NCR=ネポティ・カラッキ・レーシング、ドゥカティのワークスレース活動を行なうレーシング部門。レーサーの製造の他、各国のドカで戦うチーム向けにパーツを造り供給している。
そのNCRが手掛けたレーシング・パンタのレプリカモデルがNCR600パンタだ。それは、一昨年の鈴鹿8時間耐久レースでパワーハウスが完走させたレーシング・パンタを基本としている。
デザイン等はレーシング・パンタと異なるが、エンジンは600SLパンタのものをパワーハウスのノウハウも得て、NCRがチューンしている。ノーマルのエンジンのボアを1mm拡げ、81mm×58mmの597.4ccで72ps/10500rpmを得る。
車重は乾燥でわずか137kg! クォータークラスの車重に等しく、750クラスのパワーを持つ。魅力的な数値だ。
そのエンジンを抱くフレームは、基本的に600SLパンタのものと同様なレイアウトながら、材質をクロモリ製の1mm厚のチューブに変更して補強も加えられている。
レーシングマシンの製作の合間に造られるNCRパンタは、年間に僅か5台程しか誕生しない。また、それらはひとつの形に留まらず、仕様はいろいろあり、その仕様によって当然価格も異なる。しかし、この公道マシンが、市販レーサー達と同程度の価格であっても、それだけの価値を見い出せるだろう。
ボトムケースをマグネシウム合金、インナーチューブをクロモリ製とし、減衰力調整ダイヤルを備えるマルゾッキ社製のフロントフォークはレーシング・パンタと同様。また、モノショックのリアショックもマルゾッキ社製で、スイングアームもクロモリ製でレーシング仕様と共通のものだ。
トリプルディスクブレーキは、ブレンボ社製のフローティング・ディスクプレートに対向ピストンキャリパーを備える。
3本スポークのキャストホイールは、マービック社製のマグネシウム合金製で、中空タイプのスポークとして軽量化にもタイヤの放熱にも有効なタイプのものだ。
ただ単に、パーツ類をレーシング仕様と同じにしたというだけではない。もちろん、エンジンのチューンもある。しかし、更に操安性までも、レーサー並に高いレベルを与えている。
フロントに16インチタイヤを履かせるが、レーサーのように直立に近く立たされたキャスター角、小さなトレール量で、コーナリングアベレージのアップを狙っている。軽快感というよりは、安定感につながる適度な重さを保つ操縦性とされている。
イタリアン・マシンに日本人の情熱が影響して造り上げられたNCRパンタ。
リッター当たり120psを発生し、1.9kg/psのパワーウエイトレシオ、まさに乗り手の血を熱くするTT F-Ⅱレプリカだ。