成田亮チャンピオン決定

 今シーズンからTEAM HRCのエースライダーとして、Honda CRF450RでIA1クラスに参戦した成田亮選手は、全9戦18ヒート中14勝という圧倒的な強さを見せつけ年間チャンピオンに輝いた。昨年IA通算100勝を記録し、全日本のタイトルは過去7度、05年には本場アメリカAMAへのフル参戦も経験しており、スーパークロスの開幕戦で3位表彰台に立つなど、その実績は圧倒的で、ファンの多くがライバル不在「HRCで走る成田なら、勝って当たり前」と楽観視していた。

成田 亮、チャンピオン決定!

 その予想は前半戦で確実なものになり、第1戦熊本から7ヒート連続優勝を果たすなど、貫禄さえ感じる余裕のパーフェクトウインを繰り返す姿に、プレッシャーなど存在しないものと誰もが感じた。しかし、後半戦にわずかながら取りこぼしたレースがあったのも事実で、それは我々からには見えない本人にしかわからないプレッシャーからだったと、成田選手の口から本音がこぼれた。
 HRCでのチャンピオン獲得は至上命令で、成田選手はシーズン前から「勝つのが当たり前、自分の仕事はチャンピオンを獲ること」と力強く公言してきたが、その重圧は成田亮をしても、とてつもなく大きかったようだ。HRCの念願をかなえ、チャンピオンゼッケン1をつける権利を得た最終戦直後、成田選手の顔には安堵の表情があった。

■2012年はどんなシーズンでしたか?

成田:今年はチームも移籍したので、HRCのためにもチャンピオンを獲りたいと思っていました。年明けからアメリカに渡ってトレーニングを積んだのですが、チームのスタッフが本当に一生懸命やってくれるので、ボクもいい刺激を受けながらマシンの開発に取り組み、開幕を迎えるまでにいいマシンをつくろうと頑張りました。


■新しいマシン(CRF450R)での参戦となったわけですが、ニューマシンと一体になったという感覚を成田選手が持てたのはいつ頃なのでしょうか。シーズン前ですか、それともシーズン中にいい感じになってきたのでしょうか。


成田:シーズンを戦ったバイクに乗り始めたのが3月頃でしたから、開幕まで1ヶ月も乗っていない状態でシーズンに突入しました。ですからマシンに慣れてきたのは最近です。それでも昔ずっとホンダに乗っていて、すごく相性のいいバイクなので、契約したとき(実際にバイクに乗る前)からこれはいいフィーリングでシーズンを戦えると思っていました。


成田 亮、チャンピオン決定!


■CRF450Rはどんなマシンでしたか?


成田:サスペンションの動きがよくトラクション性能も言うことなし、すごく乗りやすいですね。レースを見ていただければわかるとおりスタートも出れますし、今回のヒート1では出遅れたのですが、コーナリングで詰められるバイクなのですぐに1コーナーか2コーナーではトップに立つことができました。

こちらで見られない方、もっと大きなサイズで見たい方は直接youtubeでご覧下さい。

開幕戦HSR九州(熊本)

開幕戦HSR九州(熊本)
開幕戦HSR九州(熊本)
新たな体制での初レースということで、ヒート1のスタート前はすごく緊張したという成田だったが、両ヒートで優勝。タイトル奪取に向けて最高の形でスタートを切った。

■結果的には18ヒート中14勝という圧倒的な強さ。トップチームであるHRCと成田選手の組み合わせなら、チャンピオン獲得はそれほど難しいことではなかったのでは?


成田:うーん、まぁ難しくはなかったですけれど、やっぱりホンダ(HRC)っていうネーミングの中でのプレッシャーはかなりすごいものがあって、それが後半戦に負けたレースがあった原因かなと自分では思っています。

※2012年シーズン、成田亮選手がヒート優勝しなかったのはわずか4回。第4戦SUGOヒート2:2位、第7戦名阪ヒート2:11位、第8戦広島ヒート1:6位、第9戦SUGOヒート1:5位のみで、残りはすべて1位となっている。

第2戦オフロードヴィレッジ(埼玉)

第2戦オフロードヴィレッジ(埼玉)
第2戦オフロードヴィレッジ(埼玉)
ヒート1はスタートから一度もトップの座を明け渡すことなく独走で勝利。スタートでやや出遅れたヒート2も、混戦の中で巧みに順位を上げて、1周目からトップ。

■最終戦はヒート2を待たずにシリーズポイントの累計でチャンピオンが決定しました。


成田:やはり優勝してチャンピオンを決定したかったのですが、転倒により5位フィニッシュでの決定でした。ただ、今シーズンの目標としてきたチャンピオンを地元で決定することができ、充実感で一杯です。

※11位以内でゴールすれば自力でシリーズタイトルが獲得できる状況であった最終戦SUGO。その決勝ヒート1では1周目からトップに浮上するも、ラスト3周となった15周目にまさかの転倒。5番手に順位を下げてのフィニッシュとなった。

■チャンピオンを決めたあとのヒート2は、独走のチェッカーフラッグでしたね。


成田:そうですね。やっぱりIA1には速い人がいっぱいいるので気は抜けないですけど、ヒート2はチャンピオンらしい強い走りで一生懸命走りました。これで全9戦、すべてで勝つことができました。本当は全ヒート優勝したかったんですけどね。来年は必ず、全ヒート優勝したいと思います!

第4戦スポーツランドSUGO(宮城)

第4戦スポーツランドSUGO(宮城)

第4戦スポーツランドSUGO(宮城)
第4戦スポーツランドSUGO(宮城)
残り5分を切った14周目にまさかの転倒を喫し、2番手に後退。しかし、すぐに再スタートした成田は次周に新井を抜いて再びトップに浮上し今季7連勝。ヒート2は2位。

■HRCで戦った1年間は、いかがでしたか?


成田:昨年までのチームが悪かったわけではないのですが、HRCはさらにきめ細かいサポートが受けられたと思っています。たとえばスタッフはパートごとに担当者がいて、自分の要求に応えてくれるようセッティングもとことんやってくれますし、マシンのコンディションを確認するライダーもいます。そういう意味では安心して、レースに挑めたと思います。


■とにかく強さが光ったシーズンだったと思いますが、なにか昨シーズンまでとは違った取り組みがあったのでしょうか?


成田:チームがかわったので心機一転、1からやり直しってことで、嫌いなトレーニングをたくさんやりました。トレーニングが好きな勝谷武史選手“TK”(元IA2チャンピオン)を雇ってボクのためにメニューをつくってもらい、その甲斐があって強さに繋がったのかなぁって思います。

第6戦藤沢スポーツランド(岩手)

第6戦藤沢スポーツランド(岩手)
第6戦藤沢スポーツランド(岩手)
サンドコースならではの大きなギャップが多数発生するものの、両ヒートでホールショットをとり終始トップを快勝しパーフェクトウイン。

■年齢は32歳、ご自身のフィジカルについてはどうお考えですか? 若い頃に比べて、なにか違う点があるとか。


成田:うんまぁ、もう“ベテラン”で、たしかに歳はとっていますけれど、実際の肉体は自分の中では20代の感覚ですし、暦の年齢なんて気にしていません。さっき話したように今年はTK(勝谷武史選手)をトレーナーにして自分の弱い部分は克服してきているので、もう少し先までレースはできるかなって思っています。

第8戦世羅グリーンパーク弘楽園(広島)
第8戦世羅グリーンパーク弘楽園(広島)
ホールショットも後続のクラッシュにより赤旗が振られ再スタート。2度目のスタートでは10番手となり追い上げるものの後半になってペースを落とし6位でゴール。ヒート2は2番手を走るもののトップの熱田がマシントラブルによりリタイア。これにより成田が優勝。

第9戦スポーツランドSUGO(宮城)

第9戦スポーツランドSUGO(宮城)
第9戦スポーツランドSUGO(宮城)
ラスト3周に転倒し、ヒート1は5位。この時点でシリーズタイトル獲得が決定。最終レースを勝利で飾るべく挑んだヒート2は、オープニングラップから一度もトップの座を譲ることなくチェッカー。

■8回目のタイトル獲得となりましたが、あと何回チャンピオンを獲りたいですか?


成田:一応、自分では10回という目標を設定していまして、あと3年はいけるかなと思っています。レースを走れるというのではなく、タイトルをまだ3回続けて獲れるっていう意味です。


■そのパワーの原動力はどんなところにあるのですか?


成田:HRCのスタッフが懸命にマシンをつくってくれ、スポンサーのみなさんの後押しもあり、感謝しています。それとファンのおかげでレースができているわけでして、応援していただいているファンがいることは本当に嬉しいことです。見に来てくれるだけでなく、フェイスブックやブログなどでも応援してくれたり、ファンのみなさんの応援はレースを戦う上で、もちろん大きな力となりました。モトクロスは観にくればエキサイティングで本当に楽しいスポーツですので、ぜひいろんな人を連れてコースに足を運んできてもらいたいですね。


成田亮
<成田亮プロフィール>
 14歳でモトクロス最上級のIAライセンス(国際A級)を取得し、15歳で全日本モトクロス参戦わずか3戦目(IA2)にして初勝利。全日本モトクロス史上最年少記録を持つなど早くから才能を開花させ、IA1では2002年から2004年、2007年から2009年、2度に渡って3連覇を達成し、2011年以降も2年連続シーズンチャンピオンを獲得中。8回もの年間タイトルに輝き、最速最強の名を欲しいままにしてきた日本モトクロス界のエースは、東福寺保雄という偉大なるレジェンドの記録、通算優勝回数9回にいよいよあと1つと迫った。成田 亮 1980年5月1日生まれ、青森県出身、宮城県在住。

■成田 亮 IA(国際A級)戦績
Year Maker Team Class Result
2012年 ホンダCRF450R TEAM HRC IA1 チャンピオン
2011年 ヤマハYZ450FM YSP RT with NRT IA1 チャンピオン
2010年 ヤマハYZ450F YSP RT with NRT IA1 5th
2009年 ヤマハYZ450FM YSP RT with NRT IA1 チャンピオン
2008年 ヤマハYZ450FM Jubilo RT IA1 チャンピオン
2007年 ヤマハYZ450FM Jubilo RT IA1 チャンピオン
2006年 ヤマハYZ450FM Jubilo RT IA1 2nd
2005年 ホンダCRF250R Moto Sport Outlet AMA125 SXW24th/MX26th(渡米)
2004年 ホンダCRF450R Seki Racing MotoRoman IA250 チャンピオン
2003年 スズキRM250WS Team Suzuki IA250 チャンピオン
2002年 スズキRM250WS Team Suzuki IA250 チャンピオン
2001年 スズキRM250WS Team Suzuki IA250 4th
2000年 ホンダCR250R Seki Racing MotoRoman IA250 5th
1999年 ホンダCR250R Seki Racing MotoRoman IA250 3rd
1998年 ホンダCR250R Seki Racing MotoRoman IA250 3rd
1997年 ホンダCR250R プライベーター IA250 14th
1996年 ヤマハYZ250 Team YZ IA250 16th
1995年 ヤマハYZ125 YESS RT IA125 2nd