見た目的にはすぼんだ小さなお尻だった旧型から、XT250X譲りのちょっと自己主張が強くなった尻上がりテールに変わっているけれど、セロー250のオーナーやファン以外なら言われなければ変わったことに気が付かないかもしれない。
それほどスタイルは以前のセロー250イメージのまんま。
昨年の生産中止から甦った新型セロー250に乗ってみた。
■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。 |
セロー250がいったん生産終了になった理由は、昨年の9月から適用された二輪車平成28年排出ガス規制をそのままではクリアできなかったから。その後、排出ガス規制を通した新しいものが出てくるとヤマハ自らが予告したし、多くのライダーが当然のことだという認識があった。
なぜなら、セロー250は常に安定した販売台数を維持してきたからだ。ひとくちにオフロードバイクといってもモトクロスやエンデューロなど競技車両を含めるといろんな種類があるが、その中でセロー250は一般公道を普通に乗れるオフロード車、いわゆるトレールモデルやオン・オフモデルと呼ばれるカテゴリーの代表的なモデルであり続けてきた。
新型になるタイミングは、いろいろ手を入れて商品力をアップさせる絶好の機会でもある。しかしヤマハは大きな変化を加えずにこれまで通りのセロー250のままを貫いた。それも単純に手を抜いて旧型にちょちょいと手を入れたのではなく、意識的に前と変わらないようにしたところがミソだ。
ちょっと乗っただけでは走りの違いが分からないレベル。新たにフレーム前方にキャニスターを装着。エキゾーストパイプにはO2センサーが新たに付け加えられ、そのフィードバックから燃調をより細かくコントロール。それらの新装備によって車両重量は3kg増えたが、相殺するように空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは、圧縮比を9.5から9.7に上げ、最大出力で2PS、最大トルクで0.2kgf・mと気持ちパワーアップさせている。だからスロットルを開けライディングしても前と同じフィーリング。あえて言うならば、単気筒のピストンが爆発したときの押し出し感というか、スロットルを開けた時のツキ、ヒット感がほんの少しだけ強くなっている気がした。
セローは昔からビギナーからベテランまでと幅広い愛好家がいる。その理由は、いろんな状況でコントロールしやすいからだ。常に手の内にあるような制御のしやすさ。変わらずに大きく切れるハンドルと、ホイールベースの短さによって方向転換が楽にできる。狭いシングルトラックでのUターンも楽々。オフロードモデルとしては抜群に低いシートは、オフ入門者が緊張しそうなシーンだけでなく、ちょっと凸凹が深く荒れたところや、勾配のきついところでバランスを崩してもさっと足を地面に伸ばして車体を支えられるからありがたい。それに極低回転で粘り、低いところからトルクがしっかり出て押し出すエンジン特性も味方する。切れるハンドル、低いシート、扱いやすいエンジンが三位一体となって、セロー独特の誰にでも優しく、思ったように動けるバランスの取れた走りにしている。
変わらないというのはとても勇気がいることだが、ヤマハには迷いがなかったと思う。良くできて定評のあるものをあえて変化させる必要はない。決してハイパフォーマンスではないけれど、どこだって行けるのが変わらないセローの世界だ。その魅力を知っている人なら、こんなに語らなくても「今までと同じだよ」とひとこと言うだけで分かってもらえるだろう。前のセロー250にできて新しいセロー250にできないことはない。前のセロー250ができなくて、新しいセロー250ができることもない。
オフロード、ダート、不整地を走る楽しさって何だ? 都市を離れ自然の中で遊ぶ非日常。悪路を走破することで冒険心もくすぐられる。凸凹、障害物、土、砂利と様々な舗装路より滑りやすい路面でバイクをコントロールして走破していく面白さもある。オンロードとは違う世界が広がる。山歩きをするようにトコトコとそれを味わえるセロー250の大いなる魅力は健在である。
(試乗・文:濱矢文夫)
左右のハンドルキレ角は51度と大きい。これがセローのウリでもある。これに1360mmとオフロードバイクとしては短いホイールベースの組み合わせで小回りがきく(最小回転半径1.9m)。 | シート高はオフロードバイクとしては低い830mm(旧型と同じ)。 | フロントは21インチのチューブタイプ、リアタイヤは18インチのチューブレスと変わらず。 |
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