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ホンダは軽トラックのT360で四輪車メーカーとしての第一歩を踏んだ。もっとも世界的には、後に600、800へと進化する“エス・シリーズ”の礎となったS500(スポーツ500)こそがホンダ・カーの原点と考える人も多いだろう。いずれにせよ、“H”マークの刻まれたクルマが世に放たれたのは今からほぼ半世紀前、1963年のことである。 531ccの4気筒4キャブレター、しかもDOHCヘッドで高回転パワーを稼ぎ出し、ファイナルドライブにはチェーンが使われるなど、二輪メーカーとして世界の頂点を極めていたホンダらしいアイデア満載のオープン・スポーツカーは、正式に発売される前となる1963年8月、ヨーロッパ各国を巡るスパ・ソフィア・リエージュ・ラリー(マラソン・デ・ラ・ルート)に2台が出場。ごく僅かが生産されたに過ぎなかったS500に変わり、僅か数ヵ月後の翌1964年3月にはエンジンを606ccとしたS600(エスロク)が登場。5月、鈴鹿サーキットで開催された第2回日本グランプリのGT-Ⅰクラスでは1~4位を独占している(優勝ドライバーはその数ヵ月後、ホンダと共にF1デビューを果たすロニー・バックナム、2位は当時ホンダのワークスライダーであった北野元)。 その後もサーキットで活躍を果たすS600だったが、翌1965年登場のトヨタ・スポーツ800(ヨタハチ)がライバルとして立ちはだかる。水冷4気筒DOHCの高回転高出力が自慢のエスロクだったが、空冷2気筒OHVで非力ながら軽量で操縦性に優れたヨタハチには耐久レースなどで苦戦を強いられる。 対ヨタハチの最終兵器が1966年登場のS800(エスハチ)だ。車重は50kgほど重くなったが、791ccまで拡大されたエンジンはさらなるパワーとトルクを手に入れる。極初期型は従来どおりのチェーンドライブが採用されたが、すぐに4リンク+パナールロッドのリジッドアクスルという一般的なリアアクスルに改められた。レースに使用されたのはリジッドアクスル車だ。 エスハチは鈴鹿サーキット内に組織されたホンダのモータースポーツ部門・RSC(レーシング・サービス・クラブ。その後レーシング・サービス・センターとなり、現在のHRC=ホンダ・レーシングに至る)によってチューニングが施され、早速モータースポーツ・シーンに投入される。 ニュルブルクリンク500kmレースでは1964年のS600(ドライバーは後のF1世界チャンピオン、デニス・ハルム。クラス優勝)に続き、1967年に当時のホンダF1と同様の日本のナショナルカラーが施されたS800が生沢徹のドライブで出場。アルピーヌ・ルノーA110、フィアット・アバルト1300OT、アルファロメオGTA、ミニ・クーパーといった世界の高性能モデルが、チームによってはファクトリーで出場するレースにおいて、RSCのフルチューンが施されながら僅か800ccのエンジンで総合11位、クラス優勝(1000cc以下のGTカー)を果たしている。国際格式のイベントで日本人と日本車が優勝したのは初めてのことであった。 国内では永松邦臣、加藤大治郎や清成龍一を輩出したTeam高武でお馴染みの髙武富久美らRSC契約ライダー&ドライバーによって各種レースに参戦。コレクションホールで所蔵するS800レーシングは、1968年の鈴鹿12時間耐久レースに出場、GT-Ⅰクラスで永松邦臣/木倉義文組が優勝を果たしたマシンそのもの。3リッター・エンジンを搭載するプロトタイプカー、2台のトヨタ7に次ぐ総合3位を獲得する健闘を見せた。このS800レーシングはタミヤの1/10電動RCカーや1/24プラモデルでもお馴染みだ。 |
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空力を重視したフラットなルーフ形状をもつ、RSCのFRP製ハードトップを装着。当然、レース仕様のためバンパーレス。 | CRキャブが装着されるなどのチューンが施されたエンジン。当時はポップ吉村もエスのチューニングを手がけていた。 | |
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左右二本出しのレーシングマフラーの太さは明らかにノーマルとは異なる。S800のレース車はリジッドアクスルが使われた。 | 装着されていたアルミホイールは、当時RSCからリリースされていた製品のレプリカ。オリジナルはマグネシウムだったとか。 | |
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スピードメーター他、不要なものが外されただけといったコクピット。トランスミッションは5速に改められている。 | 当時の耐久レースではもちろん、高速パトカーなどでも見られた虫よけ。さすがレース仕様は形状も独特。 | |
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鈴鹿サーキットのレーシングコースで、マーシャルカーとして活躍していたS800を復刻させようというマシン。尚、鈴鹿サーキットのWEBサイト内「コチラのモータースポーツレッスン」 では、マーシャルカーは「コース上でトラブルが起きたときに現場にかけつけるのがマーシャルカーだ! サイレンとストロボライトでその存在をアピールしながら、安全を守ることを最優先に任務(にんむ)をはたしているよ」とのこと。対して、近年のレースでお馴染みのセーフティカーは「コース上で走行しているレースマシンをコントロールする役目をになっているんだ。鈴鹿サーキットを知り尽くした熟練(じゅくれん)のドライバーが運転しているんだ 」と、その違いを説明している。 鈴鹿サーキットのマーシャルカーはその後、CR-XやNSX、シビック・タイプRなどが活躍している。 走行確認テストに姿を現わしたS800マーシャル仕様は、赤灯や車内にロールバーなどが装着されていた以外、ほぼノーマル車といった感じであった。9月1日・2日、鈴鹿サーキットで開催される50周年記念イベントに走行予定で、その時、カラーリングなどが施されている可能性がある。 |
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エンジンもほぼノーマルと思われる。走行音は極めて静かであった。参考までに、テスト・ドライブを担当する宮城光氏と並ぶと、S800のその小ささがわかる。 |
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[二輪編-1・ホンダミュージックが世界を征す] ●1959年 RC142(#8 125cc) ●1966年 RC116(#1 50cc) ●1965年 4RC146(#4 125cc) ●1966年 RC149(#117 125cc) ●1966年 RC164(#1 250cc) ●1966年 RC166(#7 250cc) ●1967年 RC174(#3 350cc) ●1968年 RC181(#2 500cc) [二輪編-2・トリコロールはここから始まった] ●1972年 CB750(#15) ●1975年 CB500R(#83) ●1976年 RCB(#5) ●1980年 RS125RW-T(#20) [二輪編-3・V4〜V2の黄金時代から、再び直4へ] ●1991年 RVF750(#11 OKI HONDA RT・8耐仕様) ●1995年 RVF750(#11 Team HRC・8耐仕様) ●1997年 RVF/RC45(#33 ホリプロホンダwith HART・8耐仕様) ●1999年 RVF/RC45 (#1 ラッキーストライクホンダ・全日本スーパーバイク仕様) ●2000年 VTR1000SPW(#11 チームキャビンホンダ・8耐仕様) ●2004年 CBR1000RRW(#7 セブンスターホンダ7・8耐仕様) [二輪編-4・7度の世界タイトルを獲得したワークスレーサー] ●1993年 NSR250(#18 岡田忠之仕様) ●1997年 NSR250(#1 マックス・ビアッジ仕様) ●1999年 NSR250(#4 宇川徹仕様) ●2001年 NSR250(#74 加藤大治郎仕様) ●2003年 RS125RW(#3 ダニ・ペドロサ仕様) [二輪編-5・無敵の6年連続チャンピオンなどWGP500クラスで他車を圧倒] ●1984年 NS500(#1 フレディー・スペンサー仕様) ●1984年 NSR500(#1 フレディー・スペンサー仕様) ●1985年 NSR500(#4 フレディー・スペンサー仕様) ●1988年 NSR500(#1 ワイン・ガードナー仕様) ●1997年 NSR500(#1 マイケル・ドゥーハン仕様) ●1999年 NSR500(#3 アレックス・クリビーレ仕様) ●2002年 NSR500(#74 加藤大治郎仕様) [二輪編-6・MotoGP元年をロッシとのコンビで圧勝した新世代の5気筒レーサー] ●2002年 RC211V(#46 バレンティーノ・ロッシ仕様) |
[四輪編-1・F1創生期 無謀とも思えた挑戦で2勝の快挙] ●1965年 RA272(#11) ●1967年 RA300(#14) ●1968年 RA301(#5) [四輪編-2・F1第二参戦期 エンジンサプライヤーとしての挑戦] ●1986年 ウィリアムズFW11(#5) ●1988年 ロータス100T(#2) ●1988年 マクラーレンMP4/4(#12) ●1989年 マクラーレンMP4/5(#2) ●1990年 マクラーレンMP4/6(#2) [四輪編-3・GTカー創成期 自動車メーカとしての名声を高めたマイクロ・スポーツの活躍] ●1966年 S800GT-1仕様(#25) ●1968年 S800マーシャル仕様 [四輪編-4・ツーリング&GTカーの時代 市販車の高いポテンシャルをサーキットでも証明] ●1983年 ヤマトCIVIC(#1) ●1987年 モチュールCIVIC(#16) ●1993年 JACCS CIVIC(#14) ●1998年 ギャザズ CIVIC(#77) ●1995年 NSXルマン(#84) ●2000年 カストロール無限NSX(#16) |
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