●文─松井 勉 ●取材協力-ホンダモーターサイクルジャパン |
||
「支払い方法を選んで下さい」「油種を選択して下さい」「確認ボタンを押して下さい」「給油キャップを開けて下さい」「静電気除去パッドに触れてから給油を開始して下さい」
暑い中を走り出す。白いCB1100EXは図太い、と表現できるいい音を2本出しマフラーからはき出す。スポークホイール、それにCB750FOURを思わせるシートなど、細かいトリムに伝統が漂う。 「各地でこの夏一番の気温を記録しました。岐阜県多治見市で39度、名古屋でも38度・・・・」と、前夜のテレビのニュースは伝えた。気温34度や35度はもはや涼しい。事実、今日は32度でも過ごしやすく感じた。日陰の百葉箱よりよほど路上は暑かったはず。どう逆立ちをしても空冷日和とは言えない酷暑。CB1100EXも悲鳴を上げていたのかもしれない。
さ、夏の風を見にゆこう。気軽な気持ちで飛び出したが、とんでもない1日だった。しかし状況は雨でガラリとかわる。 |
||
|
||
CB1100EX Eパッケージで出た夏の風探し。ふと目に泊まった田んぼの中の一本道。大きくなりつつある稲穂が垂れ始め、真夏に知る秋の到来の予感。 | ||
国道をゆく。二車線の田舎道だ。 河原に降りてみた。河床は荒い砂。その色は褐色だった。川の先にある雲がやっぱり夏の風を思わせる。しばらく行くと大きな湖があった。湖畔沿いに伸びる道に、ヘルメットを被った中学生だろうか並んで自転車を漕いでいる。部活の帰りか、二人とも焼けて真っ黒。 湖面を眺めると、風が広い水面を渡って行くのが解る。眩しい。もう何年も前だけど、みんなで泊まった宿がこの奥にあったなぁ。渓流沿いに建つ当時できたての別館だ。そこまでの道すがら、まるでスペインか! という眺めがあった。あちらならオリーブ畑かオレンジ畑だ。ここは何の畑だろう。その谷間にやっぱり夏の風が吹く。 |
|
|
この空なら走れば30分で靴まで乾く・・・・。このままジャブジャブ入ってしまいたい。負けそうになる透明度の誘惑。 | ||
|
||
湖面にできた風紋。海に近い水面に海風が渡る。 | ||
|
||
トラックの後ろについて走っていたら突如開けた風景。柑橘類だろうか。荒涼とした土地に緑を育てるスペインの光景と重なった。 | ||
ワインディングに入るとそれまで大人しかった CBが気持ち良く駆け出す。広い浜辺で遊ぶ大型犬のように、楽しそうに右、そして左に車体を傾け、減速し、加速する。切れ味抜群、とか、アドレナリンが噴出する、というスポーツライクな言葉が脳天直撃するわけではないが、走るのが嬉しい、楽しい。 |
||
里山を縫う道を40分ほど走り、川を何本か越えた。緑の稲穂は早くも重く垂れはじめている。夏本番だが、来る秋を匂わせる季節感はあちこちにあった。 狭い線路沿いの道に入った。こんなとこ通ったっけ? 川沿いのその道から岩盤の上を流れる水が涼しげだった。その先に駅があった。道とホームが繋がっているような場所で、時刻表によればあと1時間、往来はない。岩盤が山肌から剥き出しになった風景にもどこか夏の風が吹く。 結局、あちこち捜したのだが「たぶん、この宿だ」と確信が持てなかった。ただ、川の向こうにあった施設には見覚えがある。間違い無く僕はここに来た。あの夏は遠い。 |
|
|
すだれの奥で風鈴がなる。涼感を届ける夏の知恵。昼にむけ太陽はわずかな日陰を削り取るように頭上へと動き続けている。 | ||
|
||
旧道で出会った神社。伝統ある趣きに2014年製のレガシー封入済みモデルは見事に対峙した。 | ||
齢50を数えると、あと何回、バイクで夏を楽しめるだろう、なんて考える。ただ、今、バイクを買う人の平均年齢が50歳台だという。なんだ、平均、ということはまだまだど真ん中。と油断したりもする。嬉しい誤算にせよ勘違いにせよ、やりたいことを確実にクリアさせる、には喧しくなったように思う。 |
||
|
|
|
サーとザァーの中間ぐらいの見た目よりしとやかな音で流れる川。水面が巻き起こすのか涼しい風が吹く。 | 少し走ると細い川はダイナミックに表情を変えていった。 | |
ウゥゥゥゥゥ〜。セメントトラックがタイヤを唸らせ、50メートル前を走る。かつてのように黒煙を吹くトラックはいなくなった。でもそのほのかな熱と排気の匂いは、首筋にまとわりつくような粘り気を思わせる。 |
6速CBは燃費もエライ!
CB1100EXはCB1100にとって2型にあたる。ミッションが6速化され、2本マフラーとスポークホイール、シートなどにも厚みを持たせた意匠は、よりクラシックなCBレガシーを受け継ぐ正統派だ。 |
||||
100キロでおよそ2800回転。6速効果がある巡航。 | 燃料流量計が9.5リットル、給油したガソリンの量が9.56リットル。ほぼ同値。他にもメーターが11.2 リットル、給油量が11.4リットル、メーターが9.4リットル、給油量が9.3リットルと、安定して常にニアピンだった。 | |||
トータル997キロを走り、39.8リットルを使い、平均燃費25km/lだった。 | ||||
|
[CB1100EXインプレッションへ]
[新車プロファイル2014CB1100EXへ]