発売開始40周年記念特別企画 ライバルを圧倒した黄金のブランド GL大全 1975〜2014

HONDA

1975年に発売が開始されたGL1000。グランドツアラーーという新ジャンルを開拓し、市場の拡大と共に、1100、1200、1500、1800と自らも正常進化を続けてきた、40年の歴史を振り返る。

 1968年に登場したCB750FOURは、高性能にして高品質、しかも低価格を武器に、外国車勢を時代遅れの旧型車へと追いやった。
 その次なる一手として、CBを上回る次期フラッグシップの開発が開始されたのは1972年の秋だった。

 天下を獲ったCBであったが、1972年に強力なライバル、DOHC903ccのZ1が登場し急追し始めた。しかし次期フラッグシップの第一のコンセプトは、直接的なZ1の対抗馬というよりも、すべてのバイクの頂点に立つという、高い目標が掲げられ、その結果、今までにはない新しいジャンル、グランドツアラーーが誕生した。

 バイク用としては世界的に見ても珍しい水冷水平対向4気筒999ccエンジンをシャフトで駆動し、ホイールベース1545mm,低重心の大柄な車体に搭載したゴールドウイングGL1000は、1974年秋、アメリカのラスベガスのディーラーミーティングでベールを脱いだ。

 最新かつ革新的なメカニズムのニューモデルは、大きな話題となったが、当初CBのような大ヒットには結びつかなかった。開発時はライバルと考えていなかったZ1だが、ユーザー視点で見れば対抗馬に見えたようで、その対抗馬がZ1より大きく重く、1.5倍近い価格差では無理からぬ話だったのかもしれない。そしてなによりグランドツアラーーという概念がまだ一般的ではなかった。

 GL1000の本来の素性はすばらしいものであった。水冷水平対向4気筒エンジンは長距離巡航においても静かで扱いやすく、また耐久性、信頼性も高く、大柄で低重心の車体による安定した快適な長距離クルージングのすばらしさは、アメリカの風土に最適であり、評判はじわじわと浸透していった。また、カウルやケースといったアフターマーケットパーツも次第に充実し、グランドツアラーー人気の高まりは、即GLの人気に結びついた。
 残念ながら日本は上限750cc自主規制時代であり、ごく一部に逆輸入車が見られた幻の高嶺の花であった。

 1980年よりツアラー指向を高めるため、排気量をアップしたGL1100が登場。ただ単に排気量をアップしただけでなく、ホイールベースの延長、トルク重視へセッティング変更、シートスペースの拡大などによりロングツアラーを指向したリファインが加えられたことは言うまでもない。さらに大型のカウル、スクリーン、エアサスなど、今日のグランドツアラーーの定番装備を取り入れたインターステイト(GL1100DX)が加わった。生産も狭山工場からHMA(ホンダ・オブ・アメリカ・マニファクチャリング)に移管され、以後GLはアメリカで生産される、まさに地産地消のバイクとなった。

 圧倒的といえる好評を持って受け入れられたインターステイトは、1982年にエアコンプレッサー内蔵、カセット付オートチューナー2バンドオーディオシステム、アンチノーズダイブ機構などを追加したGL1100アスペンケイドを追加、1984年にはさらに排気量を拡大したGL1200へとどんどん進化し、GLシリーズが切り拓いた新たなるグランドツアラーー市場へ、他メーカーも次々と参入を開始した。

 1982年スズキは シャフトドライブのスポーツモデルGS1100GベースのGS1100GKを、翌年カワサキはZ1300をベースにし、フューエルインジェクション、エアサス装備のZ1300ボエジャーを、ヤマハも意欲的に新設計水冷V4エンジンを搭載したXVZ12TDを投入する。


1974GL1000
1974年、ラスベガスで行なわれたホンダディーラーミーティングで発表されたGL1000は大きな衝撃を呼んだ。

1976GL1000
水冷水平対向4気筒エンジンにシャフトドライブ駆動。ミッションに装着された発電機がドライブシャフトと逆回転することで、シャフトドライブ特有のクセを軽減。

1976GL1000
1976年のカタログ。シリンダヘッドカバーに輝くのは、高品質、低価格の証「MADE IN JAPAN」の刻印。1980年からは北米生産となりこの刻印も消える。

 高性能と高い信頼性、そしてかゆいところに手が届く豪華装備と相まって、北米から欧州へとブームは広がりをみせ、国産グランドツアラーは全盛時代へと向かっていった。

GL1000 1975

GL1000 1975
1975 GL1000 キャンディブルーグリーン キャンディアンタレスレッド

1975年に発売が開始された初代モデル。タンク部分はダミーで左右に電装、冷却水のリザーバータンクなどが配置されており、中央部分は小物入れになっている。小物入れの下には、エアクリーナーボックスと4つのキャブレターが配置されている。本来の燃料タンクはシート下に設置されている。初期型の車体色はキャンディアンタレスレッドとキャンディブルーグリーン。

●エンジン︰水冷水平対向4気筒SOHC2バルブ●総排気量(内径×行程)︰999cc(72×61.4mm)●最高出力︰80ps/7500rpm●最大トルク︰8.0kg-m/6500rpm
●圧縮比︰9.2︰1●変速機:5速リターン●全長×全幅×全高︰2305×875×1225mm●軸距離︰1545mm●乾燥重量︰265kg●燃料タンク容量︰19ℓ●タイヤ前・後︰3.50H-19・4.50H-17A●発売当時価格:輸出車 ※特記がない場合以外諸元は北米仕様



GL1000 1976

GL1000 1976
1976 GL1000 サーフイエロー ●撮影ー依田 麗

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

GL1000 1976

1976年型はメーターパネルの色がダークグリーンから明るめのライトグリーンになり、車体色はブルーに代わって鮮やかなサーフイエローが登場した。キャンディアンタレスレッドはタンクライン下部のグラフィックを小変更して継続された。また、アメリカの建国200周年を記念し、ゴールドリム、専用シート、クロームラジエターシュラウド、特製エンブレムなどを装着したキャンディブラウンの限定車(台数は不明)、GL1000LTDも発売された。なお、1977年型まではエマージェンシー用としてキックペダルがダミータンク内に装備されており、ミッションケース後部のゴムキャップ(写真下段右)を外して装着すればキックでの始動も可能だった。写真はホンダコレクションホールの保存車。


GL1000 1976

GL1000 1976
1976 GL1000 キャンディアンタレスレッド

1976 GL1000LTD キャンディブラウン



GL1000 1977

GL1000 1976

スポークホイールの最終型となる1977型では、ハンドル位置が高くなり、GL1000LTDと同タイプの段付きシートの採用、エキパイもブラック塗装からオールメッキに、メーターパネルは黒になるなどの改良が行なわれた。車体色はキャンディアトランティスレッド、キャンディシリウスブルー、ブラックの3色。

1977 GL1000 ブラック
●エンジン︰水冷水平対向4気筒SOHC2バルブ●総排気量(内径×行程)︰999cc(72×61.4mm)●最高出力︰80ps/7500rpm●最大トルク︰8.0kg-m/6500rpm
●圧縮比︰9.2︰1●変速機:5速リターン●全長×全幅×全高︰2305×920×1265mm
●軸距離︰1545mm●乾燥重量︰270kg●燃料タンク容量︰19ℓ●タイヤ前・後︰3.50H-19・4.50H-17A●発売当時価格:輸出車



GL1000 1978

GL1000 1978
1978 GL1000 ブラック 

1978年型からはコムスターホイール、2段階減衰力調整機能付きのFVQリアサスを採用し、キャブレターはφ32mmから1mm小径化され出力特性をより低中速重視に変更した。ダミータンク、サイドカバー、マフラーなどのデザインも変更され、フタが前ヒンジから後ろヒンジとなり、タンク上に水温、燃料、電圧の3連メーターが設置された。リアウインカー位置もフェンダー上に移設された。車体色はリミテッドマルーン、グランディアブルー、ブラックの3色。GL1000の最終型となる翌79年型はダミータンクカバー上部に合皮カバーが付き、ウインカー、テールランプがCBXと同タイプとなり、ブレーキ、クラッチレバーが黒色に変更されている。

●エンジン︰水冷水平対向4気筒SOHC2バルブ●総排気量(内径×行程)︰999cc(72×61.4mm)●最高出力︰-ps/-rpm●最大トルク︰-kg-m/-rpm
●圧縮比︰9.2︰1●変速機:5速リターン●全長×全幅×全高︰2320×920×1265[1255]mm
●軸距離︰1545mm●乾燥重量︰273[274])kg●燃料タンク容量︰19ℓ●タイヤ前・後︰3.50H-19・4.50H-17A●発売当時価格:輸出車 ※[]は1979年型。

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