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工業デザイナーの榮久庵憲司、そして彼率いるインダストリアルデザインを専門とするグループ・GK。そう、製品第1号となる“赤とんぼ”ことYA-1以来、現在に至るまでヤマハ発動機のバイクをデザインする会社としてお馴染みだ。
そんな榮久庵憲司とGKデザイングループを取り上げた初の企画展が「鳳が翔く デザインが導く未来」である。戦後復興期より数々の製品をデザインすることで、日本人の生活や都市空間の近代化の一翼を担ってきた彼らの仕事を4つの章で構成。会場では製品化されたものやその模型、将来へのプロポーザル、人と自然と道具が美しく共生する世界を具現化した空間など、彼らのデザインの世界像が紹介される。
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東名・首都高速の用賀IC近くの砧公園内に世田谷美術館はある。美術館前には、2005年に榮久庵憲司が始めた道具道を求める旅において、南紀白浜でその山籠修行の起点となった「道具庵」(アルミフレーム構造、アクリル他)を展示
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美術館に入ると、目の前には2007年の東京モーターショーに出展された「VMAX胎動-Need 6-」。現在販売されているVMAXの誕生を予告した金型として話題となった。企画展の会場に繋がる通路にはGKの思想が並ぶ。
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「第1章:茶碗から都市まで」では榮久庵とGK がこれまで手がけた製品を、実物や模型などで紹介 。「しょうゆの卓上びん」は1961年の誕生から変わらぬデザインで親しまれ、食卓の風景を変えたと言われる。1955年の「YA-1」はヤマハ発動機の製品第1号車。GKはヤマハの創業以来、モーターサイクルのデザインを手がけている。
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2006年、JR東日本・中央線から投入された「E233系」は、都市を走る道具としてあるべき姿を考え内外装をデザイン。簡易式ドリップコーヒーの先駆け「モンカフェ」は、六角形の外箱に曲線を組み合わせた優雅な雰囲気などの演出性が高められている。
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GKデザイングループは、例えば海外のデザイン会社やデザイナーのように製品に自らの名前が出ることは無い。故に鉄道車両、建機から家電製品、魔法瓶、旅客機のシート、ロゴマークなど「これもGKだったんだ!」という、我々の生活にとても身近なモノのデザインがGKだったことに驚く。誰もが知っている「しょうゆの卓上びん」のように時代に左右されないシンプルなデザインをはじめ、GKが手がけてきた作品にはモノに対する深い考えがある。そんなGKの考えをじっくりと見つめ直すことが今回の企画展の狙い。ちなみに2年以上の準備期間を経て、開催となったという。
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「第2章:創造工房」では新たなコンセプトや技術の開発といったGKの活動の一環を紹介。モーターショーに参考出展されたバイク、子どもを同乗させながら親子で楽しむことができる丸石サイクルの自転車&キックボード試作車(2002年)、自主研究「昇降式車いす」などが見られる。
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「第3章:道を求めて」では「道具千手観音像」をはじめとする「道具寺道具村構想」を紹介。「第4章:美の彼岸へ」は榮久庵とGK によるもう一つのインスタレーション作品 「池中蓮華」が広がる。意外や小中学生に好評だとか。
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