EICMA2016 ミラノショー・レポート・タイトル

 現場から3回にわたって速報をお届けした、イタリア・ミラノで開催されたEICMA2016。不思議なことに、ここ数年、EICMAはオフィシャルに来場者数などを発表していません。「来場者数は2014年から増え、参加したメーカーも順調な伸びを見せた。その45%は海外メーカーであり……」と言う具合。確か2014年時には会期中の来場者数62万人と発表していたので、来場者60万人はキープしているのでは、と思います。とはいえ、金曜日まで居たEICMAは、木曜日からの一般公開日以降、人、ヒト、ひと……今回から数回に分け、速報ではお伝えできなかった各メーカーの車両やブースの雰囲気をお伝えしていきたいと思います。まずはホンダとスズキから!

 
●ホンダ

 人気を二分していたのは『CBR1000RR ファイヤーブレード』と『X-ADV(エックス・エーディーブイ)』だったと思います。『CBR1000RR ファイヤーブレード』はEICMAの1ヶ月前、10月に開催されたドイツ・ケルンのモーターサイクルショー/INTERMOT(インターモト)で、ホンダファン待望の「CBR1000RR ファイヤーブレードSP/SP2」が発表になり大いに注目されました。SPシリーズはサーキット走行を前提としたディテールが採用されていて、イコールそれは、世界中のスーパーバイク選手権およびスーパーストック選手権を戦うホンダ車が、すべて新型「CBR1000RR ファイヤーブレードSP2」ベースになると言うこと。
 
 ここ数年、世界中の同選手権では苦汁を飲んできたホンダだけに、その反撃の狼煙が上がったというところでしょうか。その狼煙の意味を逆に捉えれば、2017年のホンダは死にものぐるいで勝ちに来るはず。いや勝たなきゃいけません。そんな状況下でどんなバトルが展開されるか、大いに楽しみです。

 と前置きが長くなりましたが、そんなSPシリーズのベースとなるのが”つるし”の『CBR1000RR ファイヤーブレード』となるわけです。5軸の「IMU(慣性計測ユニット)」、出力特性が変更できる「パワーセレクター」や「SEB(セレクタブル・エンジン・ブレーキ)」、9段階の「HSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)」、「ウイリーコントロール」、「RMSS(ライディング・モード・セレクト・システム)」、バンク角を検知して優れたコントロール性に寄与する新型「ABS」などなど、SPシリーズにも搭載されていた電子制御技術を満載。またSPシリーズからは前後サスペンションとブレーキを変更。サスペンションはフロントがSHOWA製φ43mmBPF(ビッグボア・ピストン・フォーク)/リアがSHOWA製BFR(バランス・フリー・リアショック)を採用。またブレーキはトキコ製となりました。

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 これは速報にも書きましたが、PVが”デキル男が日常使いするファイヤーブレード”的な造りになっていたのは、じつに興味深いですね。まぁSPシリーズのPVにニッキー・ヘイデンを使い、ストイックなスピードの世界をアピールしただけに、それとのコントラストを考えれば当然なのですが……ただ個人的には、電子制御技術が進んだスーパースポーツは軽くて扱いやすいのでストリートバイクとしても最適、と考えているだけに、あのPVはツボでした。会場でも、イタリアのダンディなオジ様たちがたくさん跨がっていたので、期待できそうです!
 
『X-ADV』は、やはり新しいジャンルのバイク、という感じです。みなバイクを前に、またはバイクに跨がったまま”アーだ、コーだ”言っておりました。だから、なかなかバイク単体やディテールの写真が撮れない……でも事前に説明員に聞いたのか、ディテールにやたら詳しいオジさんが居て各部を説明してくれる→それを聞きに人垣ができる→お前ココ撮れと指示が入る、という面白い取材となりました。

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 エンジン形式は水冷4ストロークSOHC4バルブで、排気量745ccの270度クランクを持つ並列二気筒。ホンダ独自の二輪車用DCT/デュアル・クラッチ・トランスミッションを採用するほか、走行状況にあわせて的確にシフトアップとダウンを自動的に行う”ATモード(一般的な「Dモード」と3レベルあるスポーティな「Sモード」があり)”と、シフトスイッチで変速できる”MTモード”という、独自のシフト操作技術を採用しています。その見た目やエンジン形式から「インテグラ」のアレンジ版とも考えましたが、リリースではフレームは”新型”とのこと。インテグラが前後17インチホイールだったのに対し、『X-ADV』はフロント17/リア15インチホイールを採用、シート高も820mmとやや高めになっていました。
 シート下容量は21リットルでLEDライト付き、スクリーンは5段階で調節可能など日常使いからツーリング使いまで、幅広い用途を考慮したディテールも採用されていました。

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 日本人的に注目は、やはり『CRF250ラリー』ですね。今年の春のモーターサイクルショー以降、国内でもそのプロトタイプを目にした人も多いのではないでしょうか。そのイメージはダカールを戦うホンダのラリーマシン「CRF450ラリー」。タンクから流れるようなラインで繋いだフロントサイドカウル&フェンダー、スクリーンを兼ねたスケルトンフロントカウル、そしてエンジンガード&アンダーカウルなどによって250とは思えないほど堂々とした立ち姿です。

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 長距離を走るラリーマシンのDNAを受け継いだことで、高速走行域での快適性が上がることは当然のこと。そうなるとオフロード走行重視ではないツーリングライダーもターゲットユーザーになると思うわけです。また思わず図ったか、火花散るスモール・アドベンチャーカテゴリーにおいても、近代ダカールマシンの血を引く唯一のマシンと言うこともあり、大いにその活躍とセールスの行方が気になります。

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 もうひとつ、今年のEICMAホンダ会場で話題になっていたのがカスタムコンセプトモデルたちです。遠い未来を指し示すコンセプトモデルとは違い、製品とユーザーとの間に”スポッ”と入るのがカスタムコンセプト。欧州では多くのメーカーがこの手法を採っていますが、ホンダは昨年初めてカスタムコンセプトを発表。そして今年もやってきたというわけです。

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「CB1100TRコンセプト」はイタリア・ローマにあるホンダR&Dセンターの若手デザインスタッフが手掛けたコンセプトモデル。4人のデザイナーがデザインを手掛け、そこにはクラフトワーク的な手法も数多く用いられたそうです。2年連続でカスタムコンセプトマシンを手掛けたことでホンダは何かが変わったor変わりそう?と聞くと、Just Tryだ!というのが第一声。でもその後、欧州で沢山のメーカーがさまざまなトライをしていて、自分たちが行っているのもその一環だと。でも、いまの欧州のトレンドにタッチしながらの仕事はエキサイティングだよ、と話してくれました。

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 またアフリカツインをベースにした「アフリカツイン・エンデューロスポーツ・コンセプト」も面白かったですね。ホンダのモトクロッサー、CRF系の軽量パーツを使用するなどして、アフリカツインの”スポーツ”要素にフォーカスしたスタイリングとディテールとなっていました。欧州でのアフリカツイン人気は高く、ホンダ以外のさまざまなパーツ&アクセサリーブランドがアフリカツイン系パーツをリリースし、それらを装着したアフリカツインが至る所に展示されていました。

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●スズキ

 インターモトで全面改良したスーパースポーツモデル「GSX-R1000」とその上級モデル「GSX-R1000R」、ネイキッドスポーツモデル「GSX-S750」、そしてアドベンチャーモデルのVストロームシリーズを一新、「Vストローム1000」と「Vストローム650」をリリースしました。リーマンショック以降、アジア市場でのシェア拡大を目指し、モデル開発の軸足を小中排気量モデルへと移行していたスズキが、大排気量の主要モデルを一気にモデルチェンジ。再び大排気量モデル市場へと重心を移してきたと感じました。これは北米や欧州、そして日本というバイク先進国の景気が再び活気づき、そこでセールスが見込めるという判断ができたと想定できます。また各シリーズのフラッグシップモデルをバイク先進国にリリースすることで、小中排気量で地盤を固めたアジアを中心としたバイク新興国が、再び活気づくという皮算用が働いたのではないかとも想像しました。

 インターネットの普及によって、世界中の人々が同じ情報を瞬時に共有することが出来るようになった今日、地域によって発表する情報をコントロールすることは不可能です。そのことを逆に考えると、遠く離れた地の情報も、その出し方次第で世界各地に居る視聴者&読者にとって有益な情報になりますから。
 
 そしてコストやマーケットについて厳しい眼を持ち、それを元に大胆に決断できるスズキは、こういった先進的なマーケティングも積極的に展開しているのではないか。EICMAのニューモデル発表を見たあと、そう感じたのでした。というのもスズキは、ここEICMAで追い打ちをかけるように小中排気量マシンを中心にニューモデルを発表したからです。それが『バーグマン400』『GSX-S125』『GSX250R』、そして『Vストローム250』です。インターモトで大排気量モデル・カテゴリーを固め、ここEICMAで小中排気量モデル・カテゴリーを固めたワケですから……
 
 バーグマンは、欧州やアジアにおけるスズキのスクーターブランドで、全面改良された『バーグマン400』はその中核モデル。”バーグマン・クーペ”をコンセプトに、スリムでスポーティ、軽快さをテーマにデザインされているようです。

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『GSX-S125』は、インターモトで発表されたスズキのスーパースポーツシリーズ、GSX-Rの末弟「GSX-R125」の兄弟モデル。共通のエンジンやシャシーを使い、スポーツネイキッドシリーズ、GSX-Sの方程式に当てはめたモデルです。

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『GSX250R』は、フルカウルを装着するスタンダード・スポーツシリーズの250cc版。『Vストローム250』はGSX250Rと同系のエンジンを搭載するアドベンチャーモデルです。インターモトでVストロームシリーズを一新した直後に、間髪入れずに同シリーズの250ccモデルを投入するなんて、なんとも憎い展開だと思いました。

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 ということで、ホンダ&スズキ編は終了です。次回はヤマハとカワサキを紹介したいと思います。



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