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■試乗・文:ノア セレン
■協力:Ducati Japan http://www.ducati.co.jp/

高いスポーツ性と豊かな個性をもち、しかもモトGPにおいても絶対性能を証明しているドゥカティ。様々なラインナップがあるがその中でも「過激」といわれてきたモデルがある。2007年に登場した「ハイパーモタード」、今回のモデルチェンジで4代目となる進化を果たしており、そのプレス向け国際試乗会がスペイン・グランカナリア島にて行われた。

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ライダーの身長は186cm。Hypermotard 950 SPでの足着き性。

 
優しくなった近年のドゥカティ

 ここ数年のドゥカティはずいぶんとユーザーフレンドリーになった印象がある。ムルチストラーダシリーズや、スタンダードなスポーツバイクとして登場した「スーパースポーツ」、またはスクランブラーシリーズやディアベルも。それぞれに個性があり、そのモデルに合った速さももちろんあるのだが、10年ほど前のドゥカティのようなガオガオした、噛みつかれるんじゃないかというような攻撃性は減ったように思う。テスタストレッタ11°エンジンやDVT機構により、過激なハイパフォーマンスエンジンにも付き合いやすさがプラスされたわけだ。

 以前のドゥカティはどのモデルもちょっと過激すぎるように感じる時期があり、個人的には「エキサイティングだけど所有するのは疲れちゃいそう……」という気持ちがあったが、ここ数年のモデルはどれも「本当に良いな。欲しい」と思わせてくれることが多い。ドゥカティらしさを確立したまま、そのワールドにアクセスしやすくしてくれた進化は、絶対性能の進化以上にドゥカティブランドにとって素晴らしい進化だと思う。

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敢えて「優しくしない」選択肢

 そんなドゥカティだが、2007年の登場以来一貫して過激路線を歩み続けているモデルがある。それが今回新型を試乗できた「ハイパーモタード」だ。最初は1100ccの空冷エンジンを搭載、これが当時のムルチストラーダと共通ユニットだったのにも関わらずエンジンセットアップと車体パッケージの組み合わせにより、登場後即「過激」と評された。着座位置が高くハンドルが近いモタードポジションなのに1100ccという、良い意味で狂った思想でできているのだから当然だ。アップマフラーからの攻撃的な排気音や、バーエンドに装着されたミラーなど、いろんな意味で異質な存在だった。
 その後、2010年にはハイパーモタード796を追加、当時のモンスターなどにも使われていた803ccの空冷ユニットは馬力では9馬力のマイナスとなったが、車重も10キロ軽量化。2013年には先述した水冷テスタストレッタ11°エンジンを搭載したハイパーモタード821になり、ライディングモードやABS・DTCを備え、さらに2016年には排気量を937ccに増やし、2019年に今回の新型へと繋がった。いずれのモデルも兄弟車種や同系列エンジンが存在するにもかかわらず、一貫して過激な路線でのセットアップをされてきたのが特徴。

 そもそもモタードという乗り物自体が過激な路線ではあるものの、それを大排気量で、しかもあのドゥカティが作るとなると……エキサイティングな味付けは必至だったのだろう。「ハイパーモタードは過激!」という事実はどのモデルにも当てはまる。

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大幅なマイナーチェンジ

 今回の新型、ルックスにおいて大きく変わったのは、マフラーが初代がそうであったようにシート下からの2本出しとなった事だろう。それに合わせてシートレールも変更されており、タンクの小型化と合わせてシート形状もよりモタードらしく前後に長い仕様となっている。これら変更でハイパーらしさを継承しながらも、旧型と比べるとさらに尖ったスポーツ性を持っていそうな印象にブラッシュアップされ、車重も4キロの軽量化を果たしている。
 エンジンは排気量937ccで114馬力を発揮。しかし近年のドゥカティの傾向に倣い、新しいエレクトロニクスを搭載してよりスムーズでコントローラブルな特性へとシフトしたという。それを表すのが、最大トルクの80%を3000RPMという低回転で発揮するという味付け。ストリートユースでも使いやすいようリファインしたそうだが、その変更は素直にうれしい反面、同じベースエンジンを持つムルチストラーダ950やSSがその役割は担っているハズのため、ハイパーに「優しさ」を与えてしまったらハイパーではなくなってしまうんじゃないか? などと個人的には危惧してしまった。
 
 もう一つの大きな進化はエレクトロニクスだ。コーナリング中も作動する「コーナリングABS EVO」の他、「トラクションコントロールEVO」、「ウイリーコントロールEVO」、「クイックシフト」などが搭載され、ボッシュ製6軸慣性測定ユニット(IMU)の搭載により車体の姿勢を常に把握し、適宜電子制御を活用している。今回追加された興味深い機能は「スライド・バイ・ブレーキ」機能。これはモタードスタイルでライディングする際に、リアのスライドをコントロールしてくれるアシストで、これまでよりもブレーキングドリフト時にスリップダウンやハイサイドを起こしにくいようサポートしてくれる機能だ。
 加えて、上級バージョンの「SP」もラインナップ。こちらは前後にオーリンズサスペンションを装備しマルケジーニの鍛造ホイールやよりフラットなシートを採用している。

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いざ、ワインディングへ

 試乗地のグランカナリア島では山間部の細かなワインディングが連なるトリッキーなルートが設定された。場所によっては対向車とすれ違うのも気を遣うほどの道幅しかなく、そこを先導ライダーがけっこうなペースで突き進んでいくのだからタマラナイ。打てば響く新型ハイパーモタードの瞬発力を最大限活かしながら、キャッキャ言いながらすっ飛んでいく。
 
 新型となって、シート高そのものは高くなったものの、ドゥカティではシートの高さで足着きを表さず、片方の足の裏から反対の足の裏までの距離で測定。シートの高さそのものが足着きを決定するわけではないからだ。そしてこの測定方法でいけば足着きは前モデル比で良くなっているはず。しかしそれでも非常に背の高いバイクであることには変わりない。シートが高いだけでなく、車体の重心位置自体がとても高く、加えてハンドルが高くライダーのポジションも地面から離れているため、ライダーとバイクを合わせた時の総合重心位置はかなり高いという印象。見晴らしがよく四輪を見下ろしながら走るのは爽快ではあるものの、小柄なライダーにとってはハードルが高いと感じなくもないだろう。
 シートが前後に伸びたのも新しいフィーチャー。以前のモデルでは着座位置が限定されやすく、通常のライディングではそれでもかまわないものの車名通り「モタード」走行をしようとすると自由に動きにくいことがあったそうで、それが今回の変更につながった。着座位置が限定されないことでそういったスポーツ性も追及しているわけだが、足着きの観点からもより安心できる位置に座ることができたり、またワインディングでは着座位置でハンドリングも変わることが味わえたので、これは楽しい変更と言えよう。
 
 ハンドリング……これは最初ちょっと戸惑った部分だ。スタートしてすぐの高速道路では、カウルがなくポジションも起きているバイクのわりには快適に車速を伸ばせてしかも安定していると感じたのだが、ワインディングに入ると特にフロントの接地感がもう一つ欲しいという印象。決してフロントが滑るだとか、前輪がどっちを向いているのか曖昧だとか、そういうことではないのだけれど、かなりメリハリをつけて、しっかりブレーキングしてフロントに荷重してあげることで路面を掴んでるインフォメーションがより豊富になっていく印象。フロントのサスペンションのバネをもう少し抜いて、ダンピングをかけてあげるか、もしくはタイヤの空気をもう少し抜いてあげるかすればもっと気軽に乗れそうだが、いやいや、それが間違いだった。だってこれは「ハイパーモタード」。いつでも、ペースに関わらず、安心感に包まれた走りをしたいのならばムルチストラーダにすればいい話。メリハリを楽しむバイクなのだから、短い直線でも全開にして、次のコーナーではガッチリとブレーキを握り込むというエキサイティングさが大切なのだろう。そう考えるとこのハンドリングはハイパーの性格によく合っている。そのうえでさらにもう一歩先へ、というのであれば調整機能を活用すればいいのだ。やはりハイパーは過激路線。トルクフルになったといってもらしさが失われたわけでは決してない、とこのハンドリングを通じて思い知らされた。

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ライディングモードを駆使する

 今回のモデルチェンジで大きく進化したのは電子制御。高度なABSやトラコン、ウイリーコントロールなどが付帯するモデルが増えているが、ハイパーモタードも同様にこれらの進化を果たしている。しかし、頑張って開発している人には申し訳ないが、個人的にはこれら機能はいざという時の補助的安全機能だと思っていて、特に公道においては積極的に使うようなものではないと認識している。
 トラコンが介入するほどラフにアクセルを開けることも、前輪が浮くほどアグレッシブな加速をすることも、ABSが介入する程ハードなブレーキも、いずれも公道を走ることには当てはまらない。あくまで「間違って」限界を踏み越えそうになった時に補助してくれる機能だろう。事実、かなりハイペースなワインディング試乗だったがこれら機能が介入したことは一度もなかった。ただ、過激なモデルであるがゆえに、予想外の路面や天気に出くわした際にサポートしてくれるという意味では、高性能な電子制御を備えているというのは安心だ。
 一方で大変に重宝したのがライディングモードだ。出発してすぐの高速道路では最大限のパフォーマンスを楽しみたく「スポーツ」を選択。弾けるパワーを満喫できたが、ワインディングに入るとこのレスポンスが「過ぎる」場面が多くなり、「ツーリング」にスイッチ、さらには「これでもちょっと……」となり最終的には「アーバン」へと落ち着いてしまった。これは最高出力が75%に制限されるモードなのだが、軽量なハイパーモタードで細かな峠道を走るにはむしろこちらの方がリズムを掴みやすかったのだった。
 アクセルをしっかり開けて、コーナーアプローチでしっかりとブレーキをかけて、クルッと曲がったらまたパワーオン! とメリハリを効かせたいのに、「スポーツ」では敏感すぎて恐る恐る操作してしまい、メリハリよく走らせることが難しかったのだ。アーバンモードならばトラコンやABSも連動して介入しやすくなるため安心感も高い。過激なバイクだからこそ、走る状況に合わせてボタン一つで特性を変えることができるライディングモードは重宝した。

 
使い勝手は禁句?

 ハイパーモタードのような極端なモデルに使い勝手を求めてしまうのは間違っている、のかもしれないが、意外にも使い勝手が「良かった」のだから記しておきたい。
 増強された低回転域のトルク。これは特にアーバンモードなどでは重宝した。スポーツモードやツーリングモードではハイパーらしい猛々しいテイストが味わえる一方で、アーバンモードならば低回転域のトルクを使って、そんなに肩ひじを張らなくても乗ることができてしまう。これならばツーリングもある程度許容することだろう。
 スイッチ類など操作系のシンプルさ。ブレーキのタッチや調整機能がとてもわかりやすく、やりやすかった。今回新たに油圧式に変更されたクラッチも同様で、軽く、スパッとつなぎやすい。さらにスイッチ類も明瞭で、無意識&直感的に操作することができる。ウインカーやホーンのボタンも「すぐそこ」にありとても操作しやすい。一部国内メーカーには苦言となるが、こういった「ライダーが直接操作する部分」が素直な設計じゃないとライディングに集中できなく大変難儀する。ライディングの楽しさを追求するドゥカティだけにこういった部分も大切にしているのではないかと感じた。
 排気音が静か。シート下のツインサイレンサーは、バイクの過激な特性と比例しないとても静かなものだった。排気口が遠くにあるということもあるのだろうが、運転中に排気音がうるさいと感じることは皆無。何台も連れだって給油に立ち寄った際も、とても静かで誰にも不快感を与えていないと実感した。排気音を規制値ギリギリまで大きくして「それが個性だ」と勘違いしているモデルもあるが、排気音を大きくしないと個性をアピールできないようではたいしたバイクではない。ハイパーは例え無音でも強烈な個性を発揮するバイクだろう。
 というわけで、その過激なセットアップとは裏腹に、意外や使い勝手も良く、かつ現代社会において対外的に責任感のあるパッケージに感じたのだった。

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サーキットパフォーマンスを検証

 新型ハイパーにも、以前の型同様にSPモデルがラインナップされている。こちらは前後オーリンズサスが装着され、さらにマルケジーニ製鍛造ホイールも奢る。フロントフォークはスタンダードのφ45mmに対してφ48mmと太く、リアも当然フルアジャスタブル。ストロークはフロントで185mm(STD比+15mm)、リアで175mm(同+25mm)とすることでバンク角も稼いでいる。他にはよりフラットなシートの採用及びクイックシフターの標準装備(STDはオプション)、そして専用グラフィックの採用などだ。
 こちらSPはサーキットでの試乗になったのだが、オプションのマフラーが装着されておりこれにより6馬力ほどパワーが上乗せされ、同時にリア周りのナンバープレートホルダーなどが取り外されていたためより軽量にもなっていた。SPではタイヤもピレリディアブロスーパーコルサSP V3を標準装備するため、もう「サーキットで弾けて下さい!」仕様である。ツナギを着こみ、他の海外ジャーナリストに負けてはならぬ!と気合十分でコースインする。
 スタンダード以上に背が高くなっているためとにかく路面が遠く、最初はかなり慎重に走り始めた。モタードらしくフォークが長く、前輪が遠い印象。公道でも感じたがフロントの接地感をしっかり得るのにコツが必要で、タイヤがちゃんと温まってることを確認してからペースを上げていった。
 公道試乗と違ってスポーツモードでアクセルをガンガンに全開にする上、例のアフターのマフラーがついているのだから、当然だがものすごく速い。前の方に座っていてもハンドルが近くて高いため、特に長身で上半身が余ってしまう筆者はフロントの抑え込みが上手くいかずウイリーコントロールが介入しまくる。大きなサーキットではなく直線もそう長くなかったということもあるが、本当に速く感じた。シフトアップがおぼつかないほど各ギアで瞬時にフケ上がっていくし、高回転域がフリクション感なくどこまでも鋭く回り切っていく感覚は一般的なVツインらしくなく、とてもドゥカティらしい。
 SPでは標準装備となるクイックシフターはしっかりと操作できれば正確に作動するものの、フロントが浮かないよう常に伏せてなければいけないため、確実なシフトアップが難しい。シフトペダルの位置を下げれば良いのだろうが、そうすると今度は接地してしまうため、本当にサーキットを攻め込みたい人はバックステップなどの導入が必要になってくるだろう。
 
 慣れてきてペースが上がってくるとフロントの接地感もつかめてきて、どんどん攻めの度合いが高まってくる。モタード的ポジションなのにこのパワーを持っているため、モタード的な振り回す乗り方と、振り落されないためにバイクをしっかりニーグリップしなければいけない乗り方のバランスを探る必要があるが、何せスリムで軽量のためなんとでもなる感が高い。調子に乗ってペースが上がってくるとどうしてもロード的な乗り方になってくるのだが、そうするとストロークの多いフロントサスのせいかちょっと止まり切れないような場面もあった。こういったところではモタードらしくもっとリアブレーキを使う必要があったりと、様々な乗り方を駆使して速く走らせる必要があるという意味で、特殊な乗り物であることは確かだ。これらの難しさを面白さ、もしくはハイパーらしさと捉え、追求していくところにこのモデルのロマンがあるようにも思える。
 汗だくになって他のジャーナリストから逃げ回ったハイペース走行の後には、逆に一つ高いギアで、走行会を想定したような、流しているよりはもう少し速いような、目を三角にしていない程度のペースで周回してみる。こういったペースで走ると増強されたトルクの恩恵に気づけた。無理にシフトダウンしなくてもアクセルを開ければトルクフルに高回転域までつないでくれるし、ペースが落ちれば各操作に追われることもなくなったことで、ちょっとした操作ミスでギクシャクすることも少なくなり、快適な走行ができた。これは良い発見だ。ハイパーだからと言っていつも歯を食いしばってなくても良いということ。ここが新型の一番の進化だろう。

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感想

 今回のモデルチェンジで開発者が言っていたのは、タンクを小さくスリムにし、シート形状をよりフラットにしたこと、そして「スライド・バイ・ブレーキ」機能を導入したことで、より本来の「モタードらしさ」を追求したということ。それを証明するように、ローシートが「地面が近くなって良い」とコメントした筆者に対して「ダメダメ、アレはハイパーの運動性を削ぐ」と全否定した。ちなみにその方、身長は170センチ前後と思われ、決してハイパーで足が付くとは思えないのにそんなことを言うのだから、とにかくパフォーマンスを第一に開発している熱意が伝わってくる。
 
 イメージビデオではルーベン・ザウスがドリフトしながら手を振っている様があったが、しかし今回の試乗では、やはりアレは特殊な能力を持ったライダーでなければムリだろう、というものだった。片手ドリフトはもちろんのこと、これだけのパワーでモタード的乗り方は、ハッキリとハードルが高い。ブレーキングドリフトなどは3速全開から1速もしくは2速落として半クラで進入、みたいな操作が必要で、それが250ccクラスのオフロード車ベースならば筆者にも真似事ができないわけでもない。しかしハイパーの3速全開なんてとんでもない速度が出ているのだ。そこからリアを振り出すとなると、さすがにちょっと怖いし、高価なモデルだけに無茶なチャレンジをして大破でもさせたら大変だ。ルーベンのような走りをするにはかなりの修業が必要なのは明らかだ。
 しかしそんな開発者の熱意とは裏腹に、試乗を通して感じたのは究極を求める方向への進化は確かにしている一方で、増強されたトルクや扱いやすいライディングモードの設定、そして静かな排気音などにより、より気軽に接することができるようになったのが一番の進化に思う。これは決してハイパーの魅力が失われたということではなく、より気軽に「乗ろう」という気にさせてくれるという意味だ。一週間前から精神統一をはじめ、しっかりとランニングして体づくりしてから乗らなきゃバイクに喰われるっ!みたいな印象もあったかつてのハイパーモタードだが、この新型なら景色を満喫するようなツーリングだって十分楽しめるはずだ。
 
 ハイパーらしい過激さはさらに推し進め、それでいて間口も広がった新型ハイパーモタード。ドゥカティの中でも特殊な存在だが、特殊さの中にもやさしさがある新型である。
 
(試乗:ノア セレン)
 

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前モデルよりも足着きは向上しているとはいえ、それでもとても背の高いモデルであることは間違いない。着座位置がいくらかえぐられたローシートも存在し、そちらは地面が近くなり安心感も高い印象。 パニガーレV4のような4.3インチTFTカラー液晶ディスプレイ。それぞれの表示が見やすいだけでなく、各モードによって色が変わるなど細かな作り込みも。オプションには「ドゥカティマルチメディアシステム」が用意され、スマートフォンとこのディスプレイをBluetoothで接続することも可能。
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文中にも登場する、非常に操作しやすい左のスイッチボックス。各種ライディングモードの変更など全てここでできるだけでなく、ホーンやウインカーといったボタンもとても押しやすく、直感的に操作できストレスが無い。 アクセルワイヤーを持たないライドバイワイヤーを搭載しエンジンコントロールユニットと共にパワーデリバリーを管理。新型ではクラッチも油圧式となり、別体式リザーバータンクを持つ。 STDはマルゾッキ製φ45mmフロントフォークを採用。アジャスト機能も豊富でブラックのインナーチューブも精悍だが、SPではさらにハイグレードなオーリンズ製φ48mmを装備しストロークは15mm伸ばされる。
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リアにはこちらも調整機能を備えるザックス製を装着。リンクを持たないシンプルな構造で、アルミのスイングアームに直付けされる。 新設計のホイールは800gも軽量化されたY字型3本スポークタイプ。タイヤはピレリのディアブロロッソ3が標準。ブレーキはブレンボのモノブロックで、マスターシリンダーもラジアルタイプ。 シートレールがトラス形状に変更されたことに目が行くが、メインフレームも実は新作でパイプの肉厚を見直すなどして1kgの軽量化。エキパイの取り回しは916をイメージしているそう。
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サイレンサーは初期のモデルのようにシート下へと変更された。2本出しとなったおかげか、ライダーから排気口が遠のいたおかげか、とても静かで疲れにくいと感じる。 タンク容量を14.5リットルに変更しつつデザインを見直し、よりスリムに、よりモタードらしい自由度を追求。前後に伸びたシートにより着座位置を限定せず、様々なライディングスタイルに対応する。「かつてのモデルは、モタードというよりは、ロードモデルに近かった。新型は本当にモタードができる!」とは開発者の弁。 テールカウルはミニマムな形状になり、全体のカッコ良さの中においてカワイイ要素となっている。しかし純正フェンダーが取り外してあったSPでは逆にリア周りを引き締めている印象。ストップランプは後方に突き出していることで、荷物の積載時などに隠れてしまわなさそうなのが好印象。

 
Ducati Hypermotard 950のSP仕様の特徴

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SP仕様は前後オーリンズサスの採用がメインの変更点だが、加えてマルケジーニのW字3本スポーク鍛造ホイール、そしてそれにはディアブロスーパーコルサSPが標準装着。STDではオプションとなっているup/down対応のクイックシフターも標準となる。試乗車にはオプションのチタン1本出しテルミニョーニマフラーが装備され、これによって6馬力ほどのパワーアップをするとされる。グラフィックも専用で大変にカッコイイ。
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↑左がDucati Hypermotard 950 SP、右はスタンダード仕様。

●Hypermotard 950(〈〉内はSP仕様) 主要諸元
■エンジン:水冷L型2気筒デスモドロミック4バルブ ■排気量:937cc ■ボア×ストローク:94×67.5mm ■圧縮比:13.3:1 ■最大出力:84kW(114ps)/9,000rpm ■最高トルク:96Nm(9.8kg/m)/7,250rpm ■ミッション:6速 ■車両重量:200kg〈198kg〉 ■シート高:870mm〈890mm〉 ■ホイールベース:1,493mm〈1,498mm〉 ■キャスター角:25°■トレール:104mm

■Ducati Japan http://www.ducati.co.jp/