適度なサイズと軽い車体、ゆったりとしたライディングポジションと安定性、燃費の良さに加えて150モデルは高速道路を走ることもできる行動範囲の広さ、250フルサイズ・スクーターに対して手ごろな車両価格など、独自のポジショニングを築き、日本でも人気モデルとなったPCX。果たして3代目となった最新モデルはどう生まれ変わったのか? 港町・横浜で開催された試乗会で125、150両モデルを体感、色々とお話を伺ってきた。
■試乗:髙橋二朗
■写真:依田 麗/Honda
■問合せ:Hondaお客様相談センター TEL0120-086819
http://www.honda.co.jp/PCX/
世界で展開するコミューターとして、多くの人を満足させる使命を担う
2009年の東京モーターショーにてワールドプレミア。翌2010年にグローバルモデルとして世界にリリースされたホンダのPCX。2012年には次世代スクーター用としてeSP エンジンに刷新するとともに日本では軽二輪クラスとなる150版を投入。2014年に2代目へモデルチェンジとなり、日本仕様はこれまでのタイ生産からベトナム生産モデルとなった。そして4年が過ぎ、先日フルモデルチェンジで3代目へと進化を果たした。
私自身、PCXは初めて世に出たモデルから実際に見て、乗ってきた。eSPエンジンになった125には1万kmほど乗っていたし、現在は2代目150を新車から普段の足から遠出まで使用、走行距離は4万kmを超えた。それだけに、今回の新型3代目は個人的にも気になるモデルであった。
PCXだと一目でわかるフォルムを継承しつつ、ボディの曲面が光と影のコントラストによって強調。リアウインカー部をブラックとすることで目立たなくし、テールエンド部にかけてスリムに見せる演出も。125と150の違いはフロント(「PCX」の文字入り)及びリアフェンダー部デカールの有無程度。ボディカラーもそれぞれ4色が設定されている。※以下、写真をクリックすると大きく、または別の写真を見ることができます。 |
ライダーの身長は173cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。 |
新型、全体のフォルムはこれまでのモデルを踏襲、一目でPCXと判るものだ。これは初代より空力やパッケージ、使い勝手などを突き詰めた結果であって、実際にユーザーから好評を得ている部分だとか。その中で新型はフロントマスクやテールなどのデザインを突き詰めている。テールまわりはウインカーを黒くし、初代のようにリアに向かっての絞り込みを強調。真後ろから見ると、X型のテールランプ(2代目のテールも実はH型ではなくX型だった)やワイド化されたタイヤによって存在感が増した。2代目からLEDヘッドライトが採用されていたが、技術の進歩によってデザインの自由度が高まった。フロントマスクも真正面から見るとワイドになった印象を受けるが、サイズに大きな違いはないという。
従来型シートはお尻が痛くなるという声が寄せられたこともあり、上級モデルと同じウレタンを使い4mm厚くなった。その分、 ライディングポジションは従来型に対しアップライトに感じたが、側面の形状を変更することでこれまでと変わらぬ足付き性は確保されている。硬さ自体に変更はない。また、ステップボードの形状変更により、長さ方向に余裕が出て広くなった。
新型最大の特徴はフレームが一新されたこと。フォルツァなどで使われてきたダブルクレードル構造となった。スクーターだけに骨格は見えないが、走りの面で大きな影響を及ぼしている。剛性が向上したことで安定性が向上。推奨試乗コースでもあった首都高速の横浜ベイブリッジにおいて、従来モデルに対して明らかな耐横風性能の向上が感じられた。ちなみに耐横風はフロントスクリーンに2か所、風の抜け穴を新設するなど、空力面の改善による効果もあるとのこと。剛性の向上は乗り心地にも効果が表れており、新車故の硬さのようなものを感じるが、荒れた路面でもバタつき感がなく、落ち着いた印象。相反するかもしれないが、操縦においての軽快感はむしろ上がったような印象も受けた。尚、フレームは新しくなったが、跨ぎ空間の位置関係に大きな変化はなく、乗り降りもこれまで通りとなっている。
これまでのPCXは「上質」を求めてきたが、今回はさらに上の伸び感、余裕を追求したというエンジンはどうか? 主に吸排気系、駆動系のチューニングによる動力性能アップがなされている。日本独自の騒音規制から解き放たれたことで、初代モデルで見られた60km/h近辺のもたつきが解消された2代目だったが、新型は下から上までよりワイドなセッティングとした結果、横浜市街に多い坂道でも力強い走りを感じることができる。一方で、急激なスロットルオンに対するギクシャク感もなく、スムーズに変速させる躾けのできた”品の良い”セッティングに仕上がる。これはホンダの良心とも言える美点でもあり、これまでも私個人的に評価してきたポイントだ。
125と150、微小スロットル開度ではほとんど違いは感じないが、スロットル開度が大きくなった時の力強さはさすが25cc分の差を感じる。高速道路を走ることができる150に関しては、従来型に対し料金所での出足から高回転の伸びの良さを体感することができた。尚、新型は125、150共に最高速は上がったという(エンジン保護のため、ある一定回転に達するとリミッターが働く)。尚、150エンジンはこれまで、販売される国によって152cc版(日本、欧州など)と149cc版(アセアン地域など)が存在していたが、今回のモデルから149ccに世界統一となった。
原二クラスでは上質なプレミアムモデル的存在として、また軽二輪クラスでは自動車専用道路を走れることから都市部の郊外で人気を博しているPCXシリーズ。新型は従来型に対して乗り心地が良くなったり、速くなったり、安定感が増したなど特に走りの面において実際、劇的に進化を果たしているのだが、それぞれの部分を突出させないおそらく相当高いレベルのトータルバランスで性能アップを果たしたのだろうなぁという仕上がりを感じた。グローバルに展開しているコミューターだけに、世界中の多くのライダーを満足させる正常進化を果たしたモデルと言えるのではないでしょうか?
(試乗・文:髙橋二朗)
ACCソケットが備わるインナーボックスは容量はそのまま、内部の荷物が確認しやすくなった。従来型はハンドルロック連動のキーシャッターを開ける操作が煩わしかったが、日本仕様のPCXでは初めてスマートキー(アンサーバックスイッチ装備)を採用。携帯していればキー操作なしでエンジン始動可能に。 |
ホーン、ハイ/ロー切り替え、アイドリングストップ、ハザードといったスイッチ類はエッジの効いたデザインに。シートは表皮の他、座り心地向上のため4mmほど厚くなった。タンデムステップの使用/格納は横スライドから縦スライドに。 |
トランクスペースは車載ツールやオーナーズマニュアルをシート裏側に移動し、サスペンション取付位置の変更などで空間効率が向上、さらにシートレールも外側に追いやることで容量は25リットルから28リットルにアップした。写真中が新型、右が従来型。 |
●PCX〔PCX150〕主要諸元 ■型式:2BJ-JF81〔2BK-KF30〕■全長×全幅×全高:1,925 ×745 ×1,105 mm■ホイールベース:1,315mm■最低地上高:137 mm■シート高:764 mm■車両重量:130〔131〕kg■燃料消費率:54.6 〔52.9〕km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)50.7 〔46.0 〕km/L (WMTCモード値 クラス1 〔クラス2-1 〕 1名乗車時 )■最小回転半径:1.9 m■エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒■総排気量:124 〔149 〕cm3■ボア×ストローク:52.4 × 57.9 〔57.3×57.9〕mm■圧縮比:11.0〔10.6 〕 ■最高出力:9.0 kw(12 PS)/8,500rpm[11 kw(15 PS)/8,500rpm]■最大トルク:12N・m(1.2kgf・m)/5,000 rpm〔14N・m(1.4kgf・m)/6,500 rpm〕■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)■始動方式:セルフ式 ■点火装置形式 :フルトランジスタ式バッテリー点火■燃料タンク容量:8.0 L■変速機形式:無段変速式(Vマチック)■タイヤ(前/後):100/80-14M/C 48P /120/70-14M/C 55P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/機械式リーディング・トレーリング■懸架方式(前/後): テレスコピック式 /ユニットスイング式 ■フレーム形式 :ダブルクレードル■車体色:キャンディラスターレッド、ブライトブロンズメタリック 、パールジャスミンホワイト、ポセイドンブラックメタリック■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):342,360 〔373,680 〕円(PCX150〈ABS〉は395,280円) |
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