こちらの動画が見られない方、もっと大きな画面で見たい方は、YOUTUBEのサイトで直接どうぞ。「http://youtu.be/TqW2QEsBnKQ」」 | VTR Type LD。1982年登場以来のホンダ伝統の250Vツインスポーツ、VTシリーズの流れをくむVTRが発売開始されたのは1998年1月。VT系の90度Vツインエンジンをトラス構造のダイヤモンドタイプフレームに搭載する“新感覚のネイキッドスポーツ”として登場している。Type LDは、このVTRシリーズに加わった「ローダウン」シート仕様。 |
新型VTRはシリーズ全車がグリップ力と剛性に優れる
ラジアルタイヤを採用
VTRが発表されたのは1997年11月(発売は1998年1月)だから、もう15年以上前のこと。VTRがこれだけ長く愛され作り続けてこれたのは、他にはない個性を持っているから。それは、250クラスのロードスポーツモデルとして、今や唯一となったVツインエンジンを搭載しているということ。’80年代前半のVT250Fから考えるとホンダ250Vツインの歴史はかなりのもので、スポーティーさ、乗りやすさ、燃費、鼓動感などバランスが良く、その完成度で高い評価を得てきた。
2007年に一度生産が終わったけれど、2009年にPGM-FI化され復活。そして、今回、また手が加えられ、新型となって登場した。見た目、デザイン的には大きく変わらない。しかし大きなトピックは2つある。前後タイヤがバイアスからラジアル化されたこと。そしてType LDが加わったことだ。LDはローダウンの略で、その通り車体が通常モデルより低く、足つき性を向上させたもの。そのLDに早速試乗してきた。
前後ラジアルタイヤ化で、リアタイヤのサイズが140/70 17から140/60 R17になっているので、これだけでタイヤの外径は小さくなっている。その分全部を低くすることに使ったかというと、そうではなく、通常のモデルは、下がったリアのサスペンションを延長してリセットしている。だから下がった分全部とはいかないが、高さを取り戻してシート高は760mmから5mm低いだけの755mm。LDはそれをベースに、フロントフォークのバネレートとストロークを変更して自由長を短く、リアはプリロードを変え、シート高は740mmと15mm低い。ちなみに最低地上高では10mm低くなっている。
もともと足つき性が良かったVTRのさらにLDだから、身長170cmで、短めの足でもクルーザーかと思うくらい両の足裏がベタベタと地面に届いて、膝に余裕がある。個人的にはここまで低い必要はまったくないけれど、ビギナーや小柄な人にとって、“足つき”は車種選びにおいて非常に重要な項目。それでも、それを優先して走りがおろそかになったら本末転倒である。
VTR Type LD。ライダーの身長は170cm。シート高は740mmに低められている(ノーマルのVTRのシート高は755mm)。スタイリングは、機能美を追求し、シンプルでありながらネイキッドロードスポーツとしてのスポーティー感をさらに高めたデザインとした2009年モデルを継承。 |
今回のモデルチェンジは、VTRの存在感を高める、
小さいようで、実は“大きい変化”
実際に並べて比べたワケではなく、感覚的なものだけど、スロットルを開けて出てくる排気音がより乾いた音になったような気がすると思いながら、Vツインエンジンの回転数を上げて走ってみた。ラジアル化の恩恵はペースを上げると顕著に出てきた。フルブレーキング時の安定感、フロントタイヤのグリップ感のつかみ易さ。減速からの進入、倒し込んで方向を変え加速、という一連の動作にメリハリが出て操作しやすい。それだけでなく、当然、安定したグリップ力で安心感が出た。コーナーリングなど走り全体がしっかりとして、安心して操れる。以前より断然、こっちの方が走りのポテンシャルが高い。
サスペンションをイジってのローダウンだけど、混雑した都内、ちょっとしたコーナーに高速道路と乗って大きな不満はない。高速でギャップなど乗り越えた時に、私の体重(72kg)だと、サスペンションがぐっと入り込んだところで硬さを感じるけれど、不安定になったりはしなかった。少し、不満があるとすれば、運転席前方部分を指で押しただけですぐに底づきするシートクッションだ(通常モデルも同じシート)。それほど長時間のライドではなかったが、快適性を上げてもらいたいと思った。もちろん、私より体重が軽くて小柄な人は気にならない可能性もあるので、全ての人がそう感じると断言できないことを付け加えておく。
Vツインエンジンはスムーズのひと言。小さいながら鼓動を感じさせながら、高回転まで淀みなく一気に吹け上がる。どこからか急にパンチ力が出てくる、というより、回せば回しただけ前に進む、フラットに近いトルク。高いギアでトコトコ走っても、高回転まで引っ張って走ってもぎくしゃくする感じがまるでない、いかにもホンダらしいパワーユニット。単気筒の一回、一回の爆発で前に進む感じも楽しいけれど、2気筒の滑らかさは、やっぱり気持ちいい。退屈だなんて思わせない独特の世界を持っている。変更点は小さいようで、実は大きい変化。この排気量カテゴリーでVTRの存在感が高まった。
(試乗:濱矢文夫)
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