2017年最初のプレシーズンテストでトップタイムを記録したのは、大型移籍で注目を集めるマーヴェリック・ヴィニャーレス(モビスター・ヤマハ MotoGP)だった。初日3番手、二日目2番手、最終日には1分59秒368のトップタイム、と貫禄すら感じさせるような詰めかたで、日々の走行後コメントも、言葉の端々に落ち着きと自信がにじみ出ていた。三日目はレースを想定したロングランに出たとたんに雨がぱらついてきてピットへ戻ったため、レース周回こそこなせなかったものの、中古タイヤでのシミュレーションは上々のようで、安定して誰よりも高い水準のラップタイムを連発していた。まだプレシーズンテストを一回行っただけとはいえ、チャンピオン争いの可能性について訊ねてみた際の「うん、できると思うよ」と素直に笑顔で述べた様子から見ても、今年は間違いなく優勝候補の一角を占めることはまちがいなさそうだ。 |
||
|
|
|
チームメイトのバレンティーノ・ロッシは、初日こそ朝から頭痛に悩まされていたとかで、ピットレーンから眺めていても疲労がはっきりと顔に出ていたが、二日目からは体調を戻したようで、着々と作業を進めていった。この日は、今年から禁止されたウィングレットの代わりに整流効果でダウンフォースを稼ぐ目的と推定されるサイドカウルを装着。このカウルに関する印象を訊ねられた際に、ロッシは「あー、それについては話しちゃいけないって言われてるんだよ」と笑いながらも「じっさいのところ、そんなに違いがあるわけじゃないんだけど、悪くないので明日もこの方向で行くと思う」と話し、ヴィニャーレスとともに、最終日まで積極的にこのカウルを使用し続けた。三日目を終えて、最終的にロッシは、ヴィニャーレスから0.221秒差の6番手タイムでテストを締めくくった。 |
||
|
|
|
総合2番手タイムはドゥカティから移籍してきたアンドレア・イアンノーネ(チーム・スズキ・エクスター)。テスト二日目にトップタイムを記録した際には、スズキからヤマハへ移籍したヴィニャーレスが「良いセットアップを作ってお土産で置いてきたんだよ」とジョークを述べたが、それを受けてイアンノーネは「もちろんマーヴェリックはすごくいい仕事をしたと思うけど、それは日本人スタッフががんばってくれたからでもある。スタッフたちががんばらないと、自分の実力は発揮できないからね」とエンジニアたちの努力をフォローする気遣いも見せた。また、車体の改善に良い手応えを得たとも言い、「冬の間に日本でがんばってくれたおかげ」と話した。気の優しい繊細な側面があることは知っていたけれども、細かい心くばりもする人なんだな、というのはちょっと意外な発見ではあった。
|
||
|
|
|
総合3番手タイムは、2016年チャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)。今回のテストではチームメイトのダニ・ペドロサとともに制御か何かに課題を抱えていたようで、両選手ともにその部分の問題を大きく指摘していた。テスト二日目までは両選手ともライバル陣営に比して苦戦傾向だったのだが、最終的には帳尻を合わせてマルケスはトップから0.138秒、ペドロサは0.210秒差でテストを終えた。 |
||
|
|
|
そして、今年最大の注目のひとつである、ホルヘ・ロレンソの加入したドゥカティ・ファクトリーチームだが、今回のテストでの陣営最速選手はアンドレア・ドヴィツィオーゾ。三日間通して非常に充実したテストになったことは、初日に2番手タイムで走り出し、三日目は3番手で総合4番手タイム、ヴィニャーレスから0.185秒差という数字にも明らかだ。 |
||
|
|
|
さて、ロレンソである。初日はトップから1.669秒差の17番手に沈んだものの、二日目は「ブレーキを遅らせて(コーナーに)深く入っていけるようになった」と述べて1.032秒差の8番手。三日目は9番手タイムながらトップから0.398秒、と大きな進捗を見せた。 |
||
|
|
|
最後に、今シーズンから参戦を開始するKTMについても少し触れておこう。パッケージ全体の戦闘力という点では、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティ、スズキとのギャップは大きく、今回のテストでのベストタイムは、ブラッドリー・スミスとポル・エスパルガロがともにトップから1.970秒差。初年度なので埋めがたい差があるのも当然とはいえ、フレームやスイングアームなどの大もの部品を続々と案別を投入して精力的な取り組みを続けていた。 |
||
|
|
|
というわけで、今シーズンも見どころ満載で波瀾万丈の一年になりそうであります。では、また。 |
■2017年 MotoGPエントリー |
||||||||
|
||||||||
No. | ライダー | チーム | 車両 | |||||
|
||||||||
#04 | Andrea Dovizioso | Ducati Team | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#5 | Johann Zarco | Monster Yamaha Tech3 | YAMAHA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#8 | Hector Barbera | Avintia Racing | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#9 | Danilo Petrucci | OCTO Pramac Yakhnich | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#17 | Karel Abraham | Pull & Bear Aspar Team | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#19 | Alvaro Bautista | Pull & Bear Aspar Team | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#22 | Sam Lowes | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#25 | Maverick Viñales | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#26 | Dani Pedrosa | Repsol Honda Team | HONDA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#29 | Andrea Iannone | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#35 | Cal CRUTCHLOW | LCR Honda | HONDA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#38 | Bradley Smith | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#41 | Aleix Espargaro | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#42 | Alex Rins | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#43 | Jack Miller | Marc VDS Racing Team | HONDA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#44 | Pol Espargaro | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#45 | Scott Redding | OCTO Pramac Yakhnich | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#46 | Valentino Rossi | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#53 | Tito RABAT | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#76 | Loris BAZ | Avintia Racing | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#93 | Marc Marquez | Repsol Honda Team | HONDA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#94 | Jonas Folger | Monster Yamaha Tech3 | YAMAHA | |||||
|
||||||||
|
||||||||
#99 | Jorge Lorenzo | Ducati Team | DUCATI | |||||
|
||||||||
|
※第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した西村 章さんの著書「最後の王者 MotoGPライダー 青山博一の軌跡」(小学館 1680円)は好評発売中。西村さんの発刊記念インタビューも引き続き掲載中です。どうぞご覧ください。 ※話題の書籍「IL CAPOLAVORO」の日本語版「バレンティーノ・ロッシ 使命〜最速最強のストーリー〜」(ウィック・ビジュアル・ビューロウ 1995円)は西村さんが翻訳を担当。ヤマハ移籍、常勝、そしてドゥカティへの電撃移籍の舞台裏などバレンティーノ・ロッシファンならずとも必見。好評発売中です。 |
[第111回|第112回|第113回]
[MotoGPはいらんかねバックナンバー目次へ]
[バックナンバー目次へ]