2017EICMAの振り返り。はい、まだ続いてるんです。今回はパーツメーカーやライディングギアブランド、またEICMA初の試みとなった別会場でのカスタムイベントを紹介します。
■レポート&写真:河野正士
●SHOWA
今年も、日本のサスペンション・ブランド、SHOWAがブースを出展していました。これまでの二輪・四輪メーカー向け量産車用サスペンションを開発し、製造&納入するサプライヤーから、高性能サスペンション・ブランドへと進化した「SHOWA」をアピールするべく、一般ユーザーが購入可能な高性能サスペンションをEICMA会場で発表&アピールしてきました。しかし今回は、高い技術力をアピール。その理由は、量産車電子制御サスペンション「SHOWA EERA(ショーワ・イーラ/Electronically Equipped Ride Adjustment)」を完成させ、ここEICMAのカワサキブースで発表された「ZX-10R SE」に装着されたから。当然、SHOWAブースの目玉も、そのEERAを搭載した前後サスペンションとなりました。
↑カワサキZX-10R SEに搭載された「SHOWA EERA」の前後サスペンション。基本的には、スーパースポーツ用サスペンションとして開発した「BFF/バランス・フリー・フロントフォーク」や「BFRC/バランス・フリー・リア・クッション」をベースに、電子制御バルブによる減衰力可変機能を追加したもの。 |
そのEERAの特徴は、前後サスペンションともにストロークセンサーを内蔵していること。そして電子制御サスペンション用コントロールユニットもSHOWAオリジナルであることです。
ストロークセンサーとは、サスペンションの動きをモニターするために必要なセンサー。MotoGPなどのレース中継や写真で時折目にする、サスペンションと並行するように装着された細い棒状のパーツが、そのストロークセンサーです。しかし繊細なストロークセンサーを外付け状態で量産車に装着する事はできず、他メーカーは車体側にセンサーを取り付け、そこから得たデータでストローク量を割り出す(たとえばスイングアームの稼働量)などしているのです。しかしSHOWAは、ストロークセンサーを前後それぞれのサスペンションに内蔵。それによってストローク量をダイレクトに、そして高い精度で計測することができ、そのデータ伝達時のロスも最小限に抑えることに成功したのです。
↑少しピントが手前ですが、フロントフォークのインナーカートリッジ内に見える黒い筒と、リアサスペンション下側/カットされたシリンダーの下側に見える黒い筒がストロークセンサー。 |
そのストロークセンサーで計測したサスペンションの状態などをもとに、その状況でどういったセッティングを行うことがベストなのか。その制御ロジックこそが電子制御サスペンションの核となる部分。SHOWAは、あらゆるカテゴリーでのレースと、さまざまな量産車のサスペンション開発を通して得た経験を活かし、このEERAにおけるセッティングを決定しているのです。
↑これがEERAの中枢となる、SHOWAオリジナルのコントロールユニット |
この制御ロジックこそがサスペンション・ブランドであるSHOWAの強みだと、EICMA会場で力強く語ってくれました。またSHOWAはレーシングスペックを造り上げることも、量産モデルに求められる強度や耐久性にも対応することもできる。だからこそ、フロントフォークやリアサスペンションというハードパーツに加え、電子制御サスペンション用コントロールユニットというソフトを含めたサスペンションシステムでシェア拡大を狙っていくのだそうです。
市販車としてこのシステムを初めて搭載した「カワサキZX-10R SE」に関しては、そのSHOWA独自の制御技術とノウハウをもとに、カワサキとともにZX-10Rのパフォーマンスや車体キャラクターに合った制御を造り上げたそうです。
↑カワサキのブースに展示されていた、SHOWA EERA搭載を装備した「ZX-10R SE」。電子的なトラブル、たとえば電子制御のシステムがダウンするなどのトラブルが発生した場合は、ベースとなるBFFサスペンションの性能をキープしたまま走行できる。 |
↑またSHOWAブースには、現在開発中の、オフロード用EERAシステムを搭載したサスペンションを「ホンダCRF1000Lアフリカツイン」に装着。車体に跨がり、サスペンションを動かしながら、変化するセッティングを体感できるエキシビションを行っていました。 |
●Arai
アライヘルメットもEICMAにブースを構え、新しいヘルメットを発表しました。ここ最近は、各カテゴリーのトップライダーにもAraiユーザーが増え、レースシーンにおいてもAraiの注目度が上がっています。
日本では「XD」のモデル名で発売されたニューモデル「RENEGADE-V」。スネル規格をクリアしたクルージングモデル。 |
ホンダとのコラボレーションモデル。ホンダのプレスカンファレンスで、新型CB1000Rに乗って登場したミック・ドゥーハンも、このRX-7ベースのウイングマークヘルメット/シルバーバージョンを被っていました。 |
こちらはドゥカティとのコラボモデル。カーボンモデル/RX-7RCを使用。 |
●IXON
フランスのライディングギアブランド、IXON。発音を聞いたら「イクソン」だそうです。ここ最近、MotoGPを走るライダーたちにもユーザーが増えてきました。僕が注目したのは、IN&MOTION社が開発した、独自のエアバッグシステムを採用しているからです。
これが新たに搭載されるエアバッグシステム。おそらく車体側にセンサーを必要とせず、このベスト内のシステムのみで転倒を感知しエアバッグを作動させるシステムだと思われます。 |
エアバッグがカバーする範囲を示したイラストと、そのシステムを搭載したジャケット。 |
●SHOEI
ここのところヨーロッパのカスタムシーンに積極的にアプローチし、そのシーンにフィットした新商品/J.Oの発売やプロモーションが目立っていたSHOEI。しかし今年はEICMA前にオフロード用ヘルメットである「VFX-W」シリーズの最新モデルを発表。またEICMAでは、システムヘルメットの最新モデル「NEOTEC II」を発表しました。
システムヘルメットの最新モデル「NEOTEC II」。 |
オフロード用ヘルメットの最新モデル「VFX-WR」と人気モデル「J.O」 |
●brembo
ブレンボの新モノブロックキャリパー「Stylema」。そう、これはV型4気筒エンジンを搭載したドゥカティの新型スーパースポーツモデル「パニガーレV4」のために特別に開発されたキャリパーです。高性能なモノブロックキャリパーとして定評がある「M50」の最新版、という位置づけですね。進化のポイントは軽量コンパクト化と冷却性向上によるコントロール性の向上です。
これまでの「M50」キャリパーの基本構成パーツを換えることなく、また剛性を犠牲にすることなくキャリパーボディそのものを小型化。とくにボルト挿入口の高さを低くすることでキャリパー装着用ボルトも5mmほど短くなり、さらなる軽量化にも貢献しているそうです。
またピストン周りの冷却用スペースを増やすとともに、ブリッジ部分に設けられた通気孔へのエアフローを増やすことでブレーキパッド周りへの気流が増加し、冷却効果が改善されているそうです。
●AGV
2016年、兄弟ブランドであるダイネーゼとともにEICMAに戻ってきたイタリアンヘルメットブランドのAGV。今年はAGVのみのブース展開となりましたが、そのスペースは広く、多くのファンによって常に混雑していました。そこで発表されたのがAGV初となるシステムヘルメット「SPORTMODULAR/スポーツモデュラー」と、ビンテージスタイルのフルフェイス型ヘルメット「X3000」です。
ちょっと意外な感じがしますが、AGVにとっては「SPORTMODULAR」が初のシステムヘルメットだそうです。AGVらしい、エッジの効いたデザインを維持したままのシステムヘルメットでした。 |
ビンテージスタイルのフルフェイス型ヘルメット「X3000」。そう、かつてアゴスチーニなどが被っていた、フルフェイスヘルメット黎明期にAGVが採用していたスタイルを復活させたもの。うーん、これは人気が出そうですね。 |
●PANDO MOTO
スロベニアのライディングデニムブランドがパンドモトです。シンプルで機能的で、大好きなブランド。3年前だったかな、EICMA会場で見かけて以来、毎年ブースに顔を出し新製品の説明を受けたり、欧州や日本のバイクカルチャーについて情報交換を行ったりしています。近年はジャケットなども手掛け、ラインナップを広げています。穴の開いたデニムは欧州のデニム耐久テストに掛けたときの結果。コンクリートを想定したヤスリの上にデニムを押し当て、一定時間以上その状態を続けて、そこでの破れ具合を確認するというもの。こういったテスト結果をしっかりと見せ&性能を高めながら、スタイリッシュさを追求しているのです。
●DAVIDA
イギリスのヘルメットブランド、ダビダ。オワン型ヘルメットのほか、レザー内装を使ったハイクオリティなジェット型ヘルメットなども展開しています。そのダビダが、来春よりフルフェイス型ヘルメット「KOURA/コウラ」をリリース。会場内にブースを展開し、プロモーションを行っていました。ボスであるデビッドさんは、欧州のさまざまなカスタムイベントで顔を合わす人物。僕を見つけると、ダビダのジェット型ヘルメットをベースにフルフェイス型にしたなど「KOURA」のディテールを説明頂きました。またマーケティング担当のシャロンからは、スタイリングや被り心地などについて細かくリサーチを受けました。アジアンフィットも考えなきゃいけないから正直に答えてね、と真剣にメモを取っていましたよ。
●OFFICINE GUARESCHI
OFFICINE GUARESCHI(オフィチーネ・グアレスキ)。この名前を聞いて”おっ!”と思ったのは、ドゥカティ・ファンですね。そうグアレスキとは、かつてドゥカティのテストライダーをしていたヴィットリアーノ・グアレスキ。その後バレンティーノ・ロッシが起ち上げたMoto3チーム/VR46のチームマネージャーを担当していました。その後いろいろあって(そのあたりの話は割愛します)VR46を離れたのですが、その後起ち上げたのがバイクショップ/オフィチーネ・グアレスキ。そう、僕の大好きなモトグッツィのスペシャルショップなのです。そしてこの車両は、彼が造り&走らせ、ミサノ・クラシックというビンテージバイクの耐久レースで優勝したマシンなのです。スミマセン、完全に個人的な趣味です。
●STYL MARTIN
イタリアのライディングシューズブランドである「STYL MARTIN/スティル・マーティン」の最新ブーツ。そう、80年代にトップライダーたち(確かローソンやコシンスキーだったかと……)が愛用していた、あのブーツのレプリカです。パッと見たとき、ああ昔のヤツねと、素通りしたのですが、その奥に色褪せた同デザインのブーツがあり、そこで”!?”となり、新型だと気がついたのです。
●Other Helmet
はい、ヘルメット好きなので、イロイロ撮ってきました。今回はビンテージスタイルのフルフェイス型ヘルメットが数多く発表されていました。火付け役はBELLのビュレット。まぁ、そのデザインをパクったアイテムも沢山ありました(欧州ブランドでもパクるヤツはパクるんです!)。ここではそうじゃないものを選びました。またエッジが効きまくったオフロードヘルメットも欧州ブランドの特徴。それも好きです。
●EAST EICMA Motorcycle
今回初試みとなった「EAST EICMA Motorcycle」。EICMA本会場とは別の場所で、ミラノで人気の骨董市であるイースト・マーケットとミックスしたカスタムバイク&バイク系ライフスタイル・イベントです。開催は一般公開が始まった木曜日から土曜日まで。しかもスタート時間は18時から。EICMAのアフターパーティ的な雰囲気なのです。
定期的に開催されているミラノのイースト・マーケットは、英国ロンドンで開催されている骨董市イーストロンドン・マーケットにインスピレーションを得たもの。今回はEICMA開催に合わせたスペシャルな出展を募ったそうです。70~80年代の映画のオリジナルポスターや看板を揃える出展者や、ヘルメットやワックスコットンジャケットばかりを取り揃える出展者もありました。そこにヤマハ、ホンダ、BMW、ハーレーダビッドソン、ドゥカティ、モトモリーニ、デロルトがオフィシャルブースを展開。主催者が選りすぐったカスタムバイクも展示されたのでした。
●最後はキャンギャルで!
毎度お馴染み、EICMAの宝石ともいえるキャンギャルの皆さんです。長く引っぱったEICMA振り返り企画ですが、これが最後のネタ。お付き合い頂きありがとうございました(写真をクリックすると、オネーさん達が大きくなります)。
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