第23回 祝・開業便乗企画「東京スカイツリーとBCLと僕と」
日本中が朝っぱらから空を見上げ、大はしゃぎした金環日食翌日の5月22日、東京スカイツリーが開業しました。残念ながら雨と雲と風でエレベータが止まったり、営業時間が短縮されたりしましたが、なんといっても世界一(自立式電波塔としては)ですから、失速日本にとって祝うべき出来事です。
しかし、( )付きの注釈が付くと「めでたさも中ぐらいなりおらが春」という雰囲気がなきにしもあらずんば虎児を得ずです。虎児ではなくて、すずめの子を蹴散らしてお馬が通る小林一茶のこの有名な俳句には多種多様な解釈があるそうです。
「では、君に問ふ。どういふ意味で引用しさうらふ?」
そのアンサーは、語呂だけ。深い意味はございません。まあ、( )付き注釈も、‘80年代バイク黄金期に青春時代を過ごした世代にはカタログの隅に小さく書かれていた(※国産車としては〜)とか(※250ccクラスとしては〜)(※当社としては〜)などで見慣れたもんですから、特に違和感はありませんね。
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最近のデジカメは、ホントにすごいです。素人でもこんな写真が簡単に撮れます。日本の技術は凄いんです。(2011年12月撮影)
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駅の横の空き地に世界一ができるなんて、当時の(今も)私の貧困な想像力では考えられませんでした。(2005年4月撮影)
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ところで、自立式じゃない電波塔ってどんなんでしょう?
「う゛ぁー、なーんもやる気しねえー。超ダりーしぃ……っ」とか言いながら、座り込んでいる厭世的電波塔ですか? それとも「たーちゃんもそろそろ自立式にならないと……」「うっせえ! 勝手に部屋入んじゃねえよクソばあぁ!」みたいな甘えん坊な電波塔でしょうか? 「私、聖矢がいないとダメなの。ドンペリ入れるからアフターもお願いっ、ねだから捨てないで」という、貢ぎっぱなしの崩壊寸前電波塔でしょうか……
こんなダメ電波塔といっしょにしないでくれ、という訓戒も込めた「(自立式としては)」なんでしょうか?
世界一の電波塔から出る電波ですから、受ける方もそれ相応の覚悟が必要でしょう。星に伴、里中に山田、番場蛮に八幡先輩がいるように、世界一の電波はりっぱなアンテナで受信しましょう。自作の逆Lアンテナじゃノノンノンですが、逆Lアンテナといえば、忘れちゃいけないBCL。
「ベーシティーローラーズ!」
それはBCR。
「クリスチャン・レオンとジャン・クロード・シュラマン!」
それはRCB。
「きぬ、けごん、おじか、野田市民号!!」
それはDRC。
「ロマンチックが止まらない」
それはC-C-B。
「中部日本放送」
それはCBC。
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放送関係にめでたく戻ったところでBCL=ブロード・キャスティング・リスナー。免許も資格もいりません。放送を聞いて、どこでいつなにを聞いたというレポートと、SHINPOコード(とりあえず55555と書いとけみたいな。実はよく解かっていない)を書いて放送局に送ると、ベリカードという絵はがきみたいなカードを送ってくれるあれです。本来の意味はたぶん違うのですが、ガキにはBCL=カード集めでした。話題のコンプガチャ(新しい昆布茶かと思いました)とは違って、ラジオさえあれば、あとは根気と郵送代くらいで楽しめました。
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最近、’80年代のBCLラジオが再び注目されているようです。「あの頃は買えなかったけど、今ならば」と思ったら、いい値段が付いておりました。
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そうは言っても資本主義ですから歴然とした格差は存在します。お金持ちの子はソニースカイセンサーとか東芝トライxとかナショナルクーガーとか、いかにも的なダイヤルやスイッチやメーターが付いている高性能なカッコイイラジオで、これみよがしなBCLをするのですが、赤貧とまではいかないものの、3C(もちろんイギリスの3C政策でも女性が求める結婚条件の3Cでも、マーケティングの3Cでもなく、新三種の神器のカラーテレビ、クーラー、カーです)もないピンク貧(淫靡な貧乏ではありません)級の我が家(もちろんお笑い芸人ではありません)では「いっしょうけんめい勉強するから、言うこときくから、お手伝いもするから」と、格付けランクCのギリシャ国債以下の空手形を乱発し「スカイセンサー(5950とは言わないからダメ元で5900、できれば5800、中古の5500でもいいの)を買ってくれろと泣く子かな」とじだんだごたんだしても、それは「朝まで〜無い物ねだりの子守歌〜♪」です。
それでも親とはありがたいもので、そんな我が子を不憫に思ってか、名前もわからない骨董品ですが、一応3バンドで短波も入るラジオをもらってきました。夏の夜中、Eスポ(エロスポーツじゃなくて、スポラディックなんたらとかいう宇宙的ななにか)とかいうものが出現すると、遠くの放送局が聞こえるという知識を総一郎くん(アマチュア無線電信級免許持ち)に教えてもらい、こわれかけのレディオと、怪しげな自作逆Lアンテナを駆使しダイヤルを合わせるのですが、雑音の向こうでかすかに聞こえるのはオールナイトニッポンやら走れ歌謡曲やらセイヤングやらキー局と同じ番組ばかり。
「キー局の番組で地方局に受信報告をするのは不正行為に通じるVCL(なんの略でしょうか?)の温床になるので、やってはいけない」と総一郎くんが酸っぱく酸っぱく力説していたので、それはそれは苦労したものです(何かを)。
今でもベリカードはもらえるんでしょうか? と、あらぬ方向に話が進む前に、「東京スカイツリーとかけてBCLと説く。その心は? 「電波、急げ」……今月はおしまい。というわけにもいかないので、本題です。
東京スカイツリーのご近所には、結構立喰・ソが存在しています。元々業平橋の貨物駅あたりには町工場やら商店やらが密集していたので、安くて早くておいしい立喰・ソが成り立つ条件が揃っていました。超カッコイイ名前の「S」や、背後にスカイツリーをしょって見える超近所の「E」、手書きのメニューがずらーっと壮観な「S」など、現在も盛業中なのは嬉しい限りです。
しかし、このコラムでは悲しいお知らせをしなくてはなりません。しかしそれもまた使命(ですか?)。涙を呑んで今月もまた、幻立喰・ソをご報告します。
「東京スカイツリー(業平橋)」という、これまたカッコ付の駅になり「めでたさも中ぐらい〜」かと思えば、フラッグシップの特急スペーシアが停まるようになって、あっと驚く何階級か特進(特急、快速、区間快速、急行、区間急行、準急、区間準急、普通の8階級らしい←私のような一見さんにはイマイチ理解できない-なのですが、急行は半蔵門線直通だから関係ないし、快速と区間快速と一部特急は停まらないというややこやしい出世なもんで)を果たした大出世駅。旧業平橋駅はホントにここは東京か? というような閑散とした薄暗い駅でした。その寝ぼけたような駅のすぐ横に、寝ぼけ駅とセット(お得なカツ丼そばセットのセットの意)のセット(映画とかのセットの意)のようにセット(「セット完了」のような整えるの意)された素敵な昭和オーラーを発している立喰・ソが「かどや」でした。
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改装前の業平橋駅。昼でも薄暗い駅でした。東武伊勢崎線は東京スカイツリーラインという名前も付きましたが、ぽや〜んとした駅は今もそこそこ残ってます。(2005年4月撮影)
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かどやの背後にょきにょき伸びる工事中のスカイツリー。なぜもっと上まで入れるて撮っておかなかったのか。ソの人生後悔ばっかり。(2010年5月撮影)
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スカイツリーがにょきにょき延びて、見物客も増え始めた2010年の初夏、私も見物しようと久しぶりに業平橋の駅を出た刹那、恥ずかしながら初めて「かどや」に気がついたのです。その日はお休みだったようでシャッターが降りていましたが、すぐ隣なのにノーマーク。灯台もと暗し、ならぬスカイツリー元暗しです。「こんな所に立喰・ソがあったのか」と驚く前に、自分の視野と了見の狭さに驚いてしまいました。
改めて出直したのは一月後。6月の暑い日でした。紺色ののれんを掻き分け、開け放たれた引き戸の奧の薄暗い店内に入ると、カウンター側に出て座っていたおじいちゃんが「いらっしゃ」と、むくっと立ち上がりました。
未体験店で最初に何をオーダーするのか。立喰・ソ研究者の世界大会でも残念ながら未だ結論は出ておりません。純粋に「かけ」でソの本質を楽しむのか、天ぷら系で店の総合力を測るのか、タネモノで麺とつゆのマリアージュ(……)を楽しむのか、そば本来の力を見極めるため冷やしに行くのか、それとも何のあえてかカレーで側面から掘り下げるのか。
私の場合、まずは製麺所の通函と麺の確認。でも、見るだけです。見て解るほど選麺眼も知識もありません。しかし確認しようと思ったら麺が見当たりません。次に天ぷら系に視点を移動し、対コロモ比をチェックするのですが、食べてみないことにはこれもわかりません。同時にお品書きもインプットしようとするのですが、この時点で4MB2枚の私のメモリはオーバーフロー。結局、頼むのはちくわ天か春菊天、なければかき揚げに落ち着いてしまいます。
この時もすでに戦闘準備を整えた白いうわっぱりの似合う頑固そうなおじいちゃんに、ぎろりと睨まれた(ような気がした)らもういけません。インプットした情報は一瞬で霧散。パニック状態で「あの、あの、ちくわ天そばくださ……」と言いながらも未練タップリでお品書きを見直すと、あらましまった! あと20円出せばショーウインドのトランペットのように輝くいか天(第13回参照)が食べられたのにと思う間もなく、すでにおじいちゃんは業務用冷蔵庫からゆで麺を取り出し(だから麺の姿が見えなかったのです。暑いから延びないように冷蔵していたとは、ごりっぱ!)、ぐらぐら、ぐりとぐら(ねずみが玉子焼きを作る話だそうです。)と煮立っているお湯でちゃちゃと温めて手早く丼に移し、いかにも関東風という真っ黒なおつゆをかけて「おまっとうさん」。その間わずか2秒くらいなワケはないけれど、体感的にはそんな感じでした。
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昭和テイストあふれまくりの店内。ポスターの裏に書いたような味のあるお品書きがたまりません。丼に入っておいてあるうどんは、私の後に入って来たおじさんのオーダー品。通常はこんな不用意に麺を出していません。(2010年6月撮影)
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ちくわ天そばは370円。絵に描いたような(と、よく言いますが、絵に描いても味はわかりません)真っ黒のしょうゆ辛い正統派関東風おつゆの立喰・ソでした。ちくわ天もぶるんとどんぶりからはみ出す大砲級。(2010年6月撮影)
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最近は生そば(「なまそば」ではなく「きそば」と読みます。間違いないように)や冷凍そばを出す所も多いので、待たされることも珍しくありません(とは言え、せいぜい5分です)。が、立喰・ソには通函に入ったゆで麺と、普通のおばちゃんの組み合わせが一番しっくりくるんじゃないかと思います。味と直結するかと言えば、そのゆで麺にNO! と叫びたくなることも日常茶ゆで麺時ですけれど、それが幻立喰・ソ味と言うことで……
コンクリ打ちっ放しの床、くたびれたデコ張りのテーブルと、色あせたビニールの椅子、ぼんやりと薄暗い店内、開け放たれた窓と引き戸から時折入ってくる初夏の蒸し暑い風と、東武電車のつりかけ音(だったらいいなの願望)。そんな空間で、ふうふうとちくわ天そばをすする。今では、とても贅沢なことなのかもしれません。
東京スカイツリー駅よりも、業平橋駅という名前がぴったりの小さな駅に、夫婦のように当たり前に寄り添っていたかどや。小さな町工場と商店しかなかった町が大きく変わろうとする前に、ひっそりとのれんを仕舞ったようです。
世界一の東京スカイツリーは今後も多数の衆目を集めていくことでしょう。しかしそのすぐ麓に、昭和の下町と共に歩んだ立喰・ソがあったことなど、すでに忘却の彼方なのでしょう(特にオチもヒネリもなく終わり)。
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立喰・ソ。(2010年6月撮影)
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幻立喰・ソ。(2011年12月撮影)
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■立喰・ソNEWS
●コロッケそばブーム到来?
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立喰・ソに顔をしかめるグルマンさんにとって、この世の物と認識されていない、いや、普通に立喰・ソを利用しているサラリーマンや学生であっても、なにそれ的迫害を受けがちなキンオC級ソのひとつがコロッケそばです。
それがどうしたことでしょう、よほどネタに困ったのか、なにかひらめいたのか、カップ麺として登場したのです
それも、キワモノ勝負の中小メーカーではなく、赤いきつねと緑のたぬきでおなじみマルちゃん(東洋水産)からです。
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まずは「ほくほくのコロッケそば」(170円)が2011年11月に発売されました。続いて「縦型ビッグ ほくほくとしたコロッケそば」(190円)が2012年4月、黄金色のカレーコロッケそば(170円)はつい先日の5月にと、立て続けの新発売。
お湯で戻るコロッケを開発してしまう日本の技術力に感心しきりです。今後定番商品として育っていくのか、それともはやりキワモノとして消えるのか。
「カップ麺にですね、コンビニのレジの脇にあるコロッケを載せたほうがいいのでは?」というものすごくまっとうな正論に対しては、反論するすべがないので、聞く耳は持ちません。
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バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在500店以上を制覇したものの、データ化されていないのでたいして役に立たない。そば好きから、立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。
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