■文:井元康一郎 ■写真:松川 忍 |
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『手抜きだらけの東京モーターショー、楽しませる気概はどこへ』と題する手記をダイヤモンド・オンラインで発表し(http://diamond.jp/articles/-/147210 )、第45回東京モーターショーに対する厳しい見解が話題を呼んだジャーナリストの井元康一郎氏。 |
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2017年11月5日に閉幕した第45回東京モーターショー。今回のショーは“難しい”と当初から言われてきた。海外勢の相次ぐ撤退や国産メーカーの予算縮小に加え、電気自動車(EV)、自動運転、コネクテッド(クルマのネットワーク端末化)などのトレンドを追うことも求められる。 |
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二輪車エリアで見られた“笑顔”の数が印象的
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なぜクルマの展示はつまらなく、バイクの展示は面白かったのか。その大きな理由は、二輪メーカーが何よりもまず“楽しさ”を前面に押し出した出展をしていたということにあろう。 |
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「好き」をまっすぐに訴える展示内容、だから“伝わる”
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これら、東京モーターショーにおけるバイクブースの盛り上がりは、決して市場が活気を帯びていることの証ではない。日本自動車工業会の統計によれば、2016年の販売台数はわずか33万8000台と、全盛期の10分の1にまで落ち込んだ。もはや市場としての体をなしていないと言ってもいいくらいだ。実はこのような二輪市場の衰退は日本に限ったことではなく、先進国市場はどこも似たようなものだ。 |
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「宿題」ばかり見せられる「ショー」が面白いわけがない
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この二輪ブースの華々しさは、衰退する東京モーターショーの今後のあり方に一石を投じるだけのパワーにもなり得る。もともと東京モーターショーは世界でも独自性の高いショーだった。業界人の交流がメインの純粋なビジネスショーでもなければ、商品の即売を行うユーザーショーでもない。クルマをコンテンツとして来場者を楽しませるエンタテインメントショーだった。 |
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■ヤマハ クロスハブ コンセプト 前々回にはコンパクトコミューター、前回にはスポーツタイプを出展したヤマハの四輪コンセプトモデル。今回は「アクティブ&アーバンなライフスタイルを具現化できるような、ヤマハファンのためのSUV」として、未来的かつワイルドなデザインのコンパクトピックアップトラックを出展した。一見2人乗りに見えるが、実は4人乗り。前方中央に配した運転席の左右後方に1つずつ、運転席の真後ろにもう1つのシートが配置されている。このシートレイアウトによって、荷台は中型1台、小型1台のオフロードバイクを積めるだけのスペースを確保している。(撮影:松田勇治)(※注:写真キャプションはすべて編集部によるもの) |
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■ヤマハ モトロイド これもヤマハが出展した「MOTOROiD」。AI技術によって「人とマシンが共響するパーソナルモビリティ」をめざす概念検証実験機だ。自力でスタンディングスティル状態を維持し、極低速でも自律走行できる、オーナーの顔を認識するなど、まるで生きているかのような動きを実現したロボットバイクである。ホンダのRiding Assistは前輪をキーデバイスとして自立するが、モトロイドは原動機であるインホイールモーターを内包する後輪を駆使して実現している。このおかげで、スタンドによる駐車状態から自力でスタンディングスティルへ移行することも可能。あまり知られていないかもしれないが、ヤマハ発動機は産業用ロボット分野で長い歴史を持っており、そこからの技術援用も含まれるのではないかと推測する。 |
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■ヤマハ ナイケン ヤマハの看板技術のひとつであるリーニング・マルチ・ホイール(LMW)テクノロジーを駆使しての展示にも熱が入っていた。電動立ち乗り超小型モビリティの「トリタウン」、四輪LMW「MWC-4」とともにワールドプレミアされたのが、水冷直列3気筒850ccエンジンを搭載する大型LMW「ナイケン」だ。走行環境変化の影響を受けにくいLMWテクノロジーによって、さまざまに変化する路面や、コーナーが続くワインディングロードを自在に駆け抜ける高いスポーツ性能を実現。フロント15インチホイールとタンデム・倒立式フロントサスペンションの組み合わせは、視覚的にも“走り”を予感させる説得力が感じられる。 |
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■カワサキZ900RSとカスタムモデル おそらくバイク好きなら誰もが知っているだろうZ1をモチーフとしたレトロモダンモデル。この手のモデルはともするとマーケティング上の都合から生み出された後ろ向きな印象を与えがちだが、このモデルから感じるのは「作り手が一番楽しんでいる」印象だ。投入されている技術要素はもちろん最新版だし、「一人ひとりの『操る悦び』を表現するカスタムプロジェクト」として、アプローチもテイストもまったく異なる3台のカスタムモデルまでも出展。文字通りにバカウケしていた感がある。 |
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■スズキ MotoGP体験コーナー 正式名称は「バイクシミュレーター」。GSX-RRにまたがると、前方の巨大スクリーンに映されるフィリップアイランド・サーキットのコースに合わせてバイクが動くというもの。パッと見た瞬間、ひょっとしてMotoGPチームで使われているものか? と思ったが、バイクの動きは左右方向のみでバンクはしない。要するに、どちらかというと体験展示、もっといえば記念撮影用の大掛かりな装置といった内容であるようだ。特にキッズたちにバカウケしていたところを見るに、その思惑は大成功と言っていいだろう。(右写真撮影:井元康一郎) |
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■ホンダ モンキー125 2017年8月31日で生産終了となってしまったモンキー。しかし、その50年に渡る歴史はまだ終焉を迎えたわけではない。2016年3月開催のバンコクモーターショー16でワールドプレミアした「モンキーコンセプト」を、さらに進化させたコンセプトモデル「モンキー125」が出展されたのだ。細部の作り込みを観察するに、ほぼこのままの形で市販されることは想像に難くない。グローバル市場では、二輪車のほぼ8割以上が125cc以下だという。新生モンキーはそのゾーンにジャストフィットする形で生まれ変わり、新たな歴史を紡ぎ続けるわけだ。 |
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井元康一郎(いもと こういちろう) |
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