一時期ほどビッグスクーターを見かけなくなった今
このカテゴリーも新世代に突入しようとしている。
バーグマン400は、スカイウェイブ400の進化版。
走りが良くなったのはもちろん
オトナっぽい質感になって新登場しました。
■文/中村浩史 ■撮影/島村栄二
■スズキ http://www1.suzuki.co.jp/motor/
ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。 |
2000年ごろからかな、街にみるみるビッグスクーターが増え始めた時期があった。立役者はヤマハ・マジェスティ250。バイクがサッパリ売れなくなった、って言われ始めた時期で、ヤマハはTW200が飛ぶように売れて、TW人気のバトンを受けたようなマジェスティ人気は次々とライバルを呼んだのだ。それがスクーターブーム。ビッグスクーターを略してビクスクなんつってた。
ホンダはフリーウェイ、フォーサイトからFORZA、スズキはスカイウェイブ。モデルチェンジサイクルも早く、派生モデルや、数々のハイテクが投入されたスペシャルバージョンも発売された。
あれから10年――。すっかりビッグスクーターのブームは去ってしまった。今はあの頃にはあまりいなかった、もっとスモールサイズの原付2種や軽2輪のラインアップが増えたように思う。ビッグスクーターっていうか、ミドルスクーターだね。
しかし「ブーム」っていうのは訳も分からず人気が出ること、人気が人気を呼ぶことで(って勝手に思ってるけど・笑)、ブームが去るとホントのファンが残る、って相場は決まっている。つまり、ビッグスクーターの本当の楽しさや、便利さをわかっている人は、今でも乗っているってこと。
あらためてバーグマン400に乗ってみると、すごく新鮮だった。普段スクーターに乗らないから、ビッグスクーターにしっかり乗るのは数年ぶり。あれ、こんなにコンパクトだっけ、こんなにキビキビ走ったっけ、こんなにオトナっぽかったっけな。
「バーグマン」ってネーミングは、国内のビッグスクーター「スカイウェイブ」を順次切り替えて統一していく車名だ。海外向けのスカイウェイブはすでにこの名前を使っていて、国内でもすでに200をバーグマンとしてラインアップしている。つまり、バーグマン400はスカイウェイブ400のモデルチェンジってこと。
スカイウェイブ400は、とにかくどっしり安定した、ビッグサイズのスクーターだった覚えがある。ボディは大柄で、高速クルージングがとにかく快適だった。そのぶん、街をキビキビ走るのはちょっと持て余し気味で、街乗りは250、遠距離は400だって棲み分けしてるんだな、という理解ができたのだ。
バーグマン400は、まずここを改良してきた。カタログデータでは、サイズ的にそう大きく変わってはいないものの、またがった状態のコンパクトさはひとクラス小さくなったというか、現行250ccのサイズにかなり近い。車重は数字的に8kg減だが、それ以上に軽く感じる。シートはやや高くなってはいるが、そのぶん足が降ろしやすくなっているし、クッションが厚くなって座り心地が良くなっている。ステッチの色使いも工夫されていて、質感が上がっている。大人っぽくなった、って感じるのはこういうところだ。
走り出すと、出足のダッシュが力強い。これは軽量化やパワーアップというより、ギア比の変更だろうか、旧モデルよりも低い回転数でクラッチがつながる印象。レスポンスもよくなって、低回転でトルクが出ているから、「キビキビ走る度」が旧スカイウェイブよりもかなり上がっている。
400ccスクーターのメリットである高速走行に関しては、今回、テストコースでスピードを出すチャンスがあったんだけれど、150km/hくらいの巡航でも、フロントの不安感がほとんどなかった。法が許せば、130~140km/h巡航も快適なバイクなのだ。
スタートダッシュが良く、初速のノリがいいから、100km/hくらいまでの加速が鋭い。これ、ビッグスクーターとしてはかなり大きな武器だと思う。さらに、そんなスピード域であっても振動がすごく抑えられているのが実感できた。街乗りも、高速巡航も走りの質感もよくなった――そんな印象なのだ。
ハンドリングは、直進安定性がピシッとして、やや軽快になった。もちろん、旧スカイウェイブ400だって大きな問題はなかったから、少なくとも、同時に同条件で乗り比べて初めてわかるような変化。今回、フロントタイヤが14インチから15インチに大径化されて、理論上は直進安定性が強くなるんだけれど、スカイウェイブは80扁平タイヤ、バーグマンは70扁平タイヤってことで、タイヤ外径はそう大きく変わらない。だから大きな変化はないのだ。
スタイリングは、かなりオトナっぽくなって、上質感が増している。試乗したのがマットブラック×レッドの車体色だったせいもあるだろうけれど、シートのステッチやLEDヘッドライト、さらにインパネまわりのパーキングブレーキレバーのメッキ使いとか、そういうところに高級感がある。サイレンサーのヒートガードもいいね、カーボン調プリントの樹脂なんだけれど、ステンレスの曲げ板よりも軽いし、熱も伝わらないし、カッコもいい。
ただ気になったのがメーター。ビグスクブームのときは、このカテゴリーこそがバイクの電装系やマテリアルをリードしていたのに、今やVストロームなんかの多機能デジタルメーターの方が先を行っているから。スクーターこそ、平均&瞬間燃費やメンテサイクルなどのデータが表示されたら、単純に面白い。スクーターは、そういったギミックも有効だと思うのだ。
筆者は、ほとんどスクーターな生活をしたことがないんだけれど、今回の試乗であえて日常な使い方をして、試乗だけじゃなく、アシ代わりにしてみたり、荷物積んでみたりって乗り方をしてみた。
出かけるときにはバックパックじゃなくてもシート下に放り込めるし、出先ではヘルメットを仕舞って荷物を出してと、やっぱり便利この上ない。シフトチェンジでクツが痛まないから、外出に履く靴を選ばないし、こりゃビジネスマンがスーツで乗ったっていい、そんなバイクだと思うのだ。
前に遊びに出かけたパリとかミラノ、マドリッドといったヨーロッパの都市部では、ビクスクがたくさん走っていた。僕が見たのは、あちこちでヤマハTMAXやピアッジオMP3がいたこと。ちょっと離れた自宅から、街の中までビクスクで通っているのだろう。
EURO4導入で、スクーターラインアップも一新するはずの日本のバイク事情。当然、ビクスクも新世代に突入するはずで、ブームの頃とは違う、成熟した新しいビクスクが、そんな用途に定着するといいな、と思うのです。
(試乗・文:中村浩史)
テールカウルは、旧スカイウェイブ400よりもシャープに、スリムになった。シートの開閉はメインキーで行ない、収納スペースは旧モデルより数字的に小さくなったが、A4サイズのブリーフケースが入って、ヘルメットもフルフェイス&ジェットなら2個収納可能。 |
フロントグローブボックスは左右連結式から左右独立式になって、開閉の節度もよくなった。右側コンパートメントの最大積載許容重量1.5kg、左側は0.5kg、右スペースに12Vのシガーソケットがあり、アダプターでケータイのUSB充電もカンタン。右ポケットは深く500mlのペットボトルが入る。 |
| スズキのWEBサイトへ |