Z250は先日登場した新型Ninja250をベースに仕立て上げられたネイキッド。レトロモデルではなく、スポーツバイクをベースにした戦闘的な走りのネイキッドをストリートファイターと呼ぶ。このZ250のレシピはこれになる。カワサキにはこのカテゴリーに、まずパイオニアと言えるZ1000。そして4気筒モデルを思い切ってタイ生産にして価格を魅力的なものにしたZ750の後継モデルZ800。そこに軽二輪クラスでは本格的という表現を使っていいこのZ250が加わったワケだ。もうシリーズと呼ぶにふさわしい。
初対面でとにかく驚いたのがそのデザイン。Ninja250と見た目で違う部品は、顔と車体サイドのパネルとハンドルだけなのに、完全に別のバイクになっている。まずプロポーションが素晴らしい。こういうのは排気量が小さくなると、それと共に車体が小さくなるから全体のバランスが崩れてしまうことが多々ある。Z250はそれがない。そう見えるのは顔の大きさだと思う。タンク部分やテール部分に対して小顔になっているのがミソだ。パキパキっと折れ曲がった面と、ゆるやかにポジとネガにうねる面で実車は写真よりグラマラス。
好き嫌い、美しいかそうでないかは人それぞれだから言及しないけれど、間違いなくこれまでの国産250にはなかった仕上がりのデザインだと思う。私個人は車体を眺めて素直に「カッコイイ!」という言葉を発した。最近のカワサキ車デザインはこれまであった日本的な呪縛から逃れている。ある意味でヨーロッパ的というか、カワサキ独自の個性が出ていながら秀逸だと感じる。「日本車は壊れなくて良いバイクだけど、デザインがね……」とは言わせない説得力。
こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/i9ePbYUEG_M」で直接ご覧ください。 | 国内導入カラーは2色。パールスターダストホワイトとフラットエボニー。 |
エンジン、車体などは基本的にNinja250のままだ。だからケツ上がりでシートが高そうに見えても身長170cmの私でも両足ベッタリの足つき。Ninjaのセパハンに比べタレ角が小さいパイプアップハンドルは、手前への絞りが適度にあって、オフ車のようにヒジが前に出ることがないから腕が疲れにくい。ステップの位置は前すぎず、さらに高めでライディングポジションはコンパクト。でも窮屈な感じはない。固めで低反発のシートは私好み。
起源は’80年代のGPZ250Rまで遡れる(Z250FTまでは戻らないよ)歴史のあるエンジンが、進化を続け洗練されたものになった。バランサーを内蔵した180°クランクの水冷直列2気筒は、スロットル操作に対して反応が的確で、回転上昇に淀みがなく、気持よくリミットまで回る。カタログスペックの最高出力は11,000回転、最大トルクは8,500回転で、高回転まで回さなくちゃお話にならないと思う人もいるかもしれないけれど、そんなことはない。
アイドル回転数でクラッチをつないでも前に出る低速トルクがあって、そこからフラットに近く力が湧いてきてスムーズに高回転まで。試乗のメインとなった街中では6段変速の5速で40km/h付近で流しながら、クルマに遅れず難なく加速が出来てしまうフレキシブルさ。それほど加減速しなければ、その速度でトップ6速のまま走ることも可能だ。速く走りたいなら8千回転付近から上をキープする。フレームの懸架にラバーマウントを使っていることも手伝って振動は少なく、スロットルを急激に開けたり閉めたりした時の挙動は穏やか。交通の流れの中でストレスなくリードできた。余談だけど、海外にはドリブンスプロケが少し大きな二次減速比がショートな加速重視仕様があるようで、それも面白そうだ。
Ninjaよりカウルが小さくなって乗っている印象はがらっと違う。当然ながらより小さいオートバイに感じる。それはハンドリングにも言えることで、前が軽くなったことと、アップハンドルで力点の位置(グリップを手で掴む位置)が変わっていることで敏しょう性が増した。高めのステップが踏み込みやすいこともあって、気持よくさっとバンクさせてクルクルと旋回できる面白さ。スポーティーだ。残念ながら今回はワインディングや高速道路へ連れ出せなかったので、そこのところは体験してないけれど、Ninja250の仕上がりを考えると心配はしていない。
フロントブレーキはレバータッチが良くて、握れば握っただけ効くもの。タイヤのグリップも把握しやすいから強く減速しても、効きを難なくコントロール。リアブレーキも唐突な所がない。リアサスペンションのタイヤを地面に接地させる能力も旧Ninjaに比べると上がっているので簡単にはロックしなかった。ハンドルマウントの尖ったミラーが意外なほど(失礼)後ろが見えるのもいい。
Z250は軽いフットワークで、幅の広いライディングスキルの人達が自由自在に不安なく乗れる完成度に、目を引くデザインが融合したオートバイだ。大排気量モデルに混ざっても引け目を感じさせないほど存在感がある。Ninjaでカウル付本格250スポーツを復権させ、そのカテゴリーを牽引してきたカワサキが、また大きな先手を打ってきた。話題になりそうな魅力的なモデルが加わった。(濱矢文夫)
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