『電動アシスト自転車、ヤマハPASの2013年モデルに乗る。』
アップデートを積み重ね、ヤマハの電動アシスト自転車・PASが今年で遂に生誕20周年を迎えた。ここ近年では年に2回ほど話題を提供してくれるPASだが、毎年春に開催される報道向け試乗会にて、2013年モデルの目玉であるトリプルセンサー搭載モデルを試す機会に恵まれる。そこで、トリプルセンサーを採用したPAS 「ナチュラL」はどこが新しいのか、同じタイヤ径をもつ従来モデル(ダブルセンサー)と比較してみた。
何の先入観ももたず、いつもの自転車に乗る感じでフツーに走ってみると、いずれのモデルも電気による力強いアシストがあり、あらためてPASの楽チンさを実感するものの、センサーの数の違いによる走りやフィーリングの違いがよくわからない。
試乗前の説明によると、トリプルセンサー搭載モデルは新たに「クランク回転センサー」が加わったことで、ペダルを漕ぐ足が真下あたり(反対側の足は真上あたり)での微妙なクランク回転速度の違いを察知。その近辺のアシスト力を保持することで、より滑らかなアシスト力を提供するという。
ということで、いずれのモデルもサドルの高さを目一杯上げ、平坦な道を時速8kmほどのゆっくりなスピードて再度検証してみたところ、違いが実感できた。ダブルセンサーのモデルはペダルを漕ぐ足が真下となり、ペダルと共に真上にある反対側の足で漕ぐ瞬間に明らかなアシスト力を感じるのだが、トリプルセンサーのモデルは継続的にアシスト力を保持している感じだ。PAS開発者が常に目指している通常の自転車の感覚により近いフィーリングというものだろう。
このPASの進化はクルマで言うところのターボチャージャーに似ているかもしれない。感覚としてはアシスト力のラグが無い。ああ、これがヤマハのいう「スムーズな乗り心地」なんだなと。脚力のある男性からしては大きな恩恵はないだろう。実際、ペダルを踏む力が弱い人や、ゆっくり漕ぐシーンで特に効果を発揮するという。
私個人的な感想で言うと、ペダルを踏んでほんの僅かなタイムラグのあとにアシスト力を発揮する感覚はすなわち、電動アシスト自転車に乗っている感じを実感しやすい。ただ女性、お年寄りからすると、あのアシスト力の立ち上がりに違和感があったのかもしれない。実際のところ、購入する人の7~8割が電動アシスト自転車に乗るのが初めての人だそうだ。
他社の電動アシスト自転車に乗ったことはないが、このキメ細やかな制御、やはり電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハじゃなきゃできないことだろうなと思った。
あと2013年モデルの特徴である、各アシストモード(強・標準・オートエコ)別残りアシスト走行可能距離表示を新たに搭載した新型スイッチ。新しい機能が追加されたにも関わらず、何の説明もなくてもわかりやすく、すぐに使えるところは相変わらず素晴らしいと思った次第。(高橋二朗)
試乗しているのは3月14日に発売されたPAS ナチュラL、メーカー希望小売価格108,000円。 この他、PAS ナチュラLにボディと同色のリアキャリアなどを装備した上位モデルのPAS ナチュラL デラックス、同110,000円、ファッショナブルデザインモデルのPAS Ami、同113,000円(3月31日発売)、学生をメインターゲットとする機能充実モデルのPAS CITY-L、同113,000円、通勤・通学仕様のスタイリッシュモデル、PAS CITY-S、同108,000円(両モデルとも3月29日発売)などをラインナップ。 詳しくはお近くのPASショップ、またはヤマハ発動機(フリーダイヤル:0120-090-819)、ヤマハのWEBサイト、http://www.yamaha-motor.jp/へ。 |
2013年のPAS新モデル最大の特徴は、アシスト能力をさらに進化させた“トリプルセンサーシステム”の搭載だ。2012年モデルまでは、トルクセンサーとスピードセンサー、という2つのセンサーによる“ダブルセンサー”システムだったが、さらに3013年モデルでは、クランク回転センサーという第3のセンサーをプラスし、より楽にスムーズで自然な乗り心地の実現をはかったという。従来の“ダブルセンサー”でも実用上はまったく問題なかったのだが、人間の感性にあったよりきめ細かなコントロールを実現するための改良といえよう。
ペダルを踏む力の弱い方やゆっくり漕ぐことが多い方に、特に効果を発揮するというクランク回転センサー。従来の“ダブルセンサー”では、車速とペダルにかかる力の具合によってアシスト量をコントロールしていたのに対して、“トリプルセンサー”システムでは、さらにクランク回転センサーでクランクがどのくらい回されているかの情報をプラスしてコントロールするようにしたという。何故クランクの回転か、ということになるが、トルクセンサーのみでは踏む力そのものが弱かった場合、相応して弱いアシストしか得られないことになってしまう。また、ゆっくりとペダルを漕ぐことの多い人の場合でもアシストが足りない状態が多くなってしまうことがあるという。クランク回転センサーがプラスされたことで、ペダルにあまり力が入れられなくても(トルクセンサーが受ける情報が少ない状態)、クランクが回されていることが分かれば、それは乗り手がペダルを踏んでいること、アシストを求めている状態だと判断して、より適切なアシストを行ってくれるという仕組みだ。
通常の発進時のようにクランク位置が水平に近く、しかも足を踏み降ろすカタチになるため力が大きくかかった時は、トルクセンサーのおかげでアシスト量も最大にかかる。これがまさしく電動アシストを一番ハッキリと実感できる瞬間だ。もちろんそういった場面でのアシストは必須だが、ペダル自体にはあまり力が入らない状態、ゆったり走ることの多いユーザーや、力の弱い方にとってこそアシストは必要で、トリプルセンサー・システムは、こういうケースでも、ことさら存在を意識させずにアシストしてくれる、より使い勝手のよいアシストシステムになったといえるだろう。
2番目の特徴は、バッテリー切れの不安を軽減する新型スイッチの採用だ。2012年モデルでも車速とバッテリー残量が細かく確認できるデジタルメーターを備えていたが、さらに2013年モデルでは、選択している走行モードごとに、あと何kmアシスト走行が出来るかの目安を表示してくれる機能も備えた“スリーファンクションメーター”が追加となった。そして3番目の特徴が、バッテリー高の低減などにより、サドル高を従来よりも最大で25mm下げた点。このほかPAS Amiではバッテリー容量を従来の6.6Ahから8.7Ahへ約1.3倍増量、走行可能距離を伸ばしたり、PASナチュラLシリーズでは商品力を高めながら、価格を従来より3,000円低減している。
またヤマハ発動機では、電動アシスト自転車用のシステムキットを、欧州の自転車メーカー2社に供給することを発表した。オランダに本社のあるACCELLグループ傘下でドイツの自転車メーカー、WINORA(ヴィノラ)と、デンマークの自転車メーカー、H.F. Christiansenの子会社であるCycleVisionの2社で、これにより電動アシスト自転車システムキットの供給は、昨年より取引を開始したGIANT ELECTRIC VHICLEと合わせて3社になる。ちなみに欧州は、E-BIKEと総称される電動アシスト自転車の需要が、2012年には85万台に達し(ヤマハ発動機推定値)、世界でも有数の電動アシスト自転車市場となっているという。
2013年モデルで採用された“3ファンクションメーター”。従来のメーターのようにバッテリー残量と車速をデジタル表示するだけでなく、選択している走行モードごとにあと何kmアシスト走行できるのかの目安を表示する機能を備えた。ボタンレイアウトも変更し、より操作しやすく配置。夜間の視認性に優れたバックライトも装備している。 |
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