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本番まであと2週間。環境の整った実習棟でおのずと作業には力が入る。各自のスキルは高いとのことだが、先生の悩みは……。 | ||
教員として。顧問として。そしてレース界の先輩として。 |
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「今年のチームは、確かに個々のスキルは高く、手技もしっかりしている。ですがそこからの元気やまとまりに欠ける気がしています。だから咄嗟になにかをするべき時にビビって身を引いてしまうとか、遠慮がちになるとか。チームはこれではダメなのです」 作業を学生たちにまかせ、阪田克己先生も加わってこれから本番までの過程を模索する白上先生。阪田先生は作業帽をとると、とても柔和で理知的な技術者の趣き。まだレーサー然としたスリム体型の白上先生とは好対照な、工業大学の研究室にいる教授のような雰囲気がある。 |
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「いまの子どもたちの特徴でしょうね。共同でやることに慣れていないのです。ネットやゲームなど、一個人でなにかに没頭する時間が長く、能力のすごく磨かれている点は特化していても集団になるとどうしたらいいか迷う。ここを引き出すことが私らの仕事と考えているのですが」(阪田先生) 「先ほどのピットワークですが、自分のなすべき作業はなんとかうまくいっている。しかしこの時に他のセクションはどう進行しているか? これがまわりを見ながら自分の作業をするというレースには不可欠な要素なのです。まだまわりが見えていません。耐久レースはチーム力です。ここを取りまとめるのが、リーダーやサブリーダーの仕事。これからだと思います」(白上先生)
少し辛口の視線で、今年のメンバーを見ている先生たち。しかし、その言葉の節々に、今年のメンバーのこれからの成長と本番での活躍に期待をかけていることは確かだ。さらに今年は、ライダー側にももうひとり。第3ライダーを加える情報を聞いた。 「レーサーの年齢によるスタミナについて一概には言えませんが、私の体験値から40歳を過ぎると途端に厳しくなる気がします。古澤選手は私と同じ歳であること、ベテランゆえの責任とプレッシャーという点も鑑みまして、第3ライダーの存在という使えるレギュレーションいっぱいで行こうとなったのです」 これら、有用な要素をできる限り構築させて、あとは本番までにチームをどのような状態にまで持っていけるか。時間は刻一刻とせまり、これから数日間は”光陰矢のごとし”だろう。先生ふたりの想い。 |
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阪田先生(右)と白上先生(左)。白上先生はライダーとして8耐参戦経験があり、阪田先生は四輪レースの経験が豊富なレースの大ベテラン。 | ||
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時には厳しく、そして笑顔も忘れず。学生達と共に作業をする先生の姿は、レース界の先輩としての姿でもある。 | ||
「ひたすら安全を求めて走って完走だけする。これではレースではありませんし目標でもない。出来るだけ詰めたマシンで、めいっぱい走らせて、めいっぱい耐えてゴールを目指す。これが鈴鹿8耐の醍醐味です。とにかく、若い人たちに率先して行動するという、自分の殻を破ったチャレンジをさせたいのです」(白上先生) 「レースは勝負!! 勝負の世界を見せてあげたい。いまの時代に、二輪レースが大好きなんていう彼らはある意味ミラクルです(笑)。しかし、この活動は、授業の延長にあるあくまでも学園の課外活動の一環。いろんな方にお世話とお気遣いをいただいてます。そこから送り出された彼らに、鈴鹿8耐にしかない勝負の世界を見せてあげたい」(阪田先生) 帰りしな、白上先生と職員室に立ち寄って、五月女 浩先生との再会になった。五月女先生は学園の教頭を務める。その教頭先生が、ゼッケン28号車Teamホンダ学園の監督なのだ。 「今年もまた暑いピットで長くおつきあいいただきますが、応援なにとぞよろしくお願い申し上げます」
なんどもお辞儀をされるチーム監督の姿=教頭先生。さらに校長の澤田武美先生もバックアップについている。学生メカニック、サポート役の先生方、レーサーたち。三位一体の熱情をもって。一年に一度だけ、課外授業に学園が一丸となって迎えるその日はもうすぐ。風よ鈴鹿へ! そして昨年の雪辱なるか! |
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取材をしているとついつい忘れがちだが、学生の本業はもちろん勉強。1コマ90分の実習と学科授業を午前2コマ、午後2コマを終わってからの課外活動である。限られた時間と予算をいかに効率的に使い参戦するかという課題も科せられる。学生だからと言ってハンデはもらえないのだから。 | ||
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