山椒は小粒でピリリと辛い 2020年も縁(=猿)起がいい!? ホンダモンキー125 渋温泉&地獄谷野猿公苑ツーリング パート1:ファーストインプレション

●文&撮影—毛野ブースカ
●撮影協力—玉井久義
●取材協力─Honda http://www.honda.co.jp/motor/

 数あるホンダのバイクの中でも「モンキー」と「カブ」は、バイクに興味がない方でも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。モンキーはレジャーモデル、カブはビジネスモデル(ハンターカブやクロスカブはレジャーモデルに相当)というカテゴリーの違いはあるものの、どちらも誕生から50年以上経つ名車中の名車だ。カブはマイナーチェンジを繰り返して現在は50ccモデルと110ccモデル(スーパーカブ、クロスカブ)、125ccモデル(スーパーカブC125)がラインアップされている。一方、モンキーは2017年に発売された50周年スペシャルモデルを最後に生産が終了してしまった。しかし2018年4月、モンキーは新たな歴史を歩むことになった。排出ガス規制や騒音規制をクリアし125ccエンジンを搭載した「モンキー125」が登場したのだ。

 先代のモンキーと言えば、カブなどと同じく横向きに設置された空冷4ストローク単気筒OHC 49ccエンジン、ティアドロップ型のタンク、タックロールシート、丸型のヘッドランプ、アップマフラー、折りたたみ可能なハンドルが標準装備され、愛らしいコンパクトなボディーが特徴のレジャーモデルだ。手軽で構造がシンプルなことからカスタムパーツが豊富に作られ、カスタムパーツだけで1台組み立てられるという逸話のある、トイガンで言えばかつてのタカトクのSS9000、今なら東京マルイのM4カービンやハイキャパのようなバイクだ。また、メーカー限定モデルも多数リリースされ、コレクターズアイテムとして今なお人気がある。

 新たに発売されたモンキー125はタンクやマフラー、シートなどに先代モンキーの面影を残すものの、排気量はもちろんボディーサイズが大きくなり、先代モンキーが子ザルだとすれば、モンキー125はまるでボスザルのようだ。モンキーという名が付くものの、まったく別物と言っても過言ではない。全長で言えばエイプ50(1710mm)と同じで、同じ125ccのGROM(1755mm)よりコンパクト。先代モンキーの全長が1365mmなので、数値的には300mm以上大きくなった。ホイールベースはエイプ50(1185mm)よりちょっとだけ短い1155mm。先代モンキーが895mmなので、直進安定性やコーナリング性能は高められている。車両重量は105kgと、先代モンキーが68kg(50周年スペシャル)だったことを考えると、ヒョイッと持ち上げるには辛い重量だ。

 今回お借りしたモデルのカラーリングは鮮やかなパールネビュラレッド。他にバナナイエローとパールグリッターリングブルーが用意されている。前後フェンダーやマフラーカバー、ヘッドライトリムなどはクロームメッキ仕上げ。先代モンキーの持つポップでアナログテイストな雰囲気を残しつつ趣味性を高めた高級感漂う仕上がりとなっている。先代モンキーの特徴であった折りたたみ式ハンドルは廃止されたがアップハンドルは継承。丸型のヘッドランプやテールランプなどのライト類はLED化され、反転液晶タイプの単眼スピードメーターが採用されるなどモダナイズドされている。

 先代モンキーは1978年に登場したモデル以降、小さいながらもリアキャリアが標準装備されていた。しかしモンキー125ではオプション扱いとなり、レインウエアなどの荷物が積めるスペースがなくなってしまった。実は今回、1泊2日のツーリングに出かけるにあたり、リアキャリアがないことがネックとなって装備をすべてバックパックに背負っていかなければならなくなった。これはあくまでもお借りした広報車にリアキャリアが装備されていないだけで、購入をお考えの方はぜひリアキャリアを付けることをお薦めする。

 駆動系は排気量125ccの空冷4ストローク単気筒OHCに4速マニュアルトランスミッションのコンビネーション。最高出力は同じ125cc空冷4ストローク単気筒OHCのGROMよりちょっとだけ低い。前後ともディスクブレーキ化され(先代モンキーは前後ともドラムブレーキ)、今回お借りしたモデルにはABSが標準装備されており、安全性が高められている。リアはスイングアーム式だがフロントは倒立フォークを採用。ブロックパターンのタイヤは8インチから12インチにサイズアップ。排気量が異なるので直接比較はできないが、走行性能は大幅にアップしている。

 私は先代モンキーに乗った経験がないので残念ながら比較はできないが、実際に乗ってみると思った以上にドッシリした印象を受ける。昨年乗車したクロスカブ110よりはコンパクトだが窮屈な感じはしない。先代モンキーに乗ったことがある方ならもっとインパクトを受けるかもしれない。両脚がべったりつくほどシート高、視線ともに低い。オールドテイストなタックロールシートは跨るというよりも乗っかるという感じ。コシがあって長距離を走っても疲れなさそうだ。

 始動方式は先代モンキーのキック式からセルフ式になり、エンジンは一発で始動する。様子を見ながらじわ〜とスロットルを開けながらクラッチをつなぐ。まごつくことなくスムーズに加速していく。2速、3速、4速へとシフトアップし、60km/hを越えるとエンジン音が賑やかになり始めたので、50〜60km/hで流すのがちょうどいい感じ。しゃかりきになってブンブン回すバイクではなく、あくまでもジェントルな走りで流すのが理想的だ。片側2車線や3車線ある流れの速い幹線道路ではちょっと物足りなく感じるかもしれないが、街中では2速か3速で充分。コンパクトなボディーなので狭い場所でも取り回しやすい。

 30kmくらい走行したらだいぶ慣れてきた。私が所有しているホンダ400Xや前回試乗したスズキVストローム250とは異なりイージーな感覚で肩ヒジ張らずに乗れる。クロスカブ110や原付バイクに近い感覚だが、日常臭さを感じさせない点ではモンキー125に軍配が上がる。気になる燃費だが、30kmくらい走っただけでは燃料計はまったくもって減らない。街中だけではもったいない。これはツーリングに出かけて確かめるしかない。ということで、ちょっと無謀とも言える1泊2日のツーリングに出かけてみることにした。モンキー125の実力はいかに!?



モンキー125


モンキー125


モンキー125


モンキー125
排気量だけではなくボディーもサイズアップしたモンキー125。カラーリングはパールネビュラレッド。初めて見た時の印象は「かわいいヤツ」。丸みを帯びたスタイルなど先代の雰囲気を残しつつ走行時の安定性が高められている。タミヤから早くも1/12スケールでプラモデルが発売されており、人気の高さが伺える。


モンキー125


モンキー125
ワイルドな12インチブロックパターンタイヤに倒立フォークを導入。スチール製のフェンダーはクロームメッキ仕様だ。 今回試乗したモデルはABS搭載モデル。ブレーキもディスク(2ポッドキャリパー)になり先代モンキーから大幅にモダナイズドされた部分のひとつ。


モンキー125


モンキー125
先代モンキーのイメージを残すクロームメッキ仕様のリムが特徴のLED仕様の丸型ヘッドランプとウインカー。 ハンドルは残念ながら折りたたみ式ではないがアップハンドルとなっている。ハンドル周りのパーツ構成はシンプルだ。


モンキー125


モンキー125
スタータースイッチ、エンジンストップスイッチ、ウインカースイッチ、ホーンスイッチなどのポジションはホンダ400Xと同じ。ミラーはクラシカルな丸型。ハンドルのエンド部分もメッキされている。


モンキー125


モンキー125
デジタルメーターはキーをひねるとサルの目(?)がパチパチとウインクする。なんともかわいらしいニクイ演出だ。


モンキー125
メーターは先代モンキーはヘッドライトケースと一体型だったが、モンキー125では別体となり、リムはクロームメッキ仕様となっている。 上から燃料計、速度表示、オドメーター/トリップメーター。数字の書体も凝っていて他モデルとの差別化が図られている。


モンキー125


モンキー125
エンジンはヘッド部分が寝かされた排気量125ccの空冷4ストローク単気筒OHCを採用。エンジン直上にある樹脂製の箱はエアクリーナー(ブリーザードレン)。 先代モンキーの印象を残すクロームメッキ仕様のガードが付いたアップマフラー。


モンキー125


モンキー125
まるでテニスラケットのグリップのような先代のステップから一般的なゴム製滑り止めのついたステップに変わった。シフトレバー、リアブレーキペダルともに操作しやすい。

モンキー125

モンキー125

モンキー125
オールドタイプのホンダのウイングマークをあしらったエンブレムが付いたポリッシュ仕上げ・ツートンカラーのタンク。先代のクラシカルなキャップからエアプレーンタイプのキャップに変更。ヒンジ付きなので給油時に便利。容量は5.6リットル。


モンキー125


モンキー125
ボディー左側には書類などが収納できるサイドカバーが付属。サルの尻尾を思わせる「M」の書体が印象的なロゴマークは先代から引き継いでいる。 個人的に嬉しかった装備がサイドカバー直後にあるヘルメットホルダーだ。街乗りだけではなくツーリングでも活躍してくれるはずだ。


モンキー125


モンキー125
↑ボディーと同色のスイングアーム。トランスミッションは4速マニュアルが組み合わされている。

←モンキーのアイコンといっても過言ではない分厚いタックロールシート。白色のパイピングとHONDAのロゴマークが映える。



モンキー125


モンキー125
ラフな道でもしっかり追従してくれるツインリアショック。リアにもディスクブレーキ(シングルキャリパー)が装備されている。 ヘッドランプ同様テールランプとウインカーも視認性の高いLED仕様。テールランプは先代よりも一体感を持たせている。


モンキー125


モンキー125
身長170cmほど、装備と合わせて80kgオーバーの筆者が跨ってみたところ。サスは程よく沈み込み、両脚は余裕で地面に付く。窮屈な印象はないが、サイズが大きくなったとはいえ、乗車した姿を見るとやっぱりサーカスのクマだな。


モンキー125


モンキー125
モンキー125は街中はもちろん郊外の道をノンビリ、トコトコと走るのに適している。せかせか走るのは似合わない。 先代よりも大きくなったがピーキーな感じはなく、マイルドな走り心地は乗りやすくてコントロールしやすい。

人文字
モンキー125に慣れてきたところでいよいよ前代未聞の1泊2日ツーリングに出発だ。果たして無事に帰ってこられるのか…。


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