VFR800X 1,382,400円(12月12日)
★ホンダ VFR800X 車両解説
“クロスオーバーモデル”VFR800Xの国内仕様を発売開始
「VFR」の血統は、1986年4月に発売されたVFRシリーズ、VFR750F、VFR400R、VFR400Zに始まる。1982年のVFシリーズ、VF750SABRE、VF750MAGNA、そしてVF750Fの発売で’80年代のV4エンジン攻勢への口火を切ったホンダが、V4時代の隆盛を決定づけたのがVFRシリーズだった。その後、V型エンジンはレースでの活躍を背景に過激レプリカ時代へと発展していくのだが、それはまた別項にて。
ここでは、VFR(オーバー750)に関連するその後の流れを追ってみると、1998年4月にV型4気筒、781ccエンジンを搭載する「ホンダ VFR」が発売される。「’99年10月より国内で新たに導入される小型二輪自動車の排出ガス規制に適合する排出ガス浄化システムを採用したモデル」と説明されていた。ベースとなったのは世界各地のスーパーバイクレースで活躍していたRVF/RC45のエンジンだったが、スーパースポーツ(当時はレーサーレプリカと称された)とはまた別の、来たるべく新しい時代の要求を先取りするマシンの姿で登場した。
環境の時代の到来だ。VFRの排出ガス浄化システムの切り札として新開発されたのがPGM-FIシステム(電子制御燃料噴射装置)だった。このPGM-FIシステムは、専用にプログラムされたECU(エレクトロニックコントロールユニット)の働きによって、様々な運転状況に応じ理想的な空燃比の混合気を供給する事で、燃焼過程での有害物質の低減を図るというもの。そしてエキゾーストエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)も同時に採用し、エアを排気ポートに送り込み排出ガス中の未燃焼ガスHC、COを排気管内で再燃焼させるもので、HC、COの低減を図っていた。
これで分かるとおり、VFRは卓越した運動性能だけでなく、年々厳しくなっていく排出ガス規制に適合する環境性能も兼ね備えた大型ロードスポーツモデルとして2000年代を先取りするマシンだったのだ。その後、2000年1月に三元触媒システム“HEC3”(Honda Evolutional Catalyzing System 3)を採用するなどのマイナーチェンジを受け、さらなる環境時代のハイテクマシンとしての姿を印象づけている。
2002年1月、VFRはフルモデルチェンジを受ける。ホンダのV型4気筒エンジンでは初のバルブ制御システム“V4 VTEC”(Variable Timing & Lift Electronic Control System)エンジンを、基本骨格は引き継ぎながらも剛性の見直しなどが行われたアルミツインチューブフレームに搭載。PGM-FIの更なる熟成やイリジウムプラグの採用などとともに世界最高水準の環境性能を謳うモデルとして登場した。
2004年1月にはカウル類のエッジやシャープなラインを強調、またホイールカラーや車体ロゴも変更するなどのマナーチェンジ。車体色もイメージカラーとして引き継がれてきたイタリアンレッドからデジタルシルバーメタリックへと変更。
2006年2月には、ABSを標準装備するとともにリアサスにプリロードアジャスターを装備。新色のパールコスミックブラックも追加している。カラーといえば、2006年12月にトリコロールイメージのカラーリングを施された「VFR・スペシャル」が限定200台で発売されている。その後、国内での“ハイテクのショールームマシン”の重責は、2010年3月に発売されたVFR1200Fにバトンタッチしていた。
2014年4月、VFR800Fは2006年発売のモデルをベースに大幅にアップトゥデートしたモデルへと生まれ変わった。熟成を図ったエンジンを新デザインのカウル類を備えた車体に搭載。最大の変更点は、リアフレームを従来のスチール製からアルミ製へと変更したことだろう。さらにスイングアーム、フロントフォーク、ホイールなども新設計。エンジンサイドに配置していたユニークなラジエーターも一般的な前面配置へ、マフラーも従来のセンター2本出しを右1本出しとするなど、ほぼフルモデルチェンジといえる変更が行われている。
クロスオーバー・スタイルのVFR800Xだが、国内では2011年の8月にM-TECがヨーロッパで好評を博していたVFR800X Crossrunnerを輸入開始したのをご記憶の方も多いだろう。当時は無限のカスタマイズパーツ類を装着して、名称も「VFR800X MUGEN」としてコンプリート販売された。販売計画台数は200台で、価格は1,291,500円とお買い得だった。クルマの世界ではメーカー公認のコンプリート・カスタマイズ・モデルはおなじみの手法だが、二輪の世界でもこういったカタチのスペシャル・バージョン、チューナー・ブランド車の先駆けでもあった。
今回は、ホンダ自らがVFR800Xの国内仕様を発売する。車体・足回りは、ロードスポーツモデルの「VFR800F」に対して、前・後サスペンションのストローク量を増加。また、オフ走行時の性能の向上を図って最低地上高を30mm高い165mmに設定。シート高を標準仕様より20mm低く設定できる機構を設けるなど、取り回しやすさも考慮している。ブレーキは、ABSを標準装備。
エンジンは、低・中回転域で力強い出力特性を発揮する4ストロークV型4気筒DOHC4バルブで、回転数によって稼働するバルブ数を切り替える「HYPER VTEC」も採用。ツーリングに便利なETC車載器とグリップヒーター、メインスタンドを標準装備している。
★HONDA プレスリリースより (2014年12月5日)
アドベンチャースタイルの「VFR800X」を新発売
Hondaは、水冷・4ストローク・DOHC・V型4気筒800ccエンジンを搭載したアドベンチャースタイルの「VFR800X」※1を12月12日(金)に発売します。
VFR800Xは、Hondaのクロスオーバーコンセプト※2に基づいて、市街地走行から長距離ツーリングまで、余裕を持って操る楽しみと快適な走行を徹底的に追求しています。自由度の高いアップライトなライディングポジションや、ライダーが後輪の駆動力を必要に応じて任意に選択できる「Hondaセレクタブル トルク コントロール」などの採用によって、幅広いシチュエーションでコントロールしやすく、また楽しく走行できることを目指しました。
スタイリングコンセプトは、冒険心をかき立て、所有する喜びを感じさせる「タフさと洗練の融合」として、軽快なプロポーションと存在感を演出しています。
車体・足回りは、ロードスポーツモデルの「VFR800F」に対して、前・後サスペンションのストローク量を増加させています。また、最低地上高を30mm高い165mmに設定。シート高を標準仕様より20mm低く設定できる機構を設けるなど、取り回しやすさも考慮しています。ブレーキは、ABSを標準装備しています。
エンジンは、低・中回転域で力強い出力特性を発揮する4ストローク・DOHC・V型4気筒で、回転数によって稼働するバルブ数を切り替える「HYPER VTEC」を採用しています。
装備は、ツーリングに便利なETC車載器とグリップヒーター、メインスタンドを標準装備するなどして、利便性を高めた仕様としています。
※1 受注生産車。「Honda二輪ETC標準装備車取扱店」で販売します。使用するにあたり、セットアップ、セットアップ費用、および決済用のETCカードが必要となります
※2 Hondaの二輪車開発の新たな方向性で、「異なる価値を高次元で融合させる」思想
- ●販売計画台数(国内・年間)
- 200台
- ●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
- 1,382,400円(消費税抜き本体価格 1,280,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- =VFR800Fの主な特長=
- ●スタイリング
- ロードスポーツ、ツアラー、オフロードの異なるコンセプトを融合させたクロスオーバースタイルに、合理的で美しい機能部品と、洗練されたミニマムボディーを組み合わせ、軽快なプロポーションを実現しています。クロスオーバーコンセプト共通のキャラクターとして、ヘッドライト下部にフロントスポイラーを採用。また、シャープなデザインのLEDヘッドライトとウインカー、VFRシリーズ共通のX型キャラクターをエクステンション(リフレクターの延長部)で構成するなど、精悍なフロントビューとしています。さらに、テールランプとストップランプ、そしてリアウインカーにもLEDを採用し、軽快なリアビューとしています。
- カラーリングは、VFRシリーズのイメージを継承したキャンディーアルカディアンレッドと、立体感を強調したクールなイメージのパールグレアホワイトの2色を設定しています。
- ●車体・足回り
- フレームは、剛性に優れ軽量化を図ったVFR800Fのアルミツインチューブを継承しています。スイングアームも同様に、片持ち式のプロアームを採用し、高速巡航時の安心感とワインディング走行時における軽快感を両立したハンドリングを実現しました。幅広いシチュエーションでの走破性を高めるために、フロントクッションストロークは145mmに、リアアクスルトラベルを148mmに設定するとともに、165mmの最低地上高を確保しています。アップライトなライディングポジションと683mmの幅広いハンドルなどにより、リラックスしながら開放的な走りを楽しむことができます。
- 前・後ホイールには、VFR800Fと同様にアルミダイキャストホイールを採用。フロントには、ファインダイキャスト製法の中空ホイールを採用しています。正面から見てスポークが斜めにリムへ接する形状にすることで、直進時の路面振動をしなやかに受け止め、コーナリング時には高い剛性感を発揮。乗り心地の良さとコーナリング時の安定感に寄与しています。
- ライディングポジションは、ライダーの好みや体格に合わせて、シート高を2段階に調節できる機構を採用しています。車載工具を使用することで、シート高を標準の835mmから20mm低い815mmに変更可能です。
- ●エンジン
- 「VFR800Fと同様に、低・中回転域から高回転域まで力強い出力特性を持つ排気量781cm3の水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・V型4気筒を搭載。特に、低・中回転域での力強いフィーリングを発揮させています。また、エンジン回転数に応じて稼働するバルブ数を切り換える独創のバルブ制御機構HYPER VTECを継承。低・中回転域では、1気筒あたり2つのバルブが稼働し、高速巡航時の燃費性能に貢献しながら、力強いトルクとリニアなレスポンスを実現する一方、高回転域では4つのバルブが稼働し、V型4気筒エンジンならではの力強いフィーリングが味わえます。
- 排気システムには、軽量化と効率化を追求した一本出しのマフラーを採用しています。
- ●制御系
- 「VFR1200X Dual Clutch Transemission」に採用しているHondaセレクタブルトルクコントロールを搭載。このシステムは、ライダーが必要に応じて任意に後輪への駆動力のレベル(2レベル+オフ)を選択できます。レベル設定「オン」の状態では、走行中に前・後輪の回転差を感知し、算出したスリップ率がライダーの選択した所定レベル以上となった場合に、燃料噴射の最適なコントロールを図ってエンジントルクを最適化することで後輪駆動力を抑制し、ライダーがイメージした走行に寄与します。
- ●その他の装備
- ・ギアポジション表示と燃費計、グリップヒーター表示、時計などを備えたメーター
- ・ウインカーオートキャンセラー
- ・シフトペダル操作のみでシフトアップができるクイックシフターをオプションとして設定
★主要諸元
車名型式 | EBL-RC80 | |
---|---|---|
VFR800X | ||
発売日 | 2014年12月12日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.190×0.870×1.360 | |
軸距(m) | 1.475 | |
最低地上高(m) | 0.165 | |
シート高(m) | 0.835/0.815 | |
車両重量(kg) | 244 | |
乾燥重量(kg) | - | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 27.4(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時) | |
18.9(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※2 | ||
登坂能力(tanθ) | - | |
最小回転小半径(m) | 2.8 | |
エンジン型式 | RC79E | |
水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 781 | |
内径×行程(mm) | 72.0×48.0 | |
圧縮比 | 11.8 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 78[105]/10,250 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 75[7.6]/8,500 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式 | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | - | |
燃料タンク容量(L) | 20 | |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.846 |
2速 | 2.062 | |
3速 | 1.578 | |
4速 | 1.291 | |
5速 | 1.111 | |
6速 | 0.965 | |
減速比1次/2次 | 1.939×2.687 | |
キャスター(度) | 26°30′ | |
トレール(mm) | 103 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70R17M/C 58V |
後 | 180/55R17M/C 73V | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム式(プロリンク、プロアーム) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド(アルミツインチューブ) |
※1 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。