「公道レース」から生まれたタイヤ。
メッツラーがリリースするプレミアムラジアルセグメントには、スポーツツーリング向けのロードテックシリーズ、レースユースでの性能を追求したレーステックシリーズ、そしてスーパースポーツモデルや、スポーツライディングをこよなく愛するライダーに向け高性能を追求したスポルテックシリーズがある。今回、リポートするのは、スポルテックシリーズの最新モデル、スポルテックM7RRである。
新製品プレゼンテーションとテストは千葉にある袖ヶ浦フォレストレースウエイにて行われた。冒頭、メッツラーブランドを日本に展開するピレリジャパンのディレクター、ジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニさんは次のように述べた。
「メッツラーは高性能を安心して楽しむためにその性能を磨いてきています。ツーリングタイヤ、ロードテックZ8Mが持つ驚くべきウエット性能やハンドリング性能、今年、鈴鹿4耐でもボデュームフィニッシュを飾ったレーステックの存在などは皆さんにもお馴染みです。
また、メッツラータイヤはマン島TTなどに代表される公道レース、つまりロードレーシングの世界で長く活躍を続けています。また、公道を使ったアルスターグランプリでタイトルスポンサーを務めると同時に、サーキットとは違い、道路条件がより厳しい公道レースからのフィードバックを用いて作られたのがスポルテックM7RRなのです。お気づきの通り、RRはロードレースを意味しています。今日はその実力をどうぞお楽しみ下さい。」
ポンツォーニさんがちょっと申し訳なさそうにそう言ったのは、その日の袖ヶ浦は雨が降ったりやんだりの状況だったからだ。いつも僕らが走る公道で晴れ、雨は当たり前だし、風に舞った落ち葉や、道路に落ちた砂や小石、マンホールや道路のペイントも珍しくない。今日は道路脇にある壁や電柱などがひしめくことはないだけマシだ。が、今日のコンディションでサーキットを走るのは十分に「嫌な」コンディションだ。
しかし、以前、メッツラータイヤのテスト部隊がベースとしている地中海に浮かぶ島シシリアを訪れ、彼らがどんな場所でどんな実走テストをして製品作りに反映しているのか、を取材をした。その700キロに及ぶ様々な公道テストを体験した記憶からすると、コントーニさんの「雨は申し訳無いけど楽しんで!」という表情に「まんざらじゃないな、これは」と直感的に思えたのもまた事実。
(詳しくはメッツラーのシシリー島でのタイヤテストイベント「Metzeler Heroes」イベント報告ページへ
目指したのは一般道性能最高!
メッツラータイヤの開発哲学を要約すると「様々な状況下で確実に性能を発揮し、道路状況という外因により突然起きる予期しない状況にも確実に対応できるタイヤ」それこそライダーが信頼をおき、安全にライディングを楽しむために必要なこと、という基本思想だ。このM7RRもそんな思想のもと開発された。
一般道では遭遇する、舗装の荒れ、デコボコ、補修痕、ホコリなどでの汚れ、滑りやすい白線等々、天候、気温によっても路面状況は変化する。ライダーはその場面によっては緊張し、コントロールに硬さが出る。バイクはそんなメンタルな乗り物だ。だからこそ、オールマイティーなグリップと安心のハンドリング性能はスポーツライディングを楽しむには必須アイテムとなる。
メッツラーが一般道での走行テストを重視する所以である。さらにスポーツタイヤとしての性能を高めるべく、いわゆる公道レースへの参戦も積極的に行っている。マン島TT、NORTH WEST 200等公道レース活動を通し、そこで得た公道最速技術を投入して作られた公道用スポーツタイヤ、それがスポルテックM7RRなのだ。
哲学をカタチにする
4つの技術要素。
スポルテックM7RRのレシピを解説しよう。
1:プロファイル
外径を従来モデルのスポルテックM5に対し、5%大径化。これは直立時からバイクを寝かせて行く時の機敏性、ライディングの自在感を狙ったもの。また、大径化効果によりセンター部分よりも旋回時に路面と接地する面積を広く取るようにデザインされている。従来モデルM5と比べ、サイドウォールも3mm高くすることで、旋回時にパワーを掛けたときトレッド面が「つぶれ」やすい構造としている。このたわむように路面を掴むことでさらにグリップ力を上げ、旋回脱出加速を高めつつ、接地感ある乗り味を狙った。また、バンク中間域からフルバンクまでの移行をよりスムーズでスピーディーに行えるようにデザインされている。
2:内部構造の最適化
タイヤ内部構造であるカーカス。言わばタイヤの骨格のようなものだ。カーカスには走行時に遠心力でタイヤが膨張しないようにするための強さ、路面をしなやかに捕らえる柔軟性が求められる。このタイヤではレーヨンをラバーコーティングするカタチでカーカスを構成している。スポルテックM7RRではカーカスに使われるレーヨン繊維に従来よりも綿密度の高いものを使うことで、レーヨンの数を従来モデル比20%削減した。これによりカーカス全体でのラバーの割合を増加させることで、強さとゴムによる柔軟性の双方を得ている。また、カーカスの外側を取り巻くスチールベルトを最初に採用したのがメッツラーである。こうした構造が、タイヤ全体で路面を掴む技術の源泉となっているのだ。
外径の大きい新プロファイル。SPORTEC M7 RRは、直立状態からの素早いバンクと、ラインを変える際の自由度の高いハンドリングを実現するために、外径の大きい新プロファイルを採用した。 | 内部構造の最適化。カーカスに線密度が高く引っ張り強度の高いレーヨンを採用することで、遠心力によるタイヤの変形を抑制している。 | シーランド比をM5と比較し、路面の水をかき分ける役割の大部分を担っているフロントでは12.6%から14.7%へ高め、リアでは12.6%から11.1%へと減少させてウェットパフォーマンスの向上とグリップ力の拡大を図っている。 |
トレッドのグルーブデザイン。
直進時にタイヤが路面と当たる部分にはスリックパートを設け、接地面の拡大によるグリップと耐摩耗性を向上させた。センターから僅かに寝かしたパートにある溝にはブリッジを設け、トレッド面の「動き」を抑制。大パワーを確実に路面へと伝えるようにデザインされている。また、バンク初期の不安を減らすよう、深い溝として排水性を向上させている。これによりウエット時の接地感の向上を図っている。
バンク角のミドルからフルバンクエリアまでに接地するトレッドには、深さと幅がリーンするほどに変化する溝を配置。ミドル域では細く深い溝からバンクが進むにつれて溝は浅く、広くなる。まるで川の上流と下流のようだ。これは、排水性能のための溝面積確保と、深くリーンした時、溝を広く浅くすることでトレッドの動きを抑制。安心感ある接地性を生み出すためのもの。
また、溝とトレッド面の割合を示す「シー/ランド比」を従来モデル、スポルテックM5インタラクトとスポルテックM7RRで比較すると、前輪で12.6%→14.7%と溝の面積が増え、後輪では逆に12.6%→11.1%へと減少させている。2輪の場合、フロントタイヤが路面の水幕を切り、後輪が水幕の切れた路面をトレースするためだという。同時にドライ時の接地面を増やし、ドライグリップの向上、トレッドの剛性を高める目的も持っている。
コンパウンドにも新展開。
現在、スポーツツーリングタイヤを軸に含有飽和料100%のシリカを含んだトレッド材の採用が増えている。しかし、スポーツ向けのタイヤでは例を見なかった。今回スポルテックM7RRでは下図のように、100%シリカ配合コンパウンドを、フロントタイヤ全体に。対するリアトレッドは3ゾーンとしている。駆動力の掛かるトレッド中央部にはシリカ70%含有のコンパウンドを、左右、コーナリングに接地する多くのエリアに100%シリカのコンパウンドを採用。これにより、低温時やウエット時に強く、センターはライフとグリップをバランスさえたトレッドとしている。
従来、シリカ含有量を増やすと熱ダレをおこす、とされていた。メッツラーでは製造時にトレッドゴムの製法を最適化することでスーパースポーツタイヤにも採用されることになった。また、トレッド面はシリカ70%のラバーを全面に敷き、サイドのシリカ100%のラバーを重ねるような構造をとっている。これはシリカ70%のラバーが持つ腰の強さをベースにすることで、コーナリング中のしっかり感を持たせるのが目的で、同時にシリカ100%ラバーが動きすぎ、熱だれするのを抑える役目ももっているようだ。
ドライ路面でのグリップはもちろん、スポーツライディングを楽しんでいる時に予期せぬウェット路面や汚れた路面に出合っても高い安全マージンを持って対応できるようレインタイヤ並みの排水性、コーナリング字の安定性の全てを満たすグルーブデザインを追求している。 | フロントタイヤは、100%シリカ配合コンパウンドを採用(黄色で示された部分)。従来のシリカ配合コンパウンドが苦手としていた路面温度が高い状況においても、安定して性能を発揮する。 | リアはセンター部とショルダー部でコンパウンドのシリカ含有量を変えている。黒で示された左右のショルダー部では100%シリカ配合コンパウンドを採用し、ウェットでの優れたグリップと素早いウォームアップを実現する。また、シリカ70%のトレッドゴム(黄色で示された部分)をトレッド全体の基礎として使うのが特徴。 |
見るからに尖ったタイヤ。
今回、ドゥカティ・ムルティストラーダ1200SにスポルテックM7RRを装着した。交換作業は東京、世田谷にあるタイヤショップ、speed☆star(http://speedstar.jp/)にお願いした。ショップに届いていたタイヤを手際よい作業で交換を進めるスタッフ。最初に交換したリアタイヤ(190/55ZR17)を組み終えたとき、その尖ったスタイルがとても印象的だった。トレッドセンターを頂点とするなら、そこからサイドに掛けての稜線が直線的に見える。まるで三角断面のような姿に見えるのだ。続く前輪もトップが高く、サイドの面積が広いハイグリップタイヤらしいフェイスに勇ましさを感じる。
作業を終え世田谷の道に走り出す。想定としては交差点一発目からクイックな旋回性を見せるに違いない、と思った。予想は半分あたり、半分は外れた。つまりこうだった。曲がろうとしてアクションを起こす、すると直進から前輪に舵が当たるまでの時間は確かに速い。しかし、そこからバイクが寝てゆく速度、つまりロールする動きはクイックさの中にスローモーションのように把握しやすい印象がある。ノーマルのスコーピオントレールと比較すると身のこなしは軽いのだが、安心感はしっかりあるということなのだ。
一般道での印象は速度がやや高い首都高に入っても同様だった。60~70キロの流れに合わせ、カントの着いたカーブが続く首都高環状線を走っても、スポーティーなのだが、曲がり過ぎ感や、退屈なほど簡単に曲がる、という手応えの無さもない。速度なりに走る、曲がる、減速する、の充足感がある。ムルティストラーダのリアタイヤサイズは、今や200馬力近いパワーを持つ1000㏄クラスのスーパーバイクが採用するサイズだけに、もっと固く、これしきの速度ではまともにエンジンが掛からないのか、と思ったが、日常速度域から「特別扱い」をする必要はなかった。
高速道路での移動も安心の直進安定性、車線変更時などもツーリングレベルに求められる安心感を十分にクリアしている。高速道路の出口ランプなど、ループ状に深く回り込むカーブを走った時、ナチュラルなハンドリングで、グリップ感や接地感を云々する言葉を持ち出すまでもなく、すんなり寝て、意のままに走る姿を味わえた。
コンフォート性に関してはロングツアラー的性格を持つスタンダードタイヤとの比較では、路面の継ぎ目、アスファルトのざらつき感は素直に伝えてくる。サーキットテストを経ていくぶんマイルドさを増したが、硬めという印象だ。その性能を求めるならば、メッツラーにはロードテックZ8Mインタラクトというスポーツツーリングタイヤをお薦めする。
サーキットにて。
テストセッションのあったその日、袖ヶ浦フォレストレースウエイは微妙なコンディションだった。試乗には自車での走行はもちろん、ホンダCBR400R、CB400SF、CBR600RR、CB1300SB、ヤマハMT-09、スズキGSX-R1000、カワサキZX10R、BMW S1000RRなどがM7RRを履いて待っていた。
走行一本目、雨こそふっていないが、路面はフルウエット。見た目は霧でしっとりと濡れたような嫌な濡れ方だ。
ムルティストラーダの空気圧はフロント2.4、リア2.8というメーカー規定値同等である。何度も走ったコースだが、交換後、街中と高速道路を走っただけなのでサイドはまだ新品エリアも残っているだけに、ゆっくり寝かし、ゆっくり開けるを心がけた。そうした状況をブレークスルーしてくれたのはブレーキング時の安定感とグリップ力だった。ブレーキング初期からレバーやペダルをグゥーと力を込めた時、路面のつかみ方、減速感の立ち上がりの安心感が高く恐くない。次第にペースは上がり、コーナーへのアプローチにブレーキングを残すようになる。その時、ブレーキレバーの力を調整しながらバイクを寝かし、進入ラインにのったところでブレーキをゆっくりリリースする、ということになるのだが、リリースした瞬間、起き上がろうとしていたバイクが一瞬スっと寝る素振りを示すのが普通だ。M7RRは減速旋回から加速旋回への移行がとても滑らかでウエットでもグラつくことがない。そして、旋回初期から脱出にいたるまでグリップ感が豊富。しかもハンドリングが解りやすい。それはベタっと張り付くような粘着感のあるものではなく、まるでドライ路面を普通に走っているような印象で走れてしまうのだ。
ここに至るまで約10分。さらにペースが上がる。袖ヶ浦の4コーナーを立ち上がり、直線的な登りから長い左カーブへとアプローチする。晴れていれば荷重をかけてグワっと曲がれるが、路面が濡れているとそうもいかない(と言うかびびっちゃう)。パーシャルで寝ている時間が長い。そんなトラクションを載せている、という実感が薄いまま走る間も、グリップ感とタイヤが生む旋回性の良さで走りの実感が豊富。時間を追うごとに走るのが楽しくなる。こうして最初の30分間は終わった。疲労感ナシ。ヘルメットの中で顔が笑い出す。
2本目は雨の中だった。降り方は次第に強くなり路面は一本目より明らかに濡れてきた。でも不安はない。シリカ100%のトレッドを採用したスポーツツーリングタイヤ同様、しっかりグリップ感がある。また溝がサイドまでしっかり回り込んでいるため、しっかりとサイドと呼べるエリアまでバイクを寝かす事が出来る。雨なりに走りながらブレーキングポイント、狙ったラインに載せること、そして立ち上がり、次のコーナーへと加速する、という仕事に集中できる。
ウエットながらペースは上がり、4コーナーを立ち上がり、例の長い左カーブに加速しながら切り返すタイミングなど、アップライトなムルティストラーダではフロントの荷重が少なく、一瞬フラっとするほどペースも上がってきた。
トラクションコントロール、ABSも装着するバイクだが、よほどラフに扱わない限り、それらのやっかいになる事もない。それだけ安心感がある、ということだ。
スーパースポーツモデルではより自在感が楽しめた!
CBR600RRに乗り換えコースにでた。状況はウエットだが、タイヤへの信頼感はすでに確認済みなので程なくペースを上げる。前傾姿勢で自然とフロントに荷重が載るポジションだけに、加速しながら切り返す場所でもフロントの接地感はばっちり。ムルティではふらっときたメインストレート裏の左ロングコーナーでもっとトルクを掛けたいほどグリップ感、旋回力を引き出したいと、というほどどん欲になる。その辺、国内仕様のCBRだと少しだけ物足りなく感じるほど濡れた路面で余裕があった。
ピットレーンでS1000RRに乗り換えた。トルク、パワーともに一気にスペックアップ。それでも乗り味は同様、安心感の上でバイクを走らせる楽しさを追求できる。雨だぜ、今! と我ながら驚くが、タイヤに投入された技術は額面通りの性能を発揮しているようだ。さすがにフルバンクまで行かないが、性能は高い。エッジ部分のスリック状になったエリアに達すると、ゆったりとスライドして限界が近い事を知らせてくれる。以前にテストしたスポーツ系タイヤよりもこのグラデーションがスムーズ。とにかく上機嫌のままラップを重ねることができた。
ZX-10Rでも堪能できた。時間を追うごとに天候は回復し、雨が止みコースはライン上が乾く箇所も多くなってきた。高速コーナーとなる2コーナーあたりもバイクの持ち味とタイヤの持ち味双方を感じ取れる。多少ウエットパッチを踏んでもニュルっとくる程度で印象は穏やかで解りやすい。だから恐くない。これはいい。次第にドライパートが増え、膝をすらないように膝を持ち上げる程になってきた。ドライが顔を出しそこでアクセルを全開にするような場面でもしっかりとしたグリップ感、カーブへのアプローチから立ち上がりまでのブレーキング、加速への移行も雨で経験したとおりスムーズ。とにかく走り続けたくなるタイヤなのだ。
ミドル級にもこの足を。
スポルテックM7RRのようなハイグリップスポーツタイヤの試乗会にしては見慣れないバイク達が試乗車として用意されているのが気になった。NC700S、CBR400R(輸出向けはCBR500R)といったミドルクラスモデルである。聞けばヨーロッパでもこのセグメントの需要は高くリアタイヤの150、160サイズの性能出しも入念に行われた。リア同様フロントの120/70ZR17というサイズも適合機種が広く、スーパーバイクからミドルクラスネイキッドまでバランスの良さを見つけるのに苦労があったという。このあたりにシミュレーターテストはもちろん、実走テストでの走り込みが生きているのだろう。
実際、NCもCBR400Rもサーキット走行初体験だったのでノーマルとの比較とは言えないが、NCは7000回転弱でカットオフになるエンジン特性さえ気をつければかなり楽しめる。意外とスポーティーな走りを楽しめることに驚く。またCBR400Rのほうはタイヤのグリップも余裕タップリ。むしろスポーツ走行デビューは開けられるだけにバイクの良い面を引き出しやすく意外な一面を楽しめた。
こうしたセグメントのライダーならずとも「ウエット、グリップは最新のものでよいだろうけど、ライフはどうよ?」という問いかけが聞こえてきそうだ。あえて日本ではスーパースポーツタイヤにとってのライフを前に出さないようだが、本国サイトのM7RRの紹介ではM5との比較でライフは20%アップ、と記載されている。タイヤの耐久性は乗り方と使い方(積載をするなど)によって変動するが、性能とライフを伸ばしているあたりにも、公道レースからのフィードバックがあるのだ、と感じている。しばらくムルティでライフについて見て行くので、また機会があったら報告したい。
結論として。
スポルテックM7RRを路面温度の高い夏にサーキットで試すことは出来なかったが、開発コンセプト通り、どんな路面でもスポーティーに楽しめるタイヤであることが実感できた。YouTubeで見るマン島TTやアルスターグランプリなど、公道レースの映像はものすごい。あのような状況でライダーがどんなタイヤを求めているのか。高みに登って技術要素を磨いたことのリアリティーを感じたし、タイヤを交換することで違う世界が開ける事も実感した。
タイヤテストをする度に思う。最新のタイヤは新しいパソコンやスマホ同様、ストレスをより少なく、楽しさをより広げたものが多い。中でも今回、雨のサーキットを楽しめた度でいえば、まさしく自己新更新だった。
ただ、今回サーキットの中だけでテストをしたCB1300SBではグリップは全く不満はないものの、バイクの持ち味と旋回性がベストマッチとは思えなかった例もある。リーン初期からミドル域までを多用する一般道ではまた別の印象になったのでは、と想像するが、サスペンションなどを積極的にアジャストする必用を感じることもあるだろう。
総じてタイヤがもたらす幸せを考えればM7RRは相当に楽しめるタイヤだった、と言えるのである。
(文:松井 勉)
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