先日、鈴鹿で行われたモータースポーツイベントで、初めてトライアルのデモを見た4輪の関係者が言ったこと。
「まだまだ知らないモータースポーツがあるんだって思った!」
ちょっと衝撃を受けましたが、モータースポーツの仕事に携わっていると、自分のいる半径5メートルの範囲だけが、「バイク・車・モータースポーツ」だと勘違いしてしまいがち。ちょっと見聞きはしていても深入りすることなくスルーしちゃったりしてませんか?
私も、まだよく知らないバイクのレースはあります。時間が許せばなんでも見てみたいと思う、その一つがハードエンデューロというカテゴリーでした。
エンデューロといえば、オフロードを時間内に走行し順位で競うレース。ゲレンデをベースに設営されたり、一部モトクロスコースが含まれていたりします。ハードエンデューロとは、「ハード」という言葉のとおり、そのカテゴリーのなかでも上級の走破レベルを要求されるレース。強烈なガレ場のセクションが作られていたり、木立を縫って走る林間コースや難易度の高いヒルクライムがあったり、通常は迂回するような丸太を越えたりして、時間内に順位を競います。
最近ではこのレース、なぜか若いライダーがこぞって出場しているのです。どうして困難なバイクレースに惹かれるのか。
「俺たちの知らない走りがまだある」と某モトクロスIAライダーが言ったひとこと。
SNSを眺めていると、山の中でひっそりと、なにか面白いことが行われている感がハンパなく! その謎を探るためグンマへと向かったのです
関東近郊のハードエンデューロの聖地、日野カントリーオフロードパーク。
オフを突き詰めたような趣味のバイク乗りって、だいたいオッサンだろ? という私の偏見と認識を根底から覆すほどに20代30代のライダーが多かったことに驚き。
レースが始まるとまず目に入るのは壁のようなヒルクライム。
パワーが足らず上りきれなくてバイクだけ投げたりする名もなきライダー達。丸太を越えようと突進する。岩と格闘、前にも後ろにも進めなくてイゴる、坂を上がれなくて叫びながら何度もトライを繰り返すライダー達。不謹慎だがもう笑うしかない(笑)。バイクはアクセルを開けて前に進むものだと思っていましたが、ハードエンデューロの世界ではもっと身体を使って、コースを読んで頭を使って前に進むものだったり、ある意味これまで考えていたレース時におけるバイクの使い方の概念を覆される感じもあり。
あぁ、バイクって良くも悪くも乗り手の動きに対して素直に動くものだなぁと実感する。
「バイク+人」がより密接につながっている競技だなと思えば、人間に目が行くのも当然です。渾身の力で辿り着いたライダーが、立ち止まってニヤッと笑うのが凄くカッコよく見えたり、バイクや、全身から湯気を出して進む姿に圧倒されたりとにかく自分との格闘が凄いんです。誰だかわからなくても自然と「頑張って!」と応援してしまいます。とにかく、ちょっと出来心で行ってみたらとっても面白かったということ!
オフロードレースの特徴ですが、選手と観客の距離が近いので応援のしがいがあるのも、観戦としてたのしめるポイントかと。
昨年の、日野ハードエンデューロ春の陣の優勝者は60代の木村聡さん。若者が増えたとはいえベテランライダーの無駄な力をつかわない、スムーズな走りでお見事でした。11月には、全日本ハードエンデューロ「G-NET」の最終戦が開催され、タイトル保持者の高橋博選手と若手の山本礼人選手が最後までタイトルを争いました。
全日本モトクロスやロードレースとおなじく、様々なサポートを受けてレース活動をしている選手もいます。だいたい走ってる姿をみれば「お! この人すごく上手い!」っという感じに察しがつきます。エントリーリストの上の方を参照しつつ、トレッキング気分で山を散策し、好きなセクションで観戦。目の前の滞在時間が長いので声をかけられるし、写真や動画をとりながら応援したりSNSにUPしたり、お近くで開催の際はちょっと気に留めてみてください!