山崎:確かにパリスタートは寒かったですね。今回、気候的に寒いということはありませんでした。昔サハラでは道がないので飛行機での移動がありましたが、南米では一般道を多いときで800キロぐらい移動します。むしろ、その方が大変でした。
大変という反面、毎日景色が変わるから、楽しみ、というのもありました。冒険心、アドベンチャーというのは変わらないですね。気温差は少なくなったかもしれませんが、標高はゼロメートルから4800メールまであります。移動距離も長い、見たこともない風景が出てくる。
それに移動をするサポートカーにもGPSがついていて、最高速も制限されますし、サポートカーが速度違反をすると、ライダーにペナルティーが科せられる。ライダーだけではなく一体感、チームワークというのは必要ですよね。参加意識はメンバー全員がライダーと同じように持っていたと思います。
松井:移動は楽しまれましたか? 皆さんはいかがでしたか?
森:見たことのない景色、山々が5000、6000メートルというのが続く景色をみながら、標高の高いところでは高山病になるスタッフもいたり。また、沿道で見物をする人がものすごく多く、連日70万から80万人という人が沿道で見ている訳です。その人達がレーサーではなくてもサポートでも分け隔てなく声援を送ってくれる。ああ、ダカールラリーに参加しているんだ、という気持ちになりました。
宮崎:サポートカーがガソリンスタンドに入って停まっただけで、子供達がワッと集まってきて、サインをしてくれ、写真を撮ってくれ、と。本当に俺たちで良いのか? と。白いかわいい服を着た子供がここにサインをくれ、と言われて、こんな服を汚してお母さんに怒られないのかな、と思ったり。
松井:国による熱さのちがいは?
山崎:1位はアルゼンチン、2位はペルー、3位はチリでしたね。アルゼンチンは圧倒的に熱い。熱狂的です。お国柄でしょうか。アレは行かないと分らないかもしれません。
野口:沿道の箱根駅伝状態が百数十キロ続く……。
宮崎:ビバーク地でも夜遅くまで多くの人が見物していましたね。
山崎:見物人の数は桁違いですね。ビジネス化している部分もあると思いますが、あれだけ人が動くと金も生みますよね。国もお金を払っているし、ASO(ダカールラリー主催者団体:アモリ・スポル・オルガニザシオン)もお金を儲けている。上手いですよね、主催者も。
森:各地の観光局とタイアップして、ビバーク地には毎晩多くの出し物も用意されていました。それだけ、向こうの地域もビジネスチャンスとしてとらえているんでしょうね。毎晩何かのショーや踊りとか音楽とか流れていましたし。一度も観には行けませんでしたが(笑)。
山崎:日本人のチームが出来たら面白いですよね。ライダーはこうした人がいますよ、我々はバイクを出しますよ、色々なメディアはこんなカタチで雑誌やテレビが動きますよ、とダカールへの参加が出来れば面白いですよね。
松井:ダカールの熱狂を伝えるにはそうした手段も必要ですね。
山崎:動画もずいぶん出回っていますが、もう一歩踏み出せれば良いですよね。
松井:2014年のラリーに、皆さんは現地に行く予定ですか?
山崎:(皆のほうを見て)行くんじゃないですかね……。
森:行きたいですね……。
野口:自費でも行きたい。それぐらい苦しかったけど楽しかった。
松井:HRCの社長、鈴木哲夫さんは、2月8日に行われた“2013年Hondaモータースポーツ活動計画発表会”前の取材会で、「草食系なんて言われているけど、若い人たちがダカールでは本当に頑張ってくれた」と話していました。
野口:二輪専門誌でその記事を読みました。
松井:今回はダカールラリーという現場でしたが、仕事の中ではこうしたスリリングな場面も実は珍しくないものですか?
野口:僕は去年の6月までプライベートでも海外に出たことがなかったんです。所属部署の上の人に「これが海外初めてだから楽しみなんです」と話をしていたんです。それがブラジルだったのですが、帰国して報告の電話をすると「来週からモロッコ出張よろしくね」と言われ「え!モロッコですか……」と。去年の6月から6回海外出張に出ているんですが、まさかそんなに急に海外に行くようになるとは思いませんでした。人生が180度変わりました。
松井:森さんは?
森:旅行が好きなので、ペルーも二回目でした。でもモロッコの暑さはびっくりしました。食事などは問題ありませんでしたが……。
宮崎:私の場合、アルゼンチン現地法人用のキットバイクを持ち込んだテストがあってダカール関連のテストはそれが初めてでした。モトクロスやロードレースでの海外経験がありましたが、ダカールのようなスタイルの海外は初めてでした。