■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■協力:トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン http://www.triumphmotorcycles.jp/
JAIA 日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/motorcycle/
『Street Twin と同じ現代のカスタマイズポリシーを共有する新型 Street Scrambler は、アイコニックな Bonneville のシルエットとすっきりしたライン、ミニマルな車体、現代的な仕上げ、スマートなフューエルタンクで人目を引きつけます。
その独特のスタイルを仕上げるのは、入れ替え可能なピリオンシートとアルミ製リアラゲッジラック、取り外し可能なリアフットレストとハンガー、アドベンチャースタイルのフロントフットレスト、バッシュプレートなど、それぞれが明確な目的を持ったスクランブラーに必要な機能です。
新型 Scrambler 専用のシャシーは長いリアショック、19 インチのフロントホイール、ワイドハンドルバー、低いシート高が特徴です。Metzeler 製タイヤTourance を履き、あらゆる路面に対応できる性能と操作性を実現しています。』(トライアンフジャパンのWEBサイトより)
最新Bonnevilleをベースに開発された新型Street Scramblerの主な特徴は、入替え可能なタンデムシートとラゲッジラック、Nissin製2ピストンスライディングキャリパー(新デザインを採用)、切り替え式ABS、切り替え式トラクションコントロール、ライドバイワイヤ、トルクアシストクラッチ、イモビライザー、LEDテールランプ、USB電源ソケット、トリップコンピュータなどを採用している。メーカー希望小売り価格は1,220,500円。
それでは、濱矢文夫さんの試乗記をどうぞ。
ライダーの身長は170cm。 |
カテゴライズするならば、いわゆるネオ・クラシックに入る。アップマフラーにワイヤースポークホイール、レトロな外装、バーチカルツインエンジン。走り込むというよりルックスを含めたテイストを楽しむことに軸足を置いたオートバイだと思う人もいるかもしれない。
水冷ながら空冷風のフィンを切った並列2気筒のSOHC900ccエンジンは、アイドリングからはっきりとした鼓動があって、スロットルを開けると低い音と共に車体はブルっと震えて、トラディショナルなテイストがあるのは確かだ。それだからスポーツライディングが好きな人にとっては眠たくなるようなエンジンだと思ったら大間違い。
低回転から力強いトルク。例えるなら重い球がものすごく滑らかに坂道を勢いよく転がりだすよう。車体とライダーをグイっと押し出す。それなのに、大きめにスロットルオン、オフしてもギクシャクするところがない。開け始めの最初のツキに角がないから力強く加速するが腕が伸びて体が置いていかれるようなことがない。開けたらとにかくスムーズに加速して速い。扱いやすいのに、力強く胸のすく加速。これはライドバイワイヤ、電子制御スロットルのおかげだ。もちろん制御を決めるのは人間だから、TRIUMPHの中の人のライディングスキルと、それをロジカルに分析して商品に落とし込む仕事ぶりに拍手を送りたい。走りの楽しさを知り尽くした人が作ったと想像できる。
豊かなトルクに任せて高いギアでゆっくりクルージングするのも気持ちよく、さらに大きくスロットルを開けて積極的に走り込むのも楽しい。車体もバランスが良く、ブレーキは充分すぎるほど効き、軽快で安定したハンドリング。サスペンションもへこたれない。270°クランクを採用した不等間隔爆発のおかげで、コーナーの立ち上がり、まだ車体が起き上がっていないところから早めにスロットルを開けてリアサスペンションを縮ませながらスルスルっと立ち上がる。トラクションコントロールが標準だから空転すると制御が入るだろうが、リーン中は、その制御が入る前にやってくる横スライドに至るまでのグリップ状態が掴みやすく、挙動が穏やか。オートバイとして基本的なトラクション性能が良いと感じた。コーナーリングが気持ちいい。
アップハンドルのグリップ位置は、170cmの私で遠からず近すぎず、ちょうどいいあんばい。スクランブラーということでハンドル幅もあり入力に力がいらず細かなステアがしやすい。ステップ位置もオフロード的な場所にあり、アップライトで体の自由度が大きな楽ちんポジション。シートのクッションは当りがソフトで沈み込むが奥でちゃんと保持して揺すられて不快になることはない。
ここまで読んで分かると思うけれど、私はこのオートバイを大いに気に入っている。素晴らしい完成度。ワインディングでスポーティーに爽快に走れる実力を持ちながら、所有感を刺激するトラディショナルなルックス。野球選手なら走攻守、三拍子そろった選手と表現したくなるオートバイだ。
(濱矢文夫)