幻立喰・ソ

第46回「錦糸町の源さん」

 ミスター・バイクBG6月号マニアックバイクコレクション。1台目エアラの冒頭に「殿さまキングスとくれば『なみだの操』〜」とありました。「女の操じゃないの?」と検索してみたら、正解はなみだの操。

「女の操」で検索しても、「なみだの操」がずらーっと出てきましたから、殿様キングスのボーカル宮地オサムと、ミッドナイト東海で青少年の心を風靡した宮地佑紀生を間違える人は少数派でも、なみだと女を勘違いしている人多いんです。一度聞くと耳に残るピチカートファイブ「スゥィート・ソウル・レビュー」を「スタート・トゥ・レビュー」だと思っている人もいるはずです。原因は歌い出し=歌詞名の「東京は夜の7時」の影響か? でも「渋谷で5時」と混同することはありもしますが、「東京ララバイ」と勘違いすることはありもしますまい。ただし、東京ベイが午前0時だったか、午前3時だったかを思い出せないことはままあります。

 バイク界の間違いやすい王と言えばZXRとZRX。どっちがどっちか普通に迷います。ヤマハのR1Zと日産のRZ-1も迷いますが、レアすぎて使う場面がないのでたいして困りません。ちなみに全日本ちょこちょこの主筆クスドー女史は、かつて両方所有する大変態6輪生活をしていたことがあるとかないとか。
 最新では、アニメの世界から飛び出した(という言い回しをする表現力の低さの己が恥ずかしい)NM-4をMN-4と言ってしまうのです。これは単なる老化現象の成せる技です。

 立喰・ソでも勘違いといいますか、早とちりは日常茶蕎麦時。「えきめんや」を「えきやめん」と思っていただのバカです。おこめ券を見て激しく興奮する特異体質ですから、しょうがないんです。


ZXR

ZRX
どっちも400です。なんでこんなにライムグリーンが似合うんでしょう。あれ? あれあれ??

 話はがらっと変わりまして、最近よく目にするのがランチタイムは立喰・ソ、夜は立ち飲み屋という二毛作店。誰が言い出したのかうまいこと言うもんです。が、ちょっと待ってください。二毛作は高知県など南国で年に2回お米を収穫すること。昼はソ、夜は酒なら二毛作ではなく二期作でしょと、ウィキ先生に尋ねたら「近年では飲食店で昼と夜で提供する料理が変わる店のことを二毛作料理店などと呼ぶようになった」と書いてあるじゃないですか。あれ〜? そうなんです、二毛作と二期作を逆に憶えていたのです。50年も生きていて今やっと気が付いたのですが、今までまったく困らなかったのも事実です。来年あたりもう忘れていそうですが、死ぬまで困ることはないでしょう。たぶん。

 今月は間違いやすい店名か、二毛作の幻立喰・ソネタと思われた賢明なる諸氏多数とお悦び申し上げたいのですが、ほぼ無関係な錦糸町の源さんです。
 錦糸町は、赤キップでお出かけの交通裁判所(東京簡易裁判所墨田分室)や、浅草と並び鉄火場度数の高いWINS錦糸町、一時期は東京一といわれたロシアンパブなど、オシャレOLが「プラスワンでアフターファイブ最強の1週間あえての着まわしコーデ」で出かける町とはちょっと違います。

 そんな町の源さんとくれば「ウチパクよ〜っ、きっちり差せよ。たく、じょ〜だんじゃね〜よ」と、場外(=WINS。西館ではなく東館)界隈の歩道をビールケースのテーブルと椅子で占拠した競馬開催日のみ開設される呑み屋でホッピー片手にクダをまきまくるドカジャンにねじりハチマキ腹巻きが似合う錦糸町のファッションリーダーたちか、運が良いと炎の大回転をしてくれたCRの大工さんを想像しがちですが、そうではないのです。


WINS西館

WINS東館
いつも閉店セールをやっている(イメージの)洋服のAのとなりがWINS錦糸町西館。なんとなくおしゃれっぽい。(2013年1月撮影) 西館の間にマ○イを挟んだ反対側が東館。東館を囲むのは街金の看板ばっかり。高い需要と必然性があるのでしょう。(2006年9月撮影)

ピアきんしちょう

アイドルキャンペーン
錦糸町駅前。左側、駅前留学ビル前がピアきんしちょうの入口のゲートです。(2006年9月撮影) 駅前でたまに新人演歌歌手がキャンペーンやってたりします。群がるのは源さんばかり。(2012年3月撮影)

 錦糸町の源さんとは、南口の猥雑な、もとい素敵な繁華街、ピアきんしちょうにあった立喰・ソです。
 おや、天の声が聞こえます。「いいかげんなことを言ってはいけません。錦糸町の丸源さんはまだ現役バリバリ。だいぶ前にリニューアルしてちょっとだけ洒落た立喰・ソ&立ち飲み屋になりましたよ」
 ご指摘ありがとうございます(天の声いいな。これからちょくちょく使おう=ご都合主義)。丸源は、朝から呑めてソもすすれる二毛作どころかフル毛作の素敵な立喰・ソ(というよりも立ち飲み屋さん)ですが、その丸源ではなく、ちょっと離れた角にあったのが源さんなのです。

 再び天の声です。「へえ〜、そうですか。さいですか、しかですか、うまですか。それはそれはえろーすんませんでぇしぃたぁ〜。つかぬことをお伺いしますがぁ、ほんとに源さんでしたかぁ? のれんには丸源、ひさしには源ちゃんって書いてあるように見えるんですけどぉ〜へへへっ」とギスギストゲトゲ。
「へっ?」


源さん

そば
ありし日の源さん。今さらではございますが、のれんには丸源と書いてあります。でも、のれん=店名という訳ではなく、贈呈主の名を入れることもありますし(大汗)。ひさし部分の源ちゃんカレーというのはカレーの商品名じゃないかと……(ゲリラ汗)。

源さんのちくわ天+春菊天そば。カレーの写真は見つかりませんでした。というより、撮っていなかったようです。福神漬はかすかに写ってます。激しい思い違いと抜けっぷりはいつものこと。笑ってシカトしてください。(共に2006年1月撮影)

 確かにのれんには丸源、ひさし部分には源ちゃんカレーの文字。源さんとはどこにも書いてありません。おかしいですね……えきやめん事件よりも前から、ずーっと源さんと信じて疑いませんでした。どうして源さんだと思ったのか、根拠もまったく憶えていません。

 記憶の中の源さんは……
 前を通るとカレー臭がぷ〜んと薫ってそそられた(気がします)。
 いかにも源さんな店構えの店内も裏切らない雰囲気だった(気がします)。
 いかにも源さん風な素敵なおやっさんが切り盛りしていた(気がします)。
 カレーは、立喰・ソ=業務用カレーの方程式を根底から覆す味だった(気がします)。
 ソは見た目そのまんまの濃いしょうゆ味の関東正当派だった(気がします)。
 天ぷらは前記の丸源から配達されていた(気がします)。
 ひょっとして本店と支店の関係だったのかも(という気もします)。

 丸源なのか、源ちゃんか、それともやはり源さんか、残念ながら永遠の謎、迷宮入りのお蔵入り(ということにしましょう)。おやっさんの顔も、カレーの味も、天ぷらの配達も実はすべてが思い込みだったりして……しかし、ただひとつ言えることは、私の中では未来永劫、源さんは源さん以上でも源さん以下でもなく、源さんそのものなのです(醜い開き直り)。

 2010年頃まではあったと思うんですが、あまたの例と同じく、いつのまにか幻立喰・ソになっておりました。秋葉原にあった常念の如く、源さんもまたどこにあったのか解らなくなってしまいました。
 ひよっとして、源さん自体が実は幻影だったのかもしれません(無茶苦茶なまとめ)。


源さん

跡地
松屋の先の白い建物が源さんだったんじゃないかと思われる場所。確信は全くありません。(2011年10月撮影) 丸源さん。現役店なので立喰・ソ法を拡大解釈せず画像処理をして……というわけではなく、例によってただのブレブレ写真です。(2006年1月撮影)

*   *   *   *   *

●立喰・ソNEWS 2014 さらに錦糸町小豆(こまめ)情報

錦糸町界隈にはいくつか立喰・ソがありますが、一番高いところにあるのがWINS東館の7階にある、その名もヌードルズセブン。源さんたちがヌード劇場(死語)と勘違いして暴れ出さないか心配ですが、激しく興奮するのはどうやら私だけ。土日休みの立喰・ソは多いのに、ここは中央競馬開催日(ほぼ土日)のみの営業です。従業員のみなさん、あとの5日間はなにをやっているのでしょう? ごちゃごちゃと言いましたが、ヌードルズセブンにこのページのチケットを印刷して持っていくと卵一個サービスしてくれるそうです。優しいですね。出かけるときはどうぞ忘れずに。場所が場所だけに卵一個もらうのに、おいくらまんえん使うんだろうと心配になるやもしれませんが、間違って帰りに大きなカバンが必要になることあるわけないですが、楽天的にいきましょう。楽天といえば5000ポイントもらえるカードではなく、錦糸町には娯楽の殿堂、株式会社東京楽天地も駅前にあります。最後も禁断の現役バリバリ店の話でお茶と後を濁しまた来月。


大江戸

本所

メトロ


ささ

つるよし
錦糸町界隈できらきら輝く立喰・ソのみなさん。最近ごぶさたですが、みなさん現役ですよね?(2010年3月〜2012年3月撮影)

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在600店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


[第45回|第46回|第47回]
[幻立喰・ソバックナンバー目次へ]
[バックナンバー目次へ]