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ヤマハ

スポーツライディングがライフスタイル、
そんな人のために妥協の無い造りとスペック。

 スポーツライディングは走る瞬間、一秒ごとの積み重ね。それを楽しむライダーにとって、マシンの操作に対する反応や、それによって生まれた挙動が意志どおりに決まったときの歓びは大きいもの。WRはそれを楽しむために作られたモデルである。

 WRの紹介はまずその心臓であるエンジンから始めたい。水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒、77.0mm×53.6mmというショートストローク型エンジンは、圧縮比11.8:1。燃料はハイオクを要求する。最大出力と最大トルクは23kW(31PS)/10000rpm、24Nm(2.4kg-f/m)/8000rpm(R、Xともに共通)。

 このエンジンには、メッキシリンダーの採用をはじめ軽量強固な鍛造ピストン、冷却効率を高めるピストンクーラーといった高性能維持装置とも呼べるアイテムが採用されている。カロリー源である混合気を吸い込む吸気ポートは、ストレート形状として、低中速回転のトルク特性をそのまま高回転まで維持するような仕上げになっている。

 またレーサーYZ系を思わせるアルミフレームもWRの大きな特徴だ。商品性もさることながら、ハードな使い方にもしっかり応える剛性バランスと重量のバランス、なによりYZ系のノウハウを詰め込むという点から欠かせない物だったにちがいない。ステアリングヘッドから左右に分かれたメインチューブ形状は、エンジンが採用するストレートポート形状の上におぶさるように配置されたスロットルボディーや吸気系のスペース確保にも貢献するというレイアウト上の優位も忘れてはならない。

 アクセルを開けて行くと、中回転域からスムーズさを増し、パンチのある高回転に向けてエンジンは伸びてゆく。4ストロークらしくフラットなトルク特性。しかししっかり伸びて行く力を操るののは快感だ。WRの魅力はこうしたバイクとの意思疎通が潤沢にできる。スポーツバイクの魅力が詰まっているのだ。

 フレームのメインボディーは鋳造アルミと鍛造アルミを組み合わせたもの。そしてリアサブレーム、エンジンハンガーの3部構成からなっている。

 サスペンションはフロントにφ46 mm径のインナーチューブを持つ倒立フォーク、リアにはリンク式のモノクロスサスを装備。フロントは伸び側、圧側それぞれの減衰圧調整ダイヤルを備え、リアショックユニットには、伸・圧の減衰圧調整に加え、スプリングのイニシャルプリロード調整も可能になる。そのストロークはRが前後270mm、Xは前270mm、後265mmと専用のチューニングが成されている。またタイヤはRが前80/100-21 、後120/80-18。本格的なエンデューロ用タイヤにもアクセスの良いホイールサイズだ。Xは前110/70R17、後140/70R17というロード用ラジアルを履いている。

 ブレーキもRが前φ250mm径、後がφ230mm径のウェーブディスク、Xでは前φ298mm径、リアφ230径のウェーブディスクを採用。オンオフでの使用状況を見据え共用することなく専用パーツをおごる。

WR250R。ライダーの身長は183cm。
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天性があふれ出すダート性能。
WR250Rのトンガリ度を知る。

 WR250Rは跨がるだけでその本気度が解る。オフロードで必要となるグランドクリアランス(300mm)を確保し、サスペンションストロークも長い。前後にライダーがスムーズに移動しやすいようデザインされたシートは細身で動きやすさを重視したものだ。ラジエターも細身でライダーがバイクとコンタクトする膝周りのスムーズさが印象的。2007年のデビューから時間は経つが、基本をしっかりと抑えたデザインは古くならない。シート高は895mmと高いが、細身のボディーと足をストンと下ろせる車体構成のため、足を真っ直ぐ下ろせるから意外と悪くない。

 始動性はインジェクションを備えたエンジンらしく良好。暖まったところで少し吹かしてみると、吹き上がりの良さ、そしてパワフルな音に昂ぶる。それでいてこのエンジンは取っつきやすい。ストリートモデルらしく発進もスムーズ、普通の速度で扱いやすい。二重丸をあげてもいい。高性能だからといって低回転域が扱いにくかったり、力が出てくる中回転域でギクシャクするようでは興ざめだ。

 アクセルを開けて行くと、中回転域からスムーズさを増し、パンチのある高回転に向けてエンジンは伸びてゆく。4ストロークらしいフラットなトルク感も快感だ。WRの魅力はこうしたバイクとの意思疎通が潤沢にできるところに詰まっている。

 WRの足周りはフロントに対し、リアがハードな印象だ。ゴツゴツするという意味ではなく、リアの踏ん張り感が強い。二人乗りや高速道路なども想定したセッティングだからなのだが、一人乗りで郊外の舗装路を流すような場面では相対的に良く動くフロント周りとのバランスで、なかなかのハンドリングを見せてくれる。

 ブレーキのタッチはやや硬めな印象だが、レバーを引き寄せる力に合わせて解りやすくコントロールできるタイプだ。オフのコンペモデルのようにエンジン側に追い込まれたWRのリアブレーキペダルもカッコ良いディテールだ。おそらく初めてオフ車に乗る人にはあれ?と思うかもしれないが、WRらしい使われ方で機能を追求した結果なのだ。

 右に、左に舗装路を切り取るように走り、ストロークは長いが前後への挙動をしっかりと抑えながら走る術を使って楽しめば、相当なポテンシャルを持っている。がっちりしたフレームは走りの上質さを伝えてくる。

 ダートの道に入ってみた。砂利、岩盤など固い路面のダートでは、舗装路で感じた硬めのサスをもう少しソフトにふりたいと思った。路面が変わった瞬時にそう思わせるのも、WRが極めて良く出来たバイクである証拠だろう。しかし馴れてくるとそのサスに荷重を乗せて路面を掴ませてやると、簡単にペースアップ出来ることも解った。走りを楽しむためのバイクだ。

 こうした路面でのトラクションを確保した上でスポーティーな吹き上がりを堪能させてくれるエンジンはやっぱり魅力的だ。回転計がないので解らないが、イメージでは4500rpm~8000rpmぐらいをキープして走ると、WRが持っている性能と自分の乗り方がシンクロするようだった。例えば林道を飛び出し、オフロードコースに入ったとしても、まだその上に2000rpmプラスのスイートゾーンを持っているWR。このバイクの発表が行われたSUGOのモトクロスコースでもしっかりと走ってくれた記憶がある。いや、性能を使い切ることが出来ないほど潜在能力は高かった。

 トラックデイに自走してゆけばトランポの要らないモトクロッサーとしても楽しめるバイクなのだ。

 アフターマーケットのマフラーやハンドルバー、ガード類を装備すれば、さらに性能は高くなるだろう。そうなると海外の輸入モデルとコスト的に近くなる、と見るむきもあるが、ストリートリーガルのWRはそれに近いポテンシャルを持っている逸材、と読むのが正しいようだ。

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2007年の11月に発売開始されたWR250R。以来、イヤーモデルとしてカラー&グラフィック変更を繰り返してきただけで、基本的なメカニズムに変更は無い。現行モデルは、2014年9月にWR250Xとは別に単独でカラーチェンジを受けたもので、イメージカラーといえるディープパープリッシュブルーソリッドカラー車では、タンク側面のシュラウド周りに新グラフィックを採用、リアフェンダーのカラーを車体色と同一としている。もう1色のラインナップ、パープリッシュホワイトソリッド1は、2013年8月にカラーチェンジを受けて登場したモデルが継続販売されている。
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■YAMAHA WR250R(JBK-DG15J) 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,190×810×1,235mm、ホイールベース:1,425mm、最低地上高:300mm、シート高:895mm、車両重量:132kg、燃料タンク容量:7.6リットル●エンジン種類:G363E、水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:77.0×53.6mm、圧縮比:11.8、最高出力:23kW(31PS)/10,000rpm、最大トルク:24N・m(2.4kgf-m)/8,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:TCI(トランジスタ式)、始動方式:セルフ式、潤滑方式:強制圧送ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:27°20′、トレール:113mm●サスペンション:前・テレスコピック、後・スイングアーム(リンク式)●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・80/100-21M/C 51P、後・120/80-18M/C 62P。


しっかりとロードチューン。
WR250Xも最強モタードバイクとしてオススメだ。

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 街中を走るだけならヤマハにはXT250Xというセローベースのモタード系モデルもある。が、WR250R同様、この性能を突き詰めたパッケージだからこそ楽しめる世界がある。スポーツしながらバイクとの対話を楽しむ。その意味でXもR同様、250だからこんなもの、という妥協はどこにも感じられなかった。

 乗り味はこうだ。僅かに全長を短くしたリアショックとスプリングレートまできっちり仕立てられたXはしっかりとしたハンドリングの手応えを持っていた。オフ車に17インチの小径フロントを付けると、前輪が切れ込むような挙動を見せるが、Xにそんな兆候はない。それでいてモタードらしい軽快な乗り味を持っている。

 ツーリングペースで流していても、WRのエンジンは気持ち良い回転域を使うように促してくる。低回転からドコドコドコと身を震わせるようなずぼらな走り方をWRは好まない。シフト操作をし、エンジンを気持ち良い回転域に留めトルクを引き出す。それがスポーツバイクとの付き合いかたなのだろう。もちろん、それは扱い難いという意味ではなく、道によって異なる速度と走り方のチューニングを、ライダーが最適になるよう合わせるというもの。走る時間の充実感が高い。

 サスペンションは減衰がRより強めに掛かっているようだ。ラジアルタイヤを採用するだけにタイヤ全体が路面を掴むような接地感がある。身軽にしてこのしっとり感。直進から旋回に入る瞬間もそうだ。前後のブレーキも舗装路向けの味付けで、グリップの上がったタイヤを活かすよう、初期のタッチから減速の立ち上がり感がしっかりと伝わるよう合わせこまれている。ブレーキング時のフロントサスの特性は絶妙で、ピッチングの起こり方をレバーの握り方で調整がしやすいのだ。だからリア荷重のすっぽ抜け感も少ないし、安心感も高い。

 また、ちょっとペースを上げても、250というキャパシティーが開ける歓びを合わせて乗り手に楽しませる。足りなくて右手を捻るのではなく、余裕のあるパワーを使いつつ右手を大きく開けて主体的にそれをコントロールする。250でこれが出来るのはさすがだ。


クローズドコースを攻めてみたくなる仕上がり。

 R同様Xもスポーツするために全性能を解き放ちたくなるバイクだった。クローズドコースでこのエンジンを全開にし、ロードバイクを追いかけ回したら……。意地悪かもしれないがニタニタ想像してしまうのだ。1キロ程度のショートコースなら相当に楽しめるはずだ。そうした領域で楽しめる250。今見渡してもWR250は最有力候補であり続けている。なるほど、Rのコピー、オフロードのR1というヤマハの意気込みは、このXにもそっくりそのまま受け継がれている。

(松井 勉)

WR250X。ライダーの身長は183cm。
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「オフロードのR1レプリカ」として発売されたWR250Rの兄弟車。モタードルックを纏ったWR250Xも基本的にはWR250Rと歩調を合わせてカラー&グラフィックの変更で今日まで来ている。現行モデルは2013年8月にカラー&グラフィックの変更を受けたモデルで、この時のマイナーチェンジでは、フロントフォークエンド部と前後ホイールハブがブラック塗装とされた。
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■YAMAHA WR250X(JBK-DG15J) 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,125×810×1,190mm、ホイールベース:1,435mm、最低地上高:260mm、シート高:870mm、車両重量:134kg、燃料タンク容量:7.6リットル●エンジン種類:G363E、水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:77.0×53.6mm、圧縮比:11.8、最高出力:23kW(31PS)/10,000rpm、最大トルク:24N・m(2.4kgf-m)/8,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:TCI(トランジスタ式)、始動方式:セルフ式、潤滑方式:強制圧送ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:27°20′、トレール:113mm●サスペンション:前・テレスコピック、後・スイングアーム(リンク式)●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・110/70R17M/C 54H、後・140/70R17M/C 66H。


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