GTが選んだGT。
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今回、ムルティストラーダ1200Sツーリングをテストピースに選んだのにはいくつかの理由がある。まず、スポーツツアラーとしての機能するロード性能を持ち、バリエーションモデル、ムルティストラーダ1200S グランツーリズモ(GT)にOEM装着されるタイヤこそ、このエンジェルGTなのだ。また、2013年に登場したこのモデルは、前後にセミアクティブサスペンションを搭載し、今後のバイクシーンを占う上でも変化の始まりの一台といえるからだ。 120/70ZR17をフロントに、190/55ZR17をリアに履くムルティだが、OEMモデルを履いてのテストだったことをまずお断りしておく。つまり、このSツーリングに対し、より大きなパニアケースとトップケース、クラッシュバーやLEDフォグランプなどを装備するロングツアラー用に造られたムルティストラーダGT OEM用のエンジェルGTだ。来年にはこのサイズも重量級モデル用も含め用意されるのでご心配無く。 |
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真冬のような寒いテストデイ。路面はウエット。こんな路面を苦にすることなく走れるスポーツツーリングタイヤ、エンジェルGT。STが持っていた資質をさらに高めて登場した。 | ||
軽い転がりだし感と、軽いハンドリング。
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ムルティストラーダ1200Sツーリングが標準装備するタイヤはピレリ・スコーピオン・トレールだ。このタイヤは、アドベンチャーツアラー用のマルチパーパスタイヤとしてBMWのGSなどにも採用されている。 |
履き替え作業を終え、走り始めた時に最初に感じたのは、転がり感のスムーズさだった。これはスコーピオン・トレールのブロックパターンとの違いか、とも思ったが、おそらく内部構造の強化とラウンドしたトレッドの接地分がそう感じさせるのだろう。 街中での動き、右折、左折時や車線変更という動きも一枚軽くなった印象がある。それでいて、しっかり路面にコンタクトしている様子で、切れ込み感や過度なクイック感などはない。良い意味でしっとりとしたハンドリングでもある。好印象だ。 |
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前輪のコンパウンドには素材に対するシリカ飽和度100%という低温、ウエットに強い素材をリッチにブレンドしたゴムを採用。冬の雨でもしっかりグリップし安心感を届けてくれるのが強みだ。 | ||
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エンジェルのアイコンでもあるトレッドデザイン。長いグルーブで描かれたのはにらみつけるようなディアブロ。極細の浅い溝で描かれたエンジェルは消え、変わりにGTの文字がそれに変わる。エッジ部分やサイドウォールにもエンジェルの名が入る | ||
乗り心地、ヨシ!
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走行距離100キロを過ぎたあたりから快適性の良さもしっかりと顔を出してきた。タイヤに熱が入り、新品のゴムが揉まれこなれた証しだろう。高速道路の段差や路面の皺などコツ、という手首にくる一発目のキックバックの角が丸まってきた。乗り心地が良い。
高速道路を流す時の転がり感はやはり秀逸でスムーズ。良い印象だ。少し高速道路を急いでみる。大きなカーブでのハンドリングの確かさ、旋回力の生まれる具合が感覚とつねに一致している印象は心強い。グリップ感云々よりも、この一体感こそ走るためのご馳走だ。 実は試乗日は、まるで今日から冬が来ました、というような天気だった。しかも夜の雨で路面は濡れ、集合場所となった富士スピードウエイ周辺の路面は冷たいに違いない。冬用グローブにグリップヒーターが有り難い気温、と言えばおわかり頂けるだろう。ムルティの外気温計は一桁台、時々雪マーク(3度以下)。寒かった。 |
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17インチを中心に400クラスからビッグバイクまで主要なサイズを取りそろえる。 | ||
気疲れしないハンドリング。
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御殿場インターチェンジから一般道をスピードウエイに向かう。いつもの田園地帯を抜ける道はツーリングペースで走るのに程よいカーブが続く。しかし路面は黒く濡れ、太陽が顔を出したとはいえ、風は冷たい。それでも地に足が着いている感触に「心配ナシ」と言われているようだ。 ブリーフィングを受けランチをすませ、富士スピードウエイからツーリングに出る。目的地までは40キロとちょっと。途中まで雲が低く垂れ込め雨が降りそうな天気だったが、篭坂峠を越え、山中湖側に出ると、空はくっきり晴れていた。少々荒れた路面ながら乗り心地はスムーズ。これはムルティが採用するセミアクティブサスの性能もあるが、基本的に吸収性のよいエンッジェルGTの性能がもたらす恩恵だろう。ともかく、ドゥカティの本場、速度域の高いヨーロッパでも、ここ日本の観光地でバスや地図片手にドライブをする人の車の流れに沿って行ってもタイヤのネガは見つからない。ハンドリング、快適性とも60キロ以下の流れでもナチュラルで良好だ。
速度を調整しながら、露出したアスファルトの上を縫うように走る。ラインの自由度が少ないながら、その上にムルティを通すのが難しくない。弱アンダーの解りやすいライントレース性を見せてくれるエンジェルGT。落ち葉の無いところを走らせ、思い通りのラインを描けると、このタイヤのスポーツ性を再確認できる。 |
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ワインディングでのハンドリングの素直さ、そしてエッジ部分でのグリップ感の高さは安心して走ることを楽しませてくれる。 | ||
濡れたショートコースにて。
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午後3時。その時間になってもショートコースは黒く濡れたままだった。状況を考慮して、メインストレートから左、右、左と曲がるいつものツバメ返し的コースから、ストレートエンドまで直進し、左にへと回るルートとなっていた。むしろ直線部分が長い分、速度が乗り、ブレーキングと左に曲がる旋回時間が長いこと、その先のバスストップ形状の切り返すところでは、まるで紙の折り目のようなカント変化があるのは相変わらず。ドライでもややこしいのに、こんな日には骨が折れる。 それでもラップを重ねる毎に信頼関係は深まる。バンクも浅いし、パワーもそれほど脱出では掛けられない。それでもストレートでは全開にし、ストレートエンドまで飛ばしてみる。長めのブレーキングから1コーナーのクリップまで下りながらの作業が続く。そして加速しながら登り、左、左と曲がって行く。そして右に切り返し、すぐ左へ。そもそもメリハリを付けにくい中でメリハリを付けるのがこのコースのツボなのに、今日はさらに付けにくい。 結局、冷えた路面でも安心感が高いこと、ブレーキング時のグリップが信頼に足ること、旋回時にも安心感があることをしっかりと確かめられた。 ドライのサーキットも何時か走って見たいところだが、ある意味、エンジェル日和だったこの日、新作GTの性能はおよそ改良されたポイントをそのままの額面通りで受け取ることができた。 タイヤは消耗部品として換えるもの、というよりバイクライフそのものを変えるパフォーマンスを持ったもの、そしてエンジェルGTはその力を秘めたスポーツツーリングタイヤ、と言える。11月だというのに標高の高い峠に雪が舞ったその日、このタイヤを履いてそう実感したのである。 |
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ドゥカティ・ムルティストラーダ1200Sツーリングに履いたエンジェルGT。ワインディング以上にウエットだったショート・サーキットで“止まる、曲がる”を試したが、信頼できる相棒としてエンジェルGTは高く評価できる。心強いタイヤだ。 | こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイトで直接ご覧ください。 |
●取材協力 スピードスター http://speedstar.jp/ 今回、ムルティストラーダ1200Sツーリングのタイヤ交換をお願いしたオートバイタイヤ専門店「スピードスター」。豊富な商品知識と作業技術でバイク専門誌からの信頼も厚い。また、ドライブチェーン、ブレーキパッド、ホイールベアリングの交換など、ワンストップで足回りのリフレッシュができる。「走る・曲がる・止まる」にもっと拘りたい、という人から、タイヤのこと、教えて、という迷える子羊までしっかりサポートしてくれる頼りになるお店。カフェも併設。 |
[ピレリジャパン公式サイトへ]