Kawasaki KLX250 Final Edition
オン・オフモデルのKLX250とモタードのD-TRACKER Xにファイナルエディションが登場した。1993年に、エンデューロレーサーKLX250R譲りのハイスペックで登場して人気を博したKLX250SRから、KLXシリーズはエンジンやフレームの構造を大きく変えずに存在してきた。それをベースにした初代D-TRACKERは1998年に発売された。“Final”の名の通り、現行モデルはこれが最後だと思うと感慨深い。
まずはKLX250Final Editionに乗って林道を走りに。乗る前にこの見た目にヤラレタ。紫色のシートに、外装は緑ベースに派手な柄と初期モデルを彷彿とさせるカラーグラフィック。カワサキはその昔、ゼファーシリーズの最終モデルも、初期型Z1の火の玉カラーに似た質の高いカラーグラフィックを採用したことがあった。ツボどころというか泣かせどころを知っている。フレームも紫で、顔も今風のではなく昔の四角いヘッドライトだったら完璧だったけれど、これで大満足。ライムグリーンのフレームは鮮やかな発色で、サイドスタンドまで同じ色で塗られていて美しい。
舗装されていない林道に入って土の上を走り山の中に入ると、冒険心のようなものが刺激されてワクワクする。これがオフロード走行の魅力でもある。フロント21インチ、リア18インチのいわゆるオフロード車の定番サイズでも、純正タイヤは舗装路とダートとのバランスを取った性能。オン・オフモデルはオフロード専用ではない。一般的ユーザーの使い方として、オフロードが走りたくて選んだけれど、日常的にはオンロードで走ることが多いというもの。だからこのタイヤ。
オンロードの空気圧のままダートを走っても、KLXは前後の重量バランスがエンデューロレースモデルなどに近く、ダート走行のスキルがある人はすんなり乗れるだろう。だからと言って土の上のビギナーに乗りにくいなんてことはない。オンロードより前後の体重移動とタイヤへの荷重を考えて乗るとスムーズ。水気でヌタヌタした粘土質の土から、硬い土の上に砂利が乗っかって滑りそうなところ、段差や、障害物。どこでも、ちゃんと走れる。リアサスペンションをぐいっと入れてスロットルを開け前に進む時のトラクションもなかなかだ。
2008年からフューエルインジェクションに変わったエンジンは、フラットなトルク特性のまま高回転まで回る。初期のキャブレター時代を知っている人には全域でトルクが足りないと思うかもしれないが、実際、これで困ることはなかった。サスペンションと体重移動を使えば簡単にフロントアップもでき、スネぐらいの高さの段差でも乗り越えていける。公道で使うオン・オフモデルは、強度的にもコスト的にもレースモデルのように軽くはできないから重さはあるけれど、それは他のメーカーの車輌も似たようなもの。
舗装路ではオフロード車らしく、リアタイヤにフロントが一瞬だけ遅れて倒れていくようにペタンと寝かせて旋回していく感じ。もっと早く向きを変えたいなら、縦長のシートの前の方に座って、フロントフォークを縮ませながら侵入すればいい。ブレーキの効きも、この車重とエンジンパワーからなる運動エネルギーを小さくするには充分。高速道路で頑張って飛ばすと、フロントの荷重が抜け場合によってはハンドルが左右に小さく交互に切れる動きが出ることもある。その時はハンドルグリップを握る手の力、保持する腕の力をリラックスさせて、ニーグリップして車体をおさえていれば収まる。
よりパワフルで速く高性能なものもある。より初心者向きなものもある。より舗装路でのハンドリングがいいものもある。でもそれらの項目全部でバランスが取れているのがKLX250の魅力だ。飛び抜けたところはないが、苦手なところもない。80年代、90年代から林道が好きで楽しんできた人には、すっきりフィットするバイクだと思う。最後にもう一度言うが、このカラーグラフィックだけでも昔からのオフロード好きは財布の紐を緩めたくなるね。
KLX250 Final Editionのライディングポジション。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
メーターは多機能フルデジタル。シャープでアグレッシブなフロントカウルを装備。 | Final Editionのポイントは、タンク、フレーム、サイドスタンド、シート、シュラウド、サイドカバーに特別グラフィックを採用。 | その他Final Editoinでは、ホイールリム、ハンドルバーをブラック塗装、フロントフォークのアウターチューブにブラックアルマイト加工を採用。 |
Kawasaki D-TRACKER X Final Edition
土の道が伸びる木々の中から、アスファルトが敷かれたコンクリートの森の中へ。D-TRACKER Xは前後のサスペンションも専用のセッティングで、スーッと入ったところから踏ん張るところまでのタイムラグが小さく、動きが俊敏で楽しい。KLXよりハンドル幅が狭く、小径ホイール化で車体が低いのもあって、全体的によりコンパクトだ。そのサスペンションと17インチの小径ホイール、全体的にマスの集中化がより進んだ車体で身のこなしが素早くダイレクト感が出ている。
ステップにはラバーが取り付けてあって足に伝わる振動もマイルド。KLXは万能選手だけど、街中や舗装路だけしか走らないなら、D-TRACKER Xの方を選びたいと思わせる説得力がある。足着きもKLXより良好だし。スポーティーでグリップの良いバイアスタイヤに大径のディスクローターだから、ブレーキの効きに文句ない。見事にKLXとは別のバイクとして成立している。
初心者からベテランまでダートを楽しめるKLX250と、スポーティーな走りで街中でも気軽に乗れるD-TRACKER Xがこれでなくなるのは残念でならない。次のモデルの話などまったく聞こえてはいないが、実質的に入門クラスとなっているこの排気量にカワサキからまた新しいものが登場するのを願うばかりだ。
(試乗:濱矢文夫)
D-TRACKER X Final Editoinのライディングポジション。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
メーターパネルにはバーグラフ式タコメーター、デジタルスピードメーター、時計、デュアルトリップメーターを備えるフルデジタルタイプを採用。 | タンク、前後フェンダー、シュラウド、ヘッドライトカバーにFinal Edition特別カラーを採用。 | シュラウド、サイドカバーにFinal Edition特別グラフィックを採用。性能及び諸元に変更無し。 |
Kawasaki ZRX1200 DAEG Final Edition
ホイール、キャリパーにゴールド塗装を採用。エキセントリックチェーンアジャスターにゴールドアルマイト加工。 | クラッチカバーロゴにゴールド塗装。エンジンのスピンマークにもゴールドをあしらっている。 | フロントフォークトッププラグにゴールドアルマイト加工を採用。 |
各デカールを添付した上からオーバーコートクリア塗装を施している。フューエルインジェクションカバーはメッキ加工。 | メーター下プレートをゴールドに変更。メーターリング、ブレーキレバー、クラッチレバー、ラジエターカバーにブラック塗装を採用。 | フューエルタンク上部に「FINAL EDITION」特別デカールを採用。全体的にZ1000R1のテイストを盛り込んだカラー&グラフィックが特徴だ。 |
エンジンヘッドカバーにリンクル塗装を採用。 | スタンダード比で5mmダウンの特別シートを採用。 | サイドカバーにも特別エンブレム。 |
Kawasaki W800 Final Edition
リアのハブにブラック塗装を採用。 | エンジンのヘッドカバー、シリンダーヘッド、クランクケースにブラック塗装を採用。フューエルインジェクションカバーにはハンマートーン塗装。 | フロントのハブもブラック塗装。 |
Final Editionとして特別塗装のカラー&グラフィックを採用。 | シンプルなこのスタイルも見納め。 | フューエルタンク上面に貼られた「Final Edition」の専用デカール。 |
フューエルタンク側面には専用のエンブレムを採用。 | シートデザインもFinal Edition用にデザインを変更。 | 「W」の時代の終わり。お疲れ様でした。 |
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