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ヤマハ

 道の連載コラムでも書いた奥湯河原~大観山までの県道75号線、椿ライン。ここ数年、仕事でもプライベートでも箱根方面に足を向けることが減っていて、椿ラインもご無沙汰だった。いっちょ、今話題と人気を集めているヤマハのニューミドルツイン=MT-07で久々にツバキを走ってみようか…。当日、久しぶりに空は晴れ渡った。朝、東京の空には雲ひとつ浮かんでいなかった。こんなお天気は何日ぶりだ? 2週間ぶりかな…。

 椿ラインの入り口がある奥湯河原まで、東名高速~小田原厚木道路~R135~真鶴道路とつないでゆく。第三京浜~横浜新道~R1~西湘バイパス~R135~真鶴道路というルートもある。約40年前、定時制高校のバイク仲間と初めて走りに出かけたときも、その後も、後者を選ぶことが多かった。ついでいに言うと、真鶴道路ではなく、もっと山寄りの根府川駅近くを通るタイトなワインディングを通って湯河原手前のR135に出て奥湯河原に、というコースも時々選択した。そういえばそのミカン畑の中を通るワインディングの途中にはトライアルを楽しめる施設もあったっけ(名前は忘れた)。

 R135から右に折れて奥湯河原に向かうは道は何本かあるが、湯河原市街をパスできる一番奥の川沿いがベストだ。交通量が少なくスムーズに通過できる。奥湯河原まで行ってT字路を直進すれば有料の湯河原パークウエイで、右に曲がると椿ラインだ(小さな標識がある)。入り口から中盤過ぎまで低中速のタイトコーナーが連続する。1km弱上ったあたりに左のヘアピンがある。70年代後半、W1S、650RS(W3)、CB750Four(K2)に乗る仲間と一緒に登った時、W3の奴が曲がり切れずにブレーキを強くかけすぎて転倒。幸い怪我はしなかったがチェンジペダルが折れ、湯河原の街までそれを持って行って工場で溶接して直してもらった。そのコーナーに行くとそれを思い出す。

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ライダーの身長170cm、体重64kg。コンパクトで馴染みやすい乗車姿勢で、両足もほぼべったり接地する。

 昔はTX500やGS750でよく走った。GSはちょっと大きく重かったが、TXは軽快でコーナリング性能に長け、速く、気持ちよく駆け上がることができた。そんなTXを思い出させる同じツインのMT-07はとにかく車体が軽量コンパクトで、乗車感はちょっと大柄な250並みだ。掌の内にある感覚で、振り回せる(ハンドル切れ角も大きく、取りまわしが軽くて小回りが利く点も嬉しい。Uターンもとてもやりやすい)。ライポジもコンパクトだが窮屈さはなく、またがってすぐに馴染める。ハンドルの幅や高さはちょうどよく、上体は緩く前傾する。街乗りでもマッチするがワインディングでもフィットして具合がいい。

 今は季節外れで鮮やかな赤い花弁は目に出来ないが、濃緑色の葉を付けた椿の木が並ぶ区間もある(だから椿ライン)。80年代に入ってからも箱根・伊豆へのツーリングといえば、椿ラインをルートに組み入れることが多く、ソロの時も10人前後のマスツーリングの時もコーナリングを楽しんだ。バイク人気が最高潮だった80年代前半、椿ラインには俗にいう走り屋たち(当時はローリング族と呼ばれた)が大勢詰めかけ、短区間の往復を繰り返していた。いくつかのコーナーは駐車スペースもあり、数10台のバイクが集まり、コーナリングを競ったり、見物したり。あの頃は各地にそんな峠、コーナーがあった。

 今や往時の雰囲気はない。それでも数台のバイクとすれ違う。少数ながら今でも椿ラインを走りに来るライダーはいるのだ。MT-07で快調に走る。700cc弱の水冷並列ツインは270度位相クランクを採用しているだけあって低中回転域はトコトコとパルス感が心地よく、トルクも充分でツインにしては粘りもある。気になる振動がないのもいい。だからゆっくり走ってもストレスがない。というか気持ちよく走れる。もちろん、回せば回したで面白い。5000回転前後からトルクがグワッと立ち上がり、加速力が増して、1万回転から始まるレッドゾーン入り口まで力強く吹け上がる。速さも充分。ただ、力の増幅は比較的フラットな印象で、兄貴分のMT-09以上にトルク/パワーバンドをキープしやすい。

 とても出来のいいエンジンだ。シフトタッチにキレがあればより楽しいかなと思う。コーナーアプローチでの倒し込みは素直かつ軽やかだし、ハンドリングは軽快そのもので切り返しも素早い。右に左にタイトコーナーが続く椿ラインのような道はMT-07の得意とするところだ。ABS装備のブレーキは前後ともに効き具合がわかりやすく、入力を増した分だけ効力が高まる。コントローラブルで使いやすい。絶対的な制動力にも不満は感じない。前後サスもよく動いていい仕事をしてくれる。ただ、個人的な好みでいくとサスペンションに注文を付けたくなる。特にフロントはもっとダンパーを効かせて、動きが少ない方がいい。

 加減速時のピッチングモーションが大きめで、フロントブレーキをかけたときのフォークの沈み込みが深い。ブレーキをかけずシフトダウンしただけでもフロントが少し沈み込んで落ち着かない。調整はリヤのプリロードだけなので、オイルやスプリングでリセッティングすればもっと走りやすくなると思う。兄貴分のMT-07と比較してコストを抑えていることがうかがえる。でも値段を考えれば納得で、大きな不満ではなく受け入れられる範ちゅうだ。

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車体は軽量コンパクトで自在に操れる感覚で乗れ、低中速コーナーが続く道もじつに楽しく走れる。

 約3分の2ほど上って行くと、左のヘアピンコーナーが現れる。カントがついているが勾配がややきつく、クリアするのが結構難しい。コーナーの外側=右には駐車スペースがあって、その奥にトイレがあり、さらに奥に入って行ける道が続く。椿台と呼ばれるポイントだ。ここもかつては往復するライダーとそれを見物するギャラリーで賑わった。見晴らしがよく、相模湾越しに熱海の初島が可愛い姿を見せ、その向こうに伊豆大島、遠く御蔵島も望見できる。仲間とツーリングしたとき、ここで一服し、写真を撮ったこともあった。

 椿台を過ぎてしばらく進むと、相変わらずコーナーが連続するのだが時折短い直線も現れる。登り切ったところが大観山だ。レストハウスを取り巻くように広い駐車場があり、シーズンの休日ともなれば訪れる観光客のクルマやバイクでいっぱいになる。かつてバイク最隆盛期の頃は250からリッターバイクまで様々なモデルが100台以上並ぶことも珍しくなかった。今は昔…。だが、今回も10人前後のライダーが駐車場で休憩し、芦ノ湖や駒ヶ岳など、箱根の眺望を楽しんでいた(富士の峰は雲に隠れて見えず残念)。

 MT-07でスポーティなコーナリングを満喫し、大観山の駐車場に着いたとき「ツバキはやっぱ面白れえ!」と思った。

(文:野口眞一)

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椿ラインはほとんどがブラインドコーナーだ。絶対センターラインをはみ出さないよう、要注意!
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路面が少し荒れ気味のところもあるが問題ないレベルだ。 大観山からの眺めは抜群で芦ノ湖もきれいに見渡せる。
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左右非対称リアアームを採用したリンク式モノクロスサスペンションは、ショックユニットをクランクケースに締結。ショック荷重を受け止める構造物がフレーム側に不要で、良好なフレームバランスを支え、軽量化にも貢献している。 重心位置や軸間距離・リアアーム位置などのディメンションを、エンジン特性に合わせ最適化した“軽量・スリム・コンパクト”な新型フレームを採用。しなやかな乗り味とコントロール性を実現。ライダーの操作とマシンの動きが連動し心地よい走行フィーリングが楽しめる。 ブレーキは、フロントに282mm径フローティングタイプのウェーブディスクをダブルで装備。対向4ピストンキャリパーを採用。リアは、ウェーブディスクをシングルで装備。
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最新ネイキッドのスタンダードといえる低い位置に構えたヘッドライトポジションを採用。マルチリフレクター式ヘッドライトだ。テールはLEDを採用。 ビジュアル表示のマルチファンクションメーター。小型フル液晶を採用し、エンジンの回転数のバー表示を多用する4,000~8,000回転のトルクバンド表示面を幅広くとり発生トルクのボリューム感を強調している。ギアポジション表示、ECOインジケーターも装備。 デザインコンセプトは“クールアーバンスポーツ”。車体上部は“人とマシンの融合美”を、車体下部は“走り”の機能美として、パワーユニットの粘り強いトルク感を表現する“ダブルデッキ・ストラクチャー”を採用しているという。
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●MT-07〈MT-07A〉主要諸元

■全長×全幅×全高:2,085×745×1,090mm■ホイールベース:1,400mm●最低地上高:140mm■シート高:805mm■車両重量:179〈182〉kg■燃料タンク容量:13L■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量:689cm3■ボア×ストローク:80.0×68.5mm■圧縮比:11.5■燃料供給装置:フューエルインジェクション■点火方式:TCI(トランジスタ)式■始動方式:セルフ式■最高出力:54kw[73.4PS]/9,000rpm■最大トルク:68N・m[6.9kgf]/6,500rpm■変速機形式:常時噛合式6速リターン■ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク×油圧式シングルディスク■タイヤ(前×後):120/70ZR17 M/C 58W × 180/55ZR17M/C 73W■懸架方式(前×後):テレスコピック × スイングアーム(リンク式)■フレーム:ダイヤモンド
※〈 〉内はMT-07Aのデータ
■車体色:マットグレーメタリック3(マットグレー)、ブルーイッシュホワイトカクテル1(ホワイト)、ビビッドレッドカクテル1(レッド)
■メーカー希望小売価格:MT-09 699,840円(本体価格648,000円、消費税51,840円)、MT-09A(ABS 搭載モデル)749,520円(本体価格694,000円、消費税55,520円)、8月20日発売。


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