現場から3回にわたって速報をお届けしたイタリアのモーターサイクルショー「EICMA2016」。その速報ではお伝えできなかった車両やブースの雰囲気をお届けするためにスタートした『雑感レポート』。今回はヤマハ&カワサキです。
●ヤマハ
「The Dark Side Of Japan:ザ・ダークサイド・オブ・ジャパン」というコピーやプロモーションビデオを駆使し、ヤマハの新スタンダード・ファミリーである『MTシリーズ』を発表したり、「Yard Built:ヤード・ビルド」と銘打って世界中のカスタムビルダーと組みヤマハのスポーツヘリテイジ・ファミリーの車両をカスタムしたりして、バイクというプロダクトが持つプレミアムやライフスタイルにおける可能性を広げ、さらにそこから「Faster Sons:ファスター・サンズ」という、MTシリーズのプラットフォームを使い普遍的なスタイルや素材を組み合わせたプロダクト『XSRシリーズ』を造り上げたりと、とにかく刺激的でパワフルな製品のリリースとプロモーションを展開してきたヤマハ。
しかし今年のEICMAのテーマは「TO THE MAX:トゥー・ザ・マックス」。限界へ、とか、さらなる高みに、という意味も込められていましたが、その中心となったのは欧州を中心に圧倒的な人気を誇っているスポーツスクーター「MAXシリーズ」の進化と拡充でした。MAXシリーズは欧州におけるドル箱であり、それを推すと言うことは今年のヤマハはイメージよりも実を取ったということで、比較的大人しい感じのヤマハブース……と思っていたのですが、その予想を覆す要因は……後ほど紹介します。まずはMAXシリーズの紹介です。
しかし今年のEICMAのテーマは「TO THE MAX:トゥー・ザ・マックス」。限界へ、とか、さらなる高みに、という意味も込められていましたが、その中心となったのは欧州を中心に圧倒的な人気を誇っているスポーツスクーター「MAXシリーズ」の進化と拡充でした。MAXシリーズは欧州におけるドル箱であり、それを推すと言うことは今年のヤマハはイメージよりも実を取ったということで、比較的大人しい感じのヤマハブース……と思っていたのですが、その予想を覆す要因は……後ほど紹介します。まずはMAXシリーズの紹介です。
その核となったのが新たに発表された『X-MAX300』です。MAXシリーズは2001年から欧州で販売がスタートし、現在までの累計販売台数は56万台を越えているそうです。そして、その累計販売台数の56%を占めるのが「X-MAX250」。『X-MAX300』はその後継機種であり、成長を続けるMAXシリーズの中核モデルなのです。エンジンは排気量を拡大し、新型の300ccブルーコア・エンジンを搭載。バイクと同じトップブリッジ&アンダーブラケットでフロントフォークを支え、トラクションコントロールも標準装備。LEDヘッドライトや大型のシート下スペースを採用しています。日本には導入されていないモデルなのでピンときませんが、欧州、特にイタリアの街中ではX-MAXが溢れているイメージです。この顎を引いたような、ショートノーズのフロントフェイスが特徴的ですね。
またMAXシリーズの最高峰モデルある『TMAX』は新型アルミフレームを採用するとともに新デザインの外装を纏い、トラクションコントロールやキーレスエントリーも採用しました。そして発売以来初となる、仕様が異なるバリエーションモデルを発表。それがDモードなどを採用した『TMAX SX』と、そのSXをベースにクルーズコントロールやグリップ&シート・ヒーター、電動スクリーンなどを採用した『TMAX DX』です。頑なにスポーツバイクであることを謳い続けてきたTMAXですが、このバリエーションモデルのラインナップによって、TMAXが内包していたラグジュアリー要素を浮き彫りにし、TMAXブランドの拡大路線に踏み込んできたと言えるのではないでしょうか。
プレスカンファレンスでは”アバルトとのコラボね”くらいの軽い気持ちで流していた、四輪ブランド、ABARTH(アバルト)とコラボした『XSR900 ABARTH』ですが、ブースに展示された車両をじっくり見ているとジワジワと効いてきました。うん、格好いいです。”アバルト・グレー”に赤という、アバルトの象徴的なカラーをベースに、その赤にヤマハ伝統の”スピードブロック”をミックスするという手法はヤマハファンならずともグッとくるし、それにカーボンのビキニカウル&フロントフェンダー&シートカウルがワイルドな雰囲気を醸しだします。そして見た目以上にグッと下がったスワローハンドルが、ワイルドを通り越しスパルタンです。
EICMAの1ヵ月前に開催されたドイツのモーターサイクルショー、INTERMOT(インターモト)で発表したスーパースポーツマシン『YZF-R6』は人気が高かったですね。そのR6を含むスポーツバイク・カテゴリーは青一色でした。現地からお届けした速報記事では、プレスカンファレンスで発表するモデルカテゴリーを三色に分けて発表したと説明しましたが、ヤマハのレーシングスピリッツを表すのは”ヤマハ・ブルー”で統一されていて、そのイメージが展示マシンにも反映されていたのです。『YZF-R6』はもちろん、『YZF-R125』『YZF-R3』もブルーカラーを展示。ヤマハ・レーシングアカデミーのなかで開催されているワンメイクレース「チャレンジR3」の2017年仕様の『YZF-R3』カップマシンはブルー一色のカウルに、スナックメーカー、PATAのロゴマークがデザインされていました。
そして僕が思わず唸った「T7コンセプト」です。CP2の700ccエンジンを搭載しているとの発表があったので、MT-07系の水冷DOHC並列2気筒270度クランクエンジンを搭載しているようです。フレームはオリジナル、アルミタンクにカーボン製フェンダー&スキッドプレート、LED4灯のプロジェクターヘッドライトにアクラボビッチ製エキゾーストシステム、フロント21、リア18インチホイールにKYB製フロントフォークを採用。2018年に市販化を目指すとのことでした。
僕がグッときたのは、これまでヤマハが牽引してきたオンロードやオフロードのレースシーン、新スタンダードを目指して開発してきたエンジン、そしてパーソナライズの可能性を託したカスタムシーンが一丸となったコンセプトマシンに仕上がっていて、かつてヤマハが存在感を発揮したものの現在踏み込み切れていないアドベンチャーカテゴリーにアプローチしてきたこと。そこはセールス的にもブランディング的にも大きな可能性を秘めているのに、BMWを筆頭にKTMなど欧州ブランドの猛者たちがいて、さらにはホンダがアフリカツインを投入したことでさらに動きが活発になってきたカテゴリー。そこに、じつにヤマハらしいアプローチで参入してきたのですから。希望的観測としては2017年の大阪&東京モーターサイクルショーに展示されるのではないかと思うので、その際はじっくり見てみてください。
僕がグッときたのは、これまでヤマハが牽引してきたオンロードやオフロードのレースシーン、新スタンダードを目指して開発してきたエンジン、そしてパーソナライズの可能性を託したカスタムシーンが一丸となったコンセプトマシンに仕上がっていて、かつてヤマハが存在感を発揮したものの現在踏み込み切れていないアドベンチャーカテゴリーにアプローチしてきたこと。そこはセールス的にもブランディング的にも大きな可能性を秘めているのに、BMWを筆頭にKTMなど欧州ブランドの猛者たちがいて、さらにはホンダがアフリカツインを投入したことでさらに動きが活発になってきたカテゴリー。そこに、じつにヤマハらしいアプローチで参入してきたのですから。希望的観測としては2017年の大阪&東京モーターサイクルショーに展示されるのではないかと思うので、その際はじっくり見てみてください。
また日本導入は未定ですが、すでに欧州や北米ではラインナップされているニューモデル、ボルトをベースにしたスクランブラーモデル『SCR950』のほか、こちらも日本導入は未定の『MT-07トレーサー』や、昨年のEICMAで発表され話題となったYZF-R1ベースのネイキッドマシン、MT-10をベースにオーリンズ製の電子制御サスペンションを搭載した『MT-10 SP』を展示。さらには人気の『MT-09』は、LEDヘッドライトやLEDテールライトを使用した新デザインのフロントフェイス&リアビューを採用。A&Sクラッチやクイックシフターなども装備し、操作性も高められたマイナーチェンジモデルが展示されました。
さらには『SCR950』のYard Builtマシンが展示されていました。カスタムを手掛けたのは東京と米国・LAを拠点に活動するカスタムファクトリー、ブラット・スタイルです。ブラット・スタイルはYard BuiltプロジェクトがスタートしてすぐにSR400をベースにしたカスタムマシン”B.S.R.”を製作しているほか、BMW R nineTカスタムプロジェクト・ジャパンの4人の日本人ビルダーの一人としてフラットトラッカースタイルのカスタムマシン”サイクロン”を製作するなど、世界中のカスタムファンが注目するカスタムファクトリーです。マシンはタンク&シート&リアフェンダーを作り替えて直線基調のサイドシルエットを再構築し、リア周りも一新。スクランブラーテイストをさらに強めたスタイルになっています。
●カワサキ
何かが変わりはじめたのではないか。今年のEICMAでのカワサキを見ると、そんな風に感じました。その要因となったのがEICMAで発表された『Z900』と『Z650』でした。カワサキが”Z”の名前を冠したネオクラシックなニューモデルを発表するのではないかという噂は、絶えず沸き起こっていました。とくにBMW R nineT、ドゥカティ・スクランブラー、新型の水冷2気筒エンジンを搭載したトライアンフのボンネビルシリーズ、ヤマハXSRシリーズがリリースされるなど、ここ数年ネオクラシック市場は活況。そもそもクラシカルなスタイルの”Wシリーズ”を持ち、それが生産終了を迎えた2016年はカワサキが”新しい”ネオクラシック・モデルを発売する絶好のタイミングであると考えられていました。しかも今年は、ドイツ・インターモト/イタリア・EICMAと欧州二大モーターサイクルショーが開催される年であり、いつも以上に各メーカーのニューモデルに注目が集まるだけに、カワサキはココに向けて何かをぶつけてくると世界中のメディアがさまざまな予測を立て、新型車の予想CG画像も多数出ていました。
その期待度に比べると『Z900』と『Z650』は少し物足りなかったかもしれませんが、カワサキの意気込みは大いに感じることができます。まずはそのネーミング。”Z1″、”Z2″という名前こそ出ませんでしたが、Z900やZ650というモデル名はカワサキの礎を築いたモデルであり、それを使うことの意味は非常に大きいと言えるでしょう。
その期待度に比べると『Z900』と『Z650』は少し物足りなかったかもしれませんが、カワサキの意気込みは大いに感じることができます。まずはそのネーミング。”Z1″、”Z2″という名前こそ出ませんでしたが、Z900やZ650というモデル名はカワサキの礎を築いたモデルであり、それを使うことの意味は非常に大きいと言えるでしょう。
Z900は、Z1000のエンジンをベースにした水冷DOHC4バルブ直列4気筒エンジンを搭載。Z650は、欧州で人気のスタンダードモデル、ER-6nの後継モデルであり、エンジンもER系の水冷DOHC4バルブ直列2気筒エンジンを搭載しています。ザッパーファンの皆さんからツインエンジンで”Z650″は無いだろう、という声も聞こえてきそうですが……欧州におけるERシリーズの人気は絶大で、中間排気量におけるカワサキのスタンダードモデルと言えばERシリーズであったことから、新たに『Z650』と銘打ったカワサキの次世代スタンダードモデルとして2気筒エンジンが選ばれたことも十分頷けます。
またこの両車が、新型のトレリスフレームを採用していることも興味深いですね。ドイツ・インターモトで発表された新型車『Ninja650』もZ650と同じプラットフォームを使っていて、その発表を見たとき、”トレリスフレームの採用はコストダウンか!?”と思ったのですが、この新型Zシリーズで、しかもZ900にもトレリスフレームを採用したことを考えると、ほかに何か目的があるのではないかと勘ぐってしまいました。もちろんその勘ぐりの先には、新型Zシリーズをベースにした発展モデルを妄想していて、その場合にトレリスフレームにした方が都合が良いのではないかと想像を膨らませてしまうのです。しかもカワサキグリーンのトレリスフレームと言えばカワサキのフラッグシップモデル『Ninja H2/H2R』を連想します。最高峰モデルとのリンクを強化するアタリ、ますます怪しいと思いませんか? 現在はZ1000から続く”SUGOMI”スタイリングを継承していますが、今後の展開にも期待です。
またこの両車が、新型のトレリスフレームを採用していることも興味深いですね。ドイツ・インターモトで発表された新型車『Ninja650』もZ650と同じプラットフォームを使っていて、その発表を見たとき、”トレリスフレームの採用はコストダウンか!?”と思ったのですが、この新型Zシリーズで、しかもZ900にもトレリスフレームを採用したことを考えると、ほかに何か目的があるのではないかと勘ぐってしまいました。もちろんその勘ぐりの先には、新型Zシリーズをベースにした発展モデルを妄想していて、その場合にトレリスフレームにした方が都合が良いのではないかと想像を膨らませてしまうのです。しかもカワサキグリーンのトレリスフレームと言えばカワサキのフラッグシップモデル『Ninja H2/H2R』を連想します。最高峰モデルとのリンクを強化するアタリ、ますます怪しいと思いませんか? 現在はZ1000から続く”SUGOMI”スタイリングを継承していますが、今後の展開にも期待です。
それともう1台は、Ninja 300のエンジンを使ったスモールアドベンチャーモデル『ベルシス-X300』。Z1000系の4気筒エンジンを抱く「ベルシス1000」、Z650系の2気筒エンジンを抱く「ベルシス650」に続くベルシスシリーズの末弟というわけです。カワサキのスーパースポーツモデルにも採用されているデュアルスロットルバルブやアシスト&スリッパークラッチを採用。Ninja 300からエアクリーナーボックス形状を変更し、アドベンチャーモデルに適したエンジン特性が追求されています。