現場から3回にわたって速報をお届けしたイタリアのモーターサイクルショー「EICMA2016」。その速報ではお伝えできなかった車両やブースの雰囲気をお届けするためにスタートした『雑感レポート』。今回はドゥカティ&トライアンフです。
●ドゥカティ
お膝元のドゥカティは、やはりそこに挑む意気込みも、また”オラが国のトップブランド”というイタリアのファンの期待度も桁違いに大きい。それを表すかのように、ドゥカティの象徴である赤と、近年はスクランブラー・ブランドのブランドカラーである黄色、そして今年は控えめでしたがイタリアン・ラグジュアリーを謳う”DIAVEL/ディアベル”ブランドの黒でまとめられた巨大なブースとそこに溢れる人々は、いまやEICMAのいつもの景色になっているほど。しかし国産メーカーや勢いを増すアジアンブランドに比べると、その事業規模は決して大きくなく、にもかかわらず(いや、だからこそ)新しい技術をプロダクトにいち早く導入しそれを自分たちの血肉とする勇気とスピード、また新しいトレンドを発掘し育んでいく探究心と情熱には毎回驚かされてしまいます。
EICMA2016ではモンスター・シリーズは『モンスター1200』『モンスター1200S』『モンスター797』の3モデル、ムルティストラーダ・シリーズは『ムルティストラーダ950』の1モデル、スーパーバイク・シリーズは『1299スーパーレッジャーラ』の1モデル、スクランブラー・シリーズは『カフェレーサー』『デザート・スレッド』の2モデル、合計7モデルを発表。1ヶ月前にドイツで開催されたモーターサイクルショー、インターモトでは『スーパースポーツ』を発表済みなので、2017年モデルとして8モデルを追加することとなりました。このモデルラインナップの充実ぶりは、もう驚きでしかありません。
『モンスター1200』は新デザインの外装を採用するとともに水冷のテスタストレッタ11°(ディグリーズ)DSエンジンをさらにパワーアップ。アシスト&スリッパークラッチや、コーナーリングABS、トラクションコントロール、ウイリーコントロール、3つのライディングモードなど最新の電子制御技術も搭載されています。また新設計のスイングアームを新たに装着するなどしてホイールベースを縮め、車体そのものもコンパクトに仕上げることでパフォーマンスを向上させるとともに、TFTカラー液晶ディスプレーや新設計のペダル周りを採用するなど使い勝手を向上。シフトアップ&ダウンにも使えるクイックシフターも装備しています。『モンスター1200S』は、その1200をベースに前後オーリンズ製サスペンションとブレンボ製M50フロントブレーキキャリパー&φ330mmディスクを標準装備するなど走りのパフォーマンスをさらに高めています。
『モンスター1200』は新デザインの外装を採用するとともに水冷のテスタストレッタ11°(ディグリーズ)DSエンジンをさらにパワーアップ。アシスト&スリッパークラッチや、コーナーリングABS、トラクションコントロール、ウイリーコントロール、3つのライディングモードなど最新の電子制御技術も搭載されています。また新設計のスイングアームを新たに装着するなどしてホイールベースを縮め、車体そのものもコンパクトに仕上げることでパフォーマンスを向上させるとともに、TFTカラー液晶ディスプレーや新設計のペダル周りを採用するなど使い勝手を向上。シフトアップ&ダウンにも使えるクイックシフターも装備しています。『モンスター1200S』は、その1200をベースに前後オーリンズ製サスペンションとブレンボ製M50フロントブレーキキャリパー&φ330mmディスクを標準装備するなど走りのパフォーマンスをさらに高めています。
『スーパーレッジャーラ』は……もう詳細を書き始めるとこのページが文字で埋まってしまうほどトピックスの嵐……砂型鍛造クランクケース、チタンコンロッド、チタンバルブ、シリンダーから伸びたカーボンフレーム&スイングアーム、カーボンホイール、カーボン外装、とびっきりの電子制御システムなどなど、今できる最高の技術を詰め込んだバイクなのです。
しかしEICMAで発表された残りの4台はより幅広いユーザーにドゥカティ・ワールドを感じてもらうための車両、言ってみれば新規ユーザー獲得のための戦略的な派生モデルであることも面白いところ。いま現在ドゥカティが抱えている課題というか戦略を見ることができます。
『モンスター797』は空冷のL型803ccデスモ・エンジンを採用。その空冷フィンの形状はもちろん、ステアリングヘッドからシートレールまでを一体構造とするトレリスフレームを採用。それらは初代モンスターを彷彿とさせるディテールです。さらにはタンク形状や丸形ヘッドライトも初代からのイメージを受け継いでいます。
『モンスター797』は空冷のL型803ccデスモ・エンジンを採用。その空冷フィンの形状はもちろん、ステアリングヘッドからシートレールまでを一体構造とするトレリスフレームを採用。それらは初代モンスターを彷彿とさせるディテールです。さらにはタンク形状や丸形ヘッドライトも初代からのイメージを受け継いでいます。
『ムルティストラーダ950』は、1200および1200エンデューロのいいとこ取りをすると同時に、シート高を低く&シート幅を細くすることで、ムルティストラーダ・ファミリー最軽量を実現しています。サスペンションこそ電子制御じゃないですが前後とも170mmストロークに変更。”ムルティ=マルチ”な走行フィールドを実現するための電子制御技術はしっかり受け継いでいます。”エンデューロ・パッケージ”も用意されていて、それらのパーツを組み込むとアンダー1000ccの”ムルティストラーダ・エンデューロ”を造り上げることもできます。
スクランブラー・ファミリーからは『カフェレーサー』と『デザート・スレッド』が登場。スクランブラーなのにカフェ!? と思ってしまいますが、ドゥカティのなかでは”スクランブラー”とはスタイルではなく、ブランドに昇華しているという証拠ですね。これまでモデルバリーションを広げてきたスクランブラー・ファミリーのスタンダードモデルである”アイコン”をベースに、よりロード寄りな『カフェレーサー』と、より土系のイメージとパフォーマンスを追求した『デザート・スレッド』をラインアップし、スクランブラー・ファミリーの幅をさらに広げた感じです。
『カフェレーサー』は低く構えたセパレートハンドルを装着。ラジアルマウントのブレンボ製フロントキャリパーと、ラジアルポンプ式マスターシリンダーをセット。エンジンは”アイコン”をベースにリセッティングされています。帰国して資料をじっくり見てから気がついたのですが、サイドパネルに描かれた「54」は、ドゥカティの元ワークスライダー、ブルーノ・スパジャーリへのオマージュなのだそうです。リリースの文章を紹介しますね。
「ドゥカティのワークスライダーとしてかつて活躍したスパジャーリは、1968年に、当時著名なロードレースのひとつであった”モトテンポラーダ・ロマニョーラ”に、スクランブラーの単気筒350ccユニットをベースにしたエンジンを搭載したドゥカティを駆って出場しました。チェゼナーティコGPで、彼がジャンプしている瞬間の写真は、伝説になっています。松の木の根が広く拡がって凹凸ができた中心街のアスファルトでは、文字通りの”ジャンプ”が要求され、ライダースキルが限界まで問われると同時に、そこをうまく走りきるかどうかで勝負が決まりました。その時代の自由な空気は、”The Land of Joy”が提唱するものと共通しています。そこからインスピレーションを得たDucati Scrambler Cafe Racerのデザイナー陣は、レッジョ・エミリア出身の伝説的ライダーであるスパジャーリに、敬意を表したいと考えたのです。」
『カフェレーサー』は低く構えたセパレートハンドルを装着。ラジアルマウントのブレンボ製フロントキャリパーと、ラジアルポンプ式マスターシリンダーをセット。エンジンは”アイコン”をベースにリセッティングされています。帰国して資料をじっくり見てから気がついたのですが、サイドパネルに描かれた「54」は、ドゥカティの元ワークスライダー、ブルーノ・スパジャーリへのオマージュなのだそうです。リリースの文章を紹介しますね。
「ドゥカティのワークスライダーとしてかつて活躍したスパジャーリは、1968年に、当時著名なロードレースのひとつであった”モトテンポラーダ・ロマニョーラ”に、スクランブラーの単気筒350ccユニットをベースにしたエンジンを搭載したドゥカティを駆って出場しました。チェゼナーティコGPで、彼がジャンプしている瞬間の写真は、伝説になっています。松の木の根が広く拡がって凹凸ができた中心街のアスファルトでは、文字通りの”ジャンプ”が要求され、ライダースキルが限界まで問われると同時に、そこをうまく走りきるかどうかで勝負が決まりました。その時代の自由な空気は、”The Land of Joy”が提唱するものと共通しています。そこからインスピレーションを得たDucati Scrambler Cafe Racerのデザイナー陣は、レッジョ・エミリア出身の伝説的ライダーであるスパジャーリに、敬意を表したいと考えたのです。」
『デザート・スレッド』は、ブランドとしての”スクランブラー”ではなく、過去に存在した土臭い”スクランブラー”モデルに最も近い存在と言えるでしょう。大きな外観的トピックスは、19インチフロントホイールと専用シートの装着ですが、強化フレームに新型アルミスイングアーム、新設計の上下フォークブラケット、200mmストローク、φ46mmの調整機能付きKYB製フロントフォークに、調整機能付きリアサスペンションを採用するなど”土”成分、かなり多めです。
あ、こちらは「スーパースポーツです」。
●トライアンフ
水冷2気筒エンジンシリーズをリリース以来、好調なトライアンフ。2016年は大幅にモデルラインナップを入れ替え、それでいて前年比+10%を越えるセールスを記録しているそうです。その後カフェスタイルの「ストリートカップ」の発表に続き、クルーザースタイル(という表記が正しいとは思わないのですが……)の新型車「ボンネビル・ボバー」を発表。ホットなトピックスが冷める間もなく、ここEICMAでは新型車『ストリート・スクランブラー』をお披露目。まさしくたたみかける勢いです。空冷2気筒エンジン時代にもカフェスタイルやスクランブラー・スタイルのモデルをラインナップしていただけに、やはり来たか、という印象です。
『ストリート・スクランブラー』の実車を目にした感想は”小さい”でした。ボンネビル・シリーズは水冷の新型エンジンを採用してから車体がコンパクトになりました。その素性の良さを引き継ぎながらフロント19インチホイールを採用し、それに合わせて専用フロントフォークの採用や、おそらくリアサスペンションの自由長を伸ばして車高を上げたこと、さらには専用のアップタイプ2本出しサイレンサーを採用したことで、よりスリムで軽快なイメージが強調されているのだと思います。ON/OFF切替式ABSやトラクションコントロールも搭載し、安全性向上もサポートしています。またトライアンフは新たに協力関係を発表したサスペンションブランド、FOX製ハイスペックリアサスペンションと、バンス&ハインズ製スリップオンサイレンサーなど、多数のアクセサリーも発表しました。
『ストリート・スクランブラー』の実車を目にした感想は”小さい”でした。ボンネビル・シリーズは水冷の新型エンジンを採用してから車体がコンパクトになりました。その素性の良さを引き継ぎながらフロント19インチホイールを採用し、それに合わせて専用フロントフォークの採用や、おそらくリアサスペンションの自由長を伸ばして車高を上げたこと、さらには専用のアップタイプ2本出しサイレンサーを採用したことで、よりスリムで軽快なイメージが強調されているのだと思います。ON/OFF切替式ABSやトラクションコントロールも搭載し、安全性向上もサポートしています。またトライアンフは新たに協力関係を発表したサスペンションブランド、FOX製ハイスペックリアサスペンションと、バンス&ハインズ製スリップオンサイレンサーなど、多数のアクセサリーも発表しました。
T120ボンネビルの水冷の1200cc並列2気筒エンジンを搭載し、ハードテイルスタイルのフレーム&スイングアームを採用した「ボンネビル・ボバー」。ここEICMAでは、そのカスタムモデルも発表されました。
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