「凄み」をキーワードに開発された、斬新なスタイリングとエキサイティングな運動性能を実現したネイキッド・スポーツモデル。低く配置された鋭い眼光を放つ4灯式LEDヘッドライト、力強く盛り上がったフューエルタンク、鋭く跳ね上がったテールカウルと、獲物を狙う猛獣を連想させるダイナミックなフォルムで登場した。 | こちらの動画が見られない方、もっと大きな画面で見たい方は、YOUTUBEのサイトで直接どうぞ。「http://youtu.be/gfy9TCink7o」 |
「うは、これは、すごい」、このルックスを目の前にして、思わず出た言葉である。
だいたいどんなものでも、部分的にデザインがおざなりな部分があるのだけれど、この新型Z1000は、とにかく細部に至るまでこだわっていた。手抜きがない。コンセプトの具現化に向けてとことんやった感じ。
好き、嫌いは人それぞれの好みだけれど、国内メーカーでここまで意欲的なデザインのオートバイがあっただろうか。デザインされてなさそうなのは、フロント足廻りの脇から見えるエキゾーストパイプくらいかも。タンデムシートがシートカウルに見えるような色分け処理。シートの表皮は「Z」文字のモノグラム。エッジの効いたミラーステーなど、斬新な所が多数。フロントブレーキマスターシリンダーのカップなんてシースルーなんだぜ。
おどろおどろしく低い姿勢で睨む顔(フロントカウル)は、デザイン的な理想より、いろいろな条件で高くなりがち。それをここまで低い状態で実現してしまったことに拍手を送りたい。最近、好調なカワサキ車を牽引しているのは、間違いなくデザインだ。私個人は、歴代Z1000シリーズのデザインが大好きで、出る度にいつも驚かされているが、中でもこれはかなりの衝撃。よく「欧州メーカーに比べて日本車のデザインは……」と言われるけれど、いやいや負けていないどころか、他が先ゆくZ1000を追っかけているくらいだと思う。
撮影のためにハンドルを掴んで押してみると、えらく軽いのにビックリ。400ccと思うほど。この印象は跨っても同じだ。
1,043cm3の水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンをアルミツインチューブフレームに積んでいるから、車体の横幅は排気量なりにあるけれど、前後がやたらと短く感じる。シートに跨って腕を前に伸ばすとハンドルグリップ位置が400cc並に近く感じた。私は身長(170cm)の割には腕が短く、ついでに手の指も短いから、ハンドルが遠いバイクは難儀することが多いけれど、これは、まったく心配がない。左右ロック位置まで切っても肘の曲がりは余裕だ。
足つきは、両足で足裏3分の1が届くので、跨ったまま足に力を入れて地面を蹴り車体を前に進めることもできる。乗車ポジションでハンドルグリップ位置は、おへその高さくらい。幅は、肩から左右に拳1個ほど外になり、手前の絞りも適度にあるので、手首に負担はかからない。
ライダーの身長は170cm。アグレッシブな外観に反して、ライディングポジションはとてもユーザーフレンドリー。そしてなにより思った以上にコンパクトな印象を与えてくれる。 |
軽い印象は走っても続いた。ステップを踏み込んで左右にゆすって、軽快さを実感。さっと寝て、ステアリングがすっと切れて、小さい円弧でさっと向きが変わる。車体は腕の中に収まっているようなコンパクトさ。低速だと寝かし始め強めにハンドルが切れて、ビギナーだと最初は戸惑うかもしれないけれど、分かれば問題ないレベル。その時の挙動は不安定にはならないし。とにかく面白いほどグルグル回れた。
エンジンは思い切り加速型。6速、60km/hで3千回転近くだった。1000cm3にしては回っている。そのおかげで、どの回転数、どの速度からでも開ければドカーンと矢のように加速する元気なエンジン。スロットル操作に対してレスポンスが良く、開けていくと騒音対策のためにマフラー内に付けられているバルブが開くのか音が一弾高く共鳴して気持ちが盛り上がった。全域で顕著なトルクの落ち込みなどなく、7千回転くらいからパワーがさらに盛り上がってタコメーターの光が上限まで駆け足で上り詰めた。ワイドに開けただけでフロントの接地感が希薄になってしまうほど。それでも恐怖やとっつきにくさはない。
ブレーキは秀逸。2つのトキコ製モノブロックキャリパーと2枚のΦ310mmのディスク、ラジアルポンプマスターシリンダーで構成されたフロントブレーキは、指一本で気持ちいいほど減速。急減速時のフロントフォークの入り、ピッチングモーションが自然で、やわらかすぎず、ぐーっと奥に行くほど踏ん張り、タイヤの接地感を掴みやすい。
個人的にはネガティブな要素はないけれど、経験や技量の違いで、鋭くパワフルなエンジンが、「すぎる」と感じる人もいるかもしれない。それとハンドルの切れ角が大きくない、はっきり言って小さいので、Uターンの時に戸惑う場面があるかもしれない。
姉妹モデルとして、より高速移動やツーリングも考慮したカウル付のNinja1000があるので、ここまで割り切れた作りこみが出来たんだろう。Z1000に乗っていると暴れるネコ科の肉食獣を飼いならしている征服感のようなものを感じた。振動も少なく意外と快適。コンパクトな車体にパワフルなエンジン、クイックなハンドリングが好みの私には、まさにドンピシャで、乗っているのが楽しくてしかたがなかった。
(試乗:濱矢文夫)
よりフロントが低く、リアが高いアグレッシブな姿勢により、地を這うようなイメージを醸し出す。新しいタンクのデザインはフィット感を追求し、バイクとの一体感を構成。完全なシームレスタンク、シート、フレームカバーとテールカウルにより、ライダーとの一体を高めている。 |
●Z1000〈Z1000 ABS〉 主要諸元 ■全長×全幅×全高:2,045×790×1,055mm■ホイールベース:1,435mm●最低地上高:125mm■シート高:815mm■車両重量:220〈221〉kg■燃料タンク容量:17L■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ■総排気量:1,043cm3■ボア×ストローク:77.0×56.0mm■圧縮比:11.8■燃料供給装置:フューエルインジェクション(KEIHIN φ38mm×4)■点火方式:デジタル式■始動方式:セルフ式■最高出力:104.5kw[142PS]/10,000rpm■最大トルク:111N・m[11.3kgf]/7,300rpm■変速機形式:常時噛合式6速リターン■ブレーキ(前×後):油圧式φ310mmダブル(ペタル)ディスク、セミフローティング、ラジアルマウントモノブロック対向4ピストンキャリパー×油圧式φ250mmシングル(ペタル)ディスク、シングルピストンキャリパー■タイヤ(前×後):120/70ZR17 M/C 58W×190/50ZR17M/C 73W■懸架方式(前×後):φ41mm倒立テレスコピック式、圧側、伸側、プリロード調整式×スイングアーム式、ホリゾンタルバックリンク、ガス封入式■フレーム:ツインチューブ(アルミニウム)※〈 〉内はZ1000 ABSのデータ。 ■車体色:Golden Blazed Green×Metallic Graphite Gray、Candy Burnt Orange×Metallic Spark Black、Flat Ebony×Metallic Spark Black ■ブライト参考小売価格:1,198,800円(本体価格 1,110,000円、消費税8% 88,800円)、※ABS Special Editionは1,263,600円(本体価格1,170,000円、消費税8% 93,600円)、4月発売予定。 |