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2016年シーズンのモビスター・ヤマハ MotoGPは、バレンティーノ・ロッシが年間ランキング2位、ホルヘ・ロレンソがランキング3位という結果でシーズンを終えた。このシーズンは、ECUソフトウェアがそれまでの各社自社製品から全チーム全車共通のものへとかわり、タイヤもブリヂストンに替わってミシュランが公式サプライヤーとなった。 |
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この点について、ではヤマハ陣営はどうだったのかというと、ヤマハ発動機MS開発部モトGPプロジェクトリーダー・津谷晃司氏は「初期の、セパンテストやフィリップアイランドテストでは比較的スムーズだったと思います」と、電子制御に関しては比較的円滑なスタートを切ることができた、と振り返る。 |
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ヤマハ発動機 技術本部MS開発部モトGPプロジェクトリーダー・津谷晃司氏。 | ||
ヤマハの電子制御に関しては、第16戦オーストラリアGP(この段階ですでにチャンピオンは決していた)の決勝レースを6位でゴールしたホルヘ・ロレンソとの質疑応答で「(制御は)あまりよくなっていないんだ。自分たちはシーズン序盤と同じくらいのレベルだけど、ホンダとスズキはよくなってきている。だから、ヤマハはモンメロ(第7戦カタルーニャGP)以降、誰も勝っていないけど、クラッチローは優勝争いをしているし、アレイシも表彰台争いをしている。彼らの成績が良いのは、偶然じゃないよ」と話していた言葉が印象的だった。バレンティーノ・ロッシも、この次戦のマレーシアGPで「ホンダはシーズン後半に確実に進歩してきたけど、僕たちはそうじゃなかった」と、同様のことをコメントしている。 |
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選手たちが感じていたこの<伸び悩み感>は、津谷氏の前述の言葉でも説明がつく。 |
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「ひとくちに制御といっても、ウィリー制御やトラクションコントロール、エンジンブレーキなどいろいろありますが、その中だけで収まってくれるわけじゃない。極端なことを言えば、2015年は自分たちのソフトでウィリー制御をきれいにできていました。けれども、2016年に共通ソフトで走るとものすごくウィリーします、となった場合、我々は制御でも一所懸命に対応しますけれども、ウィリーをしないような車体作りもするじゃないですか。エンジンの扱いやすさでいえば、トラクションコントロールがうまく効かないのならスムーズなパワーデリバリーにしましょうとか、ウィリーするのならウィリーしない車体に、スリップするのならスリップしない車体作りをしなければならない。そういうことですよ」 |
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ヤマハ発動機 技術本部MS開発部長・辻幸一氏。 | ||
そして、<制御の外へでてゆく>機能のなかでも大きく顕在化していったもののひとつが、シーズンを通して大きな話題になった「あの」機能なのだ、とか。 |
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チャンピオンシップの帰趨は、意外な形で決着した。年間総合優勝の可能性を残していたロッシとロレンソが第15戦日本GPでともに転倒を喫し、最終的にロッシは3年連続のランキング2位、前年度王者のロレンソは3位で終えた。最終戦のバレンシアGPでは、9年のシーズンを過ごしたヤマハ最後のレースとなったロレンソが優勝し、有終の美を飾った。
この一年の戦いを終え、チャンピオンを逃した理由について、津谷氏と辻氏はそれぞれ次のように総括する。 |
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「結果がすべてですからね。勝った陣営がマシン・レース運営含めて優れていた、それ以外の何ものでもないですよ。表面上は何もないように見えていても、一年間の長いシーズンでは、じつはいろいろなことがあると思うんです。そのいろいろなことが表だって出てしまうか出ないのかが、組織力やチーム力の差、ということなのでしょう。終わってしまえば結果論だけれども、運もたしかに実力のひとつだと私は思うし、そういったいろんなことが表だって結果に影響したかどうかで、2016年の組織力・チーム力の差が出てしまった、ということだと思います」(辻) |
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捲土重来を期する彼らの2017年ライダーラインナップは、この2月に38歳を迎えるバレンティーノ・ロッシと、22歳の誕生日を迎えたばかりのマーヴェリック・ヴィニャーレス。1月19日には、スペイン・マドリーで新体制のチーム発表会を行った。そしていよいよ1月30日から、マレーシアのセパンサーキットで、公式プレシーズンテストが始まる。慌ただしく苛酷なシーズンが、ふたたび幕を開ける。 |
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今シーズンも現地取材ならではの“生きた情報”で読ませる、西村さんの現地直送レポート「MotoGPはいらんかね」をお楽しみに。 |
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