Honda CRF250 RALLY
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本田技術研究所二輪R&DセンターでCRF250 RALLYの開発責任者を務めた杉山栄治さん。ご自身も相当なオフロードフリーク。CRF250Lの開発も担当した。 「チームとしてはモーターサイクルショーのままの仕様で出そう、が密かなモチベーションでした。ツーリングバイクとして快適性をもたせ、所有感も満たす仕上げとしています。オンロードでの走りはCRF250Lで定評のあるところですが、サスペンションストロークの延長やリアリンクの専用設計、減衰の特性もソフトにしています。また、可動式チェンジペダルの採用や、サイドスタンドの底面を拡大するなど、細かくオフロードへの親和性を高めています。燃料タンクはXR-BAJA同様13リットル程度を望む声も多かったのですが、ベースが燃費の良いエンジンなので、スタイル、重さを考慮して10リッターに設定しました。ライダーとして走って楽しめるのはもちろんですが、ガレージの前で洗車している時など、ご近所のバイクに乗らない方とも、良いバイクだね、何㏄? と、会話が弾むような存在になれば、と走りもスタイルも妥協無く作り込みました」。 |
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ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足時の足着き性が見られます。 |
2016年春、モーターサイクルショーに展示されたCRF250 RALLYのコンセプトモデルを指さして、クールでオシャレな髪型の事情通が耳元でささやいた。「ほら、市販車と同じコーションラベルがタンクにも貼ってあるでしょ。このまま出すよ、っていうサインだよ、間違いない」
不適な笑みを浮かべるその顔を今も鮮明に思い出す。
その予言はホントだった。いや、正確にはあのままどころか、フロントにφ296mm径のフローティングディスクまで奢られている。塗装となったブラックの部分が見せる艶。全体のスタイルにも質感が滲み、まるでワークスマシンのような存在感がある。スピード感がありカッコ良い。
それもそのはず。CRF250 RALLYはTeam HRCがダカールラリーで走らせるCRF450 RALLYと同じデザイナーが腕をふるった作品だからだ。
開発テーマは「ザ・ダカールレプリカ 週末の冒険者へ!」である。
ダカールラリーは年イチのイベントだが、このCRF250 RALLYは毎週出番を控えたツーリングバイクとしてデザインされたのである。
週末のワークスマシン、スリムで背が高いというオン・オフモデルらしい特徴と、ダカールレプリカたる黄金比を造るため、ベースとなったCRF250Lよりもあえて車高を上げている。カウルやLEDの灯火類など、結果的に250というクラスを飛び越えた存在感を漂わすモデルになった。
また、スタイルを決定付けているカウルは、ダカールラリーマシンの象徴とも言える。と、いうのも、現在FIMのラリーレギュレーションでは、排気量450㏄を上限としたルールがあり、ワークスもプライベーターも大多数が450㏄単気筒エンジンで闘っている。同じ排気量から生まれるパワーでライバルに差を付けるには、マシンの空力特性が実はとても重要だ。ダカールラリーは、2週間で9000㎞を走破するため、ライダーの快適性も重要だが、今や高速域での運動性、ハンドリング特性、冷却性能にも関わってくる空力がとても重視されているパートでもある。
風洞実験を積み重ねた技術は惜しみなくCRF250 RALLYにも注がれている。カウルのサイドパネル、スキッドプレート、ナックルガードに入った細いスリットなどはそうした空力性能を高めるため、CRF450 RALLYにも採用されているものだ。空力居住性を確保しながら、整流された空気の流れが車体にまとわりつくことでハンドリングを重くするのを防ぐため、空気を巧く剥離させるための技術だ。
ワークス直系のフィードバックを語れる週末冒険マシン。そんな250㏄って想像しただけでもワクワクする。
異径2眼ライト、カラーリング、そしてボリューム感と縦横比。CRF450 RALLYに引けを取らない存在感を持つCRF250 RALLY。ワークスマシンの弟分。デザイナーが同じなだけに正真正銘の兄弟といえそうだ。 |
燃料タンクもスリムなスタイルをキープしたまま増量された。300㎞の航続距離を確保する。燃費の良いCRF250のエンジンならば10リッターで行ける。これは開発責任者を務めた杉山栄治さんが導き出した数値だ。
自身もCRF250Lに乗る杉山さんは、街乗りで30km/l以上を走らせる。ツーリングなら350㎞も不可能ではないという。燃費は乗り方で変化するが、スリムなスタイルをキープしながらツーリングバイクとして不安のない余裕ある巡航距離を与えたという。
CRF250 RALLYにはABS仕様も用意された。オン・オフモデルでしっかりとABSの良さを味わって欲しい、とセッティングにも拘った。多くの国に様々な機種を造るホンダ。そのノウハウを使ってセッティングを煮詰めたという。CRF1000Lアフリカツインでも好評を得たABSと同様、期待を裏切らない制動性能と制動感を持っているという。後輪のみキャンセルすることで、望むならダートでブレーキターンや、スライドのキッカケを作る高度な操作も可能だ。
LO/HIともにLED光源のヘッドライト、LEDウインカーの電装系も、春に見たプロトタイプそのまま。開発チームは「このまま出して欲しい」という期待を裏切らなかった。
そうなると何時出るのか、である。2017年、なるべく早いタイミングで出したいとHMJは言う。すると、Xデイは復帰後5度目のダカールラリーがアルゼンチンのブエノスアイレスへとゴールする、1月14日か?!
それは冗談だとしても「すでにモーターサイクルショーなどで露出をされ、期待されているモデルです。11月半ばの段階でプレスにお見せしている、というところからも想像いただけると思います」と意味深発言からもXデイが遠く無いことを匂わせる。
とある事情通は「WR250Rよりは低く抑えるハズだ」とささやく。
すると、価格はABS仕様が65万円を切り、スタンダードが60万円あたりか。為替にも影響される海外生産ということもある。待っている冒険者達は「もうこれ以上週末を無駄にできないぞ」とその時をクビを長くしている。
CRF250 RALLYがクラスを越えた出来映えだけに、一日でも早くスタートボデューム(お店)にその姿を見せて欲しいのである。
(レポート:松井 勉)
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