CRF250R 831,600円(10月27日発売)
★ホンダ CRF250R 車両解説
モトクロッサー、CRF250Rがフルモデルチェンジを受けて2018年モデルに
2000年のMFJモトクロス日本グランプリで、CRF450Rのプロトタイプ車が世界に先駆けてデビュー。そして翌年の2001年から全日本モトクロス選手権シリーズ及び、AMAモトクロス選手権でワークスチームが使用して活躍、本格的な4ストロークモトクロッサーの時代が幕を開けた。そしてこの年の11月10日にCRF450Rが市販開始されている。
4ストロークエンジンを搭載する新時代のモトクロッサーCRFファミリーの一員として、CRF250Rが登場したのは、CRF450Rの発売から2年遅れの2003年11月。以来、イヤーモデルごとに戦力アップがはかられてきているCRF450RとCRF250Rだが、登場時期と同様、それぞれの進化の度合いは毎年異なったスケジューリングで行われてきている。
2012年モデルのCRF250Rは、エンジン面ではスロットルボディの小径化を図るとともに、コネクティングチューブ、吸気ポート、排気ポート、エキゾーストバルブの形状変更が行われ、車体周りではCRF450Rと共通するサスのチューニングやワイドフットペグの採用などが行われた。2013年モデルではCRF450Rがフルモデルチェンジを受けたのに対して、フロントフォークのダンパー部のピストン径のアップ、バネレートの変更が行われ、また新パターンのフロントタイヤの採用が行われた程度で、いわゆる戦闘力アップの熟成マイナーチェンジが行われたのみだった。
そして2014年モデルで、CRF250Rにフルモデルチェンジの番がやってきた。エンジンでは全域でトルクフルなパワーを生み出す新設計ピストンと燃焼室形状の採用、混合気の充填効率を高める吸気通路形状の最適化、低中速のパワー感とスロットルレスポンスを両立させる燃料噴射方式“デュアル・ステージ・フューエルインジェクション(1サイクル2度噴射制御)”の採用などが行われた。サイレンサー全長を短くすることで慣性マスの集中を行い、また、同時に左右対称配置で得られる重量バランスの良さから高い車体安定感と軽快感を生み出すショートデュアルマフラーを採用。排気圧を最適化する整流板を取り付けた新型エキゾーストパイプも導入された。
車体回りでは第6世代の新設計アルミツインチューブフレームを採用。フロントの接地感とリアトラクションの向上などを目標にヘッドパイプとメインパイプの結合部を下方に移動させ、ヘッドパイプまわりの剛性を最適化。リアクッション上部とメインパイプ、ピボットプレートをより近づけて剛性を上げ、作動性を向上。リアフレーム上下パイプ間の角度を大きくし、各ガセット類の軽量化などが行われた。また、この新型フレームは低重心化とマス集中化を狙ったレイアウトを徹底していることも特徴だ。ECU、コンデンサー、レギュレーター、ワイヤーハーネスなど、各電装部品もグラム単位で軽量化し、同時に車体中心付近に配置させてマス集中化に貢献している。
足周りでは、縦、横剛性を最適化した新設計のスイングアームを採用。パイプの形状を見直し、従来よりも縦剛性を大幅に上げつつ横剛性を適切に保つことで、しなやかさと路面をしっかり捉える剛性感を両立させているという。フロントフォークは従来モデルを熟成し新設計の車体に合わせてセッティング。マス集中化と共に軽快感を最大限に引き出した車体レイアウトとのマッチングを図っている。おなじみのホンダプログレッシブステアリングダンパーは継続採用。
スタイリングでは、ジャンプ中もより扱いやすいように必要最小限の外装部品、徹底したマス集中化による軽快で俊敏な動きへの寄与、そして“マンマキシマム・メカミニマム”MM思想によりダイナミックで自由なライディングアクションに対応、という3点をキーワードに進化させたという。
2014年9月に登場した2015年モデルはフルモデルチェンジが行われた翌年のモデルということもあってマイナーチェンジのみで、フロントフォークにエアサスペンションを採用し、エンジンは、3種類のエンジン特性モードを手元で切り替えられるエンジンモードセレクトスイッチとインジケーターが新たに採用された程度。
2015年9月に登場の2016年モデルも熟成版といえるもので、エンジンの出力向上を目的に、吸排気系部品の素材変更も含めて見直しを実施。また、PGM-FIのセッティングの最適化も行われ、特に高回転域での出力アップとドライバビリティーの向上が図られている。それ以外では、フロントサスペンションが、フォークの内部構造の見直しに加え、アウターチューブに空気弁を追加、より細かなサスペンションセッティングを可能にするとともに、初期作動性能を向上させ、サスペンションの動きの良さと反力を両立させるという改良が行われた。同時に2016年モデルが発表されたCRF450Rの方も熟成のマイナーチェンジ。
4年ぶりのフルモデルチェンジとなった今回の2018年マシンの最大の特徴としては、ついにDOHCヘッドが採用されたことがあげられる。同時にボア×ストロークの最適化や、吸・排気ポートのストレート化、2系統に独立させた排気システムの採用などもおこなわれている。車体周りでも剛性と柔軟性を両立させながら軽量化を図ったニューフレーム、チタン製燃料タンクも新採用。「モトクロスレースで勝つこと」を目的に行われた改良ポイントの数々は下のニュースリリースで。
★HONDA ニュースリリースより (2017年10月6日)
モトクロス競技専用車「CRF250R」をフルモデルチェンジし発売
Hondaは、世界各地のモトクロスレースで活躍するモトクロス競技専用車「CRF250R」をフルモデルチェンジし、10月27日(金)に受注期間限定※1で発売します。
CRF250Rは、「モトクロスレースで勝つこと」を目的に、スタート時の優位性確保と加速性能の向上を目標に開発。新設計のエンジンはDOHCへ変更するとともに、ボア、ストロークの基本諸元の最適化、吸・排気ポートのストレート化に加え、2系統に独立した排気システムなどを採用することにより、エンジンの最高回転数と最高出力の向上を実現。始動方式はキックスターター機構を廃止し、新たにセルフスターターと軽量コンパクトなリチウムイオンバッテリーを搭載することで、キックスタートの煩雑さをなくし、レース中の再始動におけるタイムロスの低減に寄与しています。また、メインフレームは剛性と柔軟性を高次元で両立させながら軽量化したほか、フューエルタンクを従来の樹脂製から、より軽量なチタン製へと変更しています。そのほか、車体ディメンションの見直しなど、全体のパッケージングで低重心化を図ることによりトラクション性能を追求するとともに、ライダーが動きやすいスリムな車体デザインとマスの集中化があいまって優れた操作性と軽快なハンドリングを実現しています。
※1受注期間は2017年10月6日(金)から2018年1月31日(水)まで
- ●販売計画台数(国内・年間)
- 200台
- ●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
- 831,600円(消費税抜き本体価格 770,000円)
- ※価格にはリサイクル費用を含みます
- ※このCRF250Rは、公道および一般交通の用に供する場所では一切走行ができません。また、登録してナンバープレートを取得することもできません
- ※走行場所には十分注意してください。私道や林道、河原、海辺などの公共の道路以外の場所でも、人や車が自由に出入りできるところは道路とみなされ、道路交通法および道路運送車両法の違反になります
- =CRF250Rの主な特徴=
- ●出力とドライバビリティ―の向上を追求した新設計DOHCエンジンを搭載
- 動弁機構をDOHCに変更。表面処理にDLC※2を適用しフリクションを低減したフィンガーロッカーアームを採用
- ※2 Diamond-like carbon カーボン硬質膜で摩擦を低減する
- ・高回転、高出力を得るために、従来モデルに対して大径のボアとショートストロークに変更。また、シリンダーのオフセット量を最適化することでピストンとシリンダー間のフリクションを低減
- ・ピストン形状は、「ブリッジドボックス式」を採用し、従来モデルと同重量としつつボア径を拡大。あわせて燃焼室の形状を最適化して圧縮比を高め、燃焼の高効率化を追求
- ・軽量高強度のチタン製インテークバルブおよびエキゾーストバルブを採用。バルブ径、バルブリフト量、バルブタイミングの最適化を図るとともに、バルブ挟み角度を狭角化しポート形状をストレート化するなど、吸・排気の効率化を徹底
- ・インテークはシンメトリーなダウンドラフトレイアウトを採用し吸入抵抗を低減
- ・各エキゾーストバルブに独立したエキゾーストポートを配し、燃焼室直後のポート形状を極力ストレート化することで排気の効率化に寄与。右側エキゾーストパイプにはレゾネーター室を設けることで排気の脈動効果をコントロールし、高回転域の出力を損ねることなく低中回転域の出力を向上
- ・スカベンジポンプを採用し給油経路を最適化。クランクケース内のオイルと空気を排出し負圧に保つことでフリクションを低減するとともに、排出されたオイルを利用してクラッチおよびトランスミッションを潤滑することでオイルシステムをコンパクト化
- ・始動方式はキックスターターを廃止し、セルフスターターを標準装備するとともに軽量コンパクトなリチウムイオンバッテリーを採用
- ・ライダーの好みに応じたエンジンモードの選択が可能。スロットルのコントロール性とレスポンス性のバランスを保ったモード1「STANDARD」、スムーズなパワー特性として主にスロットルコントロール性を重視したモード2「SMOOTH」、レスポンス性に優れた出力特性として主にパワー感を重視したモード3「AGGRESSIVE」の3種類を設定※3
- ※3 別売りのHRCセッティングツールを使用することで、モード2・モード3の標準設定を変更し、任意のセッティングに設定することが可能
- ●トラクション性能を追求した、スリムで低重心な車体レイアウト
- ・フレームのメインパイプをテーパー形状とし、フロントの安定感とトラクション性能を追求するとともに、剛性と柔軟性を高次元で両立させながら軽量化を実現
- ・サブフレームは後端部を従来モデルの鍛造製から軽量な押し出し成型品に変更することで、マスの集中化に寄与
- ・スイングアーム長を従来モデルより短くすることで、ホイールベースの短縮による軽快な旋回性とトラクション性能に寄与
- ・キャスター角の変更などフロントのディメンションを見直すことでハンドリングの安定感を追求するとともに低重心化を図り、加速時のフロント浮き上がりを抑制
- ・チタン製のフューエルタンクを採用し、軽量化と低重心化を実現。フューエルタンク上面とタンクキャップ形状を低くすることで、ライダーのスムーズなライディングをサポート
- ●荒れた路面でも良好な走行フィーリングと高い走破性を実現した足回り
- ・フロントサスペンションは、ショック吸収性に優れたSHOWA製コイルスプリングタイプを採用。フレームとあいまって、荒れた路面でも良好な走行フィーリングと高い走破性を実現
- ・リアサスペンションは、より低い位置に配置することで低重心化に寄与
- ●その他の特徴
- ・外観パーツは無駄のない構成で軽量コンパクトに仕上げ、パーツの継ぎ目や段差を極力なくすことで滑らかな面構成とし、自由度の高いライディングを可能としている
- ・フロントビューのデザインは、前面投影面積を最小限に抑えて空気抵抗を低減
- ・フロントフェンダーはラジエーターシュラウド内に効率的に空気を導く形状とし、より高い冷却性能を発揮させることでエンジン出力の向上に寄与
- ・インサートフィルム成型のシュラウド一体型グラフィックを採用し、洗車や摩擦に対して剥がれにくい耐久性を確保
- ・カラーリングはエクストリームレッド1色の設定
★主要諸元
車名型式 | ME12 | |
---|---|---|
CRF250R | ||
発売日 | 2017年10月27日 | |
全長×全幅×全高(mm) | 2,181×827×1,273 | |
軸距(mm) | 1,486 | |
最低地上高(m) | 0.327 | |
シート高(m) | 0.957 | |
車両重量(kg) | 108 | |
乾燥重量(kg) | - | |
乗車定員(人) | - | |
燃費(km/L) | - | |
登坂能力(tanθ) | - | |
最小回転小半径(m) | - | |
エンジン型式 | - | |
水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 249.4 | |
内径×行程(mm) | 79×50.9 | |
圧縮比 | 13.9 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | - | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | - | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | DC-CDI | |
潤滑油方式 | - | |
潤滑油容量(L) | - | |
燃料タンク容量(L) | 6.3 | |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式5段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.230 |
2速 | 1.800 | |
3速 | 1.470 | |
4速 | 1.227 | |
5速 | 1.043 | |
減速比1次/2次 | 3.473×3.692 | |
キャスター(度) | 27°29′ | |
トレール(mm) | 116 | |
タイヤサイズ | 前 | 80/100-21 51M |
後 | 100/90-19 57M | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式シングルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立タイプ) |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | アルミツインチューブ |
(Honda測定値)
※製造事業者/本田技研工業株式会社