EC-03 252,000円(9月1日/10月1日発売)
★ヤマハ EC-03 車両解説
熟成を重ねてきたヤマハの電動バイク
“時機到来”でより身近な新型になって登場
2002年11月に一部地域限定、翌2003年5月に全国発売が開始されたヤマハの電動バイク、Passol。由緒あるヤマハの原付スクーター名を与えられた電動バイク(原付クラスに分類された)だったが、時代が早すぎた、というべきか一般に普及するまでには至らなかった。それでもヤマハが描く近未来の都市部でのコミューター像を示すには充分に話題を集めたモデルだったといえよう。
そして’05年5月には、特異な五角形のボディカバーにより、まさにデザインルームから抜け出してきたようなスタイルと“トランクバイク”というユーティリティも提案したEC-02が登場している。またこのモデルの発売半年後の11月には、Passolのモデルチェンジ版といえるPassol-Lも発売された。ヤマハ電動バイクがひとつのピークを迎えた年と言えるだろう。
そもそもヤマハの電動スクーターは、1991年の東京モーターショーに出展した電動スクーター「FROG」が始まりだ。そして、1993年には電動ハイブリッド自転車「PAS」を市販するなど、ヤマハは電動コミューターに関して実に20年近くの実績を残してきているのだ。ただ’05年以降はバッテリーのトラブル問題があったりで、電動バイク市場への積極的なアプローチは行われてこなかったが、今回のEC-03の発売で、実は途絶えることなく開発が続けられてきていたのが分かる。「5年間の空白があったわけではなく、このところの世間一般の環境意識の急激な高まりで、いよいよ電動バイクの出番が回ってきた、ということです」開発陣の言葉にも力がこもっている。
ちなみに今回のEC-03は、新たに三洋電機製の高エネルギー密度の50Vリチウムイオンバッテリーを得たことで、一充電あたり43km(30km/h定地)を確保し、実際の公道走行に即したケースでも一充電で25kmは可能という。
モーターはEC-02でも採用されていたYIPU(ヤマハ・インテグレイテッド・パワー・ユニット)という超薄型パワー・ユニットをさらに熟成。従来モデル比で10~15%、トルクを向上させたという。このYIPUを遊星減速機と組み合わせることで、常に滑らかで快適な走行が可能というのはEC-02譲りの特徴だ。
運用上でも大きな変更点があった。従来はバッテリーを取り外して家庭内で充電するという電動アシスト自転車などと同様の充電方式だったのに対して、EC-03では充電器までを車体側に組み込み、シート下に収納された電源コードを家庭などにある100Vの電源コンセントにつなぐことで直接充電する“プラグイン充電方式”に変更されたのだ。万が一走行途中で電気を使い切ってしまった場合でも、一般の家庭用電源コンセント(ただしアースが取れるコンセントに限るが)から充電できる安心感の方を選んだという。フル充電するには約6時間(100V2A、急速充電には今のところ未対応)かかるが、電気代はわずか約18円程度の見当だという。
このEC-03の発表と同時に行われたヤマハの柳 弘之代表取締役社長の『中期成長戦略「スマートパワー」への取り組み--電動二輪車について--』という発表の中で、ヤマハは今後、世界の電動二輪車市場へ参入すること(2010年代の中頃には電動バイクは30~50万台規模の市場に成長するという)、2010年代中頃までにヤマハは新たに3~4機種の電動二輪車を発表する、そして電動二輪車の普及環境の整備にあたる、という3本の柱を公表している。
都市部のコミューターとしてばかりではなく、今後の二輪車のあり方をも変えてしまう可能性の高い電動二輪車にご注目を。
- 機構はEC-02、スタイルはPassolやPassol-Lを引き継いだと言えるEC-03。DC-DCコンバーターのケース(フロント・カバーに見える部分)やシート後方のマウント部分が大きく変わっているが基本はPassol。カラー設定は2色で、こちらホワイト。
★YAMAHA プレスリリースより (2010年7月14日発表)
ゼロエミッション・エレクトリック コミューター
「EC-03(イーシー ゼロ スリー)」(原付1種)
新発売について
ヤマハ発動機株式会社は、“スマート・ミニマム コミューター”をコンセプトとするエレクトリック コミューターの新製品「EC-03」を、2010年9月1日より首都圏で、10月1日より全国で発売します。
「EC-03」は、電動ならではの排出ガスゼロ、静粛かつ滑らかな走りに加え、従来型原付1種とは一線を画すスリムさ、軽快さなどが楽しめます。三洋電機株式会社製の高エネルギー密度50V新リチウムイオンバッテリーを採用し、独自の超薄型パワーユニット(YIPU※1)との組み合わせで、常に滑らかな走行性能を発揮します。さらに、一充電当たりの走行距離43km(30km/h定地)※2を確保し、都市部での近距離移動に適した機能・走行性能を備えました。
今回の新色は、スポーティなイメージに上質感・高級感を加えた「ハイテックシルバー」で、大胆かつ精悍なスタイリングを一層強調している。なお「ブラックメタリックX」は継続設定とした。また両色ともフロントカウルのサイドに音叉マークを織り込んだ。
また、家庭用のアース付きAC100Vコンセントで充電可能なプラグイン充電方式を採用、良好な取り回し性に貢献する軽量アルミ合金製フレームを採用するなどスマート・ミニマム コミューターに求められる高い機能を発揮します。
なお、発売に先立ち、2010年7月15日より首都圏、9月15日より全国の「EC-03」取扱店で予約の受付を開始します。
※1 Yamaha Integrated Power Unit
※2 標準モード、乗車重量55kg、バッテリー新品、気温25℃、乾燥路面、無風
- 名称
- 「EC-03」
- 予約開始
- 2010年7月15日 首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨)
- 2010年9月15日 全国
- 発売日
- 2010年 9月1日 首都圏
- 2010年10月1日 全国
- カラーリング
- ■ホワイト
- ■ベリーダークオレンジメタリック1(ブラウン)
- 販売計画
- 1,000台(年間・国内)
開発の背景
- 現在、都市機能を集中化、または分散化させることで、環境問題解決と経済効率向上とを図る次世代の都市づくりが各方面で模索されていますが、このような次世代都市では、長距離移動と近距離移動とで四輪、二輪の使い分けが顕著に現れると考えられます。元々、小型な二輪車には、機動性に富み、手軽に近距離を移動できるという特性があります。この特性は、次世代都市での移動手段としてのニーズに適うもので、電動化と相まって、今後、二輪車の有用性が更に高まることが予想されます。
- また、当社は2002年、都市部での次世代交通インフラの一翼を担うミニマムコミューターとして量産初の電動二輪車「Passol(パッソル)」を発売しました。2005年には動力性能を高めたモーターや、エネルギー密度を高めたバッテリーを採用することにより走行距離を伸ばした「Passol-L」「EC-02(イーシー ゼロ ツー)」を発売。電動アシスト自転車「PAS(パス)」等で培った制御技術に加え、独自技術を織り込み、電動モーター駆動ならではの静粛性、滑らかな走行性、手軽さや環境に配慮した商品性などが支持され、都市での短距離移動だけでなく観光地やリゾート施設でも使われるなど用途が広がりました。
- 「EC-03」は、将来ますます多様化が見込まれる“パーソナルコミューター”のひとつとして開発したもので、当社の中期成長戦略「スマートパワー」を具現化する製品です。
主な特徴
- 1)発進~低速のトルク特性を向上させた超薄型パワーユニット(YIPU)
- 超薄型パワーユニット、YIPU(ヤマハ・インテグレイテッド・パワー・ユニット)を搭載しました。
- 駆動伝達ロスが少ないダイレクト駆動方式のインホイールモーターで、後輪の回転数、アクセル開度から適切な出力をコンピューターが逐次計算して供給することにより、常に滑らかな動力性能が得られます。また、ギア類の最適設計のほか、グリップ一体式電子スロットルや専用設計タイヤとの相乗効果で滑らかな走行性と静粛性を備えています。また、モーターおよびコントロールユニットを新設計し、発進時から低速走行時のトルク特性が向上(従来モデル比10~15%)しています。
- 基本構造は、後輪ハブ部に(1)超扁平面対向型ブラシレス交流同期モーター、(2)超小型コントローラー、(3)遊星歯車減速機、(4)ドラムブレーキなどをまとめ、さらにリアアームと一体設計することでコンパクト化しています。モーターには異方性ボンド磁石を採用し、発進時/中速域及び登坂時の優れた性能を引き出しています。
- 2)新開発の高エネルギー密度50Vリチウムイオンバッテリー
- 新開発の高エネルギー密度50Vリチウムイオンバッテリーを搭載し、低速域での出力特性にも貢献するものとなっています。また、充電時間は約6時間で、一充電あたりの走行可能距離は、30km/h定地走行で43kmです。
- 3)新採用のプラグイン充電方式
- バッテリーへの充電はプラグイン方式とし、外出先でも電源を確保すれば充電出来るよう利便性を高めています。充電装置はシート後部に組み込み、電源(アース付きコンセント〈3穴〉)にプラグを繋いで充電することが出来ます。
- また、一充電あたりの電気代は約18円※と優れた経済性を実現しました。
- ※東京電力株式会社の一般的な契約で、バッテリーをゼロから満充電にした場合の平均的な金額です。
- 4)相互制御システム(YMCS)
- ヤマハ独自の電子制御技術を投入した相互通信制御システム、YMCS(ヤマハ・ミューチュアル・コミュニケーション・システム)を搭載しました。(1)バッテリー、(2)コントローラー、(3)充電器、(4)メーター、これら4系統に相互通信回路を設け、常に車両全体の総合制御を行います。これにより、走行スタンバイ時、走行中、充電中など様々な状態に応じ、システム起動やモーターの駆動・補機駆動などの制御を自動化することで、手軽な操作性を可能にしました。
- 5)良好な取り回し性に貢献する軽量アルミ合金製フレーム
- 新設計の軽量アルミ合金製フレームは、パイプ径と厚さの最適設計により剛性を高め、操縦安定性を向上させました。更に、最適な軸間距離と各パーツの最適な重量バランス効果により良好な直進性を備えています。また、高層住宅の一般的なエレベータにも乗せられる全長1,565mmのコンパクト設計で駐輪時のスペース効率にも優れ、室内保管も可能です。重量は、フレーム、ホイールなどにアルミ材を使用するなどの軽量化により、同クラスのガソリンエンジンを搭載するスクーター比で約3割程度軽い56kgを実現しました。(当社調べ)なお、車体はスリムで、外装パーツの少ないシンプルな構成とし、軽快感を強調したスタイルとしました。
- 6)その他の特徴
- このほか、グリップ一体式の「電子スロットル」、運転モード切替※、暗証番号入力による盗難抑止装置、オド&トリップの表示切替機能を備える「高機能デジタル液晶メーター」、キーで操作する「ポップアップ式シートロック」、「ワイヤー式ヘルメットホルダー」、「コンビニフック」などを標準装備しました。
- ※走行条件(道路状況など)に応じて、モーターの駆動力を選択することができます。通常は「標準モード」で、坂の多い道などでは「パワーモード」で走行するなど、モードの切り替えで快適な走行が楽しめます。
- 車両本体販売価格
- 「EC-03」 252,000円
- (本体価格240,000円・消費税12,000円)
★主要諸元
車名型式 | ZAD-SY06J | |
---|---|---|
EC-03 | ||
発売日 | 2010年9月1日/10月1日 | |
全長×全幅×全高(m) | 1.565×0.600×0.990 | |
軸距(m) | 1.080 | |
最低地上高(m) | 0.110 | |
シート高(m) | 0.745 | |
車両重量(kg) | 56 | |
乾燥重量(kg) | - | |
乗車定員(人) | 1 | |
燃費(km/L) | 43(30km/h定地走行テスト値) | |
登坂能力(tanθ) | - | |
最小回転小半径(m) | 1.7 | |
原動機型式 | Y806E | |
交流同期電動機 | ||
定格出力(kW) | 0.58kW | |
内径×行程(mm) | - | |
圧縮比 | - | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 1.4[1.9]/2,550 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 9.6[0.98]/280 | |
バッテリー種類 | リチウムイオンバッテリー | |
バッテリー電圧/容量 | 50V-14Ah(1h) | |
バッテリー充電電源 | 定電流・定電圧充電 | |
充電時間 | 約6時間 | |
潤滑油容量(L) | - | |
燃料タンク容量(L) | - | |
クラッチ形式 | - | |
変速機形式 | 平歯車(遊星減速機) | |
変速比 | - | |
減速比1次/2次 | 5.647(17/31/79) | |
キャスター(度) | 25°00′ | |
トレール(mm) | 75 | |
タイヤサイズ | 前 | 60/100-12 36J(チューブ) |
後 | 60/100-12 36J(チューブ) | |
ブレーキ形式 | 前 | 機械式リーティングトレーリング |
後 | 機械式リーディングトレーリング | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | ユニットスイング式 | |
フレーム形式 | バックボーン |