METZELER ROADTEC01 TEST<br />

METZELER WEB SITE ELSEE INC. speed☆star

 リプレイス用ラジアルタイヤの中でも、スポーツツーリングタイヤと呼ばれるジャンルはどのメーカーも力を入れている。その理由は、ネイキッド、ストリートファイター、ツーリングモデル、スーパースポーツまでをもカバーするサイズレンジをもち、ターゲットが広いからだ。だからこそ旋回性、ドライグリップ、ウエット性能は言うに及ばず、マイレージ、乗り心地とユーザーの要求も多い。かといって「広く浅く」ではもはや通用しないほどユーザーの目も肥えて厳しい。
 メッツラーはこれまでZ6、Z8シリーズと大いにファンを広げこのセグメントをリードしてきた。2016年初夏にリリースしたロードテック01は、それらのシリーズの後継モデルでありながら、全ての面でこれまでの流れを超えたとして、Zシリーズから改名、新たにロードテック01となったという。

 
2輪専門のタイヤブランドが贈る
会心の作り込みとその走り。

 前作となるZ8、Z8Mは欧州、日本のバイクメーカーに純正指定されるなど、ウエットグリップとドライハンドリング、乗り心地やノイズなどのコンフォート面、さらに耐久性を含め、開発者達から信頼を寄せるタイヤだった。タイヤの骨格となる独自の内部構造や、コンパウンド成分をベストなタイミングで混ぜていく独自製法など、秘密のレシピを駆使するメッツラーの技術が活きている部分だ。また、メッツラーのテストチームは、地球2周分では足りないほど実走テストを繰り返すことでお馴染み。あらゆる条件下で人がしっかりと味付けをする。その結果生み出される製品には、乗れば直接ライダーの感性に語りかけるような味わい、楽しさに繋がっている……。それがこれまでテストしてきたメッツラータイヤの印象だ。

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ロードテック01のターゲットは?

 ワインディングを楽しんだり、2人乗りで長旅を楽しむライダー、通勤や仕事にバイクを使うようなライダー。ターゲットはラジアルタイヤを履くユーザー全般だ。ツーリングからスポーツ走行、荷物満載で高速道路を長距離移動、市街地走行など、全般とも言える広いエリアをカバーする目的で造られている。
 それらの中で、グリップ、ハンドリング、耐久性、安全性、そして路面への追従性や、持ち前の性能をライフ後半まで維持させるなど、天候、気温などバイクが走れる環境なら高い性能を発揮するよう開発がされている。

 
ウエットと低温グリップ、
ドライグリップも、は難題だった。

 耐久性とウエットでの性能を高める、もちろん、ドライグリップをあげる事も含めて「アチラを立てればコチラが立たず」というものだったという。しかし、目標値はその先にある。メッツラーの開発チームがこのタイヤに封入した手法はこうだ。
 
1 新しいトレッドパターンの採用。
 これにより低ミュー路面での加速、減速、バンクさせる時のトラクションを向上させた。このデザインは、開発チームが摩擦における力学的な要素を分析し、コンパウンド開発者とともに必要な特性を造るために様々な化学的なアプローチから詰めたという。
 
 パターンの配置、その角度など力学的に最適化。Z8シリーズでは縦方向の溝が多かったが、01では前輪は横方向への溝が多いレイアウトへ。前輪では減速時など荷重が増えるとしっかりと路面を掴むように作用し、路面温度や低いミュー、ウエットにも強い特性を引き出した。後輪は加速時に路面を掴む効果を発揮するパターンを採用している。
 
 最適化されたパターンは接地面の溝が占めるトレッド面の割合、シー・ランド比の一定化を保ち、均一な摩耗と性能維持向上も確保した。溝のほか、DOT状の丸い溝もトレッドに動きを与えることで路面を掴む特性と排水性に貢献するという。
 
2 構造改革でも路面を掴む。
 
 ロードテック01の骨格は、柔軟なカーカスと新しいプロファイルの断面形状で、タイヤが構造的に路面追従性と衝撃吸収性を高められた。また、Z8系の路面接地形状が縦長だったのに対し、01では前後に短く、横方向に広い接地面を作ることで、接地面に占める溝の割合を増やし、トレッドが路面を掴むため力を生みやすくしている。これは接地面に掛かるストレスを低減し、面圧を低減させ、結果、マイレージ性向上に一役買う。
 
 タイヤの外皮でもあるゴムの成分は、低温時のグリップ、ウエットに強いシリカ含有率100%としたコンパウンドをフロント、リアの左右両サイド部分(トレッド幅の左右40%づつ)に配置。リアのセンターにはシリカ含有率70%の耐摩耗性に優れたコンパウンドを使っている。いまやシリカ含有率が高くてもサーキットに弱いなどというのは過去の話なのだ。

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やっぱり活きている10万キロ分の引出し。

 まずはボリュームゾーンである前後17インチのテストをした。機種はクロスオーバーのムルティストラーダ1200S。装着サイズは、前輪に120/70ZR17、後輪に190/55ZR17だ。内圧はメーカー指定の前2.5bar、後輪2.9barへ。交換後、まずタイヤのしなやかさが印象的だった。乗りだし直後からふんわりした乗り味で、路面コンタクトがよくわかる。旋回時の寝てゆく動きが軽く速いのに、ヒラヒラした感じではなく、あたかもスローモーションをみるようにバイクのロール移行を的確に感じとれるのだ。
 
 翌日、高速道路を使って富士山方面に。中央道ではあえて大型トラックの通過で轍や傷みのある走行車線、登坂車線を走る。タイヤそのものの吸収性がよく、あたかもサスが良くなったような印象だ。轍に取られるニブリング性も顕著、ということもなく、穏やか。ロードノイズも少ない。車線変更への動きは軽いが、直進安定性ではどっしりとした据わりの良さを感じる。
 
 富士吉田から信号の少ない道をツーリングする。樹海の中のワインディングを流れに合わせて右、左と緩やかに旋回する時の一体感が気持ち良い。飛ばさなくても充実感があるのは、このセグメントのタイヤとしてとても重要なファクターだとボクは思う。速度を問わず走りの満足感が高いのだ。
 
 その日、ウエットテストにも挑んだ。パイロンスラロームを配置したテストコースに散水車で水を撒く。そこでハンドリングと深いバンク角を体験したのだ。最初の一周目(300メートルほどか)はさすがに慎重に行ったが、ブレーキ、旋回、加速のどれにも怖さがない事に気が付いた。しっかりと濡れた路面ながら、次第に心が躍る走りを楽しめた。その間、ズルっとすべることは一度もなく、その実力の奥深さに見せられる。タイヤを触るとウエットなのにそれなりに熱が入っている。ABSとトラクションコントロールも全開で攻めるまで顔を出さないほど、グリップがよいのだ。
 
 ドライはどうか。富士スピードウエイのショートコースでチェック。さっきまでクルマの流れに合わせていても気持ちが良い、と思ったが、このタイヤ、攻めても最高だ。深いバンク角でのエッジグリップも満足がゆくし、そこまで寝かしても旋回力が落ちない。しっかりとした剛性感、プロファイルが生み出す旋回性、攻めたつもりでもトレッドは綺麗なもの。1キロのサーキットには左右への切り返しやパーシャルでラインを選ぶようなややこしい場面が多い。01の前に履いていたスーパースポーツ向けタイヤと同等レベルの走りの気持ち良さだ。
 
 総合的に前後17インチモデルでの性能評価は高いものだった。

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ロードタイヤをアドベンチャーセグメントに付けると……。

 実はこの手のジャンルのバイクにスポーツツーリングタイヤ、という組み合わせの経験は初めてだ。ヨーロッパなどでは、GSなどにこうした組み合わせを多く見かける。この手のモデルがロードバイクとしても優れいているし、長距離でポジションも楽だし、サスペンションストロークもあるから乗り心地も良い。何よりロードタイヤのほうがマイレージが良い、ということもあるのだろう。アチラでは以前から人気が高い。
 
 とはいえ、コチラ日本ではまだまだ。今回、タイヤの交換作業をお願いしたスピードスターの話では「GS系モデルの方は、OEMのようにダート走行も意識したタイヤを選ぶ人が多いです。林道も行くんですか、と訊くと、行かない人が殆どなのですが。いざとなったら行けるタイヤ、という選択のようです。パイロットロードにもGS系サイズがあるのですが、数は出ないですね」とのこと。
 
 R1200GSアドベンチャーはこのセグメントでも30リッター入りタンクや、長いサスペンションストロークで、走る場所を選ばないクロスオーバーモデル界のカリスマ的存在。タンクやエンジンを守るガード類を見ても、オフロード用のノビータイヤが似合うキャラだ。
 
 手際よく進む交換作業を見ながら「ミスキャストだったかも」などとちょっと自信を無くすのだった。
 
 今回装着したサイズは前輪が120/70ZR19、後輪に170/60ZR17というもの。サイズチャートには先代GSやその他にも装着例が多い、110/80VR17+150/70VR17も用意されている。
 
 ショップを出て最初に感じたのは、ムルティストラーダで感じたのと非常に近いものだった。新品なのに慣らしが終わったがごとき接地感。乗り心地も素直でよい。曲がり角などで、前輪に舵角が付き、バイクが寝る感じにも、ロールする速度と乗り手の感覚に遊離感がない。自然で解りやすい。
 満タンで270キロはあろうかという車重を感じさせない軽快さと、例の段階的に理解しやすい挙動の両方を一辺に手に入れた感じだ。
 
 試乗ルートは先にムルティストラーダで周ったものとほぼ同じにした。天候は往路が雨、復路はドライ、というもの。雨の信頼性はウエットテストで体験したものと同様だった。正に路面をタイヤのトレッド面でふんわり掴んでいる印象。19インチの前輪との組み合わせでも旋回へのレスポンスは良好。
 OEMでは前輪に舵角が付くと、後輪がそれに呼応、適度なレスポンスで前後とも旋回力を生み出す……、という印象。それが01を履くと、前輪が舵角が着くのと同時に旋回力が高まり、後輪がそれに追従するようなロードバイクらしいマナーになる。それでいて、市街地から高速道路、そしてワインディングでも、タイヤだけが先に曲がってしまう感じではなく、しっかりとバイクとマッチングしている。このあたりに実走テストの味付けをしっかりと感じる。
 
 そしてウエットではそのグリップ感が乗り手をリラックスさせてくれる。恐くないから、肩や腕に変な力が入らない。あっという間に富士山山麓に到着だ。そこから信号の少ないワインディングをゆく。山中湖畔を走り、龍神峠へ。高度を上げると濃い霧が立ちこめた。風で舞った落ち葉も雨で張り付いている。路面には縦溝とフツーなら三重苦だ。01を履いたGSは路面のアンジュレーションを包むように走り、下りのS字への減速をしながらアプローチし、バイクを寝かすような時でも自信を持って行けた。
 
 これでGSの巨体が3割引きぐらいコンパクトに感じる。ウエットテストは一般道でたっぷりできたので、午後の晴れ間をショートコースで過ごす。左右への切り返し、ブレーキング、そして旋回と実に気持ちよい。調子に乗るとあっという間にステップが接地する。リアのイニシャルプリロードを高め、さらに走りこんでみる。170サイズのタイヤのエッジグリップもなかなかだ。切り返しの軽さ、ブレーキングからの旋回など、本来、この手のバイクでは「そこまでしないよね」という走りにもこのタイヤはしっかりと応えてくれる。しかも楽しめる。これはいい。

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新・旅タイヤの基準完成。

 尖ったテストができたのは、幅の広さを確認する上で重要だった。しかし、このタイヤの本拠地はやっぱりツーリング。それもいつもの道はもちろん、1週間、2週間かけて街を越え、県境を越え、アチラなら国境を越え、舗装状況も雨天時の路面状況も変わるような何でもアリな状況と場所だ。そんな場面でリアルに造られたタイヤだけに、ゆったり走るも攻めて走るも、旅の間中、ストレス無く走りを楽しめる。多機能性タイヤとして太鼓判を押すよ、と言われた気分だった。この守備範囲の広さと深みこそこのタイヤの魅力だ。
 何処でも乗り手の心を満たすタイヤ。結論としてはそれだ。GSのクロスオーバー性も相まって、バイクの魅力をまた知ったテストでもあった。オススメします。
 
(松井 勉)

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