サンデー・オフロードライダーが今年の全日本チャンピオンマシンを走らせた。ワークスモトクロッサーの最新のパフォーマンスを一般ライダーはどう感じるのか? ホンダさんならではの粋な計らいで試乗させていただいた。 | こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/ddkzjPtDqB8」で直接ご覧ください。 |
知らない人が多いと思うので念の為に説明すると、試乗ライダー(私)が初めてオン車で土の路面を走ったのが4年前の40歳の時。それからずっぽりダート遊びにハマって、林道だけでなく、最近はCRF250Xでクロスカントリーレースやエンデューロレースの底辺で楽しんでいる。そんなレベル。ちなみにジャンプが多いモトクロス競技をやったことは皆無。試乗コースになったオフロードヴィレッジは2回しか走ったことがない(内1回はCRF100F)。
そして、試乗の日は朝から雨……。モトクロスで最高のスペシャルマシン+初心者じゃないけど毛が生えたレベルの飛べないライダー+慣れないコースのぐちゃぐちゃマディ。なんという取り合わせ。ここでお知らせ、きちんとしたワークスマシンのインプレが読みたい人は国際級のライダーが乗ったオフロード専門誌を読んだ方がいいだろう。
国内二輪メディアで試乗が許されたのは7名だけ。「その中のひとりが、なんでお前みたいなヘボライダーなんだ!」というツッコミがあって当然。高価なパーツを使っている(であろう)ワークスマシンを壊さないように気をつけて乗るけれど、もしもの時があったらご迷惑をおかけするので、試乗の順番を一番最後にしてもらった。許された時間は15分。
跨って最初に気がついたのは、ハンドルバーが低く左右が短くて少しタレ角がついていることだった。モトクロスレースはやったことはないが、練習でCRF250Rを借りたりしたこともあるのでモトクロッサーを乗るのは初めてではない。この間はこのワークスマシンと兄弟の2013年型CRF450Rにも試乗した。キックでの始動性は良好だった。軽く踏み降ろしただけで簡単に目覚めた。キャブレターのCRFで鬼キックという姿は過去のもの。ましてやワークスマシンだし。
何よりもコースコンディションがところどころ水たまりになっていて強敵だったので、いつもよりさらにそろ~っとコースに入って走りだした。そこで驚いたのが前後のサスペンション。私から見ると同じ人間だとは思えないスピードで加速したり、飛んだりしている車両だから、もっと高い速度で高荷重をかけないといけないのではと思っていたけれど、低速でも前後のサスペンションがものすごく良く動いた。小さなギャップをゆっくり通過でも突っ張るような感じはまったくない。滑らか。
エンジンはパワフルで未熟者は獲って食われる────な~んてことはない。極低速でも安定していて、軽いスロットルをひねるとひねった分力が出る。レスポンスは流石にシャープだけど、唐突にパワーが出たり引っ込んだりするような部分がなく、トルクの出方がフラットでコントロールしやすい。残念ながら、このコンディションでレブリミットまで回して振り回せるほどの技量が無いからトップエンド近くの特性は判らない。ただ私が乗って走り回った回転数の範囲ではとっつきにくさはまるでなかった。
市販モデルとは違い油圧に変更されたクラッチのレバーは軽く、ミッションもスコスコ。車体の動きはとても軽い。よく動きながらダンピングが効いたサスで、ピッチング方向の動き、コーナーの倒し込みなどロール方向動きが身軽だ。2013年型CRF450Rに乗った時も軽い動きと思ったけれど、それを上回る。タイヤのグリップ状態が的確にライダーへ伝わって、使いやすいエンジン特性とも相まってヘボいライダーでもスロットルを開けていく時のスライドを制御しやすい。暴れ馬みたいになりにくくマディでもトラクションさせてロスなく前に進ませてくれた。
数周すると、“超絶マシンをどうやって操る”というものから、純粋に走ることに集中していった。動画を見てもらえれば判るように、ノロノロ、ショボショボレベル。それでも手足のように乗れて楽しいんだ、これが。
最高峰のレースで勝てるマシンは人にやさしく出来ている。オンロードでもこれが最近の定説。これもしかり。短絡した考えだと、意外と普通に乗れるから成田選手が凄いんじゃね、とだけ思う人もいるかもしれない。当然それはある意味で正解だろう。しかしライダーが持った前に進みたい欲求の足を引っ張らず忠実でいられるマシンに仕上げるのもとんでもないこと。私ごときのライダーにとっても寛容な高性能だった。走るだけならきっと初心者でも問題なく乗れる。貴重な体験をさせていただき感謝感激。
(試乗:濱矢文夫)
2012年のMFJ全日本モトクロス選手権シリーズの最上位カテゴリーIA1クラスには、2011年よりワークス活動に復帰した「チーム・エイチアールシー」がCRF450Rで参戦。2011年のIA1クラスシリーズチャンピオンでもある成田 亮選手のライディングにより2012年のシリーズチャンピオン・マシンとなっている。 |
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