コイツが大正解! 「極上ツアラーV-Strom650はこんなに凄い!」と言いたいぞツーリング

SUZUKI

Vストローム650ツーリング2日目、総合力で言えばやはりこのバイクの「右に出るものなし」と実感しながら、今日は海岸の砂浜を走れる「なぎさドライブウェイ」からスタートしよう。

 

 海産物をウリにする民宿では朝食にも刺身とカニ汁で、ご飯のおかわりもして満腹で出発。気温が低い時に腹も減っていては本当に惨めになるから朝食は大切だ。満腹で朝日を浴び、「こりゃ幸先いいぞ!」なんて言いながら宿を後にすると、なぎさドライブウェイはすぐそこ。ゲートがあったりガードレールがあったりともう少し管理されているのかと思いきや、普通に砂浜に乗り入れることができた。

 一応はちゃんと道として地図にも載っているが、実際にはやはり砂浜でありそれなりに柔らかくて運転には気を遣う。よくツーリング雑誌などで楽しそうに走っている姿が掲載されているが、スポーツバイクでは足元のグニャグニャ感がちょっと怖いと思う。Vストロームはアップハン&19インチのフロントホイールのおかげもあり怖さはなかったが、それでも飛ばしてみようという気にはならない。そもそもこのなぎさドライブウェイ、交通法規が大変曖昧で、観光バスが水際を走りたがってか右側通行で向かってくる。「わー、なんだこの自由さは」と笑いながらも慎重に、かつこちらも自由にちょっと水に入ってみたりしながらのんびり走る。

 全長は地図で見る限りおおよそ5キロほどのようだが、実際に走るとその非日常感からかもっと短く感じ、思わずUターンして往復する。高めのギアでアクセルを大きく開けると、タイヤ痕が点線のように残るのはVツインの爆発間隔だからだろう。なるほど、これがツインのトラクション感なんだな、なんて妙に納得する。

 ドライブウェイ沿いには屋台が並び良い香りがしていたが、なんといってもこちらは刺身でおなかがいっぱい。ジュウジュウと焼けるあさりと醤油の香りを振り切って能登半島の西側を北上する249号線へと入った。



なぎさドライブウェイ


※以下写真をクリックすると大きくなったり、違う写真が見えたりするものもあります。


なぎさドライブウェイ
なぎさドライブウェイは何のゲートもなく、ただ普通に砂浜に乗り入れることができる。しかしドライブウェイ内は交通ルールがあってないようなものなので注意。譲り合いが必要です。


なぎさドライブウェイ
こんな看板はよくあり、たしかに場所によってはかなり寂しい所もあって何が起きても不思議じゃないかもしれない、と思わせた。不審な人に目を光らせていたら…… 砂地で高めのギアでアクセルを開けるとこのような点線状に砂が掘られる。Vツインのトラクションとはこのことか。面白くていろんなギアで試してみる。


なぎさドライブウェイ


なぎさドライブウェイ
めちゃくちゃ不審じゃないか!! ていうか人じゃないし! 宇宙人だし! これは110番した方がいいかと悩んだが、「写真撮ってもいい?」と聞いたらOKサインを出したのできっと「不審ではない」宇宙人なのだろう。 メディアのこういうことを嗅ぎ付ける能力には恐れ入る。すぐに地元テレビ局らしき人たちが駆け付けた。どうなることかと見守っていたら、レポーターが妙な催眠にかけられたらしく宇宙人と共に突然変な踊りを踊り始めた。

古い木造洋式灯台と、おばちゃんとの出会い。

 

 左側に海がちらちら見えたり見えなかったりしながら、単調な国道から志賀町で海沿いを走る県道36号へと左折。ツーリングマップルの推奨路で「日本海を見下ろす快適路」を楽しむ。国道から外れたためかとたんに民家も少なくなり、楽しいペースのツーリングにはいいが、ある意味淋しくも感じるような道を走っていると、突然重苦しいコンクリートの施設、志賀原子力発電所が右手に見えた。

 ここまでの脳内ソングはクロマニョンズの「人間マッハ」。「のろまな時代に~生まれてしまった~ マッハマッハマッハマッハ! マッハで行くぜ~!」とアクセルを握る右手も快調だったのだけど、ここで清志郎の「サマータイムブルース」にスイッチ。「さっぱりわかんねぇ 誰のため~」とライディングペースもちょっとトーンダウンしてしまった。

 もう少し先に行くと「日本最古の木造洋式灯台」があると地図に書いてあったので、県道を外れて福浦港へと入っていく。この港がかなり複雑でなかなか灯台が見つからないし、人もいなくて聞くに聞けない。やっと花壇を手入れしているおばちゃんに出会い、灯台はどこかを教えてもらえた。急坂に密集している集落の中を抜けて、さらにバイクを停めてからしばらく歩いたところに旧福浦灯台はあった。高さ5メートルととても小さくかわいらしい灯台は明治9年に建てられたものだそうだが、この灯台の前には江戸時代からこの場所に別の灯台があったそう。洋式の建物だけれど屋根は瓦で、空をバックにこれを見上げながらベンチに寝転ぶと風と波の音しかせず、しばし眠ってしまった。

 民家の間の本当に狭い道を縫うように出てくる時、改めてVストロームの静寂性に感謝する。静かなトゥルルル~という排気音は誰も驚かさず、誰も怖がらせない。人々の日常生活圏に気軽に入ってしまうことができるのも、バイクならではの魅力だが、その生活を乱さないことはとても大切だ。そういう意味ではVストロームはルックス的にも受け入れられやすいのではないかと感じる。

 先ほどの花壇おばちゃんにまた会い「見つけることができました。素敵ですね!」と言うと「どこまで行くの? 今夜はどこに泊まるの?」と聞くので決めてないと答えた。「私はこの町の出身だけど、今は金沢なの。そっちに来るなら泊めてあげるよ」という申し出。もちろんここに至るまでしばらくの雑談があった上での話だが、それでも素敵なオファーだ。残念ながら金沢には戻らないので、と感謝しつつ丁重にお断りする。



志賀周辺


旧福森灯台
大きな風車がたくさん回っていた志賀周辺。人口が少ないのにこんなにたくさんブンブン回して電気が余っちゃうでしょうよ、とおもったらこの先には志賀原発もあった。あ、ここで使う電気じゃないのね。 和洋折衷な旧福浦灯台は明治9年に造られたもの。静かな港に静かに建っていた。

輪島漆器を学ぶ。やっぱり漆は、凄い!

 

 海岸沿いの県道はやがて再び国道の249号に合流し、北東方面、漆器で知られる輪島へと向かう。これまで漆器に触れる機会はあまりなかったのだが、輪島に入るところに「漆芸美術館」を見つけて入ってみる。美術館や博物館は日常ではなかなか入るタイミングを見つけづらいが、ツーリング先でこそ文化的なことをしたいものだ。

 漆器はなんと縄文時代から伝わってきている文化だそうで、この美術館では木で椀を作るところから、様々な工程で漆が塗られていき、さらに蒔絵や沈金と呼ばれる装飾までを細かく説明。一番感激したのはお重で、見た目はどう見ても竹でできているようなのに、実はその竹の模様や節までもすべてが漆で作られたものだったこと。竹の葉が生えていた茎を切り落としたような痕も、全て漆を練って作った装飾だった。すっかりだまされたと共に大変感動させてもらった。またそういった技術以外にも漆の木から樹液を集める作業やそれに使われる様々な道具も展示され、そして職員さんもどんな質問にも答えてくれ、充実した時間となった。

 漆によって補強されるためベースとなる木の椀はとても薄く軽量で、かつ漆は断熱効果があるため熱いお茶など入れても手は熱くない。すっかり漆に魅入られてしまった僕だが、手間や技術を思えば高くはないものの、この時の財布の中身では手が出ない価格に今回は購入を見送った。いずれ必ず! 現在でも輪島の住民の2割は何かしら漆産業に関わっているそう。後継者が少なく苦労も多いというが、なんとかこの素晴らしい技術・美術が受け継がれていくことを願う。

 美術館を出ると雨がパラパラと降っている。雨具を着るほどではないが……どうしようか。大丈夫だろう、と再び249号を進むが、なんだか道がどんどん寂しくなる。ライダーの性として半島というものは先っぽまで行きたくなるものだが、しかし先っぽに近づくにつれ寂しくなっていくのも半島の常。とりあえずは急斜面に小さな田んぼが並ぶ絶景スポット「千枚田」まで行ってみよう。雨は止んだが空は暗く気温が下がってきた。輪島から千枚田までは空いている海岸線を走ってすぐだったが、千枚田には観光バスがずらりと並び人がごった返していた。

 駐車場から少し歩き小さな田んぼが急斜面にへばりつくように並んでいるのを見る。ぐるりと歩いて回ったが、確認した一番小さな田んぼでわずか13株しか稲が植わっていない(この季節はもう切り株だが)。限られた土地でいかに米を作ろうとしていたかがうかがえると共に、先ほどの美術館で読んだ「隠し田」を思い出した。かつて年貢がとても厳しかった時代、この地域の人は山の中に小さな隠し田を作り、年に一度収穫時期には村の人が集まりこの米を炊き、大きな筒状の入れ物に5合ものご飯をぎゅうぎゅうに詰め込み大きな漆塗りのお椀にガポッとそれを出したそう。漆のお椀には巨大な円筒状のごはんの柱ができるわけで、これをおなか一杯食べる習わしだったそうだ。もちろん、5合も食べられないため残った分はおにぎりにして持ち帰ったと書いてあった。きっとこの千枚田のような小さな田んぼが山の中に隠してあったのだろう。



千枚田


千枚田
千枚田はそのままでとても素敵だったが、なんだかライトアップをするとかでプラスチックの容器があぜ道に並べられていた。ライトアップされてるときは良いかもしれないけど、昼間見ると「余計なことして」という感じ。そもそも観光地である前に農家の神聖な田んぼなのにね。

ツーリングの楽しみは、
バイクとの濃密な対話の時間があること。

 

 ここまでくれば半島の先っぽも遠くはないが、寒さや時間の問題もあり、県道5号へと右折する。この道がまたとてもイイ! のどかなワインディングで車も少なく、安全に快適なペースが楽しめる。ここまでは快適な移動をサポートしてくれたVストロームだが、ちょっと開けたくなる直線ではちゃんとパワーがあり、そしてコーナーでも十分楽しめるパフォーマンスを発揮してくれることを改めて思い出す。

 しばらく行って今度は県道57号をまた右折して南下する。珠洲道路と名付けられているこの道もまた快走路! 文化的な体験も貴重だが、やはりツーリングはバイクとの濃密な対話の時間も大変楽しいわけで、このような道は絶対にルートに組み込みたい。交通量の少ない県道にすっかり気を良くした僕は能登空港のあたりから有料道路になる「能登道路」を迂回したかったのだが、工事のために半ば強制的に有料道路に。しかしここが無料開放中で、これまたワンステップハイペースなワインディング含めた快走路! この道をたどれば今朝のなぎさドライブウェイまで戻れるのだが、同じ道は走りたくなかったため高田ICで降りて県道18号を南下。能登半島の県道は本当に良い。荒山峠を越えて氷見市へとつながるこの18号はツーリングマップルの推奨ルートにはなっていないものの、個人的にぜひ推奨したい。

 氷見からは国道で富山市へと向かう。すでに夕方となっていたため、都合よくビジネスホテルでもあれば入ってしまおうとも思ったが、見当たらないままに国道472号でさらなる南下を始めてしまった。この道が中央分離帯付の片側2車線だったのだが、街を抜けたとたんに舗装林道のような狭い道に。そしてそのまま越中東街道となり、上高地へと向かう道になる。

 行きに西に向かって走った158号に比べると変化に富んだ楽しい道だったが、いかんせんもう日が暮れて景色を楽しむことはできず、また真っ暗のためトラックにつかえてしまってはなかなか抜くことも難しい。しかし寒さも厳しくなってきたためトラックを無理に抜かずにトコトコと走っていると、なんと燃費はリッター32キロを記録。今までの最高値であり、650㏄もあるバイクでこんな数値が可能なのか、と感心する。

 前日に楽しい思いをした安房峠のすぐ手前、平湯温泉で素泊まり3000円の看板を見つけて本日は終了。長い一日に感じたが走行距離は350キロ、平均燃費は27.7だった。



珠洲道路
珠洲道路では雨にも降られたが、大きなスクリーンに隠れていればある程度はしのげる。本降りになることはなかったため結局雨具は着ずに済んだ。


平均燃費
ツーリングペースではワンタンク500キロも可能。このタンクでは平均燃費は27.1km/Lだった。


こんな路面でも


夜間走行
スポーツバイクだったら怖いようなこんな路面でもVストロームはあまり怖さを感じることなくスイスイとこなす。 夜間走行ではツインヘッドライトの明るさは本当に重宝する。またハイビームが大変明るく安心感が高い。ツインヘッドライトは片方が切れてもすぐには困らないという利点も。

楽しい県道を発見して、
これが大正解だった時の嬉しさよ。

 

 翌朝はアルプスから見えるはずの朝日を狙い早めに起床。とにかく寒かったが何とか朝日を拝み、よし、今日はさっさと帰ろう、と走り出す。良いイメージのない158号を東に走り始めると、早朝は車もおらず快適。しかし来たのと同じ道ではつまらなく思い、能登半島で味をしめた県道を探す。

 すると梓湖というダム湖から南下する県道26号を発見。これをたどれば松本と中津川を結ぶ国道19号、いわゆる木曽路に抜けることができ、しかも宿場町「奈良井宿」の辺りに出ることができる。この道がまた大正解。道幅は狭いが車も少なく、ワインディングを楽しむことも可能。むしろシチュエーションとしてはVストロームの万能性が最も活きるともいえる。柔らかいサスやホイールサイズ、タイヤ銘柄のおかげで多少荒れていても怖がらずに走ることができ、先が見えないコーナーでも上体が起きているため奥まで見やすい。本当にこのバイク、イイぞ、と改めて惚れ込みながらコーナーをクリアしていくとあっという間に奈良井宿に到着してしまった。

 まだ朝も早い奈良井宿は静かでとても素敵な雰囲気。やはりこういうところは人が少ない方が浸れるように思う。Vストロームを置いて写真を撮ると、個人的には白の方が良かったかな、と思っていたオレンジのカラーリングも妙にこの環境に溶け込んでいることに気付く。なんだか大人のツーリングをしている気分になった。

 この近辺にはオフロードが残っている所もあり、せっかくだから少し乗り込んでみる。濡れたダート路面はロードバイクでは決して走りたいものではないが、Vストロームならば許容範囲内。とはいえ重量はあるしサイズも大きいため細い道でのUターンも辛い。積極的にこういった道を選びたいとは思わないが、それでもフラットな未舗装路だったら怖がらずに入っていくことはできるのが嬉しい。高速道路、舗装ワインディングで満足がいく性能を持っている上に、こんなことまでカバーしてくれるのだからありがたい話だ。近年のアドベンチャー人気もうなずける。

 朝から峠道、宿場町、オフロードと満喫しすっかりおなか一杯に。19号を北上し、午後の早い時間に塩尻ICから再び中央高速に乗る。ここから八王子まで176キロ、普通に走れば2時間で帰れてしまうのだからやはり高速道路はありがたく、そして高速道路を疲労少なくこなすバイクもまたありがたい。


奥穂高か槍ヶ岳
地図によれば遠くに見えるのは奥穂高か槍ヶ岳のはずなのだけど、どれがどれだかわからない。というかとにかく寒くてもはやどうでもよかった(笑) 。グリップヒーターは絶対だな。


木造建築の木の色に似ている
どうかな、と思っていたVストロームのオレンジ色だが、こう見ると木造建築の木の色に似ていると気づく。溶け込む感じがいいじゃないか。


ロードモデルに比べればオフロードへの適応力


足湯
積極的にオフロードを楽しみたいバイクではないが、しかしロードモデルに比べればオフロードへの適応力は高い。もうちょっと奥まで散策したい、などという気持ちに応えてくれる。 手が冷たすぎてブレーキが握れず危ない。足湯で手を温めて、もう少し陽が昇るのを待つ。

 3時のおやつに間に合うように帰宅。総走行距離のメモが見当たらないが、たしか1100キロほどだったように記憶している。宿の予約もせずにのびのびと2泊3日のツーリングに出かけたのなんてどれくらいぶりだろう。1泊はあっても、2泊はたぶん学生時代以来のように思う。

 日々バイクに関わる仕事をしているせいか、バイクのスペックやそれぞれの性格の違いについては詳しいと自負している。しかしいつしかそれが頭でっかちになってしまっていて、実際にバイクに乗るのは日々の移動だけになってしまっていた自分に気付く。改めて長距離を楽しんだり、遠い地の文化に触れたり、知らない人とコミュニケーションをとったり、宿に飛び込んだりする「ツーリング」の楽しさを思い出した気持ちだ。そんなきっかけを作ってくれたVストロームに感謝しつつ、思い出したこの遊びを今後も積極的に行っていこうと、バイク業界に関わるものとして、いやバイクエンスージアストとして思った。




帰宅後はすぐに洗車
↑海岸線も走ったため帰宅後はすぐに洗車した。輸出仕様はアンダーカウルがないためエンジンやエキパイが大変汚れる。これは装着したいオプション、国内仕様がうらやましい。

←こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイトで直接ご覧ください。

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[V-Stome650の詳細は新車プロファイルを御参照ください]