだわりの逸品で、三陸産のいいわかめが入荷する時期だけの限定メニューだったとかなかったとか。例によって未確認です。(2012年4月撮影)

 もともと別の場所で営業していたのですが、前回の再開発によって駅前ビルに移動してきたとか。ということは二度も駅前再開発に遭ってしまった、再開発難民指定を受けそうな立喰・ソです。怖そうなおっちゃんに話を聞く勇気も度胸も知恵もなかったので、いつものようにウラは取っていませんが、北海道新聞に載った話らしい(これも未確認)ので確度は高いと思います。
 前回は移転でしたが、今回は閉店。再開発による駅前ビルの解体による移転場所確保の問題だけでなく、個人経営立喰・ソ共通の問題である高齢化、跡継ぎ問題もあるようです。
 地元の方に愛された地元密着立喰・ソに対し、一見のよそ者が知ったかぶりをするのもはばかられますのでこのへんで(もちろんネタが尽きた言い訳)。「二度あることは三度ある」のことわざどおり、ぜひ復活していただき、焼そば食べさせてください。そして、この先何十年後かの再開発で再び移転する奇跡を見せていただきたいと切に願います。

 

 今年も駄コラムを読んでいただきありがとうございました。来年も駄文をだらだらだらだらだら書き続ける所存です。たとえ7おくえん手にしても。来年もどうぞ、よろしくお願いします。


岩見沢

岩見沢
駅前ビル!(2012年4月撮影) 駅前ビル?(2014年12月撮影)

*   *   *   *   *

●立喰・ソNEWS 2014 
前回お送りしたナポリタン問題ですが、今月も坂崎師匠からメールをいただきました。「ナポリタンを出す店は、とりあえず知らないのですが、“MとKのSフォニー”(メールではもちろん実名。これほど特徴的な名前の立喰・ソもめったにないので、イニシャルにする意味はほとんどありません。師匠ごひいきの名店です)の裏メニューに、ひもかわナポリタンというのがあります」とのこと。さすが師匠。ひもかわ+ナポリタンとはいかなるものなのか。なんとしても食べてみたいものですが、裏メニューって、一見さんでも食べられるのでしょうか。

と、その数日後、所用で降り立った武蔵野線のSM駅前に立喰・ソJがありました。へえ、こんなところにあったのですね。店頭に写真付きでいろいろお品書きが出ています。よくよく見ればケチャップに染まった物体が! あった! まったくの偶然のビンゴ。ただし店内のお品書きにはオムライス(そばorうどん小鉢 500円 以下同)、チャーハン、とんかつ、カレー、かつカレー、鶏唐揚、ミックスフライ、しょうが焼き、レディースセット、角煮丼、唐揚丼、しょうが焼き丼、中華丼、肉だんご丼の記述はあるもののナポリタンはなし。真相やいかに? 一番気になるのは、ナポリタンに小鉢そばは付くのか否かだったりますが。


J

J
店頭に出された看板をよくよく見ると! しかし、これだけ見ていると立喰・ソとは思えないラインナップです。(2014年12月撮影) 店内のおしながき。よくよく見れば「めし屋J」との表記が。えっ? ひょっとして立喰・ソではないの? 謎は深まるばかり。(2014年12月撮影)

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在600店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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