幻立喰・ソ

第37回 
「ソーリ! おいなりさんとはどんな関係なんですか」
「ん、まぁ〜っ、その〜ぉっ」(後編)

 おいなりさんの話と写真だけで乗り切った(つもり)の前編、おつかれさまでした(貴方様ではなく自分に対して)。
 ふざけんなっ! と、噴飯やるかたなしのご様子、手に取るようでございます。

 後編もおいなりさんからスタートします。
 おいなりさんと言えば田中角栄。いきなり何を言い出すんだこのすっとこどっこいは。好物はおいなりさんじゃなくって、コーちゃんがくれたピーナッツ(またはピーシーズ)でしょ! との困惑をよそに話は進みます。スタート早々ではございますが、おいなりさんのことはここできっぱり忘れてください。小佐野さんも言ったじゃないですか「記憶にございません」って。

 角さんといえば新潟。
 新潟といえばイタリアンでもタレカツ丼でもバスセンターのカレーでもなく、昨年開業30周年を迎えた上越新幹線です。
 おなじみの角さんのベストセラー、日本列島改造論に書かれたように日本全国を新幹線で結ぶため全国新幹線鉄道整備法に基づき、1971年東北新幹線(2010年やっと全線開業)、成田新幹線(挫折)と共に上越新幹線の建設が始まりました。建設したのはこれも角さんが設立に尽力したという日本鉄道建設公団(2003年解散)。抜かりなく「運輸大臣の指示でどんどん新線を建設しますけど採算は知ったこっちゃありません。赤字だろうがなんだろうが経営は国鉄がやるんですよ」という日本鉄道建設公団法も成立させました。
 この結果、赤字ローカル線を整理する一方で新しい赤字ローカル線を押しつけられるという、8時だよ全員集合の後半コント状態(のイメージ)になり、国鉄の借金はゆき〜だるま。破産へとゴロゴロ驀進していくのですが、それはまた別の話。現在未成線と呼ばれる作りかけの線路跡(というのでしょうか?)が、観光名所や産業遺産になったりしていますが、これも鉄建公団と鉄建公団法の置き土産です。

 税金で新線を作って、最終的には借金も税金で精算。ならば最初から作らなければよかったのにと、子供でも解るんですが、解っているのにお金を使いたがる人が国を動かしているんです。利権の甘い汁は美味しいんです。美味しい「りけん」は理研はわかめスープだけにしてほしいものです。だから、ちゃんと選挙に行かないとダメですよ。若人のみなさん。

 話を上越新幹線に戻します。角さんの選挙区、かつての新潟3区には上越新幹線の駅が3つもあります。通り道なんだからあって当たり前ですが、ちょっと多くねえ? さすが角さん、地元に急行を停めたくらいで辞任に追い込まれた某運輸大臣とは、やはり角だけに格が違います。ちなみに神楽坂は日本で唯一時間によって一方通行の進行方向が変わる(0-12時は早稲田方面→飯田橋方面、13-24時は逆)のも、角さんが目白の御殿から国会へ通うためという噂が定説です。しかしこれは残念ながら都市伝説のようです。
 コンピューター付ブルドーザー(今の感覚に置き換えるとスパコン付ブルドーサー)と言われた角さん、いい意味でも悪い意味でも超大物の政治家でした。娘さんは?

 で、再び話を上越新幹線に戻して……
●列車名はほぼ「かくさん」に決まっていた(根も葉もない大ウソ)。
●大清水トンネルの下り坂を利用して当時国内最速の275km/h運転をしたとか(これはホント)。
●ある編成はアレがよく出るので至るところにお札(「おさつ」ではなく「おふだ」)が貼ってあるとか(よくある噂)。
●初代列車名の「あさひ」は長野新幹線「あさま」と乗り間違える人が多くて「とき」に改名したとか(列車名の前に行き先を見ないで乗るんですか?)。
 等々、枚挙に暇がありませんが「上越地方を通っていないのに上越新幹線とはこれいかに?」も有名です。「上越地方の上越ではなく、上野と越後の頭文字」というのは半分ウソです。正解は「上州と越後」の頭文字。なんで上州? かといえばと、上越線(在来線)の起点が高崎(上州)だから。国鉄時代、新幹線は在来線の増線扱いだったので、なんの疑いもなく上越新幹線になりました。
 ためになったでしょ? 同窓会、女子会、ダンパ、合ハイ、合コン、新歓コンパの席で「知っとるけ?上越新幹線の〜は〜で〜」とうんちくを披露し、大いにウザがられましょうではありませんか。


200

E1

E4
はげしくディープな展示物でおなじみ新津鉄道資料館に保存されている初代200系。伝統のデザインを踏襲してカッコイイのですが、後期は写真をクリックすると出てくるこんな色になってしまいました。(2013年8月新津鉄道資料館・へんな色は2008年6月越後湯沢) 1994年に登場したオール2階建て新幹線の元祖がE1系。後期はスピードが遅いため上越新幹線のみで運用されていました。が、昨年引退してしまいました。空力なにそれ? みたいなのっぺり顔がステキです。(2007年2月ガーラ湯沢) 現在上越新幹線でよく目にするのがE4系。列車名にMaxが付く列車はオール2階建てのこれがやってきます。E1系に比べると空力顔ですが、なんかアンバランスでステキですが、東北新幹線で失業するE2系がやってくるのでそうそう長くはないかも。(2007年2月高崎)

 そんなおちゃめな30歳の上越新幹線に、浦佐という駅があります。東京から9駅目、距離にして230km弱。駅前にはちゃんと角さんの銅像が建っています(しかも屋根付きです。

 大は小を兼ねるが信条の国鉄仕様で作られた駅は、重厚長大無駄満載。2012年の平均乗降客は1日約1400人(上越新幹線では下から2番目)と少ないので、都会っ子は「ゴーストタウンじゃないのか!」と心底驚きます。

浦佐 浦佐
浦佐駅です。新幹線と在来線の乗り換え駅です。駅前から山が見えます。といいますか駅前が山です。(2013年1月撮影)

 
 広すぎるコンコースに改札口と売店があるのですが、さらにその奧、なにもこんな奧じゃなくてもという所にお目当ての池田屋はありました。

 正しい昭和50年代和風造りの立喰・ソで、上品そうなおばあちゃんがぽつんと店番をしているカウンターだけの純正立喰・ソでした。店の目の前にはなつかしいへんな形をしたベンチがありますので、座ってゆっくりすすることができます。冬の寒さが厳しい雪国らしく、ベンチには手作りであろうかわいい座布団がちょこんと置かれていました。 


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浦佐駅前の屋根付き銅像です。竜飛岬にある津軽海峡冬景色歌謡碑はボタンを押すと、かの名曲が流れます。この銅像もボタンを押すと「まぁ、その〜ぉ」のかの名調子が聞こえたらいいのにと思うのは私だけでしょうか。(2013年8月)

 
 寒心するしかない無駄に広い空間ではありますが、この座布団に座って、おばあちゃんが丁寧に作ってくれたソをすすれば、異境の旅人をもてなす雪国の人の温かい心が伝わってきます。居心地がよくて、といいますか新幹線が1時間に1本しかないので小一時間ほどぼんやり座っていましたが、結局お客は私だけ。隣にコーヒーショップもあったようですがすでに廃業していました。逆境に負けずがんばって欲しいと願いつつ次の目的地へ向かいました。

 
 店頭に貼り紙が出されたのは、1ヶ月後のことでした。

お客様各位
上越新幹線開業以来
30余年、ご愛顧いただき誠に
ありがとうございました。
誠に勝手ながら平成25年3月31日
をもちまして、そば店を閉店させて頂きます。
長い間、お世話になりましたこと、心より
御礼申し上げます。ありがとうござい
ました。
駅弁につきましては、今後も長岡駅にて
販売継続しております。長岡へお出か
けの際には、ぜひお立ち寄り下さいませ。
池田屋 店主

 こうしてまた、ひとつ立喰・ソのともしびが静かに消えました。新幹線の駅といえど容赦なく幻立喰・ソ化が進行する日本の現実。ねじれがなくなった政府自民党はどうお考えでしょう。考えているわけありませんね。

池田屋
新幹線の改札口を出た暗い奥の方に池田屋はありました。まさかこんな奥まったところに立喰・ソがあるなんて気が付かない人の方が多いでしょう。なんでこんな奧に配置したのか不思議でしょうが、お役所しごとなんてこんなものです。というか、実はなーんにも考えていなかったのかも。(2013年1月撮影)

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↗池田屋のおばあちゃん、いつまでもお元気で。(2013年1月撮影)
↖身も心も温まった山菜そば(320円)は残念ながら忘却の彼方に。ベンチの座布団は、これからも冷え切った旅人の心と尻を暖めて続けてくれることでしょう。(2013年1月撮影)
←と思ったら、店舗も椅子も跡形もなし。あまりにびっくりして、思わずピンぼけ(言い訳)。(2013年8月撮影)

■立喰・ソNEWS

●天ぷらの過ぎたるはおつゆ及ばざるがごとし。

JR東日本の駅ソは、「あじさい茶屋」や「大江戸そば」「いろり庵きらく」など最大手NRE(日本レストランンエンタープライズ)を始めとして、「あずみ」を展開するJEFB(JR東日本フードビジネス)、「一ぷく」のJR東日本都市開発、エキナカを展開するJR東日本リテールネットの「KIOSK」(売店じゃなくて駅ソの)など、グループ系列化が進行しております。そんなJR東日本包囲網の中にあって、どういうからくりなのか上野、池袋、国分寺、そして名古屋などでどっこい生きているのがマニアにお馴染みJTSことジャパントラベルサービスです。名古屋駅名物のホームのきしめんもここが経営しています。上野駅では7、8番線と11、12番線にある「爽亭」がJTSの立喰・ソなのです。先日久しぶりに視察に訪れると私を歓迎するかのように「夏季限定大サービス トッピングのせ放題そば」というポスターが貼ってありました。かき揚げ天、揚げ玉、ごぼう天、生玉子、春菊天、油揚げ、わかめがトッピングし放題で、しかも価格はかけ260円にわずか150円プラス(冷やしは100円増し)という太っ腹なこの企画。ただし品川駅名物だったおこのみそばのように自分で好きなだけ入れ放題というシステムではなく、入れたい具をチェックしておばはんに渡すという、セミセルフ方式でした。つまり、入れ放題というのは量ではなく種類を指しますので誤解なきように。

下の写真はわかめ、油揚げ、春菊天、ごぼう天、生玉子と控えめ? にオーダーしたものです。のはずなのにああ、それなのに私のチェックミスか、おばはんが間違えたのか、生玉子ではなく揚げ玉が投入されていました。天ぷら2つに大量の揚げ玉の大活躍により、ソをすするよりも早く、多い日でも安心状態でおつゆがどんどこ吸い上げられ大惨事になりました。その状態も写真に撮ったのですが、岐阜県にある日本三大名湯のひとつと同じ発音の物体状になってしまったので、掲載は自粛します。天ぷらはせいぜい2つ。揚げ玉は要注意。せっかくのJTSのご厚意を無駄にしないよう心掛けましょう(という自戒)。




夏季限定メニュー



夏季限定メニュー



夏季限定メニュー
この下に生玉子があると思っていました。しかし玉子がプラスされていたら、かなりリアルなあれ状態になっていたことでしょう。おいなりさんは別料金です。念のため。 限定メニューの食券をおばはんに提出すると、このようなチェックシートをくれます。希望のトッピングを鉛筆でチェックするだけですが、提出前に再確認を怠りなきよう。

 

●第35回の追加といいますか訂正といいいますか

北陸本線TK駅の南口(瑞龍寺口)と東口(古城公園口)の両門をがっちり押さえるIJ。南口は立喰・ソに見えないオシャレさん、東口は再開発真っ直中で仮店舗で営業中です。で、ちゃんぽんですが、以前はソ1人前+ウ一人前のフルサイズのみでしたが、今はハーフ&ハーフがありました。しかもかけと同じ270円です。食べたらかなり美味しかったです。一生食べないだろうなど、相変わらず度量の小さいところ披露してごめんなさい。おわびに現役店ですが写真を掲載させていただきます。TK駅を訪れたらお土産話に、ぜひすすってみてください。


ちゃんぽん
感動のあまりブレブレ写真ですみません(100%言い訳)。

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在600店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べただけではたいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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