先日の東京モーターショーで国内デビューを果たした新型ゴールドウイング。今回は6気筒エンジンというキーワード以外、エンジン、フレームを含めてすべて一からの再開発とあって大いに注目を集めている。しかもこのニューゴールドウイング、2018年4月にスタートするホンダの新販売チャンネル「Honda Dream」での販売も決定という。で、それに先立ってこのほど新世代ゴールドウイングの技術情報を公開する説明会が報道陣向けに開催されたので早速紹介しておこう。
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
まずはこれまでのゴールドウイングの簡単なヒストリーから。
初代の水平対向4気筒、リッターモデルのゴールドウイング、GL1000は1975年に発売開始されたからなんと40年を超す長寿モデルでもある。そして、この40数年間に発売されたゴールドウイング一族は、なんと約79万5千台(累計生産台数)を数えるという。
1975 GOLDWING GL1000。 | 1980 GOLDWING GL1100。 | 1984 GOLDWING GL1200。 |
1988 GOLDWING GL1500。(写真は1991モデル) | 2001 GOLDWING GL1800。 |
そして1980年には排気量アップでGL1100へ、1984年にはさらにGL1200へ。同じ水平対向エンジンながら6気筒に発展したのは1988年のGL1500から。そして2001年にはさらに1.8リッターへ排気量アップのGL1800へ。今回のフルモデルチェンジは排気量こそ同じ1.8リッターだが、第6世代のゴールドウイング誕生と発表されている。
2018 GOLDWING Tour Airbag DCT。 | 2018 GOLDWING。 |
さて、その第6世代のゴールドウイング、開発コンセプトは、40年以上にわたって君臨してきた“The King of Bike”というテーマそのものを見直すところから始まったという。いつの間にかに「立派」であり「豪華」でなければゴールドウイングじゃない、という意識の刷り込みに支配されていたのでは、という。
そこで基本に立ち返って「モーターサイクルの原点」である、
(1)車体:デイリーユースからロングツーリングまで幅広く使いこなせる、より軽量で高密度な新世代車体パッケージング
(2)パワーユニット:スムーズ&アグレッシブな新世代水平対向6気筒エンジン
(3)スタイリング:“Refined Shape Tension Style”洗練された鋭さと張りのある面
(4)制御、電装:“Premium”を実感する先進装備
をテーマとして開発を進めたという。
新型ゴールドウイングに採用されたダブルウイッシュボーンサス。 |
まずは新世代ゴールドウイングの最大の特徴といえるフロントのダブルウイッシュボーンサスペンションから紹介しよう。クルマではごくごく一般に採用されているダブルウイッシュボーンサスだが、ゴールドウイングが従来のテレスコピックサスからこのダブルウイッシュボーンサスに変更した最大の理由は、テレスコピックサスでは避けられない摺動抵抗から解放させたかった、というのが一番の理由だ。特にゴールドウイング級の超重量車では想像以上の摺動抵抗と闘っていたであろうことは想像に難くない。テレスコピックサスでは、路面からのショックを吸収する機能と、舵を切るという二つの機能をあの2本のフォークが全て受け持っていたのだから。
そこで取り入れられたのが、ダブルウイッシュボーンサスだ。ダブルウイッシュボーンサスは、上下方向の動きはフレーム先端から伸びたアッパーとロアーの両アームが受け持ち、ショックの吸収はロアーアームに取り付けられたダンパー&スプリングが受け持つ構造になっている。一方、転舵機能はフロントフォークホルダーがその役目を担う構造だ。こうして見ると、二輪のテレスコピックサスというのはシンプルでありながら両機能を同時にこなしてしまう優等生といえないこともない。ただ、それも車重次第で、車重が大きくなればなるほど摺動抵抗が増大化してしまう構造でもあった。
さらにダブルウイッシュボーン化することで、全ての軸受け部をベアリング化させられるということも大きなメリットだ。摺動抵抗と転がり抵抗ではそれこそ雲泥の差が出てくる。また、ゴールドウイングでは前輪とハンドル、双方の転舵軸をステアリングタイロッドで繋ぐ構造を取り入れており、それによりライダーの理想のポジションを犠牲にすることなく、自然な操作フィールを実現することができたという。
また、ダブルウイッシュボーンサスの特性として、ホイールの上下の動きをある程度自由にセッティングすることができ、新型ゴールドウイングでは、ほぼ真上方向にストロークするよう設定している。テレスコピックサスではキャスター角をとっているので必然的にサスが沈み込むとホイールがエンジンに近づいていってしまう。ダブルウイッシュボーン化でフロントタイヤとエンジンとのクリアランスをより詰めることが可能となり、理想の重量配分に近づけることにも貢献したという。
こちらはゴールドウイングのニューフレーム。 |
車体レイアウトイメージ図。ダブルウイッシュボーンサスの採用により従来のテレスコピック方式では転舵に必要とされたハンドル軸周りのスペースを削減。同時に、サイドラジエター方式を継承しながらより高性能で小型化したラジエターを採用している。 |
もう一つの新型ゴールドウイングの大きな特徴は、第3世代の7速+リバースDCTの採用があげられる。長距離ツアラーとして、高速巡航を考慮、燃費や静粛性をさらに向上させるためDCTの7速化を図るとともに、手元のスイッチで操作できる“微速前後進機能(ウォーキングモード)”を追加し、さらにフラッグシップモデルに相応しいクオリティとして変速時の質感も大幅に向上させているという。
第3世代7速+リバースDCT。 |
従来の電動式リバース機能では、車両の切り返し時には「R」→「N」→「Low」の操作を繰り返さなければならなかったのに対し、リバースDCTでは、エンジンの駆動力と電子制御クラッチを使うことで、左手ハンドルスイッチの「+ボタン」と「-ボタン」だけで微速前後進を可能としている。またスロットルバイワイヤシステムの採用により、エンジン回転数を一定に保ちながらクラッチのつながりを緻密に制御することで速度をコントロールし、様々なシチュエーションにおける車体取り回し時の安心感も向上させているという。
また、この第3世代DCTの採用によりリバースアイドルシャフトが不要になり、電動リバース関連装置も廃止するなどにより、エンジン単体で約3.9kgの軽量化も達成できている。
ギアレシオ比較イメージ図。低速側をよりクロスレシオ化して低速時の変速ショックを低減、高速側ではワイドレシオとして静粛性を向上させている。 | フォークシャフトダンパーにダンパーラバーを追加、マスターアームダンパーにも緩衝ラバーを追加してDCTの質感向上と変速音の低減を図った。 |
縦置き水冷4ストローク水平対向6気筒、1833㏄エンジン。 |
全面的に見直したという6気筒エンジンについてもざっと紹介すると、モーターサイクル用量産エンジンとしては唯一無二の縦置き水冷4ストローク水平対向6気筒の基本は継承しながら、大幅な軽量化を図り、重厚感、パルス感を持つサウンドを伴った低回転域で余裕のあるトルク特性による、ゆったりしたクルーズ性能とそこからのダイナミックな加速の実現と同時に、燃焼効率の追求などにより燃費向上も図っている。
スロットルバイワイヤシステムも採用。これまた新たに採用したシーン別ライディングモードシステムと組み合わせることで幅広い走行シーンで、よりライダーの意思にシンクロしたアクセレーションを実現しているという。
シーン別ライディングモードは、スロットルバイワイヤシステムによるパワーフィールの違いに加え、7速DCTのATモード変速スケジュール、トルクコントロール、サスペンションの減衰特性、ブレーキ特性の計5要素で制御するシステムで、各走行シーンにマッチした出力特性と運動特性による「走る」「曲がる」「止まる」を最適バランスを提供するシステムだ。
具体的なモードは「ツアー」、「スポーツ」、「エコノ」、「レイン」の4つで、「1台で4台分の走りのキャラクター」を実現したという。
出力特性イメージ図。赤いラインが新型ゴールドウイング、緑が従来モデル。 | エンジンのコンパクト化を表すイメージ図。シリンダー前後長で29mmコンパクト化が図られている。 |
新型ゴールドウイングの技術発表を行った本田技術研究所二輪R&Dセンター(以下同)開発責任者の中西 豊さん(写真中央)、サスペンション開発責任者の桒原直樹さん(左)、駆動系開発責任者の藤本靖司さん(右)。 |
●Honda GOLDWING〈GOLDWING DCT〉主要諸元 ■全長×全幅×全高:2,475×925〈905〉×1,340(スクリーン最上位置1.445)mm、ホイールベース:1,695mm、シート高:745mm、車両重量:357〈363〉kg■エンジン種類:水冷水平対向6気筒SOHC2バルブ(ユニカム)、排気量:1,833cm3、ボア×ストローク:73.0×73.0mm、圧縮比:10.5、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:21L、変速機形式:常時噛合式6速リターン〈電子式7段変速、DCT〉■ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク × 油圧式シングルディスク、タイヤ(前×後):130/70R18M/C 63H × 200/55R16M/C 77H、フレーム:ダイヤモンド■USA仕様 |
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