CB1000R発売を筆頭に、125、250と続いて登場した
「ネオスポーツカフェ」こと新世代CBシリーズ。
CB250Rは、旧CB250Fのお色直しかと思いきや
グンと完成度をアップして登場!
これは、250ccの新しいベンチマークになる!
■試乗&文:中村浩史 ■撮影:松川 忍
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
250、しかも単気筒モデルっていうのは、かつては元気のいいシングルスプリンター、ってイメージが強いオートバイだった。けれどこの数年は、う~ん、なカテゴリーになってしまっていた。GOOSE250、SRX250やGB250クラブマン、エストレヤなんかも、初期の頃は結構なスプリンターだったしね。
元気をなくしちゃったのは、排出ガス規制や騒音規制が主な原因なんだけれど、それからは「元気のいい」も「スプリンター的走り」も期待できないモデルばかり。「250にしては」元気がいいとか、「いざ走り出しちゃえば」不満は感じないとか、そういうエクスキューズつきだった。
トラッカーとか、オンオフモデルとか、空冷単気筒エンジンモデルを各メーカーとも数機種ラインアップしていた2000年代。いま思えば、250って排気量自体が勢いをなくしていた時期だったのかな、と思う。
それが変わってきたのが、250ccスポーツモデルが続々とデビューしはじめてから。08年にデビューしたカワサキNinja250Rに対抗して発売されたホンダCBR250Rは単気筒だったし、そのネイキッドバージョンのCB250Fも、それまでの「物足りない250」イメージを払拭する出来だった。CBRに関しては、CRF250L/M、そしてRallyも同系エンジンだから、幅広いカテゴリーに対応できるパワー特性が必要だったのかもしれない。
それでも、まだまだ「いつかの250」には及ばなかったかな。ホンダの250シングルと言えば、かつてはCB250RS/RS-ZとかCBX250RS、XLR250R系があったものね。全部ひっくるめて一時代を作ったエンジン系統でした。
それを一気に覆したのが2015年発売のカワサキNinja250SL! 意外と目立たないモデルなんだけれど、その名(SL=スーパーライト)の通り、Ninja250より20kgも軽く、KLX/DトラッカーX系の水冷DOHCシングルはさらにパワーアップされていて、兄弟モデルのZ250SLともども、250シングルスプリンター復活、という感じだった。ただ、Ninja250やCB250Fよりひと回り小さくて、あぁこれが250ccフルサイズだったらなぁ、と思ったもの。もちろん、このコンパクトさを大歓迎した人もいたんだけどね。女性や小柄なライダーにはドンピシャだったはず。
僕らジャーナリストの悪い癖で(僕だけ?笑)、新しいバイクに乗る前にいろんな妄想を巡らせるところがあって、CB250Rかぁ、CB250Fのマイナーチェンジね、新しいCB1000Rに合わせてお色直ししたか――。CB250Rに乗る前に思ったのは、こんなことだった。だいたい、おかしな先入観を持たないためにも、事前に資料は読み込まないことが多いので、スッキリしたな、CBシリーズに一本筋が通ったな――そんな感じしかもっていなかった。
それが、走り出してびっくり! 最初にクサしておいて「いざ乗ったらびっくりしました」なんて陳腐なフリにもほどがあるんだけれど(笑)、事実そうだったんだからしょうがない。事前の予想より何倍もシャキシャキ走る、それがCB250Rだった。
エンジンは旧CBR250R/CB250F系で、CRF250L/Mにも使用されている水冷DOHCシングル。けれど、びっくりするくらい元気! 低回転のトルクも明らかに旧CB250Fより出ていて、スタートダッシュもCRF系より元気。あぁこれはファイナルをショートに振ってるんだな、と思ったら、CB250Fと同じで、CRFよりロングな設定とは! なんたる節穴、俺の目(笑)。
特にスタートダッシュなんか、元気に感じるかどうかはスロットルレポンスによるところも大きくて、CB250Rはこのレスポンスがかなりイイ。低回転トルクは、もちろん250シングルなりなんだけれど、エンジン回転の反応がいいので、トルクがよく出ているところにすぐに到達する。吸排気系、変更している効果が大きいな――そう感じたのだ。
力が盛り上がってくるのは6000rpmあたりから。レスポンスがいいエンジンは、1発1発の爆発を感じやすい歯切れのいい、タカタカタカタカッと小気味いいタイプで、もちろん単気筒だからと言ってもドコドコするような鼓動感はない。回転が上がってくると、この連続爆発がビートのように奏でられて、力強いし振動はないし、「エンジンはCBR250RRの2気筒だよ」って言われても騙されちゃうほど。もちろんRRの2気筒とは明確に違うんだけどね。
車体のフィーリングもCB250Fとは大きく違っている。250Fが、適度な重量感を感じさせる、決して軽快なハンドリングじゃないのに対して、250Rは「これぞ250シングル」っていう軽快さにあふれている。それも、いたずらに機敏なんじゃなくて、きちんとフロントタイヤに荷重が乗っての軽快さで、これは車体が軽くなった効果もあるし、タイヤがいいなぁ、と思ったら新たにラジアルタイヤを装着している。
250Fのバイアスと250Rのラジアル、そのフィーリングの差は大きいね。軽快でシャキッとしている250Rと、安定感があってねばりある250F。どちらが良い悪いじゃない、乗る人の好みだ。僕はシャキッとしている250Rの方が好きだけれど、このシャキッとした軽快感をフラフラする、安定感がない、と感じる人も少なくないだろう。
これが高速道路を走ってみると、この軽量な車体でもきっちりと安定感がある。トップ6速で80km/hは5000rpm、100km/hは6300rpmあたり。出力特性では、おそらくこの辺までの加速や快適さにキッチリと的を絞っているので、このスピード域までの加速が心地いいね。
これ以上引っ張ると、エンジン振動も出てくるし、エンジンを無理に引っ張ってる、って感じがしてくるので、あまりオススメしない。順法走行していても、100km/hから追い越し加速で一瞬120km/hなんて域に達するのが力強いけれど、そのスピードをキープするのはお勧めしない、ってこと。スピード違反だし(笑)。
高速道路のクルージングでは、燃費にも注目してみた。デジタルメーターには瞬間燃費のファンクションがあるんだけれど、トップ6速100km/hで走っていると、その瞬間燃費は35~40km/Lを表示する。実際に計測してみると、高速道路をのんびり流していると、満タン計測で約35.5km/L、ストップ&ゴーの多い下道で計測すると、約30km/L。燃費もイイね。
そんなCB250Rは、本当に気軽にヒョイと乗り出せて、どこへでもバイクで行きたくなるモデルだった。これって、250シングルのお手本だと思う。同じ250に乗るのでも、遠出が多い人はCRF250Rallyにするとか、サーキットで遊びたい人はCBR250RRにするとか、そういう選択肢が広がるってことがイイ。
街乗りが多くて、時々は日帰りツーリングなんかに出かける、なんてユーザーには、CB250Rはドンピシャだと思う。荷物を積むことはまったく考えてないけど(笑)、じゃぁバックパック背負って走ってもいいしね。
かつてCB250Fに試乗した時、僕は他誌でインプレッションしたんだけれど、CBを「走る、曲がる、停まるが、まったくフツー」と紹介した。もちろんこれはいい意味で言ったことで「ビギナーが乗っても恐怖感なく」「ベテランだろうが女子だろうが、誰が乗っても破綻しない」とも書いた。その考えは今でも変わっていないし、そう的外れなインプレッションだったとも思わない。
けれど、新生CB250Rは「まったくフツー」が一段進化して「好ましい高性能」だった。もちろん250Rも、誰が乗っても破綻しないし、ビギナーが乗っても恐怖感を感じることはないはず。
新しいベンチマークなのだ、と思った。これから250スポーツは、特に250シングルは、このCB250Rを目指して開発され、発表されるだろう。
先に乗ったCB125R、CB1000Rを含め、再構築を目指しているホンダCBシリーズが、なかなかに楽しみな存在になってきた。
(試乗・文:中村浩史)