VFR800X 1,436,400円(1月16日)

★ホンダ VFR800X 車両解説

“クロスオーバーモデル”VFR800Xをマイナーチェンジして発売

「VFR」の血統は、1986年4月に発売されたVFRシリーズ、VFR750F、VFR400R、VFR400Zに始まる。1982年のVFシリーズ(VF750SABRE、VF750MAGNA、そしてVF750F)の発売で’80年代のV4エンジン攻勢への口火を切ったホンダが、V4時代の隆盛を決定づけたのがVFRシリーズだった。その後、V型エンジンはレースでの活躍を背景に過激レプリカ時代へと発展していくのだが、それはまた別項にて。

VFR(オーバー750)に関連するその後の流れを追ってみると、1998年4月にV型4気筒、781ccエンジンを搭載する「ホンダ VFR」が発売される。「’99年10月より国内で新たに導入される小型二輪自動車の排出ガス規制に適合する排出ガス浄化システムを採用したモデル」と説明されていた。ベースとなったのは世界各地のスーパーバイクレースで活躍していたRVF/RC45のエンジンだったが、スーパースポーツ(当時はレーサーレプリカと称された)とはまた別の、来たるべく新しい時代の要求を先取りするマシンの姿で登場した。

環境の時代の到来だ。VFRの排出ガス浄化システムの切り札として新開発されたのがPGM-FIシステム(電子制御燃料噴射装置)だった。このPGM-FIシステムは、専用にプログラムされたECU(エレクトロニックコントロールユニット)の働きによって、様々な運転状況に応じ理想的な空燃比の混合気を供給する事で、燃焼過程での有害物質の低減を図るというもの。そしてエキゾーストエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)も同時に採用し、エアを排気ポートに送り込み排出ガス中の未燃焼ガスHC、COを排気管内で再燃焼させるもので、HC、COの低減を図っていた。

これで分かるとおり、VFRは卓越した運動性能だけでなく、年々厳しくなっていく排出ガス規制に適合する環境性能も兼ね備えた大型ロードスポーツモデルとして’90年代を先取りするマシンだったのだ。その後、2000年1月に三元触媒システム“HEC3”(Honda Evolutional Catalyzing System 3)を採用するなどのマイナーチェンジを受け、さらなる環境時代のハイテクマシンとしての姿を印象づけている。

2002年1月、VFRはフルモデルチェンジを受ける。ホンダのV型4気筒エンジンでは初のバルブ制御システム“V4 VTEC”(Variable Timing & Lift Electronic Control System)エンジンを、基本骨格は引き継ぎながらも剛性の見直しなどが行われたアルミツインチューブフレームに搭載。PGM-FIの更なる熟成やイリジウムプラグの採用などとともに世界最高水準の環境性能を謳うモデルとして登場した。

2004年1月にはカウル類のエッジやシャープなラインを強調、またホイールカラーや車体ロゴも変更するなどのマナーチェンジ。車体色もイメージカラーとして引き継がれてきたイタリアンレッドからデジタルシルバーメタリックへと変更。

2006年2月には、ABSを標準装備するとともにリアサスにプリロードアジャスターを装備。新色のパールコスミックブラックも追加している。カラーといえば、2006年12月にトリコロールイメージのカラーリングを施された「VFR・スペシャル」が限定200台で発売されている。その後、国内での“ハイテクのショールームマシン”の重責は、2010年3月に発売されたVFR1200Fにバトンタッチしていた。

2014年4月、VFR800Fは2006年発売のモデルをベースに大幅にアップトゥデートしたモデルへと生まれ変わった。熟成を図ったエンジンを新デザインのカウル類を備えた車体に搭載。最大の変更点は、リアフレームを従来のスチール製からアルミ製へと変更したことだろう。さらにスイングアーム、フロントフォーク、ホイールなども新設計。エンジンサイドに配置していたユニークなラジエーターも一般的な前面配置へ、マフラーも従来のセンター2本出しを右1本出しとするなど、ほぼフルモデルチェンジといえる変更が行われている。

クロスオーバー・スタイルのVFR800Xだが、国内では2011年の8月にM-TECがヨーロッパで好評を博していたVFR800X Crossrunnerを輸入したのをご記憶の方も多いだろう。当時は無限のカスタマイズパーツ類を装着して、名称も「VFR800X MUGEN」としてコンプリート販売された。販売計画台数は200台で、1,291,500円とお買い得価格だった。クルマの世界ではメーカー公認のコンプリート・カスタマイズ・モデルはおなじみの手法となっていたが、二輪の世界でもこういったカタチのスペシャル・バージョン、チューナー・ブランド車の先駆け的存在でもあった。

ホンダ自らがVFR800Xの国内仕様を発売開始したのは2014年12月。車体・足回りは、ロードスポーツモデルの「VFR800F」に対して、前・後サスペンションのストローク量を増加。また、オフ走行時の性能の向上を図って最低地上高を30mm高い165mmに設定。シート高を標準仕様より20mm低く設定できる機構を設けるなど、取り回しやすさも考慮されていた。ABSも標準装備。

エンジンは、低・中回転域で力強い出力特性を発揮する4ストロークV型4気筒DOHC4バルブで、回転数によって稼働するバルブ数を切り替える「HYPER VTEC」も採用。ツーリングに便利なETC車載器とグリップヒーター、メインスタンドなども標準装備されていた。

今回は、兄弟モデルのVFR800Fと同時にマイナーチェンジが行われ、2017年モデルとなった。

VFR800F、VFR800X共通の変更点としては、マフラーの内部構造を従来の3室構造から2室構造に変更した異形テーパー形状のマフラーを採用し、出力向上とともにV型4気筒エンジンらしい歯切れの良い重厚な排気音を実現している。EURO4導入の恩恵ともいえる新規制対応により、従来よりもコンパクト化したマフラーを車体中央部寄りに配置可能となったことで、マスの集中化が図られ、快適な操縦性も実現している。

装備面では、左カウル部に定格36W(12V3A)までの、アクセサリーソケットが標準装備され、使い勝手の向上が図られている。また、純正用品のアクセサリーソケットも継続してオプション設定とし、好みに応じて、シート下に増設を可能としている。前・後ホイールには、整備性に優れたL字エアバルブを採用。

VFR800X独自の改良点としては、ツーリング時の快適性を高めることに主眼が置かれた改良が行われた。冒険心をかき立てる、タフで洗練されたクロスオーバーデザインと存在感のある軽快なプロポーションは踏襲。フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラックで統一し、従来のパールグレアホワイトに加え、今回、上質感のあるキャンディープロミネンスレッド、精悍なマットバリスティックブラックメタリックの新色を追加し、全3色の設定となった。

手動操作で5段階の調整が可能な可変タイプの「アジャスタブルウインドスクリーン」が採用され、走行状況に応じて走行風を抑制することを可能とし、疲労軽減に貢献している。ツーリングに便利なETC車載器と寒冷時に役立つグリップヒーターは継続で標準装備。

VFR800X。カラーは3色。新色「キャンディープロミネンスレッド」。
VFR800X。新色「マットバリスティックブラックメタリック」。
VFR800X。継続色「パールグレアホワイト」。

★HONDA プレスリリースより (2017年1月13日)

スポーツモデル「VFR800F」「VFR800X」の装備を充実させ発売

Hondaは、スポーツツアラーとして定評のある「VFR800F」※1の各部の熟成に加え、装備を充実させるとともに、クロスオーバータイプである「VFR800X」※1のツーリングでの快適性を高めて、それぞれ1月16日(月)に発売します。

VFR800Fは、開発コンセプトの「大人のスポーツバイク ~Elegant Sport~」を踏襲しながら、スポーツツアラーとしての装備をさらに充実させました。スタイリングは、エッジの効いたシャープで上質感のあるデザインを継承。今回、ボディーカラーに新色のデジタルシルバーメタリックを加え全4色設定とし、メインフレーム、フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラックで統一、精悍さと高級感を演出させるとともに、新たに左サイドカウル部に各種端末の電源に使えるアクセサリーソケットを標準装備して使い勝手を向上させました。

VFR800Xは、装備をさらに充実させ、ツーリングでの快適性を高めました。スタイリングは、冒険心をかき立てる、タフで洗練されたクロスオーバーデザインと存在感のある軽快なプロポーションを踏襲。フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラックで統一し、従来のパールグレアホワイトに加え、今回、上質感のあるキャンディープロミネンスレッド、精悍なマットバリスティックブラックメタリックを追加し、全3色を設定しています。左アッパーカウル部にはVFR800F同様にアクセサリーソケットを標準装備しました。また、手動操作で5段階の調整が可能な可変タイプの「アジャスタブルウインドスクリーン」を採用し、走行状況に応じて走行風を抑制することで疲労軽減に貢献しています。

さらに、VFR800FおよびVFR800Xともに、内部構造を3室から2室に変更した異形テーパー形状マフラーを採用し、出力向上とともにV型4気筒エンジンらしい重厚で歯切れの良い排気音を実現。さらに、従来モデルに比べ、コンパクト化したマフラーを車体中央寄りに配置することで、マスの集中化を図り快適な操縦性を実現。また、利便性を高める、ツーリングに便利なETC車載器と寒冷時に役立つグリップヒーターの標準装備を継続しています。

※1:「Honda二輪ETC標準装備車取扱店」で販売します。使用するにあたり、セットアップ、セットアップ費用、および決済用のETCカードが必要となります

●販売計画台数(国内・年間)
VFR800F 450台
VFR800X 350台
 
●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
VFR800F 1,382,400円(消費税抜き本体価格 1,280,000円)
VFR800X 1,436,400円(消費税抜き本体価格 1,330,000円)
※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
=VFR800F、VFR800Xの主な変更点=
●マフラー
マフラーの内部構造を従来の3室構造から2室構造に変更した異形テーパー形状のマフラーを採用し、出力向上とともにV型4気筒エンジンらしい歯切れの良い重厚な排気音を実現。
従来よりもコンパクト化したマフラーを車体中央部寄りに配置することで、マスの集中化を図り、快適な操縦性を実現。
 
●装備
左カウル部に定格36W(12V3A)までの、アクセサリーソケットを標準装備し、使い勝手を向上。また、純正用品のアクセサリーソケットも継続してオプション設定とし、お客様の好みに応じて、シート下に増設が可能。
前・後ホイールに、整備性に優れたL字エアバルブを採用。
 
=VFR800Fの主な変更点=
●スタイリング
メインフレーム、フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラック色で統一することで、継続色のヴィクトリーレッド、パールグレアホワイト、ダークネスブラックメタリックに加え、新たに採用したデジタルシルバーメタリックの車体色をより引き立て精悍さと高級感を演出。
 
=VFR800Xの主な変更点=
●装備
手動操作で5段階の調整が可能な可変タイプのアジャスタブルスクリーンを採用し、ツーリング時など走行状況に応じて走行風の抑制を行い疲労軽減に貢献。※スクリーンは上下に94mm移動可能
 
●スタイリング
フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラック色で統一し、継続色の爽やかなパールグレアホワイトに加え、新たに採用した上質感のあるキャンディープロミネンスレッド、精悍なマットバリスティックブラックメタリックの車体色をより引き立て高級感を演出。

★主要諸元

車名型式 2BL-RC80
VFR800X
発売日 2017年1月16日
全長×全幅×全高(m) 2.190×0.870×1.360
軸距(m) 1.475
最低地上高(m) 0.165
シート高(m) 0.835/0.815(ローポジション)
車両重量(kg) 246
乾燥重量(kg) -
乗車定員(人) 2
燃費消費率(km/L)※2 27.4(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)
19.2(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※3
登坂能力(tanθ) -
最小回転小半径(m) 2.8
エンジン型式 RC79E
水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
総排気量(cm3) 781
内径×行程(mm) 72.0×48.0
圧縮比 11.8
最高出力(kW[PS]/rpm) 79[107]/10,250
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 77[7.9]/8,500
燃料供給装置形式 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI]
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑油方式 圧送飛沫併用式
潤滑油容量(L) -
燃料タンク容量(L) 20
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.846
2速 2.062
3速 1.578
4速 1.291
5速 1.111
6速 0.965
減速比1次/2次 1.939×2.687
キャスター(度) 26°30′
トレール(mm) 103
タイヤサイズ 120/70ZR17M/C 58W
180/55ZR17M/C 73W
ブレーキ形式 油圧式ダブルディスク
油圧式シングルディスク
懸架方式 テレスコピック式
スイングアーム式(プロリンク、プロアーム)
フレーム形式 ダイヤモンド(アルミツインチューブ)

※2:燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
 ※3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます