バイク用としては世界的に見ても珍しい水冷水平対向4気筒999ccエンジンをシャフトで駆動し、ホイールベース1545mm,低重心の大柄な車体に搭載したゴールドウイングGL1000は、1974年秋、アメリカのラスベガスのディーラーミーティングでベールを脱いだ。
最新かつ革新的なメカニズムのニューモデルは、大きな話題となったが、当初CBのような大ヒットには結びつかなかった。開発時はライバルと考えていなかったZ1だが、ユーザー視点で見れば対抗馬に見えたようで、その対抗馬がZ1より大きく重く、1.5倍近い価格差では無理からぬ話だったのかもしれない。そしてなによりグランドツアラーーという概念がまだ一般的ではなかった。
GL1000の本来の素性はすばらしいものであった。水冷水平対向4気筒エンジンは長距離巡航においても静かで扱いやすく、また耐久性、信頼性も高く、大柄で低重心の車体による安定した快適な長距離クルージングのすばらしさは、アメリカの風土に最適であり、評判はじわじわと浸透していった。また、カウルやケースといったアフターマーケットパーツも次第に充実し、グランドツアラーー人気の高まりは、即GLの人気に結びついた。
残念ながら日本は上限750cc自主規制時代であり、ごく一部に逆輸入車が見られた幻の高嶺の花であった。
1980年よりツアラー指向を高めるため、排気量をアップしたGL1100が登場。ただ単に排気量をアップしただけでなく、ホイールベースの延長、トルク重視へセッティング変更、シートスペースの拡大などによりロングツアラーを指向したリファインが加えられたことは言うまでもない。さらに大型のカウル、スクリーン、エアサスなど、今日のグランドツアラーーの定番装備を取り入れたインターステイト(GL1100DX)が加わった。生産も狭山工場からHMA(ホンダ・オブ・アメリカ・マニファクチャリング)に移管され、以後GLはアメリカで生産される、まさに地産地消のバイクとなった。
圧倒的といえる好評を持って受け入れられたインターステイトは、1982年にエアコンプレッサー内蔵、カセット付オートチューナー2バンドオーディオシステム、アンチノーズダイブ機構などを追加したGL1100アスペンケイドを追加、1984年にはさらに排気量を拡大したGL1200へとどんどん進化し、GLシリーズが切り拓いた新たなるグランドツアラーー市場へ、他メーカーも次々と参入を開始した。
1982年スズキは シャフトドライブのスポーツモデルGS1100GベースのGS1100GKを、翌年カワサキはZ1300をベースにし、フューエルインジェクション、エアサス装備のZ1300ボエジャーを、ヤマハも意欲的に新設計水冷V4エンジンを搭載したXVZ12TDを投入する。